JP2004049274A - ヒドロキシラジカルを発生する構造体およびそれを用いた脱臭方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】構造体S1は樹脂やセラミックなどの電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁部材10の表面に、水30から電子を引き抜いてヒドロキシラジカルを発生するヒドロキシラジカル発生部材としてのポリアニリンまたはポリアニリン誘導体からなる被膜20を形成してなる。被膜20を水30に接触させることによって発生したヒドロキシラジカルによって、構造体S1に付着したにおい物質を分解して酸化する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヒドロキシラジカルを発生する構造体およびそれを用いた脱臭方法関し、特に水が付着する構造体の脱臭方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水が付着する構造体の汚染防止技術として、たとえば特開2002−71296号公報に提案されているものがある。
【0003】
この公報では金属基材からなる熱交換器の表面にポリアニリンからなる被膜を形成し、この被膜が生成した凝縮水に接触すると、凝縮水に溶け込んだ溶存酸素をポリアニリンが活性化させ、活性酸素であるスーパーオキシドアニオンラジカルを発生させ、これにより、熱交換器表面に付着した有機物を低減する熱交換器の汚染防止方法およびそれに用いる熱交換器が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術で発生する活性酸素は主として、微生物の殺菌に非常に効果があるスーパーオキシドアニオンラジカルおよび過酸化水素である。そのため、熱交換器表面で繁殖した微生物の代謝活動により生成するにおい物質については、その発生源を断つという点から一定の効果が得られる。
【0005】
しかし、例えば、煙草などに代表されるにおい物質を直接分解して脱臭する能力はそれほど高くなく、このような脱臭能力をさらに向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑み、構造体に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い構造体およびそれを用いた脱臭方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、活性酸素の中でもスーパーオキシドアニオンラジカルなどに比べて酸化力が高く、におい物質の分解能力の高いヒドロキシラジカルを効率よく発生させればよいのではないかと考え、ポリアニリンなどが水と接触して水から電子を引き抜いてヒドロキシラジカルを発生するヒドロキシラジカル発生部材として用いることが可能であることに着目してなされたものである。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明では、電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁部材(10、11、12)と、絶縁部材の表面もしくは内部に形成され、水と接触して水から電子を引き抜いてヒドロキシラジカルを発生するヒドロキシラジカル発生部材(20、21)とを備えることを特徴とする。
【0009】
それによれば、ヒドロキシラジカル発生部材が水以外の導電性物質と接触しないようにすることができる。もし、金属のような導電性部材上に直接ヒドロキシラジカル発生部材を形成すると、ヒドロキシラジカル発生部材は導電性部材から電子を供与され、ヒドロキシラジカル発生部材が水から電子を奪う作用が阻害される。
【0010】
その点、本発明によれば、ヒドロキシラジカル発生部材が実質的に水のみから電子を供与される環境を作り出すことができ、ヒドロキシラジカルを効率的に発生させることができる。そして、発生したヒドロキシラジカルにより構造体に付着したにおい物質を分解して脱臭することができる。
【0011】
したがって、構造体に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い構造体を提供することができる。
【0012】
ここで、ヒドロキシラジカル発生部材(20、21)としては、請求項2に記載の発明のように、ポリアニリンまたはポリアニリンの誘導体を採用することができ、具体的なポリアニリンとしては、請求項3に記載のようなものを採用することができる。
【0013】
また、ヒドロキシラジカル発生部材の構成としては、請求項4や請求項5に記載の発明のように、絶縁部材(10〜12)の表面に形成された被膜(20)や絶縁部材(10、11)の表面もしくは内部に形成された粒子(21)を採用することができる。
【0014】
また、絶縁部材(10〜12)としては、請求項6に記載の発明のように、樹脂、セラミックまたはガラスから選択される材料からなるものを採用することができる。
【0015】
また、絶縁部材は、請求項7に記載の発明のように、膜状のものとして金属基材(40)の表面に形成された絶縁膜(11、12)であっても良い。
【0016】
さらに、請求項8に記載の発明のように、この絶縁部材を金属基材(40)の表面に形成された絶縁膜とする場合、当該絶縁膜としては、金属基材の表面を化成処理することにより形成された電気絶縁性の材料からなる化成処理膜(12)を採用することができる。この場合、ヒドロキシラジカル発生部材は当該化成処理膜の表面に形成された被膜(20)とすることができる。
【0017】
また、請求項9に記載の発明のように、絶縁部材を金属基材(40)の表面に形成された樹脂、セラミックまたはガラスから選択される材料からなる絶縁膜(11)とした場合、これら絶縁膜と金属基材との間に上記請求項8に記載のような化成処理膜(13)を中間層として介在させても良い。
【0018】
ここで、請求項8、請求項9に記載の化成処理膜(12、13)は、請求項10に記載の発明のように、金属基材(40)の表面に対してリン酸亜鉛処理、リン酸チタン処理、クロメート処理、モリブデン酸系処理、塩化セレン系処理、およびシラン化合物処理のうち少なくとも1種類の化成処理を行って形成された膜とすることができる。
【0019】
また、請求項11に記載の発明では、外部空気(7)と接触して熱交換する機能を有する熱交換器(1)として用いられることを特徴とする。請求項1〜請求項10に記載の構造体は、このような熱交換器として用いるものにすることができる。
【0020】
構造体を上記熱交換器として用いる場合、ヒドロキシラジカル発生部材(20、21)と接触する水は、請求項12に記載の発明のように、外部空気(7)との熱交換によって生成した凝縮水(30)を用いることができる。
【0021】
さらに、そのような熱交換器としては、請求項13に記載の発明のように、その内部に熱交換流体が循環する蒸発器を用いることができる。
【0022】
また、請求項14以下に記載の発明は、構造体を用いた脱臭方法に関するものである。
【0023】
請求項14に記載の発明では、電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁部材(10、11、12)の表面もしくは内部に、水から電子を引き抜いてヒドロキシラジカルを発生するヒドロキシラジカル発生部材(20、21)を形成してなる構造体(1、104、S1〜S7)を用いた脱臭方法であって、ヒドロキシラジカル発生部材を水に接触させることによって発生したヒドロキシラジカルによって、構造体に付着したにおい物質を分解して酸化することを特徴とする。
【0024】
それによれば、請求項1の構造体を用いて当該構造体における脱臭を適切に行うことができる。つまり、構造体に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い脱臭方法を提供することができる。
【0025】
ここで、請求項14の脱臭方法においても、ヒドロキシラジカル発生部材(20、21)としては、請求項15に記載の発明のように、ポリアニリンまたはポリアニリンの誘導体を採用することができ、具体的なポリアニリンとしては、請求項16に記載のようなものを採用することができる。
【0026】
また、請求項17に記載の発明では、ヒドロキシラジカル発生部材は絶縁部材(10〜12)の表面に形成された被膜(20)であることを特徴とする。
【0027】
それによれば、請求項4に記載の構造体を用いて、より脱臭能力の高い脱臭方法を提供することができる。
【0028】
また、請求項18に記載の発明では、ヒドロキシラジカル発生部材は絶縁部材(10、11)の表面もしくは内部に形成された粒子(21)であることを特徴とする。
【0029】
それによれば、請求項5に記載の構造体を用いて、より脱臭能力の高い脱臭方法を提供することができる。
【0030】
また、請求項19に記載の発明では、絶縁部材(10〜12)は樹脂、セラミックまたはガラスから選択される材料からなるものであることを特徴とする。
【0031】
それによれば、請求項6に記載の構造体を用いて、より脱臭能力の高い脱臭方法を提供することができる。
【0032】
また、請求項14〜請求項19に記載の脱臭方法においても、請求項20に記載の発明のように、絶縁部材を、膜状の絶縁膜(11、12)として金属基材(40)の表面に形成しても良い。それにより、請求項7に記載の構造体を用いて、より脱臭能力の高い脱臭方法を提供することができる。
【0033】
また、請求項14〜請求項16に記載の脱臭方法においても、請求項21に記載の発明のように、絶縁部材を金属基材(40)の表面に形成された絶縁膜とする場合、当該絶縁膜としては、金属基材の表面を化成処理することにより形成された電気絶縁性の材料からなる化成処理膜(12)を採用することができる。この場合も、ヒドロキシラジカル発生部材は当該化成処理膜の表面に形成された被膜(20)とする。
【0034】
この請求項21に記載の発明によれば、請求項8に記載の構造体を用いて、より脱臭能力の高い脱臭方法を提供することができる。
【0035】
また、請求項14〜請求項18に記載の脱臭方法においても、請求項22に記載の発明のように、絶縁部材を金属基材(40)の表面に形成された樹脂、セラミックまたはガラスから選択される材料からなる絶縁膜(11)とした場合、これら絶縁膜と金属基材との間に上記請求項8に記載のような化成処理膜(13)を中間層として介在させても良い。
【0036】
つまり、請求項22に記載の発明によれば、請求項9に記載の構造体を用いて、より脱臭能力の高い脱臭方法を提供することができる。
【0037】
ここで、請求項21、請求項22に記載の化成処理膜(12、13)も、請求項23に記載の発明のように、金属基材(40)の表面に対してリン酸亜鉛処理、リン酸チタン処理、クロメート処理、モリブデン酸系処理、塩化セレン系処理、およびシラン化合物処理のうち少なくとも1種類の化成処理を行って形成された膜とすることができる。そして、請求項10の構造体を用いて、より脱臭能力の高い脱臭方法を提供することができる。
【0038】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0039】
【発明の実施の形態】
本実施形態に用いるヒドロキシラジカル発生部材は、水と接触して水から電子を引き抜いてヒドロキシラジカルを発生するものでポリアニリンまたはポリアニリンの誘導体(以下、単にポリアニリンという)である。具体的なポリアニリンとしては、下記の化学式9〜化学式12で表されるポリアニリンのうち少なくとも1つを含む重合体である。
【0040】
【化9】
【0041】
【化10】
【0042】
【化11】
【0043】
【化12】
【0044】
ここで、上記化学式9ないし化学式12において、Aは塩素イオンや硫酸イオンなどの陰イオンを表し、nは2以上5000以下の範囲の整数を表し、xとyは、x+y=1および0≦y≦0.5を同時に満たす数である。
【0045】
なお、このようなヒドロキシラジカル発生部材としてのポリアニリンは、主としてヒドロキシラジカルを発生するが、それ以外にも、スーパーオキシドアニオンラジカルの不均化反応により生成する過酸化水素、さらに条件によっては一重項酸素、スーパーヒドロキシラジカルなどの活性酸素も生じる。
【0046】
ポリアニリンの活性酸素の発生メカニズムは、次のように推定される。つまり、ポリアニリンは水と接触して水から電子およびプロトンを奪い、ヒドロキシラジカルを発生させると同時に、ポリアニリン自身は還元される。さらに水中の溶存酸素に電子を与えて、スーパーオキシドアニオンラジカルを発生させると同時に、ポリアニリン自身は酸化される。こうして、ヒドロキシラジカルやスーパーオキシドアニオンラジカルなどの活性酸素を発生する。
【0047】
このヒドロキシラジカル発生部材は、樹脂、セラミックまたはガラスなどの電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁部材の表面もしくは内部に形成される。具体的には、ヒドロキシラジカル発生部材は、絶縁部材の表面に形成された被膜や絶縁部材の表面もしくは内部に形成された粒子の状態で形成される。
【0048】
図1〜図7は、絶縁部材10、11、12の表面もしくは内部にヒドロキシラジカル発生部材20、21を形成してなる本実施形態の構造体S1〜S7の種々の例を示す概略断面図である。これら各図においては、ヒドロキシラジカル発生部材20、21に接触する水30も示してある。
【0049】
[第1の例]
図1に示す第1の例としての構造体S1では、絶縁部材として構造体S1の本体を構成する絶縁基材10を用いている。この絶縁基材10は、樹脂、セラミックまたはガラスなどの電気的絶縁性を有する材料を成形加工するなどによって構造体S1の形状に形成されている。
【0050】
この絶縁基材10の表面にヒドロキシラジカル発生部材としてのポリアニリンからなる被膜20が形成されている。ポリアニリンからなる被膜20は、有機溶媒にポリアニリンを溶解させ、これを下地に塗布し、乾燥して硬化させるなどにより形成することができる。
【0051】
それによれば、被膜20が水30以外の導電性物質と接触しないようにすることができる。もし、金属のような導電性部材上に直接被膜20を形成すると、被膜20のポリアニリンは該導電性部材から電子を供与され、ポリアニリンが水から電子を奪う作用が阻害される。
【0052】
その点、本構造体S1によれば、被膜20のポリアニリンが実質的に水30のみから電子を供与される環境を作り出すことができ、ヒドロキシラジカルを効率的に発生させることができる。そして、発生したヒドロキシラジカルにより構造体S1に付着したにおい物質を分解して脱臭することができる。
【0053】
したがって、本例によれば、構造体S1に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い構造体S1を提供することができる。
【0054】
そして、本例によれば、この構造体S1を用いた脱臭方法として、被膜20を水30に接触させることによって発生したヒドロキシラジカルによって、構造体S1に付着したにおい物質を分解して酸化することを特徴とする脱臭方法が提供される。つまり、構造体S1に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い脱臭方法を提供することができる。
【0055】
[第2の例]
図2に示す第2の例としての構造体S2でも、絶縁部材としては上記第1の例と同様、構造体S2の本体を構成する絶縁基材10を用いている。しかし、本第2の例では、粒子状のポリアニリン成形体を絶縁基材10の材料に混入して成形するなどにより、絶縁基材10の内部および表面には、ヒドロキシラジカル発生部材としてポリアニリンからなる粒子21が設けられている。
【0056】
この第2の例においても、粒子21が水30以外の導電性物質と接触しないようにすることができる。そのため、粒子21のポリアニリンが実質的に水30のみから電子を供与される環境を作り出すことができ、ヒドロキシラジカルを効率的に発生させることができる。そして、発生したヒドロキシラジカルにより構造体S2に付着したにおい物質を分解して脱臭することができる。
【0057】
したがって、本例によっても上記第1の例と同様、構造体S2に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い構造体S2およびそれを用いた脱臭方法を提供することができる。
【0058】
[第3の例]
図3に示す第3の例としての構造体S3では、構造体S3の本体は金属基材40から構成され、絶縁部材はその金属基材40の表面に形成された絶縁被膜11である。そして、この絶縁被膜11の表面にヒドロキシラジカル発生部材としてのポリアニリンからなる被膜20が形成されている。
【0059】
ここで、絶縁被膜11は、金属基材40の表面に樹脂やガラスのペーストを塗布して硬化したり、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜などのセラミック膜をスパッタや蒸着などによって成膜することで形成される。
【0060】
この第3の例においても、被膜20は金属基材40とは絶縁被膜11を介して電気的に絶縁されるため、水30以外の導電性物質と接触しない。そのため、被膜20のポリアニリンが実質的に水30のみから電子を供与される環境を作り出すことができ、ヒドロキシラジカルを効率的に発生させることができる。そして、発生したヒドロキシラジカルにより構造体S3に付着したにおい物質を分解して脱臭することができる。
【0061】
したがって、本例によっても上記第1の例と同様、構造体S3に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い構造体S3およびそれを用いた脱臭方法を提供することができる。
【0062】
[第4の例]
図4に示す第4の例としての構造体S4では、構造体S4の本体は金属基材40から構成されており、その表面に絶縁被膜11を設けているが、本第4の例では、粒子状のポリアニリン成形体を絶縁被膜11の材料に混入して絶縁被膜11を成膜するなどにより、絶縁被膜11の内部および表面に、ポリアニリンからなる粒子21が設けられている。
【0063】
このような粒子21を含む絶縁被膜11は、ポリアニリン粒子を含む樹脂やガラスなどのペーストあるいは溶液を下地(金属基材11)上に塗布して、硬化させることにより形成することができる。
【0064】
そして、本例によっても上記第1の例と同様、構造体S4に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い構造体S4およびそれを用いた脱臭方法を提供することができる。
【0065】
[第5の例]
図5に示す第5の例としての構造体S5では、構造体S5の本体は金属基材40から構成され、絶縁部材はその金属基材40の表面に形成された絶縁被膜12である。そして、この絶縁被膜12の表面にヒドロキシラジカル発生部材としてのポリアニリンからなる被膜20が形成されている。
【0066】
ここで、本例特有の構成として、絶縁被膜12を、金属基材40の表面に対して、当該表面を化成処理することにより形成された電気絶縁性の材料からなる化成処理膜12としている。
【0067】
ここで、上記の化成処理は、リン酸亜鉛処理、リン酸チタン処理、クロメート処理、モリブデン酸系処理、塩化セレン系処理、およびシラン化合物処理のうちから選択される少なくとも1種類の処理である。
【0068】
これらの処理は通常の金属表面に行われる化成処理であり、それにより形成される化成処理膜12は多少物理的欠陥が発生して電気的なリークが生じる場合があるが、本実施形態の絶縁部材として電子の移動を阻止または抑制するには十分な機能を有する。
【0069】
つまり、この第5の例においても、被膜20は金属基材40とは化成処理膜12を介して実質的に電気的に絶縁されるため、水30以外の導電性物質と接触しない。そのため、被膜20のポリアニリンが実質的に水30のみから電子を供与される環境を作り出すことができ、ヒドロキシラジカルを効率的に発生させることができる。そして、発生したヒドロキシラジカルにより構造体S5に付着したにおい物質を分解して脱臭することができる。
【0070】
したがって、本例によっても上記第1の例と同様、構造体S5に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い構造体S5およびそれを用いた脱臭方法を提供することができる。
【0071】
[第6の例]
図6に示す第6の例としての構造体S6は、上記第4の例としての構造体S4(図4参照)において、絶縁被膜11と金属基材40との間に、金属基材40の表面に対して当該表面を化成処理することにより形成された電気絶縁性の材料からなる化成処理膜13を中間層として介在させたものである。この化成処理膜13は上記第5の例の化成処理膜と同様のものにできる。
【0072】
[第7の例]
図7に示す第7の例としての構造体S7は、上記第3の例としての構造体S3(図3参照)において、絶縁被膜11と金属基材40との間に化成処理膜13を中間層として介在させたものである。
【0073】
これら第6および第7の例によっても、上記第1の例と同様、構造体S6、S7に付着したにおい物質を分解して脱臭するにあたって、より脱臭能力の高い構造体S6、S7およびそれを用いた脱臭方法を提供することができる。
【0074】
次に、本実施形態について、以下の具体例を参照してより具体的に説明する。なお、以下の具体例により、本実施形態は限定されるものではない。
【0075】
まず、本実施形態で用いられる、ヒドロキシラジカル発生部材としてのポリアニリンの合成方法、合成されたポリアニリンによる活性酸素(ヒドロキシラジカル、スーパーオキシドアニオンラジカルラジカルおよび過酸化水素)の発生の検証、および有機物質の分解性能の検証、さらには具体的な構造体への適用について一例を示す。
【0076】
[ポリアニリンの合成方法1]
氷冷浴中で十分に冷却した過硫酸アンモニウム12gを含む1モル塩酸水溶液50mlを、同じく冷却したアニリンを約2.8g含む1モル塩酸水溶液300mlに徐々に添加し、冷却を続けながら1時間30分撹拌した。溶液は無色から緑青色に変化し、上記化学式9にて陰イオンAが塩素イオンである塩酸ドープ型のポリアニリンが生成した。
【0077】
上記方法により生じた生成物を吸引ろ過し、1モル塩酸水溶液とアセトンでよく洗浄した。次に、これを28%アンモニア水に懸濁し、5分間撹拌することで、上記化学式10で示される脱ドープ型のポリアニリンが得られた。
【0078】
次に、この方法により合成されたポリアニリンを用いた場合の、活性酸素としてのヒドロキシラジカル、スーパーオキシドアニオンラジカル、およびスーパーオキシドアニオンラジカルが変化して発生する過酸化水素の発生について調べた。
【0079】
[ヒドロキシラジカル(・OH)の検出]
ヒドロキシラジカルの検出は、p−ニトロソジメチルアニリン法を用いて行った。上記合成方法1で得られた脱ドープ型のポリアニリン粉末を、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)に1%溶解し、これをガラス板上に20μl滴下した。滴下したガラス板を100℃のホットプレートで乾燥させ、ガラス板上にポリアニリン膜を形成し、1M塩酸に浸漬し塩酸ドープ型とした。
【0080】
これを波長440nmの吸光度(A440)が0.5になるようにリン酸バッファー(pH6.86)を用いて調整したp−ニトロンジメチルアニリン溶液に浸した。そして、この溶液中にてヒドロキシラジカルとp−ニトロソジメチルアニリンが反応して、溶液の黄色が退色するのを、上記440nmのピークの減少より追跡した。
【0081】
その結果を図8に示す。図8中、「ガラスのみ」はガラス板のみのもの、「ポリアニリン」はガラス板(絶縁部材)の表面にポリアニリン膜(ヒドロキシラジカル発生部材)を形成したものである。
【0082】
ガラス板のみのものは440nmの吸光度(A440)が浸漬時間と共にほとんど減少しないが、ガラス板の表面にポリアニリンを形成したものは、吸光度(A440)が浸漬時間と共に減少していった。この結果から、ポリアニリンにより水が酸化され、確実にヒドロキシラジカルが生成されていることがわかった。
【0083】
[スーパーオキシドアニオンラジカル(・O2 −)の検出]
スーパーオキシドアニオンラジカルの検出はルミネッセンサーAB−2100(アトー製)を用いた。上記合成方法1で得られた脱ドープ型のポリアニリン粉末を、上記ルミネッセンサーに付属の黒色の96ウェルプレート(以下、単にウェルプレートという)に適量計量した。
【0084】
そして、上記ルミネッセンサー用のオプションポンプを用いて、pH7.0の25mMイミダゾール緩衝液(pH7.0)を、上記ウェルプレート内に100μl注入した。
【0085】
その後、ただちにルミネッセンサーの標準ポンプを用いて、スーパーオキシドアニオンラジカルによって特異的に発光するTDPO−Pyren溶液を100μl、ウェルプレート内に注入して発光量を計測し、スーパーオキシドアニオンラジカルの発生量をこの発光量として求めた。発光量はポリアニリンの上記ウェルプレートへの添加量を変化させて測定した。
【0086】
その結果を図9に示した。この結果から、ポリアニリンの添加量が増加するにつれて発光量が増加していることが確認された。したがって、ポリアニリンにより上記イミダゾール緩衝液中の溶存酸素が活性化され、確実にスーパーオキシドアニオンラジカルが生成されていることがわかった。
【0087】
[過酸化水素の検出]
上記ポリアニリンの合成方法1で得られたポリアニリン粉末を適量100mlビーカーに計り取り、純水を10ml添加して撹拌した。撹拌時間は10分、1時間、24時間とし、ポリアニリンの濃度を変化させて過酸化水素の濃度を測定した。
【0088】
そして、上記純水中において発生した活性酸素の量を、過酸化水素の生成量を指標として調べた。このように過酸化水素を指標としたのは、不均化反応によりスーパーオキシドアニオンラジカルから過酸化水素が生成するという原理にもとづくものである。過酸化水素の定量は、ペルオキシダーゼ酵素法で行った。
【0089】
この結果を図10に示した。この結果から、ポリアニリンの添加量(濃度:重量%)を多くするほど、過酸化水素濃度が高くなることが確認された。したがって、この結果からも、上記したヒドロキシラジカルおよびスーパーオキシドアニオンラジカルの検出結果と同様に、ポリアニリンにより水が酸化され、また、ポリアニリンにより水中の溶存酸素が活性化され、確実にヒドロキシラジカルおよびスーパーオキシドアニオンラジカルが生成されていることがわかった。
【0090】
また、撹拌時間を長くすると過酸化水素濃度が高くなることも確認され、長時間にわたって活性酸素を発生させる能力を維持することがわかった。なお、24時間撹拌した場合に、10分撹拌させた場合よりも、過酸化水素濃度が低下したのは、発生した過酸化水素がスーパーオキシドアニオンラジカルと反応して消失したためと考えられる。
【0091】
[活性酸素発生挙動の確認]
つぎに、上記合成方法1で得られたポリアニリン粉末(上記化学式10のもの)をNMPに溶かした溶液を用いて、アルミ片(10mm×10mm)の表面に直接ポリアニリンを成膜したものと、アルミ片の表面に化成処理を施して化成処理膜を形成し該化成処理膜の表面にポリアニリンを成膜したものとを作製した。
【0092】
ここで、化成処理はリン酸チタン処理を行った。化成処理を行わないものは金属基材としてのアルミ片の表面にヒドロキシラジカル発生部材としてのポリアニリン膜が形成されたものであり、化成処理を行ったものは、これらアルミ片とポリアニリン膜との間に絶縁部材としての化成処理膜であるリン酸チタン被膜が介在したものである。
【0093】
これら化成処理を行わないもの(リン酸チタン被膜なし)と化成処理を行ったもの(リン酸チタン被膜あり)の両者について、活性酸素発生挙動を比較した。両場合において、ポリアニリン膜は成膜後0.5M硫酸に浸漬して硫酸ドープ型とした。つまり、上記化学式9において陰イオンAが硫酸イオンであるものとした。
【0094】
過酸化水素およびヒドロキシラジカルの検出は上記方法と同様にして、スーパーオキシドアニオンラジカルの発生指標となる過酸化水素の量、およびヒドロキシラジカルの発生指標となるp−ニトロソジメチルアニリンの吸光度(A440)の減少量について測定した。なお、各検出における水(溶液)への浸漬時間は5時間とした。
【0095】
その結果を図11に示す。図11中、(a)ではスーパーオキシドアニオンラジカル発生能力としての過酸化水素発生能力を示す過酸化水素発生量の測定結果を示し、(b)ではヒドロキシラジカル発生能力としての上記吸光度(A440)の減少量の測定結果を示す。
【0096】
図11からわかるように、ポリアニリンとアルミが直接接触している「リン酸チタン被膜なし」の場合は、ポリアニリンはアルミから移動した電子を酸素に供給して、スーパーオキシドを発生させ、スーパーオキシドアニオンラジカルの不均化反応により、過酸化水素の方がより多く発生している。
【0097】
それに対し、ポリアニリンとアルミの間にリン酸チタンを設けた「リン酸チタン被膜あり」の場合は、過酸化水素の発生量は少ないものの、脱臭に効果のあるヒドロキシラジカルは、2倍以上多く発生していることがわかる。
【0098】
つまり、水以外の導電性物質とポリアニリンとの接触による電子の移動を抑制すると、ポリアニリンは水を酸化して、ヒドロキシラジカルを優先的に発生させることがわかった。なお、上記したガラス板にポリアニリンを形成した場合も、この「リン酸チタン被膜あり」の場合と同様、ヒドロキシラジカルの発生量は多かった。
【0099】
ちなみに、「リン酸チタン被膜なし」でもヒドロキシラジカルが発生しているが、これは、ポリアニリンから水中の溶存酸素へ電子が付与されて発生したスーパーオキシドアニオンラジカルが、条件によって過酸化水素と反応してヒドロキシラジカルとなったことによるものと考えられる。
【0100】
[熱交換器への適用例]
次に、このような、ポリアニリンからなるヒドロキシラジカル発生部材を備える構造体およびそれを用いた脱臭方法について述べる。ここでは、構造体を自動車用のエアコンの熱交換器に適用した例について述べる。図12はその熱交換器の一例を示す斜視図である。
【0101】
この熱交換器1は、図の上下方向を上下にして、図示しない自動車用の空調装置のクーリングユニット内に設置されている。そして、この熱交換器1は、外部空気と接触して熱交換する機能を有するもので、その内部にフロンなどの熱交換流体としての冷媒が循環する蒸発器である。
【0102】
熱交換器1の左右方向の一端側には配管ジョイント2が配置されている。また、多数のチューブ3が並列配置され、このチューブ3内の冷媒通路を流れる冷媒とチューブ3の外部を流れる空気とを熱交換させる熱交換部4を備えている。
【0103】
この熱交換部4において、隣接するチューブ3の外面側相互の間隙に放熱フィン5を接合して空気側の伝熱面積の増大を図っている。また、このチューブ3の上部および下部はタンク6と連通されており、冷媒が各々のチューブ3およびタンク6を循環し、配管ジョイント2を介して、熱交換器1の外部と流出入している。
【0104】
このような構成の熱交換器1における、熱交換部4へのポリアニリンの担持の形態は上記図1から図7に示す各例を採用することができる。すなわち、熱交換部4を樹脂やセラミック、ガラスなどの電気絶縁性材料で成形加工したり、熱交換部4を金属基材で成形し、その表面に樹脂や化成処理膜などの絶縁膜を形成する。
【0105】
そして、図1から図7に示した形態にて、熱交換部における絶縁部材にポリアニリンからなる被膜や粒子を設ける。ここで、ポリアニリンを熱交換部4へ被膜として担持させる方法の一例について述べる。
【0106】
まず、ポリアニリンを、例えばNMPなどの適当な有機溶媒に溶解させる。次に、熱交換器1における熱交換部4に対して、この液体を塗布し、乾燥する。その後、0.5M硫酸に浸漬し、ポリアニリンを硫酸ドープ型とする。このようにして、ヒドロキシラジカル発生部材としてのポリアニリンからなる被膜が熱交換部4に担持される。
【0107】
そして、エアコン稼動時には、図12中矢印Aで示される水蒸気を含んだ外部空気7が、車両方向から熱交換器1を通過する。この際に、熱交換部4とこの空気7が接触すると、熱交換によって空気7の露点が下がり、空気7中に含まれる水蒸気が水滴となって熱交換部4に凝縮水として生成する。
【0108】
この凝縮水は上記図1〜図7に示される水30に相当する。そして、熱交換部4の表面に生成した凝縮水と熱交換部4に形成されたポリアニリンからなる被膜あるいはポリアニリンからなる粒子とが接触する。
【0109】
すると、ポリアニリンが凝縮水以外の導電性物質との接触を断たれた状態においては、例えば上記図1に示すように、ポリアニリンが凝縮水(H2O)を酸化して、優先的にヒドロキシラジカル(・OH)を生成する。そして、このヒドロキシラジカルが熱交換部4に付着したにおい物質、汚れ、微生物などの有機物を分解して酸化する。
【0110】
その結果、図12中矢印Bで示される熱交換器1を通過した空気は、完全に脱臭され殺菌されたものとなり、クリーンな空気が車両内の空気吹き出し口から排出されるとともに、不快なにおいを抑制することができる。
【0111】
ところで、この脱臭は、凝縮水以外の導電性物質とポリアニリンとの接触による電子の移動を阻止または抑制することで、ポリアニリンが凝縮水から電子を奪い、酸化力の強いヒドロキシラジカルが発生されて行われるものである。
【0112】
つまり、ポリアニリンは凝縮水から電子を奪い、ヒドロキシラジカルを発生させると同時に、ポリアニリン自身は還元される。さらに凝縮水中の溶存酸素に電子を与えて、スーパーオキシドアニオンラジカルを発生させると同時に、ポリアニリン自身は酸化される。このように、ポリアニリンは、酸化と還元を繰り返すことで触媒的に働くので、活性酸素発生能力は長期にわたって維持される。
【0113】
また、この活性酸素の発生は、ポリアニリンと凝縮水とが接触することにより行われるものである。そのため、エアコンの停止時などの熱交換器1が稼動していないときは、熱交換器1を通過する空気7により凝縮水が蒸発して、熱交換部4すなわちポリアニリン自体が乾燥することから、活性酸素の発生が自動的に停止される。
【0114】
さらに、ポリアニリンは、乾燥させると活性酸素の発生能力が再生される(特開平9−175801号公報参照)ため、熱交換部4の乾燥によりポリアニリンも乾燥し、活性酸素の発生能力が回復して繰り返し使用することができる。
【0115】
なお、ポリアニリンの熱交換部4への担持方法は、上記NMP溶液を用いた方法に限定されるものではない。たとえば、ポリアニリンと適当なバインダや架橋剤との混合液体に熱交換部4を浸潰したり、この混合液体をスプレーしたりする。このようにしてポリアニリンを担持することも可能である。
【0116】
次に、ポリアニリンの脱臭・分解性能について、絶縁部材として電気絶縁性のハニカム形状の部材にポリアニリンを形成して調査した結果を示す。まず、この脱臭・分解性能の測定に用いたポリアニリンの合成方法について示す。
【0117】
[ポリアニリンの合成方法2]
電気絶縁性のアルミナ製ハニカム(30×30×10mm)を、冷却したアニリン0.1モルおよび塩酸1モルを含む水溶液30mlに浸潰した。その後、この水溶液に対して、同じく冷却した過硫酸アンモニウム1.2gを含む1モル塩酸水溶液5mlを添加し、約1時間冷却しながら放置した。
【0118】
以上の工程により、アルミナ製ハニカムの細孔内部および表面に、上記化学式9で示される塩酸ドープ型のポリアニリンを合成した。そして、このハニカムを純水でよく洗浄した後、1重量%炭酸ナトリウム水溶液に浸漬し、上記化学式10で示されるポリアニリンとした。なお、ハニカム表面に付着した余分なポリアニリンはエアガンを用いて除去した。
【0119】
この合成方法によるポリアニリンの担持量は約0.2gであった。次に、このポリアニリンの脱臭・分解性能について示す。
【0120】
[脱臭・分解性能]
上記合成方法2で得られたポリアニリンを担持した絶縁性のアルミナ製ハニカムを10L(リットル)の臭気分析用テドラーバッグに入れ、このテドラーバッグの中に、酸素で10ppmに調製した臭気成分としてのメチルメルカプタンガスを10L注入した。
【0121】
そして、上記テドラーバッグのガスサンプリング口から、注射器を使ってポリアニリンを担持した上記ハニカムに対して水を噴霧し、メチルメルカプタンガスの濃度と酸化物の生成を経時的にガスクロマトグラフィーを用いて分析した。その結果を図13に示す。
【0122】
図13において、横軸は経過時間(分)を示し、縦軸は、メチルメルカプタンの濃度をガスクロマトグラフィーの検出ピーク面積として示している。また、丸、三角で示されるプロットは比較例であり、それぞれ、ポリアニリンを担持していないハニカムに水を噴霧した結果、ポリアニリンを担持させたハニカムに水を噴霧しなかったものの結果である。
【0123】
この結果から、ポリアニリンに水を噴霧すると、メチルメルカプタンは時間と共に確実に脱臭されることが確認できる。したがって、ポリアニリンを電気絶縁性を有する絶縁部材としてのハニカムに形成した場合、水との接触によってヒドロキシラジカルを発生し、脱臭性能を発揮できることが確認できた。
【0124】
[空気清浄器への適用例]
上記したポリアニリンを担持した構造体としてのハニカムは、例えば次のような空気清浄装置(エアピュリファイア)に適用することができる。このハニカム構造体を車載用の空気清浄器に適用した例を述べる。図14は、その空気清浄器の概略断面図である。
【0125】
この空気清浄器は、自動車の天井パッケージトレーに組み付けられる空気清浄器を模式的に示している。この空気清浄器は、内部に空気通路100aを形成するポリプロピレンなどの樹脂ケース100を備えている。
【0126】
このケース100内において空気通路100aの空気流れ上流側には、車室内空気を導入する吸入口101が形成され、一方、空気流れ下流側には、導入空気を車室内に排出する排出口102が形成されている。
【0127】
また、ケース100内において、吸入口101よりも空気流れ下流側の空気通路100aには、空気流を発生させるファン103が配設されている。このファン103は、回転軸方向から空気を吸入して径外方へ向けて吹き出す遠心式のファンであり、モータ103aによって回転駆動される。
【0128】
そして、ケース100内においてファン103よりも空気流れ下流側の空気通路100aには、当該空気通路100aを遮るように、脱臭を行うためのポリアニリンを担持したハニカムからなる脱臭構造体104が配設されている。また、ファン103よりも空気流れ下流側の空気通路100aには、脱臭構造体104に水蒸気を供給するための加湿ノズル105が配設されている。
【0129】
このような空気清浄器においては、加湿ノズル105を通じて水蒸気が噴霧されると、脱臭構造体104の表面に水が付着する。つまり、脱臭構造体104のポリアニリンが水と接触する。
【0130】
そして、ポリアニリンが水を酸化して優先的にヒドロキシラジカルを生成することにより、脱臭構造体104に付着したにおい物質を分解し、酸化する。その結果、脱臭構造体104を通過した空気は、脱臭されクリーンな空気が排出口102から車室内に排出される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の第1の例としての構造体の概略断面図である。
【図2】上記実施形態の第2の例としての構造体の概略断面図である。
【図3】上記実施形態の第3の例としての構造体の概略断面図である。
【図4】上記実施形態の第4の例としての構造体の概略断面図である。
【図5】上記実施形態の第5の例としての構造体の概略断面図である。
【図6】上記実施形態の第6の例としての構造体の概略断面図である。
【図7】上記実施形態の第7の例としての構造体の概略断面図である。
【図8】上記実施形態におけるヒドロキシラジカルの検出結果を示す図である。
【図9】上記実施形態におけるスーパーオキシドアニオンラジカルの検出結果を示す図である。
【図10】上記実施形態における過酸化水素の検出結果を示す図である。
【図11】上記実施形態における絶縁部材としての化成処理膜の効果を示す図である。
【図12】上記実施形態の構造体を適用した熱交換器の斜視図である。
【図13】水と接触した場合の脱臭効果を調べた結果を示す図である。
【図14】上記実施形態の構造体を適用した空気清浄器の概略断面図である。
【符号の説明】
1…熱交換器、7…外部空気、10…絶縁基材、11…絶縁被膜、
12、13…化成処理膜、20…被膜、21…粒子、40…金属基材、
104…脱臭構造体、S1〜S7…構造体。
Claims (26)
- 電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁部材(10、11、12)と、
前記絶縁部材の表面もしくは内部に形成され、水と接触して水から電子を引き抜いてヒドロキシラジカルを発生するヒドロキシラジカル発生部材(20、21)とを備えることを特徴とする構造体。 - 前記ヒドロキシラジカル発生部材(20、21)はポリアニリンまたはポリアニリンの誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の構造体。
- 前記ヒドロキシラジカル発生部材は前記絶縁部材(10〜12)の表面に形成された被膜(20)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の構造体。
- 前記ヒドロキシラジカル発生部材は前記絶縁部材(10、11)の表面もしくは内部に形成された粒子(21)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の構造体。
- 前記絶縁部材(10〜12)は樹脂、セラミックまたはガラスから選択される材料からなるものであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の構造体。
- 前記絶縁部材は金属基材(40)の表面に形成された絶縁膜(11、12)であることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一つに記載の構造体。
- 前記絶縁部材は金属基材(40)の表面に対して、当該表面を化成処理することにより形成された電気絶縁性の材料からなる化成処理膜(12)であり、
前記ヒドロキシラジカル発生部材は前記化成処理膜の表面に形成された被膜(20)であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一つに記載の構造体。 - 前記絶縁部材は金属基材(40)の表面に形成された樹脂、セラミックまたはガラスから選択される材料からなる絶縁膜(11)であり、
前記絶縁膜と前記金属基材との間には、前記金属基材の表面に対して当該表面を化成処理することにより形成された電気絶縁性の材料からなる化成処理膜(13)が介在していることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一つに記載の構造体。 - 前記化成処理膜(12、13)を形成するために前記金属基材(40)の表面に対して行う前記化成処理は、リン酸亜鉛処理、リン酸チタン処理、クロメート処理、モリブデン酸系処理、塩化セレン系処理、およびシラン化合物処理のうち少なくとも1種類の処理であることを特徴とする請求項8または9に記載の構造体。
- 外部空気(7)と接触して熱交換する機能を有する熱交換器(1)として用いられることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか一つに記載の構造体。
- 前記ヒドロキシラジカル発生部材(20、21)と接触する水が、前記外部空気(7)との熱交換によって生成した凝縮水(30)であることを特徴とする請求項11に記載の構造体。
- 前記熱交換器(1)はその内部に熱交換流体が循環する蒸発器であることを特徴とする請求項11または12に記載の構造体。
- 電気的絶縁性を有する材料からなる絶縁部材(10、11、12)の表面もしくは内部に、水から電子を引き抜いてヒドロキシラジカルを発生するヒドロキシラジカル発生部材(20、21)を形成してなる構造体(1、104、S1〜S7)を用いた脱臭方法であって、
前記ヒドロキシラジカル発生部材を水に接触させることにより発生したヒドロキシラジカルによって、前記構造体に付着したにおい物質を分解して酸化することを特徴とする脱臭方法。 - 前記ヒドロキシラジカル発生部材(20、21)としてポリアニリンまたはポリアニリンの誘導体を用いることを特徴とする請求項14に記載の脱臭方法。
- 前記ヒドロキシラジカル発生部材は前記絶縁部材(10〜12)の表面に形成された被膜(20)であることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか一つに記載の脱臭方法。
- 前記ヒドロキシラジカル発生部材は前記絶縁部材(10、11)の表面もしくは内部に形成された粒子(21)であることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか一つに記載の脱臭方法。
- 前記絶縁部材(10〜12)は樹脂、セラミックまたはガラスから選択される材料からなるものであることを特徴とする請求項14ないし18のいずれか一つに記載の脱臭方法。
- 前記絶縁部材は金属基材(40)の表面に形成された絶縁膜(11、12)であることを特徴とする請求項14ないし19のいずれか一つに記載の脱臭方法。
- 前記絶縁部材は金属基材(40)の表面に対して、当該表面を化成処理することにより形成された電気絶縁性の材料からなる化成処理膜(12)であり、
前記ヒドロキシラジカル発生部材は前記化成処理膜の表面に形成された被膜(20)であることを特徴とする請求項14ないし16のいずれか一つに記載の脱臭方法。 - 前記絶縁部材は金属基材(40)の表面に形成された樹脂、セラミックまたはガラスから選択される材料からなる絶縁膜(11)であり、前記絶縁膜と前記金属基材との間には、前記金属基材の表面に対して当該表面を化成処理することにより形成された電気絶縁性の材料からなる化成処理膜(13)が介在していることを特徴とする請求項14ないし18のいずれか一つに記載の脱臭方法。
- 前記化成処理膜(12、13)を形成するために前記金属基材(40)の表面に対して行う前記化成処理は、リン酸亜鉛処理、リン酸チタン処理、クロメート処理、モリブデン酸系処理、塩化セレン系処理、およびシラン化合物処理のうち少なくとも1種類の処理であることを特徴とする請求項21または22に記載の脱臭方法。
- 前記構造体が外部空気(7)と接触して熱交換する機能を有する熱交換器(1)として用いられるものであることを特徴とする請求項14ないし23のいずれか一つに記載の脱臭方法。
- 前記ヒドロキシラジカル発生部材(20、21)と接触する水として、前記外部空気(7)との熱交換によって生成した凝縮水(30)を用いることを特徴とする請求項24に記載の脱臭方法。
- 前記熱交換器(1)はその内部に熱交換流体が循環する蒸発器であることを特徴とする請求項24または25に記載の脱臭方法。
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