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JP2002251778A - 光学的情報記録媒体、その製造方法、その記録方法及び記録装置 - Google Patents

光学的情報記録媒体、その製造方法、その記録方法及び記録装置

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JP2002251778A
JP2002251778A JP2001382187A JP2001382187A JP2002251778A JP 2002251778 A JP2002251778 A JP 2002251778A JP 2001382187 A JP2001382187 A JP 2001382187A JP 2001382187 A JP2001382187 A JP 2001382187A JP 2002251778 A JP2002251778 A JP 2002251778A
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JP2001382187A
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Hideki Kitaura
英樹 北浦
Noboru Yamada
昇 山田
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Panasonic Holdings Corp
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Publication date
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  • Optical Record Carriers And Manufacture Thereof (AREA)
  • Optical Recording Or Reproduction (AREA)
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 反射率が高く、高密度の情報の記録再生にお
いても、C/N比及び感度が高い良好な記録再生特性が
得られる追記型の光学的情報記録媒体を提供する。 【解決手段】 透明基板と、この基板上に配置された少
なくとも1つの情報層とを備え、この情報層がTe、O
及びMを含有する材料からなる記録層を有し、透明基板
側から入射する光ビームについて、記録層に情報を記録
する前の反射率よりも、記録層に情報を記録した後の反
射率が低い光学的情報記録媒体とする。但し、Mは、A
l、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、
Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、R
h、Pd、Ag、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、
Re、Os、Ir、Pt、Au及びBiから選ばれる少
なくとも1つの元素である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、基板上に形成され
た薄膜に、レーザービーム等の高エネルギー光ビームを
照射することにより、信号品質の高い情報信号を記録・
再生することのできる追記型の光学的情報記録媒体、そ
の製造方法、記録方法及び記録装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】透明基板上に薄膜を形成し、この薄膜に
微小なスポットに絞り込んだレーザー光を照射して情報
信号を記録再生する記録媒体は公知である。追記型の記
録媒体としては、基板上にTeとTeO2の混合物であ
るTeOx(0<x<2〉記録薄膜を形成したものが知
られている(特開昭50−46317号公報)。この記
録媒体からは、再生用光ビームの照射により大きな反射
率変化を得ることができる。
【0003】TeOx記録薄膜は、レーザーアニール等
の初期化処理を施すことなく成膜後の非晶質状態のまま
で、レーザー光を照射して結晶の記録マークを形成する
ことができる。これは非可逆過程であって上書きによる
修正や消去ができないため、この記録薄膜を用いた媒体
は、追記型の記録媒体として利用できる。この記録薄膜
は耐湿性等の環境信頼性が高いため、誘電体の保護層等
を必要としない。製造コストを削減するために、TeO
x記録薄膜は、単層膜として用いられている。
【0004】TeOx記録薄膜では、記録後信号が飽和
するまで、すなわち記録薄膜中のレーザー光照射による
結晶化が十分進行するまでに若干の時間を要する。この
ため、この記録薄膜を用いた媒体は、そのままでは、例
えばデータをディスクに記録して一回転後にそのデータ
を検証するコンピュータ用データファイルのように、高
速応答性が要求される媒体としては不適当である。この
欠点を補うために、TeOxに第3の元素としてPd、
Auを添加することが提案されている(特開昭60−2
03490号公報、特開昭61−68296号公報、特
開昭62−88152号公報)。
【0005】Pd及びAuは、TeOx薄膜中におい
て、レーザー光照射時にTeの結晶成長を促進する働き
をしていると考えられ、これによって、Te及びTe−
Pd合金又はTe−Au合金の結晶粒が高速で生成す
る。Pd及びAuは、耐酸化性が高く、TeOx薄膜の
高い耐湿性を損なうことがない。
【0006】媒体1枚あたりが扱える情報量を増やすた
めの基本的手段として、レーザー光の短波長化、レーザ
ー光を集光する対物レンズの開口数を大きくしてレーザ
ー光のスポット径を小さくするという手段が知られてい
る。また、マークエッジ記録やランド&グルーブ記録が
導入されている。さらに、複数の情報層を積層した多層
構造も提案されている。多層構造を有する媒体におい
て、複数の情報層のいずれか一つを選択するための層認
識手段及び切り換え手段も提案されている。
【0007】このような高密度記録に対応するため、T
eOxに第3の元素としてPd、Au等を添加した記録
材料の組成、及び膜厚を改良した記録媒体も提案されて
いる(特開平9−326135号公報、WO98/09
823号公報)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】一般に、記録媒体で
は、フォーカシング・トラッキング等のサーボ制御を行
うために、記録前の状態で一定以上の反射率が必要とさ
れる。記録前よりも記録後の反射率が高い反射率増加型
の媒体では、記録後にはさらに反射率が高くなる。この
ため、反射率増加型では、記録前及び記録後のいずれか
一方の状態で反射率を0に近づけられず、信号のコント
ラストを大きくする上では不利となる。これに対し、反
射率減少型の媒体では、記録前の反射率を高く保ちなが
ら記録後の反射率を低くできるため、サーボ制御の面で
も好ましく、かつ信号のコントラストを大きくする上で
も有利である。しかし、TeOx記録薄膜を用いた従来
の記録媒体は、いずれも記録前よりも記録後の反射率が
高い反射率増加型であった。
【0009】
【課題を解決するための手段】TeOx記録薄膜を用い
た記録媒体を反射率減少型とすることはこれまで検討さ
れていない。これは、おそらくTeOxが反射率増加型
の材料、即ち結晶化に伴い反射率が上昇する材料である
ことに起因している。本発明者が検討したところ、Te
x記録薄膜は、その組成や膜厚を変えても、反射率減
少型にすることはできなかった。しかし、さらに検討を
重ねた結果、本発明者は、TeOx記録薄膜を用いた反
射率減少型の記録媒体を作製することに成功した。
【0010】即ち、本発明の記録媒体は、透明基板と、
この透明基板上に配置された少なくとも1つの情報層と
を備え、この情報層がTe、O及びMを含有する材料か
らなる記録層を有し、上記透明基板側から入射する光ビ
ームについて、上記記録層に情報を記録する前の反射率
よりも、上記記録層に情報を記録した後の反射率が低い
ことを特徴とする。但し、Mは、Al、Si、Ti、
V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、G
a、Ge、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、A
g、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、
Ir、Pt、Au及びBiから選ばれる少なくとも1つ
の元素である。
【0011】上記記録薄膜を用いた反射率減少型の記録
媒体は、例えば、少なくとも1つの反射調整層を情報層
に追加することにより得ることができる。この反射調整
層の例には、後述する反射層や誘電体層が含まれる。反
射調整層は、典型的には、光学干渉効果により、この層
が存在しない状態では記録層に情報を記録する前の反射
率よりも記録層に情報を記録した後の反射率が高いが、
この層が存在する状態では記録前の反射率よりも記録後
の反射率が低くなるように媒体からの反射を調整する。
反射調整層は、単層であっても複数の層であってもよ
い。
【0012】本発明は、さらに、上記記録媒体の製造方
法、記録方法、記録装置も提供する。本発明の製造方法
の一形態では、本発明の記録媒体を製造するに際し、保
護基板上に情報層を形成し、この情報層上に透明基板を
形成することを特徴とする。このように保護基板上に情
報層を形成する方法は、例えば厚さ0.4mm以下の薄
い透明基板に適している。
【0013】本発明の製造方法の別の一形態では、本発
明の記録媒体を製造するに際し、少なくとも記録層を形
成した後に、60℃以上で5分以上保持するアニール処
理を施す工程を実施することを特徴とする。この製造方
法によれば、より高いC/N比を実現できる。
【0014】本発明の記録方法は、光ビームに対して相
対的に移動する上記記録媒体に、透明基板の側から光ビ
ームをピークパワーとこのピークパワーよりも小さいパ
ワーとの間で変調させながら照射して記録マークを形成
することにより、情報の記録を行い、上記光ビームに対
する上記記録媒体の線速度Vと、照射する光ビームを上
記ピークパワーに保持する時間Tとの積VTが、上記記
録マークの単位長さあたりに換算して、上記線速度Vが
大きくなるにつれて大きくなるように、上記時間Tを設
定することを特徴とする。
【0015】本発明の記録装置は、媒体回転手段と、こ
の媒体回転手段により回転する上記記録媒体に光ビーム
を照射して記録マークを形成する光ビーム照射手段と、
この光ビーム照射手段により照射される光ビームをピー
クパワーとこのピークパワーよりも小さいパワーとの間
で変調する光ビーム変調手段とを含み、この光ビーム変
調手段が、上記光ビームに対する上記記録媒体の線速度
Vと、照射する光ビームを上記ピークパワーに保持する
時間Tとの積VTが、上記記録マークの単位長さあたり
に換算して、上記線速度Vが大きくなるにつれて大きく
なるように、上記時間Tを設定することを特徴とする。
この記録装置は、情報の再生機能を併有する記録装置、
いわゆる記録再生装置も包含する。
【0016】媒体の線速度が大きくなるにつれて、記録
マーク間の熱干渉は小さくなる。その結果、同じ長さの
記録マークを同じピークパワー照射時間で形成すると、
線速度が大きくなるにつれて記録マークが小さくなる。
本発明の記録方法及び記録装置によれば、記録媒体の線
速度Vとピークパワーの照射時間Tとの積VTが、形成
すべき記録マークの単位長さあたりに換算して、線速度
Vが大きくなるにつれて大きくなるように照射時間Tを
設定することにより、記録マークの大きさの相違を補償
できる。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好ましい実施形態
について説明する。TeOx記録薄膜を用いた媒体を反
射率減少型とすることは、これまで検討されておらず、
その可能性も指摘されていない。しかし、本発明者の検
討によると、本来的に反射率増加型である記録薄膜を用
いた媒体の特性を変更できるいくつかの条件が存在する
ことがわかった。そして、更なる検討の結果、高い反射
率を確保しながら、高密度の情報の記録及び再生におい
ても、高いC/N比と高い感度を実現できることが確認
された。
【0018】本発明の好ましい一形態では、情報層が、
記録層に関して透明基板と反対側に反射層を備えてい
る。この反射層は、屈折率nが3以下又は消衰係数kが
1以上、特にnが2.0以下又はkが2.0以上の材料
が好ましい。nとkとの条件は、同時に備えているとさ
らによく、従って、例えばnが3以下かつkが1以上が
より好ましい。反射層の膜厚は、5nm以上200nm
以下が好適である。
【0019】反射層を含む場合、情報層は、記録層と反
射層との間、及び透明基板と記録層との間から選ばれる
少なくとも一方に、屈折率nが1.5以上の材料からな
り、膜厚が0.01λ/n以上0.3λ/n以下である
誘電体層をさらに含むことが好ましい。本明細書におい
て、λは情報の再生に用いる光ビーム(例えばレーザー
光)の波長である。
【0020】この誘電体層は、反射層を形成しない場合
にも好ましい反射調整効果を奏しうる。この場合、誘電
体層は記録層よりも透明基板側に配置するとよい。即
ち、本発明の好ましい別の一形態では、情報層が、透明
基板と記録層との間に誘電体層を備えており、この誘電
体層は、屈折率nが1.5以上の材料からなり、膜厚が
0.01λ/n以上0.3λ/n以下である。
【0021】本発明の記録媒体では情報層は1層に制限
されない。例えば、透明基板側から、第1情報層及び第
2情報層をこの順に備えていてもよい。記録容量を増す
ために、さらに第3情報層、第4情報層,,,を備えて
いても構わない。このように、記録媒体が、さらに少な
くとも1つの追加の情報層を含んで合計でn層の情報層
(nは2以上の整数)を有する場合は、各情報層の間に
分離層を介在させることが好ましい。この分離層は、各
情報層を光学的に分離して不要な光学干渉を排除する。
【0022】記録媒体がn層の情報層(nは2以上の整
数)を有する場合は、n層の情報層において、上記で説
明した情報層は、透明基板から最も遠くに位置すること
が好ましい。反射層によりレーザー光の透過が制限され
るからである。一方、上記情報層が反射層を含まない場
合、例えば透明基板と記録層との間に配置された誘電体
層により反射率減少型への変換を実現している場合は、
n層の情報層において、上記情報層は透明基板から最も
近くに位置することが好ましい。高い透過率が得られる
からである。追加の情報層は、レーザー光による情報の
再生が可能であればその構成に特に制限はない。
【0023】以下、本発明の実施形態について図面を参
照しながらさらに具体的に説明する。図1及び図2は、
本発明の記録媒体の一構成例の部分断面図である。
【0024】図1に示した記録媒体は、透明基板1上
に、記録層2、反射層3及び保護基板4がこの順に設け
られて構成されている。図2に示した記録媒体は、透明
基板1上に、誘電体層7、記録層2及び保護基板4がこ
の順に設けられて構成されている。これらの記録媒体に
おいて、記録層2と反射層3、及び誘電体層7と記録層
2は、それぞれ情報層10として機能している。これら
の媒体では、透明基板1の側からレーザー光5を、対物
レンズ6で集光して照射することにより、記録層2に情
報が記録され、或いは記録された情報が再生される。再
生のために照射される波長λのレーザー光は、情報が記
録された領域に照射されると相対的に小さい反射率を示
す。
【0025】図3に示した記録媒体は、透明基板1上
に、第1情報層10、分離層9、第2情報層20、保護
基板4がこの順に設けられて構成されている。第2情報
層20と保護基板4との間に、さらに追加の情報層を配
置してもよい。追加の情報層として、第3情報層30及
び第4情報層40を配置した例を図4に示す。図示した
ように、各情報層の間には分離層9を配置するとよい。
この媒体に対しても、透明基板1の側からレーザー光5
を対物レンズ6で所定の情報層に集光し、情報が記録又
は再生される。情報層が複数含まれる媒体では、いずれ
か一つの情報層が上記で説明した特徴を備えていればよ
い。
【0026】透明基板1の材料としては、レーザー光5
の波長において略透明の材料、例えば、ポリカーボネイ
ト樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィ
ン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂、ガラ
ス、又はこれらを適宜組み合わせた材料を用いることが
できる。透明基板の厚さは、特に限定されないが、0.
01〜1.5mm程度とするとよい。0.3mm以下の
厚さは、レンズ開口数(NA)の高い光学系を用いた、
より高密度の記録に適している。
【0027】記録層2の材料としては、Te、O及びM
(Mは上記記載の元素)を主成分とする材料が好適であ
る。本明細書において、主成分とは、80原子%を超え
る1又は2以上の成分をいい、2以上の成分が主成分で
ある場合には、成分の合計が80原子%以上であればよ
い。元素Mの好ましい例には、Pd及びAuが含まれ
る。Pd及び/又はAuの添加により、十分な結晶化速
度及び高い環境信頼性が実現しやすくなる。この材料
は、酸素原子(O原子)を25原子%以上60原子%以
下、M原子を1原子%以上35原子%以下含有する組成
を有することが好ましい。
【0028】O原子が25原子%未満では、記録層の熱
伝導率が高くなりすぎて、記録マークが過大となること
がある。このため、記録パワーを上げてもC/N比が上
がりにくい。これに対し、O原子が60原子%を超える
と、記録層の熱伝導率が低くなりすぎて、記録パワーを
上げても記録マークが十分大きくならないことがある。
このため、高いC/N比と高い感度が実現しにくくな
る。
【0029】M原子が1原子%未満では、レーザー光照
射時にTeの結晶成長を促進する働きが相対的に小さく
なって記録層2の結晶化速度が不足することがある。こ
のため、高速でマークを形成できなくなる。これに対
し、M原子が35原子%を超えると、非晶質−結晶間の
反射率変化が小さくなって、C/N比が低くなることが
ある。
【0030】記録層2には、Te、O及びM以外の元素
が含まれていてもよい。例えば、熱伝導率や光学定数の
調整、又は耐熱性・環境信頼性の向上等を目的として、
S、N、F、B及びCから選ばれる少なくとも1種の元
素を添加してもよい。これらの添加元素は、記録層全体
の20原子%以内とすることが好ましい。
【0031】記録層2の膜厚は、2nm以上70nm以
下が好ましい。十分なC/N比が得やすくなるからであ
る。この膜厚が2nm未満では十分な反射率及び反射率
変化が得られないためC/N比が低くなることがある。
この観点から、記録層は5nm以上がさらによい。一
方、この膜厚が70nmを超えると、記録層の薄膜面内
の熱拡散が大きくなって高密度記録においてC/N比が
低くなるおそれがある。
【0032】反射層3の材料としては、屈折率nが3以
下及び/又は消衰係数kが1以上の材料を用いるとよ
い。n及びkの好ましい範囲は、それぞれ2.0以下、
2.0以上である。具体的には、Au、Ag、Cu、A
l、Ni、Pd、Pt、Bi、Sb、Sn、Zn、Cr
等を含む金属、半金属若しくは合金材料、又はTiN、
ZrN等の誘電体を用いればよい。
【0033】反射層3を配置する場合には、反射層3の
冷却能がレーザー光の吸収による記録層2の発熱を拡散
し、その結果、記録感度が低下することがある。このた
め、反射層の材料の熱伝導率は低いことが好ましい。従
って、上記材料の中でも、Ni、Pd、Pt、Bi、S
b、Sn、Zn及びCrから選ばれる少なくとも1種を
主成分とする金属又は合金が好適である。
【0034】但し、記録層2と反射層3との間に誘電体
層を配置する場合は、反射層への熱拡散が抑制されるた
め、熱伝導率の高い反射層を設けても記録感度はさほど
低下しない。従って、この場合は、必ずしも反射層3と
して熱伝導率の低い材料を選択しなくてもよい。
【0035】保護基板4の材料としては、透明基板1の
材料として例示した材料を用いればよいが、透明基板1
と異なる材料を用いてもよく、レーザー光5の波長にお
いて透明でなくてもよい。保護基板4の厚さは、特に限
定されないが、0.05〜3.0mm程度が好適であ
る。
【0036】誘電体層7の材料としては、屈折率nが
1.5以上、より好ましくは2.0以上、さらに好まし
くは2.5以上の材料が好ましい。具体的には、例えば
ZnS、ZnS−SiO2、TiO2、ZrO2、Si、
SiC、Si34、GeN等を主成分とする材料が適し
ている。誘電体層7の膜厚は、反射率変化を大きくでき
る膜厚を選択するとよく、その具体的範囲は上記に例示
したとおりである。
【0037】複数の情報層が配置されている場合も、少
なくとも1つの情報層が、透明基板に近い側から、記録
層2及び反射層3をこの順に、又は誘電体層7及び記録
層2をこの順に設けて構成することが好ましい。しか
し、その他の情報層は、記録層2とは異なる組成を有す
る記録層を含んでいてもよく、追記型に限らず、書き換
え型や再生専用型の記録層を含んでいてもよい。
【0038】分離層9としては、紫外線硬化性樹脂等を
用いることができる。分離層9の厚さは、第1情報層1
0及び第2情報層20のいずれか一方を再生する際に他
方からのクロストークが小さくなるように、少なくと
も、焦点深度ΔZを上回る厚さであることが好ましい。
焦点深度ΔZは、対物レンズ6の開口数NAとレーザー
光5の波長λにより決定され、集光点の強度が無収差の
80%を基準とすると、一般に、ΔZ:λ/{2(N
A)2}と近似できる。例えば、λ=405nm、NA
=0.65の場合は、ΔZ=0.479μmである。こ
の光学系を用いる場合は、±0.5μm以内は焦点深度
内となってしまうので、分離層9の厚さを1.0μmよ
りも大きくするとよい。
【0039】また、分離層9の厚さは、複数の情報層に
高密度の情報の記録・再生を可能にするため、情報層の
間の距離が対物レンズ6の集光可能な範囲にあるように
設定するとよい。分離層の厚さは、具体的には、透明基
板1の厚さと合わせて、対物レンズの許容できる基材厚
公差内にすることが好ましい。
【0040】上述の記録媒体2枚を、それぞれの保護基
板4の側を対向させて貼り合わせていわゆる両面構造と
してもよい。両面構造とすると、媒体1枚あたりに蓄積
できる情報量をさらに2倍にすることができる。
【0041】記録層2、反射層3、誘電体層7等の各層
は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ
ーティング法、CVD(Chemical Vapor Depositio
n)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法等の通
常の気相薄膜堆積法により形成すればよい。
【0042】これらの薄膜層及び分離層9は、透明基板
1上に順次形成した後に保護基板4を形成又は貼り合せ
てもよいし、逆に保護基板4上に順次形成した後に透明
基板1を形成又は貼り合せてもよい。後者は透明基板1
が0.4mm以下のように薄い場合に適している。この
場合、レーザー光案内用の溝であるグルーブやアドレス
信号等の凹凸パターンは、予め所望の凹凸パターンが形
成されたスタンパ等から転写して、保護基板4及び分離
層9の表面に形成しておくとよい。その際、分離層9の
ように、その厚さが薄く、インジェクション法の適用が
困難な場合は、2P法(photo-polymerization法)を用
いてもよい。
【0043】本発明の記録媒体は、グルーブ、グルーブ
間のランド、又はグルーブとランドとの両方を記録トラ
ックとして用いることができる。記録トラックの間隔
は、特に制限されないが、高密度記録のためには記録再
生に用いるレーザー光の波長をλ、レンズ開口数をNA
としたときに、λ/NA以下、特に0.8λ/NA以下
が好適である。
【0044】本発明の記録媒体は、高温度条件下で一定
時間以上保持してアニールすることにより、より高いC
/N比及びより低いジッタ値を得やすくなる。これは、
このアニ−ル工程により、記録層中にランダムに拡散し
ている各原子の一部が適度に結合して微小な結晶核を形
成し、記録に際して結晶化がよりスムーズに行われるた
めと考えられる。こうして、マークエッジがよく揃い、
マーク形状がよく整ったマーク形成が可能となる。
【0045】アニール温度は、記録層2の組成によって
も異なるが、発明者が実験により確認したところによる
と、60℃以上であって、透明基板が溶融しない温度、
即ちその軟化点又は融点以下、例えばポリカーボネイト
の場合は120℃以下が好ましい。アニール時間は、記
録層の組成及びアニール温度によっても異なるが、発明
者の実験によれば、C/N比向上等の効果が飽和するた
めには、少なくとも5分は必要である。さらに長時間ア
ニールしてもよいが、効果が飽和した後にアニールを継
続しても、基本的には、記録再生特性に変化は見られな
い。
【0046】以下、本発明の記録媒体の光学設計及び光
学特性について説明する。多層膜について各層の材料の
屈折率、消衰係数及び膜厚を定め、全ての界面につい
て、エネルギー保存則に基づいて光エネルギー収支の連
立方程式を立て、これを解くと、多層膜全体における、
入射する光ビームに対する反射率、透過率及び各層の吸
収率を求めることができる(例えば、久保田広著「波動
光学」岩波書店、1971年等)。この手法を用いて、
以下の各構成について、光学計算を行った。
【0047】以下の構成は、レーザー光の入射側を左側
として表示する。 ・構成A :基板/記録層/基板 ・構成B :基板/誘電体層/記録層/基板 ・構成C :基板/記録層/誘電体層/基板 ・構成D :基板/誘電体層/記録層/誘電体層/基板 ・構成A':基板/記録層/反射層/基板 ・構成B’:基板/誘電体層/記録層/反射層/基板 ・構成C’:基板/記録層/誘電体層/反射層/基板 ・構成D’:基板/誘電体層/記録層/誘電体層/反射
層/基板
【0048】入射する光ビームの波長は、405nm又
は660nmとした。また、基板の光学定数n−ik
は、いずれの波長においても1.6−i0.0とした。
誘電体層の光学定数は、その依存性を調べるために、n
=1.5〜3.0の範囲で変化させ、k=0.0として
計算した。記録層の光学定数は、Te−O−Pd(原子
数比Te:O:Pd=42:53:5)を用いることを
想定して、波長405nmにおいて非晶質で2.5−i
0.6、結晶で2.0−i1.6、波長660nmにお
いて非晶質で2.5−i0.6、結晶で3.0−i1.
6とした。これらはいずれも、石英基板上に成膜した膜
厚約20nmのサンプルを、分光器で反射率及び透過率
を測定し、その値から計算により求めたものである。な
お、記録層の結晶状態のサンプルは、オーブン内で結晶
化温度近傍の280℃で2分間保持して結晶化させたも
のを用いた。反射層の光学定数は、その依存性を調べる
ためにn=0.5〜4.0、k=0.5〜8.0の範囲
で変化させて計算した。
【0049】記録層が結晶及び非晶質のときの反射率を
それぞれRcry及びRamoとし、記録により生じる反射率
差ΔR(ΔR=Rcry−Ramo)を求めた。ここでは、各
波長及び各構成において、誘電体層又は反射層の膜厚を
任意に変化させた場合のΔRの最小値ΔRminを算出し
た。
【0050】構成A、B、C及びDについて、記録層の
膜厚が20nm及び40nmの場合に、誘電体層の屈折
率nを変化させた場合の結果を図5に示す。図5による
と、いずれの波長においても、又はいずれの記録層の膜
厚においても、構成A及び構成Cでは、誘電体層の屈折
率nの値を変えてもΔRminが0より小さくならず、反
射率減少型にはならない。これに対し、誘電体層を光入
射側に有する構成Bでは、誘電体層の屈折率nを大きく
するほどΔRminは小さくなり、反射率減少型となる。
構成Dでも、構成Bとほぼ同様の反射率変化が得られ
る。これらの媒体では、屈折率が高いほど大きな反射率
変化が得られた。
【0051】従って、反射率減少型で大きな反射率変化
を得るためには、少なくとも、記録層の光入射側には誘
電体層を設け、その屈折率nを1.5以上、好ましくは
2.0以上、より好ましくは2.5以上とするとよい。
これに対し、反光入射側に誘電体層を設けてもあまり効
果がない。
【0052】図6に、構成Bにおける反射率差ΔRの光
入射側誘電体層の膜厚依存性を示す。ここでは、波長が
660nm又は405nm、記録層の膜厚が20nm、
誘電体層の屈折率nが2.5の場合について例示する。
図6によると、ΔRが小さくなるのは、波長をλ、誘電
体層の屈折率をnとすると、波長により若干異なるが、
概ね0.1λ〜0.25λを中心として0.01λ〜
0.3λの範囲であることがわかる。
【0053】構成A’、B’、C’及びD’について、
記録層の膜厚が20nmで誘電体層の屈折率nが2.0
の場合に、反射層の屈折率n及び消衰係数kを変化させ
た場合の結果を(表1)に示す。
【0054】
【表1】
【0055】表1において◎はΔRmin<−15、○は
−15≦ΔRmin<−10、Δは−10≦ΔRmin<−
5、×は−5≦ΔRminを示す。表1によると、構成及
び波長によって若干の相違はあるものの、反射層の屈折
率nが小さいほど、消衰係数kが大きいほどΔRminは
小さくなる。表1によると、反射層は、例えば、nが
2.0以下又はkが2.0以上であることが好ましい。
nが2.0以下かつkが2.0以上であるとさらによ
い。図5に示したように、構成A〜Dにより、ΔRmin
を−15%より小さくすることはできなかった。しか
し、表1に示したように、反射層を用いるとΔRminを
−15%より小さくすることが可能となった。
【0056】波長660nmにおいては、反射層のみを
追加した構成A’でも、反射率変化が大きい反射率減少
型となり、構成B’、C’及びD’のように誘電体層を
追加すれば、さらに反射率変化を大きくすることができ
た。一方、波長405nmにおいては、反射層のみを追
加した構成A’ではΔRminを−5%よりも小さくする
ことはできなかった。しかし、この波長では、構成C’
及びD’のように、光入射側と反対側、即ち記録層と反
射層との間に誘電体層を設けることにより、ΔRminを
十分に小さくすることができた。このような波長域によ
る相違は、記録層の結晶の屈折率nの違い、即ち、波長
405nmでは波長660nmに比べて結晶の屈折率が
1.0程度小さくなっていることに起因していると考え
られる。
【0057】一般に、非晶質の光学定数は波長依存性が
小さいが、結晶の光学定数は波長依存性が大きくなるこ
とが多い。Teを含む材料はこの傾向が顕著であり、波
長が短くなるにつれて結晶の屈折率nが小さくなる。こ
のため、赤色波長域のように結晶のnが大きい波長域
(例えば600〜800nm)では、誘電体層を追加し
なくともΔRminを十分小さくできるが、青紫色波長域
のように結晶のnが小さい波長域(例えば350〜45
0nm)では、記録層と反射層の間に誘電体層を追加し
なければ、ΔRminを十分小さくできない。青紫波長域
では、誘電体層の追加の効果は、赤色波長域における効
果を上回った。
【0058】図7に示した記録再生装置の一例では、レ
ーザーダイオード11を出たレーザー光5は、ハーフミ
ラー12及び対物レンズ6を通して、モーター13によ
って回転している光ディスク14上にフォーカシングさ
れ、情報信号の記録再生が行われる。情報信号の記録を
行う際には、レーザー光5の強度を複数のパワーレベル
間で変調する。レーザー強度を変調するためには、レー
ザー強度変調回路16を用いればよい。レーザー強度の
変調には、具体的には、半導体レーザーの駆動電流を変
調して行えばよいが、電気光学変調器、音響光学変調器
等を用いてもよい。
【0059】マークを形成する部分に対しては、例えば
ピークパワーP1の単一矩形パルスを適用してもよい
が、特に長いマークを形成する場合は、過剰な熱を省
き、マーク幅を均一にするために、ピークパワーP1
びボトムパワーP3(但し、P1>P3)の間で変調され
た複数のパルスの列からなる記録パルス列を用いること
が好ましい。マークを形成しない部分に対しては、バイ
アスパワーP2(但し、P1>P2)で一定に保てばよ
い。
【0060】異なる線速V1及びV2(但しV1<V2)で
物理的な長さの等しいマークをそれぞれ形成する際に
は、レーザー光をピークパワーP1で発光させる時間を
1及びT2とした場合、T1・V1がT2・V2よりも小さ
くなる(T11<T22)ようにするとよい。これは、
線速が高くなる程マーク間の熱干渉が小さくなるため、
1・V1とT2・V2を等しくすると、線速が高いV2
場合にマークが小さくなってしまうからである。
【0061】マークの長さやその前後のスペースの長
さ、さらには隣のマークの長さ等の各パターンによって
マークエッジ位置に不揃いが生じ、ジッタ増大の原因と
なることがある。上記の記録再生方法を適用すると、こ
れを防止し、ジッタを改善するために、上記パルス列の
各パルスの位置又は長さをパターン毎にエッジ位置が揃
うように必要に応じて調整し、補償することができる。
こうして記録された情報信号を再生するためには、パワ
ーレベルPrの連続光を光ディスクに照射し、その反射
光をフォトディテクター15に入射させ、その反射光量
変化を再生信号として検出すればよい。
【0062】なお、図3及び図4に示したような複数の
情報層を備えた記録媒体に情報を記録又は再生する場
合、複数の情報層のいずれかを選択する必要がある。こ
のためには層認識手段及び層切り替え手段が必要となる
が、これらの手段としては、従来から知られているもの
を用いればよい。層認識手段及び層切り替え手段は、既
に商品化されている再生専用光ディスクDVDの記録再
生装置にも搭載されている。
【0063】
【実施例】以下、実施例により本発明をさらに具体的に
説明するが、以下の実施例は本発明を限定するものでは
ない。
【0064】(実施例1)透明基板としては、ポリカー
ボネイト樹脂を用いた。透明基板の直径は約12cm、
厚さは約0.6mm、グルーブ及びランド幅は共に0.
6μm、グルーブ深さは約70nmとした。
【0065】透明基板のグルーブが形成された表面に、
Te−Pd(原子数比90:10)ターゲットを用いて
膜厚約30nmのTe−O−Pd記録層、Al−Cr
(原子数比98:2)ターゲットを用いて膜厚約40n
mのAl−Cr反射層の各層をスパッタリング法により
この順に積層した。いずれも直径100mm、厚さ6m
m程度のターゲットを用い、記録層はDC電源で100
W、反射層はDC電源で500Wの条件で成膜した。記
録層はArとO2の混合ガス(流量比45:55)、反
射層はArのみを、いずれもガス圧約0.2Paに保っ
た雰囲気中で成膜した。こうして形成された膜面上に紫
外線硬化性樹脂を介してダミー基板を貼り合わせ、紫外
線光を照射して硬化させた。このディスクを90℃で2
時間程度アニールしてディスクAを得た。
【0066】ディスクAのTe−O−Pd記録層の組成
は、オージェ電子分光法による元素分析によると、原子
数比でTe:O:Pd=42:53:5であった。Te
−O−Pd記録層の非晶質状態における光学定数n−i
kは波長660nmにおいて非晶質で2.5−i0.
6、結晶で3.0−i1.6であり、ポリカーボネイト
は1.6−i0.0、Al−Crは2.0−i6.0で
あった。これらの光学定数から計算すると、本実施例の
ディスクの反射率はRamo=35.0%、Rcry=19.
1%、ΔR=−15.9%、非晶質状態の場合の記録層
の光吸収率はAamo=40.0%となる。
【0067】さらに、アニール工程を省略した以外は上
記と同様にしてディスクBを、Al−Cr反射層を除い
た以外は上記と同様にしてディスクCを作製した。ディ
スクCについてディスクAと同様の計算を行うと、Ram
o=7.4%、Rcry=18.4%、ΔR=11.0%、
Aamo=30.6%となる。分光器を用いてこれらの値
を実測したところ、ほぼ計算どおりの結果となった。
【0068】ディスクA〜Cのグルーブ及びランドに対
し、波長660nm、NA0.6の光学系を用い、線速
8.2m/sで回転させながら、9.7MHzの単一信
号を記録した。記録に用いたパルス波形はピークパワー
1及びバイアスパワーP2の間で変調された単一の矩形
パルスで、パルス幅は25.8nsとした。P2は1.
0mWとし、再生パワーPrも同じく1.0mWとし
た。この条件で、未記録のトラックに1回だけ記録を行
い、その信号のC/N比をスペクトラムアナライザーで
測定した。
【0069】その結果、ディスクAについては、グルー
ブではP1=10mWで54dB、ランドではP1=10
mWで52dBのC/N比が得られた。これに対し、デ
ィスクBについては、グルーブではP1=10mWで5
3dB、ランドではP1=10mWで51dBのC/N
比が得られた。ディスクCについては、グルーブではP
1=12mWで51dB、ランドではP1=12mWで
5、dBのC/N比が得られた。
【0070】このように、反射層を設けることにより、
ΔRの絶対値が大きい反射率減少型の媒体を提供でき
た。特にアニールを施せば、高いC/N比が得られるよ
うになり、Ramoを大きくできるために反射率が高く、
Aamoを大きくできるために感度が高い記録媒体が得ら
れた。
【0071】(実施例2)保護基板として、ポリカーボ
ネイト樹脂を用いた。保護基板の直径は約12cm、厚
さは約1.1mm、グルーブピッチは約0.32μm、
グルーブ深さは約20nmとした。
【0072】保護基板のグルーブが形成された側の表面
に、第2情報層として、Al−Cr(原子数比98:
2)ターゲットを用いて膜厚約40nmのAl−Cr反
射層、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用
いて膜厚約30nmのZn−S誘電体層、Te−Pd
(原子数比90:10)ターゲットを用いて膜厚約20
nmのTe−O−Pd記録層の各層をスパッタリング法
によりこの順に積層した。いずれも直径100mm、厚
さ6mm程度のターゲットを用い、反射層はDC電源で
500W、誘電体層はRF電源で500W、記録層はD
C電源で100Wの条件で成膜した。また、反射層及び
誘電体層はArのみ、記録層はArとO2の混合ガス
(流量比45:55)を、いずれもガス圧約0.2Pa
に保った雰囲気中で成膜した。
【0073】第2情報層の上に分離層として紫外線硬化
性樹脂を塗布し、その上からグルーブピッチ約0.32
μm、グルーブ深さ約20nmのグルーブが形成された
ポリカーボネイト上にAl薄膜コーティングを施したス
タンパ基板を押しつけた状態で紫外線光を照射して硬化
させた。その後にスタンパ基板を剥離することで分離層
にグルーブを形成した。
【0074】この分離層の上に、第1情報層として、膜
厚約10nmのTe−O−Pd記録層、膜厚約25nm
のZn−S誘電体層の各層を、第2情報層と同様にして
この順に積層した。第1情報層の上に、紫外線硬化性樹
脂を介して厚さ約0.09mmのポリカーボネイト基板
を貼り合せ、紫外線光を照射して硬化させることで、厚
さ約0.1mmの透明基板を形成した。さらに、このデ
ィスクを90℃で2時間程度アニールしてディスクDを
得た。
【0075】Te−O−Pd記録層の非晶質状態におけ
る光学定数n−ikは波長405nmにおいて非晶質で
2.5−i0.6、結晶で2.0−i1.6であり、ポ
リカーボネイトは1.6−i0.0、Zn−Sは2.5
−i0.0、Al−Crは0.7−i4.0であった。
これらの光学定数から計算すると、ディスクDは、第1
情報層でRamo=9.6%、Rcry=2.5%、ΔR=−
7.1%、Aamo=19.8%、記録層が非晶質状態の
時の透過率はTamo=69.6%、第2情報層でRamo=
30.8%、Rcry=4.8%、ΔR=−26.0%、
Aamo=49.8%となる。分光器を用いてこれらの値
を実測したところ、ほぼ計算どおりの値が得られた。
【0076】ディスクDの第1情報層のグルーブ及び第
2情報層のランドに対し、波長405nm、NA0.8
5の光学系を用い、線速度5.0m/sで回転させなが
ら、12.3MHzの単一信号を記録した。記録に用い
たパルス波形はピークパワーP1及びバイアスパワーP2
の間で変調された単一の矩形パルスで、パルス幅は2
0.4nsとした。P2は1.0mWとし、再生パワー
rは第1情報層に対しては1.0mW、第2情報層に
対しては1.5mWとした。この条件で、未記録のトラ
ックに1回だけ記録を行い、その信号のC/N比をスペ
クトラムアナライザーで測定した。
【0077】その結果、本実施例のディスクは、第1情
報層のグルーブではP1=8mWで50dB、第2情報
層のランドではP1=10mWで50dBのC/N比が
得られた。いずれも実用的な記録媒体として十分なC/
N比及び感度を有していた。
【0078】この第1情報層は、透過率が約70%と高
いため、これと同様の構成を有する情報層を複数用いる
ことにより、汎用のレーザーの出力で記録可能な3層以
上の情報層を有する記録媒体を実現することも可能であ
る。
【0079】(実施例3)保護基板としては、ポリカー
ボネイト樹脂を用いた。保護基板の直径は約12cm、
厚さは約1.1mm、グルーブピッチは約0.32μ
m、グルーブ深さは約20nmとした。
【0080】保護基板のグルーブが形成された側の表面
に、第4情報層として、Al−Cr(原子数比98:
2)ターゲットを用いて膜厚約40nmのAl−Cr反
射層、Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用
いて膜厚約15nmのZn−S誘電体層、Te−Pd
(原子数比90:10)ターゲットを用いて膜厚約20
nmのTe−O−Pd記録層、Zn−S(原子数比5
0:50)ターゲットを用いて膜厚約15nmのZn−
S誘電体層、の各層をスパッタリング法によりこの順に
積層した。この第4情報層の表面に、紫外線硬化性樹脂
を用いて2P法により保護基板と同じ溝パターンを転写
し、厚さ約13μmの分離層を形成した。
【0081】この分離層の表面に、第3情報層として、
Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜
厚約10nmのZn−S誘電体層、Te−Pd(原子数
比90、10)ターゲットを用いて膜厚約10nmのT
e−O−Pd記録層、Zn−S(原子数比50:50)
ターゲットを用いて膜厚約30nmのZn−S誘電体層
の各層をスパッタリング法によりこの順に積層した。こ
の第3情報層の表面に、紫外線硬化性樹脂を用いて2P
法により保護基板と同じ溝パターンを転写し、厚さ約1
3μmの分離層を形成した。
【0082】この分離層の表面に、第2情報層として、
Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜
厚約15nmのZn−S誘電体層、Te−Pd(原子数
比90:10)ターゲットを用いて膜厚約8nmのTe
−O−Pd記録層、Zn−S(原子数比50:50)タ
ーゲットを用いて膜厚約30nmのZn−S誘電体層の
各層をスパッタリング法によりこの順に積層した。この
第2情報層の表面に、紫外線硬化性樹脂を用いて2P法
により保護基板と同じ溝パターンを転写し、厚さ約13
μmの分離層を形成した。
【0083】この分離層の表面に、第1情報層として、
Zn−S(原子数比50:50)ターゲットを用いて膜
厚約20nmのZn−S誘電体層、Te−Pd(原子数
比90:10)ターゲットを用いて膜厚約6nmのTe
−O−Pd記録層、Zn−S(原子数比50:50)タ
ーゲットを用いて膜厚約35nmのZn−S誘電体層の
各層をスパッタリング法によりこの順に積層した。この
第1情報層の表面に、ポリカーボネイトのシートを紫外
線硬化樹脂を用いて貼り合わせ、厚さ0.08mmの透
明基板とした。
【0084】各層の成膜は、いずれも、直径100m
m、厚さ6mm程度のターゲットを用い、反射層はDC
電源500W、誘電体層はRF電源500W、記録層は
DC電源100Wで成膜した。また、反射層及び誘電体
層は、Arのみ、記録層はAr及びO2の混合ガス(流
量比45:55)を、いずれも、ガス圧約0.2Paに
保った雰囲気で成膜した。さらに、このディスクを90
℃で2時間程度アニールしてディスクEとした。
【0085】ディスクEの各情報層のグルーブに対し、
波長405nm、NA0.85の光学系を用い、線速度
5.0m/sで回転させながら、12.3MHzの単一
信号を記録した。記録に用いたパルス波形は、ピークパ
ワーP1及びバイアスパワーP2の間で変調された単一の
矩形パルスで、パルス幅は20.4nsとした。P2
0.5mWとし、再生パワーPrは、第1情報層を再生
する場合は0、5mW、第2情報層を再生する場合は
0.6mW、第3情報層を再生する場合は0.7mW、
第4情報層を再生する場合は1.0mWとした。再生パ
ワーは、レーザー光入射側から離れるにつれて大きくな
るように設定されている。この条件で、未記録のトラッ
クに1回だけ記録を行い、その信号のC/N比をスペク
トルアナライザーで測定した。
【0086】その結果、ディスクEからは、第1情報層
ではP1=9.0mWで51dB、第2情報層ではP1
9.5mWで51dB、第3情報層ではP1=11.0
mWで50dB、第4情報層ではP1=10.5mWで
52dBのC/N比が得られた。こうして、情報層を多
層としても、十分なC/N比及び感度を有する記録媒体
となることが確認できた。
【0087】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、
反射率が高く、高密度な情報の記録再生においてもC/
N比及び感度の高い良好な記録再生特性が得られる追記
型の光学的情報記録媒体、その製造方法、記録方法及び
記録装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光学的情報記録媒体の一構成例の断
面図である。
【図2】 本発明の光学的情報記録媒体の別の一構成例
の断面図である。
【図3】 本発明の光学的情報記録媒体のまた別の一構
成例の断面図である。
【図4】 本発明の光学的情報記録媒体のさらに別の一
構成例の断面図である。
【図5】 各波長・各記録層膜厚における反射率差ΔR
と誘電体層の屈折率nとの関係の一例を示す図である。
【図6】 反射率差ΔRと誘電体層の屈折率nとの関係
の一例を示す図である。
【図7】 本発明の光学的情報記録媒体の記録装置の一
例を示す図である。
【符号の説明】
1 透明基板 2 記録層 3 反射層 4 保護基板 5 レーザー光 6 対物レンズ 7 誘電体層 8 第1情報層 9 分離層 10 第1情報層 20 第2情報層 30 第3情報層 40 第4情報層 11 レーザーダイオード 12 ハーフミラー 13 モーター 14 光ディスク 15 フォトディテクター 16 レーザー強度変調回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 7/24 538 G11B 7/24 538C 538F 541 541B 7/0045 7/0045 A 7/26 531 7/26 531 Fターム(参考) 5D029 JA01 JB05 JB06 JB21 JB35 JC02 LB07 LC04 LC06 MA14 RA23 5D090 AA01 BB03 CC01 HH01 5D121 AA01 AA07 GG08

Claims (19)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基板と、前記透明基板上に配置され
    た少なくとも1つの情報層とを備え、前記情報層がT
    e、O及びMを含有する材料からなる記録層を有し、前
    記透明基板側から入射する光ビームについて、前記記録
    層に情報を記録する前の反射率よりも、前記記録層に情
    報を記録した後の反射率が低いことを特徴とする光学的
    情報記録媒体。但し、Mは、Al、Si、Ti、V、C
    r、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、G
    e、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、I
    n、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、
    Pt、Au及びBiから選ばれる少なくとも1つの元素
    である。
  2. 【請求項2】 前記情報層が、前記記録層に関して前記
    透明基板と反対側に反射層を備え、前記反射層が、屈折
    率nが3以下又は消衰係数kが1以上の材料からなるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の光学的情報記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記反射層が、屈折率nが2.0以下又
    は消衰係数kが2.0以上の材料からなることを特徴と
    する請求項2に記載の光学的情報記録媒体。
  4. 【請求項4】 前記反射層の膜厚が5nm以上200n
    m以下であることを特徴とする請求項2又は3に記載の
    光学的情報記録媒体。
  5. 【請求項5】 前記情報層が、前記記録層と前記反射層
    との間、及び前記透明基板と前記記録層との間から選ば
    れる少なくとも一方に、屈折率nが1.5以上の材料か
    らなり、膜厚が0.01λ/n以上0.3λ/n以下で
    ある誘電体層を備えたことを特徴とする請求項2〜4の
    いずれかに記載の光学的情報記録媒体。但し、λは情報
    の再生に用いる光ビームの波長である。
  6. 【請求項6】 前記情報層が、前記透明基板と前記記録
    層との間に、屈折率nが1.5以上の材料からなり、膜
    厚が0.01λ/n以上0.3λ/n以下である誘電体
    層を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光学的情
    報記録媒体。但し、λは情報の再生に用いる光ビームの
    波長である。
  7. 【請求項7】 前記誘電体層の膜厚が0.05λ/n以
    上0.3λ/n以下であることを特徴とする請求項5又
    は6に記載の光学的情報記録媒体。
  8. 【請求項8】 前記誘電体層の膜厚が0.01λ/n以
    上0.2λ/n以下であることを特徴とする請求項5又
    は6に記載の光学的情報記録媒体。
  9. 【請求項9】 前記情報層を含む合計n層の情報層を有
    し、前記n層の情報層の間にそれぞれ分離層が配置され
    たことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の光
    学的情報記録媒体。ただし、nは2以上の整数である。
  10. 【請求項10】 前記情報層を含む合計n層の情報層を
    有し、前記情報層が、前記n層の情報層において前記透
    明基板から最も遠くに位置することを特徴とする請求項
    2〜5のいずれかに記載の光学的情報記録媒体。ただ
    し、nは2以上の整数である。
  11. 【請求項11】 前記情報層を含む合計n層の情報層を
    有し、前記情報層が、前記n層の情報層において前記透
    明基板から最も近くに位置することを特徴とする請求項
    6に記載の光学的情報記録媒体。ただし、nは2以上の
    整数である。
  12. 【請求項12】 前記記録層において、酸素原子の含有
    割合が25原子%以上60原子%以下、M原子の含有割
    合が1原子%以上35原子%以下であることを特徴とす
    る請求項1〜11のいずれかに記載の光学的情報記録媒
    体。
  13. 【請求項13】 前記記録層の膜厚が2nm以上70n
    m以下であることを特徴とする請求項1〜12のいずれ
    かに記載の光学的情報記録媒体。
  14. 【請求項14】 前記記録層に情報を記録した後におけ
    る前記光ビームの反射率から、前記記録層に情報を記録
    する前における前記光ビームの反射率を差し引いた反射
    率差ΔRが−5%よりも低いことを特徴とする請求項1
    〜13のいずれかに記載の光学的情報記録媒体。
  15. 【請求項15】 さらに保護基板を含むことを特徴とす
    る請求項1〜14のいずれかに記載の光学的情報記録媒
    体。
  16. 【請求項16】 請求項15に記載の光学的情報記録媒
    体の製造方法であって、前記保護基板上に少なくとも1
    つの情報層を形成し、前記情報層上に前記透明基板を形
    成することを特徴とする光学的情報記録媒体の製造方
    法。
  17. 【請求項17】 請求項1〜15のいずれかに記載の光
    学的情報記録媒体の製造方法であって、少なくとも前記
    記録層を形成した後に、60℃以上で5分以上保持する
    アニール処理を施すことを特徴とする光学的情報記録媒
    体の製造方法。
  18. 【請求項18】 請求項1〜15のいずれかに記載の光
    学的情報記録媒体の記録方法であって、前記光ビームに
    対して相対的に移動する前記記録媒体に、前記透明基板
    の側から前記光ビームをピークパワーと前記ピークパワ
    ーよりも小さいパワーとの間で変調させながら照射して
    記録マークを形成することにより、情報の記録を行い、
    前記光ビームに対する前記記録媒体の線速度Vと、照射
    する光ビームを前記ピークパワーに保持する時間Tとの
    積VTが、前記記録マークの単位長さあたりに換算し
    て、前記線速度Vが大きくなるにつれて大きくなるよう
    に、前記時間Tを設定することを特徴とする光学的情報
    記録媒体の記録方法。
  19. 【請求項19】 請求項1〜15のいずれかに記載の光
    学的情報記録媒体の記録装置であって、媒体回転手段
    と、前記媒体回転手段により回転する前記媒体に光ビー
    ムを照射して記録マークを形成する光ビーム照射手段
    と、前記光ビーム照射手段により照射される光ビームを
    ピークパワーと前記ピークパワーよりも小さいパワーと
    の間で変調する光ビーム変調手段とを含み、前記光ビー
    ム変調手段が、前記光ビームに対する前記記録媒体の線
    速度Vと、照射する光ビームを前記ピークパワーに保持
    する時間Tとの積VTが、前記記録マークの単位長さあ
    たりに換算して、前記線速度Vが大きくなるにつれて大
    きくなるように、前記時間Tを設定することを特徴とす
    る光学的情報記録媒体の記録装置。
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