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JP2002363675A - 生体用Co基合金及びその製造方法 - Google Patents

生体用Co基合金及びその製造方法

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JP2002363675A
JP2002363675A JP2001172377A JP2001172377A JP2002363675A JP 2002363675 A JP2002363675 A JP 2002363675A JP 2001172377 A JP2001172377 A JP 2001172377A JP 2001172377 A JP2001172377 A JP 2001172377A JP 2002363675 A JP2002363675 A JP 2002363675A
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based alloy
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 人工股関節等の補綴材料として好適な耐磨耗
性に優れたCo基合金を提供する。 【構成】 この生体用Co基合金は、Cr:26〜30
質量%,Mo:6〜12質量%,C:0〜0.3質量
%,残部が実質的にCoの組成をもち、平均結晶粒径5
0μm以下の結晶粒からなるマトリックスに粒状の第二
相が微細分散した組織をもっている。水冷銅製鋳型を用
いて所定組成のCo基合金を急冷鋳造し、得られた鋳塊
を1000〜1300℃で鍛造することにより製造され
る。 【効果】 微細組織に粒状の第二相が微細分散した組織
に調整されているので、格段に優れた耐磨耗性を呈す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐食性,耐磨耗性,加
工性に優れ、人工骨材の補綴材料として好適な生体用C
o基合金及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】生体用合金には、Co−Cr系の鋳造用
(HS−21),加工用(HS-25)のVitalliumやCo−Ni
−Cr−Mo合金(MP35N)等が知られているが、臨床
データや使用実績が多く安定度の高いことからVitalliu
mが多用されている。Vitalliumは、歯科用合金として開
発されたが、その後の改良を経て整形外科領域にも用途
が広がっており、他にAlivium,Endcast、Orthochrom
e,Orthochrome plus,Protasul,Zimaloy等の多くの商
品名で市販されている。Vitalliumの実用化は、ステン
レス鋼よりも10年遅い1937年であるが、ステンレ
ス鋼よりも耐食性に優れ、しかも十分な強度及び靭性を
兼ね備えていることから、骨頭,ステム等の人工股関節
用補綴材料として使用されている。
【0003】鋳造用Vitallium(HS−21)は、5〜7質
量%のMoを含む高Cr(30質量%)−Co合金であ
り、Vitalliumの中でも最も耐食性に優れ、孔食,隙間
腐食,粒界腐食,応力腐食割れ等は実用上でほとんど問
題とならない。しかし、ヒケ巣,気泡,偏析等の内部欠
陥が発生しやすく、低い疲労強度(250MPa)が欠点であ
る。加工用Vitallium(HS−25)は、Moに代えてWを
含み、Crの一部をNiで置換することにより、鋳造材
の欠点であるヒケ巣や偏析を解消するように改良された
合金である。加工用Vitallium(HS−25)は、焼きなま
しステンレス鋼以上の展延性が溶体化処理で付与され、
加工用ステンレス鋼と同程度の強度が冷間加工によって
付与される。耐食性は、ステンレス鋼よりも優れている
ものの、長期のインプラント用としては十分でないた
め、ボーンプレート,ワイヤ等の短期固定用に使用され
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】加工用VitalliumのM
o含有量を増加させるとき、耐食性及び耐磨耗性が向上
する。実際、Moを10質量%まで増量した高Mo−Vi
talliumは、当初組成の合金に比較して優れた耐食性及
び耐磨耗性を呈することが知られている。しかし、Mo
の増量に伴ってVitalliumの塑性加工性が低下するた
め、高Mo−Vitalliumの微細組織を塑性加工法で制御
しがたい。
【0005】鋳造用Vitalliumでは、熱履歴を調製する
ことによって内部欠陥を解消することも検討されてい
る。一般に、鋳造合金に生じているヒケ巣や気泡は鍛造
で圧潰され、デンドライト組織も破壊され、後続する再
結晶焼鈍によって均一な組織になる。しかし、Vitalliu
mでは、機械的性質の向上に関する数値的なデータはあ
るものの、熱履歴と組織との関係及びそれに伴う機械的
性質の変化に関しては十分な知見が得られていない。そ
のため、Vitalliumは、加工性に優れたステンレス鋼系
と、強度,耐食性等の特性に優れたチタン系合金の両方
の長所を兼ね備えた材料であるにも拘らず,需要が全体
の20%程度と低く、広く実用化されるまでに至ってい
ない。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、このような問
題を解消すべく案出されたものであり、Moを増量する
と共に、塑性加工で組織調整することにより、高耐食性
で且つ高耐磨耗性を呈する生体用Co基合金を提供する
ことを目的とする。
【0007】本発明の生体用Co基合金は、その目的を
達成するため、Cr:26〜30質量%,Mo:6〜1
2質量%,C:0〜0.3質量%,残部が実質的にCo
の組成をもち、平均結晶粒径50μm以下の結晶粒から
なるマトリックスに粒状の第二相が微細分散した組織を
もつことを特徴とする。
【0008】このCo基合金は、水冷銅製鋳型を用いて
所定組成のCo基合金を急冷鋳造し、得られた鋳塊を1
000〜1300℃で鍛造することにより製造される。
【0009】
【作用】本発明では、Moの増量及び組織調整によって
Vitalliumの耐食性及び耐磨耗性を改善している。耐食
性及び耐磨耗性に及ぼすMoの効果は、Mo:6質量%
以上で顕著になるが、12質量%で飽和し、過剰量のM
o含有は塑性加工性に悪影響を及ぼす。Crは耐食性を
確保する上で26質量%以上が必要であるが、30質量
%を超える過剰量は塑性加工性に悪影響を及ぼす。必要
に応じて添加されるC含有量は、耐磨耗性,塑性加工製
の観点から0.3質量%以下に規制している。
【0010】組織調整では、水冷式の銅製鋳型を用いて
急冷鋳造することにより析出物の成長を抑え、高温鍛造
等の塑性加工により析出物、金属間化合物等の第二相を
微細分散させている。鋳造時の急冷が析出物の成長抑制
に及ぼす影響は、鋳込み温度から400℃までの温度域
を1000℃/分以上の冷却速度で冷却するとき顕著に
なる。また、高温鍛造によりデンドライト等の鋳造組織
が破壊され、50μm以下に微細化された等軸結晶粒か
らなるマトリックスが形成される。マトリックスの微細
化は、耐磨耗性の向上にも有効である。しかし、Mo含
有量を単に6質量%以上に増量すると、鍛造等の塑性加
工性が失われるため、高Mo−Vitalliumの鍛造合金を
製造できない。
【0011】6質量%以上のMoを含む高Mo−Vitall
iumでは、700℃付近の温度領域から低温側にかけて
脆い金属間化合物相(σ相)が生成する。そこで、本発
明では、熱処理方法及び加工温度の選定によってσ相の
生成を防止している。具体的には、Mo含有量を6〜1
2質量%に設定した本発明系においては高温鍛造温度を
1100〜1400℃の範囲に設定する。高温鍛造した
高Mo−Vitalliumを室温に持ち来たす場合にも、水冷
等の急冷を採用することによってσ相が防止され、第二
相が成長することなく粒状の析出物又は晶出物としてマ
トリックスに微細分散する。
【0012】
【実施例1】表1の組成をもつCo基合金600gを高
周波真空溶解炉で溶解し、15500℃の溶湯を水冷式
銅製金型に流し込み、30秒で400℃以下の温度にな
る冷却速度(2300℃/分)で急冷鋳造した。各鋳造
まま材(as cast材)の室温における引張り特性を図1
に示す。Co−Cr−Mo三元系合金では、Mo添加量
が多くなるほど伸びが向上している。また、Ni添加し
たNo.4,5は、高い伸び延性を示していた。
【0013】
【0014】鋳造ままの状態で最も小さな伸び延性を示
した試料No.1の合金について、伸び延性に及ぼす熱処
理の影響を調査した結果を図2に示す。比較のため、1
100℃の高温鍛造で組織調整した同じ試料No.1の伸
び延性に及ぼす熱処理の影響を併せ示す。図2から明ら
かなように、鍛造していない鋳造まま材では急冷効果が
働いており、as cast材,急冷材(1050℃で2時間
時効後、水焼入れ)共に低い伸び延性であった。なかで
も、1050℃の時効処理後に炉冷した炉冷材では、著
しく低い伸び延性を示した。伸び延性は、高温鍛造によ
って格段に向上した。
【0015】As cast材と炉冷材との間で伸び延性が相
違する理由を調査するため、それぞれの金属組織を光学
顕微鏡で観察した。As cast材(図3)はMoリッチの
b.c.c.相が粒状に析出した金属組織であったが、炉
冷材(図4)ではσ相が直線状に成長していた。σ相
は、破壊の起点として働く脆弱な析出物であることか
ら、引張試験での低い伸び延性が示される原因であると
推察される。また、高い伸び延性を示した高温鍛造材で
は、直線状σ相が検出されず、粒状b.c.c.相が微細
分散した組織をもっていた。
【0016】伸び延性及び金属組織の関係から、Moの
増量はCo−Cr−Mo三元系合金の高温鍛造性を損な
う直接の原因ではなく、σ相の析出が抑えられる100
0℃以上(好ましくは、1100℃以上)に鍛造温度を
設定して高温鍛造するとき、優れた伸び延性を示すCo
基合金が得られることが判る。また、鍛造素材として
は、σ相の析出を抑制するため水冷式銅製鋳型を用いて
急冷鋳造したものが好ましい。以上の結果から、鋳造条
件及び鍛造条件を制御することにより、伸び延性、換言
すると加工性の良好なCo−Cr−Mo三元系合金が得
られることが確認された。そこで、表2に示すCo−C
r−Mo三元系合金を溶製し、急冷鋳造及び高温鍛造が
及ぼす影響を調査した。
【0017】
【0018】合金No.1,2は、鋳込み後30秒で40
0℃以下の温度になる冷却速度で急冷鋳造した後、鋳塊
を1100℃に加熱して高温鍛造した。鍛造後の金属組
織を観察したところ、何れも等軸晶の結晶組織になって
いることが判った(図5,6)。合金No.1は平均結晶
粒径が約100μm,合金No.2は平均結晶粒径が約5
0μmであった。合金No.2を組織観察した結果、合金N
o.1では検出されなかった第二相が粒界に沿って析出又
は晶出していた。析出物又は晶出物は、Thermo−Calcの
計算状態図とEDS分析の結果から結晶構造がb.c.c.の
Mo富化相と考えられる。合金No.3,4については、
鋳塊を鍛造することなく、1100℃×4時間の熱処理
を施した。熱処理後の金属組織を観察すると、何れもデ
ンドライト状の凝固組織が観察された(図7,8)。
【0019】各合金No.1〜4から切り出した試験片の
表面を4000番のラッピングフィルムで最終研磨仕上
げした後、磨耗試験に供した。磨耗試験では、アルミナ
ボールを用いたピンオンフラット型往復運動磨耗試験機
を使用し、大気雰囲気,振幅10mm,辷り距離200000m
m,辷り速度8.33Hzの条件を採用した。図9の試験結
果にみられるように、MP35N相当の合金No.1に比較し
て、Vitallium相当の合金No.2〜4は耐磨耗性が格段に
優れていた。このことから、Co−Cr−Mo三元組成
にNiを高濃度で添加することは、伸び延性の点では有
効であるが、高耐磨耗性を確保する上では得策でないと
いえる。
【0020】更に、Vitallium相当合金No.2〜4の磨耗
量を詳細に調査した結果を図10に示す。合金No.4
は、Moを最も多量に含む凝固組織のままであることか
ら磨耗量が最も少なかった。他方、合金No.2は、Mo
含有量が最も少ない材料であるにも拘らず、合金No.4
とほぼ同程度の磨耗量であった。良好な耐磨耗性は、合
金No.2では高温鍛造によって微細組織が調整された結
果である。すなわち、耐磨耗性は、Moの増量によって
向上するが、組織を微細に調整することによって更に向
上することが判る。次いで、鍛造温度,圧下率等の鍛造
条件を種々変更した条件下でCo−Cr−Mo三元系合
金を高温鍛造することにより鍛造材の結晶粒径を変化さ
せ、結晶粒径が磨耗量に及ぼす影響を調査した。図11
の調査結果にみられるように、結晶粒の微細化により耐
磨耗性が向上し、結晶粒径15μm以下で磨耗量が顕著
に減少した。
【0021】
【実施例2】表2の合金No.3の組成をもつCo基合金
600gを高周波真空溶解炉で溶解し、1550℃の溶
湯を水冷式銅製金型に流し込み、実施例1と同様な冷却
速度で急冷鋳造した。得られた鋳塊をSUS316Lス
テンレス鋼の中空棒でクラッドし、1100〜1400
℃で高温鍛造することにより組織調整した。ステンレス
鋼でクラッドすることにより、鍛造工具と鋳塊との直接
接触が避けられ、鍛造中の鋳塊を1100℃以上の高温
状態に保持できた。その結果、高温鍛造中にσ相の析出
が防止できた。クラッド材を含めて肉厚20mmになる
まで高温鍛造−1250℃焼鈍を繰り返し、最終的には
1250℃×2時間の焼鈍後に水焼入れした。
【0022】次いで、鍛造材を冷間圧延し、板厚5mm
の冷延材を得た。濃塩酸:濃硝酸=3:1(体積比)の
混酸に冷延材を浸漬することにより、冷延材表面にある
ステンレス鋼をエッチング除去した。更に、1250℃
×1時間の焼鈍を施し、水焼入れ後、再度の冷間圧延に
より板厚50μmのシート材を製造した。この製造実績
から、本発明のCo基合金は、良好な加工性を活かし、
各種人工骨材に適した形状に成形できることが判る。
【0023】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の生体用
Co基合金は、Mo含有量を6〜12質量%と多く設定
すると共に、急冷鋳造により第二相を微細分散させ、σ
相の生成を抑えた高温鍛造によって結晶組織を微細化し
ている。これにより、耐磨耗性が一層改善され、Vitall
ium本来の優れた特性が活用される生体用材料として使
用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 各種Co基合金の歪−応力曲線を示すグラフ
【図2】 製造条件がCo基合金の歪−応力曲線に及ぼ
す影響を表したグラフ
【図3】 Co基合金as cast材の金属組織を示す写真
【図4】 Co基合金炉冷材の金属組織を示す写真
【図5】 実施例で使用した合金No.1高温鍛造材の金
属組織を示す写真
【図6】 実施例で使用した合金No.2高温鍛造材の金
属組織を示す写真
【図7】 実施例で使用した合金No.3熱処理材の金属
組織を示す写真
【図8】 実施例で使用した合金No.4熱処理材の金属
組織を示す写真
【図9】 各種Co基合金の磨耗特性を示すグラフ
【図10】 各種Co基合金の磨耗特性を示すグラフ
【図11】 結晶粒径がCo基合金鍛造材の耐磨耗性に
及ぼす影響を表したグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C22F 1/00 630 C22F 1/00 630D 630G 630K 675 675 681 681 682 682 683 683 691 691B

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cr:26〜30質量%,Mo:6〜1
    2質量%,C:0〜0.3質量%,残部が実質的にCo
    の組成をもち、平均結晶粒径50μm以下の結晶粒から
    なるマトリックスに粒状の第二相が微細分散した組織を
    もつことを特徴とする生体用Co基合金。
  2. 【請求項2】 水冷銅製鋳型を用いて請求項1記載の組
    成をもつCo基合金を急冷鋳造し、得られた鋳塊を10
    00〜1300℃で鍛造することにより、平均結晶粒径
    が50μm以下の結晶粒径からなるマトリックスに粒状
    の第二相が微細分散した組織に調整することを特徴とす
    る生体用Co基合金の製造方法。
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