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JP2008064343A - 熱交換器 - Google Patents

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Abstract

【課題】臭気物質の分解脱臭機能、有害微生物の殺菌機能を有するフィン付きチューブを備えた熱交換器を提供すること。
【解決手段】チューブ及び(又は)フィンを構成する基体の最表面の少なくとも一部に、それに接触せしめられる外気中の水分と反応して活性酸素又は過酸化水素を発生可能なポリアニリン及び(又は)その誘導体からなる表面ポリアニリン層を設けるとともに、その表面ポリアニリン層において、ベンゼノイド/キノイド比(ポリアニリン及び(又は)その誘導体におけるベンゼノイド構造とキノイド構造の吸光度比として定義される)は、0.5〜3.0の範囲にあるように構成する。
【選択図】図3

Description

本発明は、熱交換器に関し、さらに詳しく述べると、カーエアコン、エアコンのようにフィン、プレート等の熱交換部材を備えたチューブを有し、耐久性、例えば耐水性や耐薬品性などを有することに加えて、フィン、プレート等の熱交換部材、さらにはチューブの表面に付着した臭気物質の分解脱臭機能、有害微生物の殺菌機能を有する、新規な熱交換器に関する。本発明の熱交換器は、特に、そのチューブやフィン、プレート等の熱交換部材の表面にポリアニリンを用いることで、脱臭もしくは殺菌を行う過酸化水素や活性酸素を効率よく発生させることができる。
過酸化水素は、単独の効果や過酸化水素を鉄イオンなどと接触させることによって、・OHなどの活性酸素が発生することがわかっており、塩素、オゾン、紫外線、光触媒などと共に確実な効果が期待できるために、各分野において殺菌、消毒用として使用されている。
これまで、過酸化水素の発生方法として、ポリアニリンを接触させる方法などが知られている。例えば、特許文献1は、水中等に生息する微生物等を殺菌するのに有用な活性酸素を発生可能な、ポリアニリンを含有する活性酸素発生剤と、それを用いた活性酸素発生方法を記載している。また、特許文献2は、飲料水、冷却水等の用水を殺菌するためのものであって、用水中に、陰極と、表面にポリアニリンを接触させた陰極とを配置して、両電極間に通電を行うことにより生成するスーパーオキシドを殺菌に利用する方法と、この殺菌方法に用いる用水処理装置を記載している。さらに、特許文献3は、水中において活性酸素を発生させるためのものであって、導電性物質の表面に、導電性物質の粉末及び(又は)繊維、バインダ及びポリアニリンからなる導電性組成物の被覆を施し、この被覆を陰極として通電を行うことによりスーパーオキシドアニオンラジカルを発生させることを記載している。
さらに、活性酸素発生装置が特許文献4に記載されている。この活性酸素発生装置は、陽極と、活性酸素発生能を有するレドックスポリマー、例えばポリアニリン又はその誘導体を担持する陰極とを備え、両電極の間に、液通過性又は液浸透性で厚さ0.005〜5mmの範囲のスペーサを介在させたことを特徴とする。また、特許文献5は、電極と、活性酸素発生能を有するレドックスポリマー、例えばポリアニリン又はその誘導体を表面に担持した粒子とを有することを特徴とする活性酸素発生装置を記載している。
さらに加えて、特許文献6は、腐食保護された金属材料の製造方法及びこの方法によって得られる材料を記載している。さらに詳しくは、特許文献6は、(a)固有導電性で吸水性のポリマー、好ましくはポリアニリンを、非電気化学的方法によって、金属材料、例えばリン酸塩処理した金属材料又は既に腐食された金属材料、例えば鋼、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、青銅又は他の合金上に形成し、(b)前記工程によって被覆された金属材料を酸素含有水を含有する受動態化媒体と少なくとも30秒間接触させ、そして(c)、必要に応じて、2次受動化処理を行い、さらに(d)、必要ならば、導電性のポリマーの層を除去し、(e)、必要ならば、腐食保護膜を金属材料に施す、ことを特徴とする金属材料の製造方法にある。なお、この発明の究極の目的は、金属材料の表面における受動態化膜の形成による腐食からの保護であり、工程(a)において形成される吸水性のポリマー、好ましくはポリアニリンは、工程(d)において除去することも可能である。
特開平9−175801号公報 特開平10−99863号公報 特開平10−316403号公報 特開平11−79708号公報 特開平11−158675号公報 特表平8−500700号公報
本発明の目的は、カーエアコン、エアコンのようにチューブやフィンを有する熱交換器において、優れた耐久性を保証するとともに、そのチューブやフィンの表面に付着した臭気物質の分解脱臭機能、有害微生物の殺菌機能を有するばかりでなく、その分解脱臭機能及び殺菌機能を低下させることなく、基本性能をそのまま維持できる新規な熱交換器を提供することにある。
本発明者らは、上記したようなポリアニリンは、それに湿気やその他の水分が接触したときに過酸化水素を発生することができるという事実に着目し、さらには、過酸化水素を発生するポリアニリンの能力を効率よく、長期的に維持する方法及びそれを利用した装置を開発するために検討を重ねた結果、ポリアニリンから過酸化水素由来の活性酸素を多量に発生させた後に、その活計酸素発生能が低下するという知見を得、その知見に基いて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、活性酸素を発生しやすいポリアニリンの構造を選定し、活性酸素発生能を高めようというものである。ポリアニリンは、一般的に、ベンゼノイド構造とキノイド構造がそのポリアニリン分子中においてほぼ1:1の割合で存在するときが活性酸素を発生する能力が高いと考えられる。しかし、加速試験として、ポリアニリンを陰極として通電していくと、キノイド構造の比が高くなり、活性酸素発生能が低下していくことが分かった。よって、永続的に活性酸素を発生させるためには、キノイド構造とベンゼノイド構造の比をコントロールする必要がある。この比は、1:1が理想であるが、1:2までは十分な活性酸素を発生する。よって、本発明は、ポリアニリンから永続的に活性酸素を発生させるために、成膜時もしくは劣化発見時にポリアニリンの構造を吸光度比より制御することを特徴とする活性酸素の発生方法及び活性酸素発生機能を有する熱交換器を提供するものである。
要するに、本発明は、フィン付きチューブを備えた熱交換器において、
前記チューブ及び(又は)フィンは、少なくとも、基体と、その基体の最表面の少なくとも一部に形成された表面被膜とからなり、
前記表面被膜は、それに接触せしめられる外気(以下、「外部雰囲気」ともいう)中の水分と反応して活性酸素又は過酸化水素を発生可能なポリアニリン及び(又は)その誘導体からなる表面ポリアニリン層でありかつ
前記表面ポリアニリン層において、ベンゼノイド/キノイド比(ポリアニリン及び(又は)その誘導体におけるベンゼノイド構造とキノイド構造の吸光度比として定義される)は、約0.5〜3.0の範囲にある
ことを特徴とする熱交換器にある。
また、本発明は、そのもう1つの面において、前記表面ポリアニリン層において、前記ベンゼノイド/キノイド比が約0.5〜3.0の設定範囲を外れたときに、前記ベンゼノイド/キノイド比を設定範囲内に戻すための手段をさらに有している。このベンゼノイド/キノイド比復帰手段は、好ましくは、前記ポリアニリン及び(又は)その誘導体を構成するベンゼノイド構造をキノイド構造に転化するかもしくはキノイド構造をベンゼノイド構造に転化する構造転化手段をさらに備えている。
本発明による熱交換器では、上記した構成を採用した結果、臭気成分または細菌は、接触面積の大きい熱交換器に強固に成膜されたポリアニリン及び(又は)その誘導体が発生する活性酸素の酸化作用により常温で分解または殺菌され、よって、熱交換器の水濡性能を損ねることなく、臭気成分または細菌が、臭気の発生源あるいは細菌の成長源となることを長期にわたり防ぐことができる。
実際に、本発明によれば、以下の詳細な説明から理解されるように、フィン、プレート等の熱交換部材を備えたチューブを含んでいる熱交換器において、優れた耐久性、例えば耐水性や耐薬品性などが得られることはもちろんのこと、表面ポリアニリン層のベンゼノイドとキノイドの構造比を保つことで、成膜後や使用後のポリアニリンの活性酸素発生能力を低下させることなく、付着臭を抑制でき、熱交換器の基本性能を維持させることができる。よって、本発明は、車両に搭載されるカーエアコンや、エアコン、ラジエータ、その他の熱交換器において有利に利用することができる。
本発明は、熱交換器、特に過酸化酸素発生型の熱交換器にあり、いろいろな形で有利に実施することができる。なお、本発明の熱交換器は、以下に記載する形態に限定されるわけではない。
本発明の熱交換器は、フィン(翼体)、プレート等の熱交換部材(以下、まとめて「フィン」という)の付いたチューブを備えたものであり、いろいろな形態を包含することができる。すなわち、かかる熱交換器において熱交換効率の向上を目的として使用される熱交換部材は、フィン、プレート等のいろいろな形態を包含し、かつ表面積の大きな部材からなるのが好ましく、また、通常、以下において基体の項で説明するが、軽量な金属材料から形成するのが好ましい。フィンのサイズは、もちろん、所望とする効果などに応じて任意に変更可能である。
フィンが付設されるチューブも、いろいろな形態を包含することができる。例えば、チューブは、円形断面を有するものであってもよく、矩形断面を有するものであってもよく、押し潰された円形などの扁平な断面を有するものであってもよい。熱交換器の小型化、軽量化などを考慮した場合、扁平な断面を有するチューブが有用である。チューブは、フィンと同様に、軽量な金属材料から形成するのが好ましい。チューブのサイズは、もちろん、フィンと同様に、所望とする効果などに応じて任意に変更可能である。
フィン付きのチューブは、熱交換器内においていろいろに配置することができ、その配置や構造が特に限定されることはない。例えば、1本の長いフィン付きチューブを複数回にわたって折り曲げることで所定の形状をもった熱交換器を構成してもよく、さもなければ、複数本のチューブからなるチューブ部材と、そのチューブ部材に適合する形状をもったフィン部材とを用意し、チューブ部材とフィン部材を接合することによって熱交換器を構成してもよい。
熱交換器の典型例としては、自動車のエアコン(エア・コンディショナ)、すなわち、カーエアコンで使用されているエバポレータ(蒸発器)やコンデンサ(凝縮器)を挙げることができる。なお、カーエアコン以外の用途としては、以下に列挙されるものに限定されるわけではないが、エアコン、ラジエータなどを包含する。
図1は、カーエアコンにおける熱交換器の使用(エバポレータとしての使用)を模式的に示したものである。やや温かい空気(矢印Aの温風を参照)は、ブロア21からカーエアコン22に送られる。温風は、さらにフィルタ23を通過した後、熱交換器10に達し、予定の熱交換が行われる。熱交換によって冷却せしめられた空気(冷風)は、カーエアコン22に付属のダクト24から、矢印Bで示す方向に排出される。
熱交換器10は、上記したように、いろいろな形態を有することができる。図2は、かかる熱交換器10の一部を模式的に示した断面図である。この熱交換器10は、チューブ部材15とフィン部材17を接合したものであり、接合された両方の部材の最表面のすべてに表面ポリアニリン層2が備わっている。なお、必要ならば、表面ポリアニリン層2の一部を省略することも可能である。チューブ部材15は、基体1がアルミニウム合金製であり、その露出部分が表面ポリアニリン層2で覆われている。チューブ部材15の内部には、冷媒16が流動せしめられている。冷媒16は、例えば、フッ素含有炭化水素、例えば1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC134aなどのヒドロフルオロカーボン(HFC)系冷媒である。ここで、チューブ部材15の片面には、熱交換効率を高めるために凹凸の断面模様をもったフィン部材17が、ロウ付け(図示せず)で取り付けられている。フィン部材17は、チューブ部材15と同様に、その基体1がアルミニウム合金製であり、その露出部分が表面ポリアニリン層2で覆われている。なお、図では凹凸の断面模様をもったフィン部材17が示されているが、凹凸の断面模様に代えて、蛇腹の如く三角の断面模様が繰り返されたフィン部材17や、その他の断面模様のフィン部材17を使用してもよい。
さらに具体的に説明すると、図3は、図2に示した熱交換器のフィンの部分をさらに拡大して示した断面図である。図示されるように、本発明の熱交換器において、フィン17は、基体1と、その最表面に形成された表面ポリアニリン層2とからなる。なお、図では、簡略化のために、その他の層膜は示されていないが、基材15と表面ポリアニリン層2の間に、以下に図示して説明するように、層間中間層が設けられていてもよく、その他の層膜が施されていてもよい。また、基体1及び表面ポリアニリン層2は、両者の接合を良好にするため、任意の処理を受けていてもよい。さらに、表面ポリアニリン層2は、その表面に任意の処理を追加的に受けていてもよい。
フィン及びそれを付設したチューブにおいて、基体は、いろいろな材料から形成することができるが、本発明の実施には、金属材料、特の軽量な金属材料、なかんずくアルミニウムを含有する金属材料(アルミニウム合金又はアルミニウム混合物)を有利に使用することができる。アルミニウム含有金属材料は、軽量であり、熱交換効率がよく、しかも耐久性や耐蝕性に優れているからである。典型的なアルミニウム含有金属は、Al−Mn系合金などである。アルミニウム含有金属以外に有用な基体構成材料としては、例えば、銅や樹脂材料などを挙げることができる。
本発明の実施において、フィン及びそれを付設したチューブは、それぞれ、基体材料であるアルミニウム含有金属材料やその他の金属材料から成形加工によって有利に形成することができる。適当な成形加工方法としては、例えば、押出し成形、プレス加工などを挙げることができる。必要ならば、成形加工に代えて、例えば、鋳造、切削加工などでこれらの部材を作製してもよい。
フィンとチューブは、両者を別々に作製し、後段の工程で両者を一体化してもよく、フィンとチューブと同時もしくはほぼ同時に一体的に作製してもよい。一般的には、フィンとチューブを同一の金属材料から成形加工することが好ましい。なお、前者のように後段の工程でフィンとチューブを一体化する場合、任意の接合手段を使用することができる。適当な接合手段として、例えば、ロウ付けなどを挙げることができる。なお、ロウ付けを使用する場合、接合の完了後、使用後のロウ付け剤を酸やアルカリで洗浄除去する。
表面ポリアニリン層は、フィン及びチューブを構成する基体の最表面に全体的に設けられていてもよく、さもなければ、そのような基体の最表面に部分的に設けられていてもよい。もちろん、必要ならば、フィン又はチューブの最表面のみに全体的に設けられていてもよく、さもなければ、フィン又はチューブの最表面の一部分のみに選択的に設けられていてもよい。図2は、熱交換器10のチューブ部材15とフィン部材17のそれぞれの露出した最表面(基体1の最表面)の全体に表面ポリアニリン層2が設けられた1態様を図示している。
表面ポリアニリン層は、基体1の最表面に全面的に形成するのが好ましいが、所望ならば、必要個所のみに選択的に形成されていてもよい。表面ポリアニリン層は、次の一般式によって表されるように、ベンゼノイド構造及びキノイド構造を有するポリアニリン及び(又は)その誘導体から形成することができる。以下においては簡単に「ポリアニリン系化合物」ともいうこれらの化合物は、それに接触せしめられる外気の水分と反応して過酸化水素及びしたがって活性酸素を発生可能である。なお、ここでいう「水分」は、外気、すなわち、外部雰囲気中に含まれる湿気、水及びその他の水分を包含する。
Figure 2008064343
ここで、上式により表されるポリアニリン系化合物は、例えば、アルドリッチ社から商品名「Polyaniline,emeraldine base」として商業的に入手可能であり、また、ポリアニリンの誘導体としては、以下に記載するものに限定されるわけではないが、例えばスルホン化ポリアニリンなどを挙げることができる。
本発明の熱交換器では、表面ポリアニリン層におけるベンゼノイド構造及びキノイド構造の比率が重要である。両者の比率、すなわち、ベンゼノイド/キノイド比は、ポリアニリン及び(又は)その誘導体におけるベンゼノイド構造とキノイド構造の吸光度比として定義することができ、通常、約0.5〜3.0の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、約1.0〜2.0の範囲である。なお、吸光度は、例えば島津製作所社製の吸光度計「UV−2500PC」(商品名)や日立ハイテクノロジーズ社製の「U−4100」(商品名)を使用して測定することができる。
表面ポリアニリン層は、いろいろな厚さで成膜することができるが、通常、約0.1〜10μmであり、好ましくは、約0.1〜1μmであり、さらに好ましくは、約0.1〜0.5μmである。表面ポリアニリン層の厚さが0.1μmを下回ると、所期の作用効果を期待することができなくなり、反対に10μmを上回ると、成膜が困難になるなどの問題点が発生する。
さらに、表面ポリアニリン層の成膜のため、いろいろな組成及び成膜方法を使用することができる。例えば、表面ポリアニリン層は、好ましくは溶液から有利に形成することができる。表面ポリアニリン層を形成するために好適なポリアニリン含有溶液の組成は、例えば、次のようなものである。
ポリアニリン 約1〜5重量%
バインダ(カルボジイミド化合物) 約1〜20重量%
溶剤(水) 約80〜98重量%
もちろん、上記の組成は任意に変更可能であり、例えば、バインダとして、硫酸基やリン酸基などを有した高分子、シランカップリング剤なども有利に使用することができる。また、溶剤として、水に代えて例えばメタノール、エタノール等のアルコール類をほぼ同量で使用してもよい。
表面ポリアニリン層の成膜のため、いろいろな成膜方法を使用することができるが、一般的には、ポリアニリン含有溶液に熱交換器の前駆体を浸漬する浸漬法や、ポリアニリン含有溶液を塗布する塗布法が有利である。例えば、浸漬法は、上記したようなポリアニリン含有溶液に熱交換器の前駆体を約4〜30℃の温度で約1分間にわたって浸漬することによって有利に実施することができる。
本発明の熱交換器において、その最上層を構成する表面ポリアニリン層は、いろいろに改良することができる。
例えば、図4に示す熱交換器用のフィン17では、基体1の上に形成された表面ポリアニリン層2において、その表面部分にさらに親水性官能基(ここでは、FGと略記する)をさらに有していてもよい。親水性官能基FGは、親水性を備えたいろいろな官能基であってよいが、好ましくは、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基、アンモニウム基、硝酸基、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基などから選ばれる。これらの官能基は、1種類のものが単独で付与されていてもよく、さもなれれば、2種類もしくはそれ以上のものが組み合わさって付与されていてもよい。親水性官能基FGの存在は、特に、熱交換器の水濡れ性を向上するうえで有用である。
ところで、上記したような親水性官能基は、好ましくは、ポリアニリン系化合物から表面ポリアニリン層を成膜する際に、ポリアニリン系化合物に併用されバインダから付与することができ、さらに好ましくは、親水性官能基は、バインダに予め付与しておくことができる。適当なバインダとしては、以下に列挙するものに限定されないが、例えば、カルボジイミド基とカルボキシル基などを包含する。親水性官能基は、例えば、バインダの働きにより、ポリアニリン系化合物のうち、アミノ基の部分に容易に付加し、形成される表面ポリアニリン層の表面部分にほぼ均一に分布することができる。
フィン及びチューブは、通常、本発明でいう基体から形成される。これらの部材の基体は、好ましくは、上記したように、任意の金属材料、好ましくは軽量な金属材料の成形加工によって形成される。また、場合によって、フィン及びチューブは、同一の金属材料からなっていてもよく、異なる金属材料からなっていてもよい。
金属材料として、好ましくは、アルミニウムを含有する金属材料、すなわち、アルミニウム含有金属を挙げることができる。ここで、アルミニウム含有金属は、アルミニウムを任意の割合で含有するアルミニウム合金が一般的であるが、場合によっては、そのほかの形態でアルミニウムを含有する金属材料であってもよい。典型的なアルミニウム含有金属は、前記した通り、Al−Mn系合金などである。
フィン及びチューブは、通常、単層もしくは単独の金属材料から形成されるが、必要ならば、少なくとも2層の金属材料の複合体からなってもよい。このような金属複合体において、上方の金属材料の層から下方の金属材料の層に向かって酸化還元電位が貴な金属材料の量が増加していることが好ましい。傾斜された酸化還元電位を基体を構成する金属材料に導入することによって、熱交換器の使用中に基体の望ましくない酸化が引き起こされるのを効果的に防止することができるからである。なお、3層構造の金属複合体を採用した場合、表面ポリアニリン層に接して配置される第3の金属材料層は、その下の第1及び第2の金属材料層の酸化還元電位と比較した場合、最も貴であるかもしくはそれよりも卑である値から、最も卑であるよりも貴である値の範囲において、任意の酸化還元電位を有することができる。
図5は、フィン17の基体1を2層の金属材料の複合体から構成した例である。図示されるように、基体1は、下方の金属材料の層11と、上方の金属材料の層12とからなる。なお、この例はフィン17の基体1の例であるが、本例に限られることなく、他のフィン17においても同様であるが、チューブの基体も同様に、下方の金属材料の層11と、上方の金属材料の層12とから構成してもよい。
図示の金属材料複合体において、下方の金属材料の層は、好ましくは、アルミニウム(Al)合金からなり、また、上方の金属材料の層は、好ましくは、亜鉛(Zn)含有金属材料からなる。さらに、下方の金属材料の層は、好ましくは、Al−Mn系合金からなり、また、上方の金属材料の層は、好ましくは、亜鉛に加えてケイ素(Si)を含有する金属材料からなる。特に、上方の金属材料の層は、好ましくは、亜鉛及びケイ素に加えて、アルミニウム(Al)及び無視し得る量の不純物を含有するアルミニウム合金からなる。
また、表面ポリアニリン層2は、図6に模式的に示すように、その層に分散せしめられたドーパント(ここでは、DPと略記する)をさらに有していてもよい。ドーパントは、それを本発明において使用した場合、下地の基体に対してポリアニリンを良好に結合させる結合作用などを示すことができ、よって「バインダ」とも呼ぶことができる。ドーパントは、好ましくは、上記したポリアニリン及び(又は)その誘導体に静電相互作用により付着している。これを上記したポリアニリンの一般式を参照して説明すると、ドーパントは、隣接するベンゼン環の間の−NH−基の窒素原子や、隣接するベンゼン環とポリアニリン環の間の窒素原子に付着するのが一般的である。
本発明に従い表面ポリアニリン層を設ける場合、その表面ポリアニリン層と下地の基体との間に層間中間層をさらに設けてもよい。図7は、このような熱交換器の一例を示した部分拡大断面図であり、フィン17は、図示されるように、表面ポリアニリン層2と下地の基体1との間に層間中間層3をさらに有している。層間中間層は、通常、基体に対する表面ポリアニリン層の付着力を高める働きや、ポリアニリンによる電子の奪取を防ぐ働き(防錆)を有している。
層間中間層は、いろいろな材料から形成することができるが、好ましくは、非金属の材料からなる。適当な層間中間層として、例えば、絶縁膜、酸化防止膜、ポリアニリン系化合物よりも酸化還元電位が貴な非金属材料などを挙げることができ、また、より具体的には、例えば、クロメート膜、ポリアミド膜などを挙げることができる。層間中間層は、通常、単層で使用されるが、必要なら、2層以上の層間中間層を組み合わせて使用してもよい。層間中間層の厚さは、特に限定されるものではない。
すでに記載したように、本発明において、表面ポリアニリン層におけるベンゼノイド構造及びキノイド構造の比率、すなわち、ベンゼノイド/キノイド比は、通常、約0.5〜3.0の範囲であり、さらに好ましくは、約1.0〜2.0の範囲である。これは、図8に示すように、ベンゼノイド/キノイド比が0.5を下回ると、過酸化水素発生濃度、換言すると、活性酸素発生能が低下するばかりでなく、より重要なことには、図中斜線で示す部分において、基体からの表面ポリアニリン層の剥がれや溶解といった不具合が後段の工程において生じるからである。また、ベンゼノイド/キノイド比が3.0を上回ると、過酸化水素発生濃度がほぼ一定の割合で顕著に低下していく。
よって、本発明では、ベンゼノイド/キノイド比を約0.5〜3.0の範囲で一定に保持することが肝要であり、換言すると、表面ポリアニリン層においてベンゼノイド/キノイド比が0.5〜3.0の設定範囲を外れたときに、そのベンゼノイド/キノイド比を設定範囲内に戻すための手段をさらに備えていることができる。この手段は、本発明の場合、ポリアニリン系化合物を構成するベンゼノイド構造をキノイド構造に転化するかもしくはキノイド構造をベンゼノイド構造に転化する手段であり、よって、「構造転化手段」と呼ぶことができる。
ここで、ベンゼノイド/キノイド比及びその調整のための構造転化手段についてさらに詳しく説明する。
図9は、電圧の印加によってポリアニリンの構造が以下に変化するかを吸光度の変化から観察したものである。最初に説明しておくと、ポリアニリンは、その吸光度スペクトルにおいて、約350nmの波長近傍においてベンゼノイド構造を認めることができ、また、約650nmの波長近傍においてキノイド構造を認めることができ、また、かかる吸光度の比率から、ベンゼノイド/キノイド比を容易に算出することができる。
ところで、ポリアニリンにおいて、電圧印加により、ベンゼノイド構造(の吸光度)が増加する一方で、キノイド構造(の吸光度)が減少する。本発明では、電源(+)にサンプルの陽極を接続した後、そのサンプルを50mlの純水中に浸漬した後、スターラーで攪拌下、2ボルトの電圧を異なる時間(0時間、24時間及び96時間)にわたって印加した。それぞれの時間について、溶出液の吸光度スペクトルを測定したところ、図9にプロットしたような結果が得られた。また、これらの結果から、図10に示すような構造変化がポリアニリンにおいて発生したことが推定された。
いままでに予想されなかったことであるが、上記したようにポリアニリンにおいて高造変化が発生した場合であっても、本発明では、先の電圧印加とは逆の電位を同じサンプルに印加することによって、すなわち、逆電位の印加によって、キノイド構造が増加し、活性酸素発生能も復帰傾向とすることができる。但し、長時間にわたって逆電位を印加すると、期待以上のキノイド構造の増加や他の部位の酸化を招き、ポリアニリンが水溶性になり電極板から水中に溶け出す恐れがある。よって、逆電位の印加は、短時間にかつ正確に実施することが望ましい。逆電位の印加時間は、通常、約2時間以内であり、好ましくは約1時間以内であり、さらに好ましくは、約30分間〜60分間の範囲である。
図11は、逆電位に変更した違いを除いて、図10に記載した手法にしたがって溶出液の吸光度スペクトルを測定した結果をプロットしたものである。すなわち、この場合、電源(+)に接続する電極を陽極から陰極に変更した後、サンプルを50mlの純水中に浸漬した後、スターラーで攪拌下、2ボルトの電圧を異なる時間(0時間、30分間及び60分間)にわたって印加した。それぞれの時間について、溶出液の吸光度スペクトルを測定したところ、図11にプロットしたような結果が得られた。また、これらの結果から、図12に示すような構造変化がポリアニリンにおいて発生したことが推定された。
また、図9及び図11の測定結果をもとに、ベンゼノイド/キノイド比及び活性酸素発生能(ppm)を時間の関数としてプロットすると、図13に示すようなグラフを得ることができる。このグラフから理解できるように、ベンゼノイド/キノイド比は、短時間の逆電位の印加だけで、もとの状態に復帰させることができ、また、したがって、この復帰にあわせて、活性酸素発生能もほぼもとに状態に復帰させることができる。
上記したような結果は、表面ポリアニリン膜において例えばピンホールなどの微小欠陥や表面ポリアニリン膜の未成膜部分があっては達成されるものではない。以降の工程で用いる溶液が熱交換器の基体へ直接に浸入した場合、表面ポリアニリン膜の剥離や特性の低下などを引き起こすからである。よって、表面ポリアニリン膜の成膜後に欠陥や未成膜部分がないか否かを評価する成膜状況評価工程が必要である。この工程後に、欠陥や未成膜部分をもった表面ポリアニリン膜を除くことができる。例えば、ピンホール検知方法としては、決められた測定ポイントを光学顕微鏡にて観察し、画像を電子データとして取り込み、画像処理ソフトで2値化(白:アルミニウム基板、ピンホール;黒:ポリアニリン)後に白部分を検知させることにより短時間で容易にピンホールが発見できる。なお、製造時以外でも、ピンホール発生による孔食の進行を防ぐために、クロメートやポリアニリンよりも酸化還元電位が貴な金属を下地膜として成膜した後にポリアニリンを成膜すれば、腐食の問題を少なくすることができる。
ちなみに、先に参照して説明した特表平8−500700号公報に記載される手法に従って例えばアルミニウム、鉄、亜鉛等の金属材料の表面に吸水性のポリマー、好ましくはポリアニリンの薄膜を被覆した場合、完全被覆であれば問題はないが、一部のポリアニリン膜に破壊が発生して、下地の受動態化金属材料が露出した場合には、露出領域の金属材料から電子が奪われ、その露出個所から集中的な腐蝕が引き起こされる。もしもこの腐蝕が熱交換器のチューブで発生したとすると、腐食個所の細孔(ピンホール等)から冷媒の漏れや飛散が発生し、熱交換器としての機能が損なわれることとなる。
上記したように、構造転化手段は、ベンゼノイド/キノイド比及び活性酸素発生能の調整において有利に作用することができる。構造転化手段は、いろいろな構成を有することができるけれども、好ましくは、上記したような電圧印加手段である。例えば、熱交換器に対して、それとは他の基材よりなる対極部を配置し、電圧印加手段で熱交換器と対極部間に通電させることによって、表面ポリアニリン層から電子を奪うことにより、所期の目的を達成することができる。
別の好ましい態様において、構造転化手段は、通電方向切換手段付きの電圧印加手段であってもよい。この構造転化手段に場合、ベンゼノイド/キノイド比が0.5〜3.0の設定範囲を上回ったときに、熱交換器と対極部間に通電方向を逆にして通電させることが可能となる。
さらに加えて、構造転化手段は、タイマー手段をさらに備えていることが好ましい。タイマー手段を使用することで、上記した通電方向切換手段での逆通電時間を管理することが可能となる。
また、タイマー手段に代えて、吸光度比検出手段をさらに備えていてもよい。この手段により、表面ポリアニリン層におけるベンゼノイド/キノイド比をすばやくかつ正確に検出することが可能となる。
さらに、熱交換器と対極部間に通電を行うとき、通電量もしくは電荷量で通電を管理することも好ましい。例えば、通電量もしくは電荷量を計測する手段をさらに設け、通電の時間を管理することを推奨される。
本発明の熱交換器は、いろいろな手法に従って作製することができるが、以下にその一例を説明する。
まず、アルミニウム材を成形加工して、チューブ部材及びフィン、プレート等の熱交換部材を作製し、さらにこれらの部材を600℃以上の高温度でロウ付けして、所望とする形状の熱交換器の前駆体を作製する。次いで、部材の接合に使用したロウ付け剤を酸、アルカリなどを使用して前駆体から洗浄除去し、さらに流水で水洗し、液きり及び乾燥を行う。乾燥は、例えば、140℃で15分間にわたって行う。
次に、熱交換器の前駆体の表面にポリアニリンを成膜する。この成膜工程のため、ポリアニリンを含有する溶液に熱交換器の前駆体を約60秒間にわたって浸漬し、引き続いて液きり及び乾燥を行う。ここで使用するポリアニリン含有溶液は、例えば、次のような組成を有することができる。
ポリアニリン 約1〜5重量%
バインダ(カルボジイミド化合物) 約1〜20重量%
溶剤(水) 約80〜98重量%
ここで、乾燥工程は、例えば、140℃で15分間にわたって行う。この乾燥状態が十分でないと、以降の工程でポリアニリン膜の膜剥がれを生じる恐れがあるので、乾燥状態が十分であることをこの段階で確認することが好ましい。乾燥後、目的とする表面ポリアニリン膜が、約0.5μmの膜厚で得られる。
また、以降の工程で用いる溶液が熱交換器へ直接浸入することがないようにするため、ポリアニリン膜の成膜後に未成膜部分がないか否かを評価する成膜状況評価工程を実施することも好ましい。成膜状況評価工程は、例えば前記したように、決められた測定ポイントを光学顕微鏡にて観察し、画像を電子データとして取り込み、画像処理ソフトで2値化(白:アルミ基板、ピンホール、黒:ポリアニリン)後に白部分を検知させることにより短時間で容易に実施することができる。この工程後、ポリアニリン膜で未成膜部分(ピンホール)の発生がみられるものだけを除くことができる。なお、ピンホール発生による孔食の進行を防ぐために、クロメートやポリアニリンより酸化還元電位が貴な金属を下地膜として成膜した後にポリアニリンを成膜すれば、腐食の問題は少なくなる。
上記のようにして作製した、アルミニウム材とそれを被覆した表面ポリアニリン層とからなるフィン付きチューブを備えた熱交換器において、ポリアニリンの構造比を変化させるために特別の電極構造を付設する。電極構造は、例えば、電源と、それに接続された陽極及び陰極とから構成し、それぞれの電極の表面に、ポリアニリンより酸化還元電位が貴な材料を被覆する。電源から電極構造に電圧を印加するが、本発明の場合、電位の印加及び逆電位の印加を可能とするために、例えば、使用前後に電極構造に、使用時とは逆の電圧を印加する機構とその印加する時間を一定時間に制御できるタイマーと具備することが好ましい。
本発明の電圧印加を制御する機構を付与させる狙いは、図9〜図13を参照した先の説明から容易に理解することができるように、構造が変化したポリアニリンを使用前の構造に戻すことである。つまり、図11及び図12に示したように、割合が増加したベンゼノイド構造をキノイド構造に戻すことが狙いである。しかし、逆電位を長時間にわたって印加し続けると、期待以上のキノイド構造の増加や他の部位の酸化を招き、ポリアニリンが水溶性になり電極板から水中に溶け出す恐れがある。よって、逆電位印加はタイマーなどで計測、停止させることが好ましい。また、時間計測より正確な手法としては、電極の一部を光が透過する構造にしておいて、吸光度を測定するという手法がある。この場合、650nm付近にキノイド構造、350nm付近にベンゼノイド構造のピークが見られるために、このピーク比の設定により逆電位印加を停止させる方法もある。
引き続いて、本発明をその実施例を参照して説明する。なお、本発明は、これらの実施例によって限定されるものでないことは言うまでもない。
フィン付きチューブの作製
アルミニウム合金(AlMn系合金)を成形加工して、図2に一部分を示すチューブ及びフィンを作製した。ロウ付け温度は、約600℃であった。両者の接合を確認した後、使用済みのロウ付け剤を希硫酸によって溶解除去し、さらに流水にて十分に水洗した。液きり後、得られた前駆体の乾燥を140℃で15分間にわたって行った。
次に、乾燥後の前駆体の表面にポリアニリンを成膜した。本例で使用したポリアニリン含有溶液の組成は、次の通りであった。
ポリアニリン 約1〜5重量%
バインダ(カルボジイミド化合物) 約1〜20重量%
溶剤(水) 約80〜98重量%
上記のポリアニリン含有溶液(液温:約20℃)に前駆体を約60秒間にわたって浸漬し、引き続いて液きり及び乾燥を行った。乾燥工程は、例えば、140℃で15分間であった。約0.5μmの膜厚を有する表面ポリアニリン膜を全面に備えたフィン付きチューブが得られた。
熱交換器における使用
得られたフィン付きチューブを図1に示したような自動車用熱交換器として使用し、その性能を調べた。その結果、このフィン付きチューブは、耐久性に優れるとともに、チューブやフィンの表面に付着した臭気物質を分解する機能や、有害微生物を殺菌する機能を併せ持つことが確認できた。また、臭気物質の分解脱臭機能や有機微生物の殺菌機能は、効率よく発生させることができるばかにでなく、ポリアニリン中のベンゼノイド構造とキノイド構造の比率を保つことで、成膜後や使用後のポリアニリンの活性酸素発生能を低下させることなく、付着臭を抑制でき、熱交換器の基本性能を維持できることも確認できた。
評価試験
得られたフィン付きチューブにおいて、その表面ポリアニリン層のベンゼノイド/キノイド比及び活性酸素発生能の経時変化を評価するため、次のような評価試験を実施した。
(1)サンプルの作製
フィン付きチューブの表面ポリアニリン層に、2ボルトの電位及び逆電位を印加するための陽極及び陰極を取り付けてサンプルを作製した。陽極及び陰極は、チタン材や炭素材から構成した。また、これらの電極に電圧を印加して通電させるための電圧印加手段として、電源を用意した。
(2)電位の印加
電源(+)にサンプルの陽極を接続した後、そのサンプルを50mlの純水中に浸漬した。スターラーで攪拌下、2ボルトの電圧を異なる時間(0時間、24時間及び96時間)にわたって印加した。それぞれの時間について、溶出液の吸光度スペクトルを吸光度計:島津製作所社製の「UV−2500PC」(商品名)で測定したところ、図9にプロットしたような結果が得られた。また、これらの結果から、図10に示すような構造変化がポリアニリンにおいて発生したことが推定された。
(3)逆電位の印加
上記の工程に続けて、電源(+)にサンプルの陰極を接続した後、そのサンプルを50mlの純水中に浸漬した。スターラーで攪拌下、2ボルトの電圧を異なる時間(0分間、30分間及び60分間)にわたって印加した。それぞれの時間について、溶出液の吸光度スペクトルを吸光度(前記した)で測定したところ、図11にプロットしたような結果が得られた。また、これらの結果から、図12に示すような構造変化がポリアニリンにおいて発生したことが推定された。すなわち、逆電位の印加により、キノイド構造が増加し、活性酸素発生能も復帰傾向にあった。
(4)まとめ
図9及び図11の測定結果をもとに、ベンゼノイド/キノイド比及び活性酸素発生能(ppm)を時間の関数としてプロットしたところ、図13に示すようなグラフを得ることができた。このグラフから理解できるように、ベンゼノイド/キノイド比は、短時間の逆電位の印加だけで、もとの状態に復帰させることができ、また、したがって、この復帰にあわせて、活性酸素発生能もほぼもとに状態に復帰させることができる。
本発明の熱交換器を使用した自動車用蒸発器の一例を示した模式断面図である。 本発明の熱交換器の好ましい一形態を示した部分断面図である。 図2に示した熱交換器のフィンの一部を示した拡大部分断面図である。 本発明の熱交換器のフィンのもう1つの好ましい形態を示した拡大部分断面図である。 本発明の熱交換器のフィンのもう1つの好ましい形態を示した拡大部分断面図である。 本発明の熱交換器のフィンのもう1つの好ましい形態を示した拡大部分断面図である。 本発明の熱交換器のフィンのもう1つの好ましい形態を示した拡大部分断面図である。 本発明の表面ポリアニリン層におけるベンゼノイド/キノイド比と過酸化水素発生濃度との関係をプロットしたグラフである。 ポリアニリンに電位を印加した場合のベンゼノイド構造及びキノイド構造の変化を吸光度の変化により説明したグラフである。 ポリアニリンに電位を印加した場合のキノイド構造からベンゼノイド構造への変化を示した化学式である。 ポリアニリンに逆電位を印加した場合のベンゼノイド構造及びキノイド構造の変化を吸光度の変化により説明したグラフである。 ポリアニリンに逆電位を印加した場合のベンゼノイド構造からキノイド構造への変化を示した化学式である。 ポリアニリンに電位及び逆電位を順次印加した場合のベンゼノイド/キノイド比及び活性酸素発生能の経時変化をプロットしたグラフである。
符号の説明
1 基体
2 表面ポリアニリン層
3 層間中間層
10 熱交換器
11 下方金属材料層
12 上方金属材料層
15 チューブ
16 冷媒
17 フィン

Claims (27)

  1. フィン付きチューブを備えた熱交換器において、
    前記チューブ及び(又は)フィンは、少なくとも、基体と、その基体の最表面の少なくとも一部に形成された表面被膜とからなり、
    前記表面被膜は、それに接触せしめられる外気中の水分と反応して活性酸素又は過酸化水素を発生可能なポリアニリン及び(又は)その誘導体からなる表面ポリアニリン層でありかつ
    前記表面ポリアニリン層において、ベンゼノイド/キノイド比(ポリアニリン及び(又は)その誘導体におけるベンゼノイド構造とキノイド構造の吸光度比として定義される)は、0.5〜3.0の範囲にある
    ことを特徴とする熱交換器。
  2. 前記ベンゼノイド/キノイド比は、1.0〜2.0の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
  3. 前記表面ポリアニリン層は、前記基体の最表面の全体に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
  4. 前記表面ポリアニリン層は、それに付与された親水性官能基をさらに有していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱交換器。
  5. 前記親水性官能基は、第1アミノ基、第2アミノ基、第3アミノ基、アンモニウム基、硝酸基、カルボキシル基、スルホン酸基及び水酸基からなる群から選ばれる少なくとも1種類の官能基であることを特徴とする請求項4に記載の熱交換器。
  6. 前記親水性官能基は、前記ポリアニリン及び(又は)その誘導体から前記表面ポリアニリン層を成膜する際に併用されたバインダに由来するものであることを特徴とする請求項4又は5に記載の熱交換器。
  7. 前記親水性官能基は、前記バインダに予め付与されていたものであることを特徴とする請求項6に記載の熱交換器。
  8. 前記チューブ及び(又は)フィンの基体は、金属材料の成形加工によって形成されたものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱交換器。
  9. 前記金属材料は、アルミニウムを含有する金属材料からなることを特徴とする請求項8に記載の熱交換器。
  10. 前記チューブ及び(又は)フィンの基体は、少なくとも2層の金属材料の複合体からなり、かつ該複合体において、上方の金属材料の層から下方の金属材料の層に向かって酸化還元電位が貴な金属材料の量が増加していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱交換器。
  11. 前記チューブ及び(又は)フィンの基体は、2層の金属材料の複合体からなり、かつ該複合体において、下方の金属材料の層はアルミニウム(Al)合金からなりかつ上方の金属材料の層は亜鉛(Zn)含有金属材料からなることを特徴とする請求項10に記載の熱交換器。
  12. 前記下方の金属材料の層は、Al−Mn系合金からなり、かつ前記上方の金属材料の層は、亜鉛に加えてケイ素(Si)を含有する金属材料からなることを特徴とする請求項11に記載の熱交換器。
  13. 前記上方の金属材料は、亜鉛及びケイ素に加えてアルミニウム(Al)及び不純物を含有するアルミニウム合金からなることを特徴とする請求項12に記載の熱交換器。
  14. 前記表面ポリアニリン層は、ドーパントをさらに含むことを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の熱交換器。
  15. 前記ドーパントは、前記ポリアニリン及び(又は)その誘導体に静電相互作用により付着していることを特徴とする請求項14に記載の熱交換器。
  16. 前記チューブ及び(又は)フィンは、その基体と前記表面ポリアニリン層との間に層間中間層をさらに有していることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の熱交換器。
  17. 前記層間中間層は、非金属の材料からなることを特徴とする請求項16に記載の熱交換器。
  18. 前記層間中間層は、絶縁膜、酸化防止膜及び前記ポリアニリン及び(又は)その誘導体よりも酸化還元電位が貴な非金属材料からなる膜からなる群から選ばれる少なくとも1種類の層膜であることを特徴とする請求項16又は17に記載の熱交換器。
  19. 前記表面ポリアニリン層において、前記ベンゼノイド/キノイド比が0.5〜3.0の設定範囲を外れたときに、前記ベンゼノイド/キノイド比を設定範囲内に戻すために、前記ポリアニリン及び(又は)その誘導体を構成するベンゼノイド構造をキノイド構造に転化するかもしくはキノイド構造をベンゼノイド構造に転化する構造転化手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の熱交換器。
  20. 前記構造転化手段は電圧印加手段であり、該熱交換器に対して、それとは他の基材よりなる対極部を配置し、電圧印加手段で前記熱交換器と対極部間に通電させることによって、前記表面ポリアニリン層から電子を奪うことを特徴とする請求項19に記載の熱交換器。
  21. 前記構造転化手段は、通電方向切換手段付きの電圧印加手段であり、前記ベンゼノイド/キノイド比が0.5〜3.0の設定範囲を上回ったときに、前記熱交換器と対極部間に通電方向を逆にして通電させることを特徴とする請求項20に記載の熱交換器。
  22. タイマー手段をさらに備えており、前記通電方向切換手段での逆通電時間を管理することを特徴とする請求項19に記載の熱交換器。
  23. 吸光度比検出手段をさらに備えており、前記表面ポリアニリン層におけるベンゼノイド/キノイド比を検出することを特徴とする請求項19に記載の熱交換器。
  24. 前記熱交換器と対極部間に通電を行うとき、通電量もしくは電荷量で通電を管理することを特徴とする請求項20〜23のいずれか1項に記載の熱交換器。
  25. 通電量もしくは電荷量を計測する手段をさらに設け、前記通電の時間を管理することを特徴とする請求項20に記載の熱交換器。
  26. 前記チューブの最表面にも、前記表面ポリアニリン層がさらに備わっていることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の熱交換器。
  27. カーエアコンに使用されることを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の熱交換器。
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