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JP2002096147A - 連続鋳造鋳型内全域の凝固シェル厚、溶鋼流速、鋳片品質センシング方法及びその装置。 - Google Patents

連続鋳造鋳型内全域の凝固シェル厚、溶鋼流速、鋳片品質センシング方法及びその装置。

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JP2002096147A
JP2002096147A JP2001183765A JP2001183765A JP2002096147A JP 2002096147 A JP2002096147 A JP 2002096147A JP 2001183765 A JP2001183765 A JP 2001183765A JP 2001183765 A JP2001183765 A JP 2001183765A JP 2002096147 A JP2002096147 A JP 2002096147A
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JP
Japan
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flow velocity
mold
distribution
vortex
molten steel
Prior art date
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JP2001183765A
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Yoshihiro Yamada
義博 山田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 連続鋳造設備における鋳型内全域の時系列流
動分布及び凝固シェル厚推定方法を提供する。 【解決手段】鋳型に設置した温度計測器から得られた時
系列データを用いて、各計測時間で2点以上の温度計測
器設置点近傍の溶鋼流速を計算し、次に各計測点での各
当該流速を生じさせる渦を求め、次にその渦が鋳型内全
域に形成する流速ベクトル分布を計算し、当該流速ベク
トル分布を用いて鋳型内全域の凝固シェル厚分布を推定
することを特徴とする鋳型内全域の凝固シェル厚センシ
ング方法、鋳型内全域の流速ベクトル分布を用いて気泡
および/又は介在物の拡散分布を計算し、可視化表示す
ることを特徴とする鋳型内全域の鋳片品質オンライン可
視化センシング方法及びその装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続鋳造設備にお
ける流動凝固シェル厚及び品質のオンライン可視化セン
シング方法,並びにその装置に関し、詳細には鋳片の品
質を判定する連続鋳造設備における鋳型内全域の凝固シ
ェル厚センシング方法,流動凝固シェル厚品質のオンラ
イン可視化センシング方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、連続鋳造におけるシェル厚測
定方法が提案されている。この連続鋳造におけるシェル
厚測定方法に関する技術は、特開昭63−30162号
公報(以下、「先行技術1」という)に信頼性の高いブ
レークアウト予知を行うため、時系列的に鋳型温度をパ
ターン化し、推移パターンが予め設定したパターンと一
致したときにブレークアウトの発生を予知する発明が開
示され、特開平1−262050号公報(以下、「先行
技術2」という)に溶鋼の偏流の検知を行なうため、鋳
型長辺と短辺の左右対称位置の温度差あるいは熱流量差
および偏差をもとに溶鋼の偏流を検知する発明が開示さ
れている。図2は、従来の連続鋳造におけるシェル厚測
定方法の図である。 図3は、連続鋳造鋳型における鋳
型温度計測方法の図である。図3(a)は連続鋳造の縦
断面図で図3(b)の矢視B−B、図3(b)は連続鋳
造の横断面図で図3(a)の矢視A−Aである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】連続鋳造設備における
鋳型において、連続鋳造を行う際、浸漬ノズル4から溶
鋼2が連続鋳造鋳型1に供給され、溶鋼2は冷却ボック
ス7が裏に設置された銅製の連続鋳造鋳型1の表面から
抜熱されて凝固し、凝固シェル3を形成する。この凝固
シェル3はロール6により連続鋳造鋳型1の下方から引
き抜かれる。この凝固シェル3の厚さの分布、介在物の
分布、気泡の分布は鋳込まれた鋳片の品質に影響する。
このため従来、鋳片品質のモニターのため、鋳型1の冷
却銅板内部に熱電対5を設置し、温度を時系列でモニタ
ーする技術開発が行われている。しかしながら、先行技
術2に開示された偏流検知方法では流速分布は検知でき
なかった。また、図2に記載の先行技術1に開示された
連続鋳造におけるシェル厚測定方法にあっては、この温
度モニターは、熱電対設置位置においてのみ可能であ
り、熱電対を設置していない点でのモニターは困難であ
った。
【0004】すなわち、従来の流動センシング方法で
は、鋳造方向をX方向、鋳造直角方向をY方向としたと
きに、熱電対5の設置位置(Xi,Yi)とその点の温
度Tiの関数として次式(1)により流速Uの絶対値
(スカラー値)|U|が得られた。
【式1】
【0005】詳しくは、大中逸雄著「コンピュータ伝熱
・凝固解析入門」(丸善1985年)336−337頁
の記載から容易に得られるように、熱電対温度Ti
(℃)、流速の絶対値|U(Xi,Yi)|(メートル
毎秒)、熱伝達率h(ワット毎平方メートル毎ケルビ
ン)、冷却水温度Tw(℃)、抜熱量q(ワット毎平方
メートル)、代表長さd(メートル)、動粘性係数ν
(平方メートル毎秒)、熱伝導率λ(ワット毎メートル
毎ケルビン)、ヌッセルト数Nu[−]、レイノルズ数
Re[−]、プランドル数Pr[−]には次式(2)の
関係があり、式変形で式(1)が得られる。
【式2】
【0006】これらの式を用いる従来法では熱電対の設
置位置5以外では流速Uの絶対値が得られず、また熱電
対の設置位置5においても流速の方向を示す流速ベクト
ルは得られなかった。また計測点を増加させることは費
用がかかり、均一冷却にも影響があるため精度を向上さ
せることは困難であるという問題があった。本発明は、
上記課題に鑑み、連続鋳造設備において、安価で、均一
冷却に悪影響を及ぼさないように、既設の熱電対により
鋳型内全域の凝固シェル厚分布及び気泡・介在物の拡散
分布の推定ができる方法及び装置を提供することを目的
とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、連続鋳造設
備において、安価で均一冷却に悪影響を及ぼさない装置
により鋳型内全域の時系列流動分布推定ができるシェル
厚及び気泡・介在物推定方法について鋭意検討を重ねた
結果、鋳型に設置した温度計測器から得られた時系列デ
ータを用いて、各計測時間で2点以上の温度計測器設置
点近傍の溶鋼流速を計算し、次に各計測点での各当該流
速を生じさせる渦を求め、次にその渦が鋳型内全域に形
成する流速ベクトル分布を計算し、当該流速ベクトル分
布を用いて鋳型内全域の凝固シェル厚分布及び気泡・介
在物分布を推定することにより、安価で、均一冷却に悪
影響を及ぼさないで鋳型内全域の時系列流動分布推定が
できることを見いだした。
【0008】本発明は以上の知見に基づいてなされたも
のであって、その要旨とするところは、(1) 連続鋳
造鋳型内長辺に設置した2以上の温度計測器から得られ
た時系列データを用いて、各計測時間で温度計測器設置
点近傍の溶鋼流速を計算し、次に各計測点での各当該流
速を生じさせる渦を求め、次にその渦が鋳型内全域に形
成する流速ベクトル分布を計算し、当該流速ベクトル分
布を用いて連続鋳造鋳型内全域の凝固シェル厚分布を推
定する方法、また、(2) 連続鋳造鋳型内短辺に設置
した2以上の温度計測器から得られた時系列データを用
いて、各計測時間で温度計測器設置点近傍の溶鋼流速を
計算し、次に各計測点での各当該流速を生じさせる渦を
求め、次にその渦が鋳型内全域に形成する流速ベクトル
分布を計算し、当該流速ベクトル分布を用いて連続鋳造
鋳型内全域の凝固シェル厚分布を推定する方法、また、
(3) 連続鋳造鋳型内長辺に設置した2以上の温度計
測器から得られた時系列データを用いて、各計測時間で
温度計測器設置点近傍の溶鋼流速を計算し、次に各計測
点での各当該流速を生じさせる渦を求め、次にその渦が
鋳型内全域に形成する流速ベクトル分布を計算し、前記
流速ベクトル分布を用いて、各計測時間で浸漬ノズルか
らの溶鋼吐出流速を計算し、次に溶鋼のモールド内下降
流速を推定することを特徴とする連続鋳造鋳型内全域の
溶鋼流速センシング方法、また、(4) 前記(1)〜
(3)の何れか1項に記載の方法で得られた鋳型内全域
の流速ベクトル分布を用いて気泡および/又は介在物の
拡散分布を計算し、可視化表示する方法、(5) 連続
鋳造鋳型内に設置した2以上の温度計測器と、前記温度
計測器から得られた時系列データを用いて温度計測器設
置点近傍の溶鋼流速を計算する溶鋼流速演算手段と、各
温度計測点での前記溶鋼流速を生じさせる渦を計算する
渦演算手段と、前記渦が鋳型内全域に形成する流速ベク
トル分布を計算する流速ベクトル演算手段と、前記流速
ベクトル分布から鋳型内全域の凝固シェル厚分布を計算
する凝固シェル厚演算手段と、出力手段を有することを
特徴とする凝固シェル厚センシング装置。(6) 前記
(5)記載の温度計測器、溶鋼流速演算手段、渦演算手
段,流速ベクトル演算手段及び出力手段に加え、流速ベ
クトル分布から気泡及び/又は介在物の拡散分布を計算
する気泡介在物拡散演算手段を有することを特徴とする
鋳片品質オンライン可視化センシング装置。(7)連続
鋳造鋳型内に設置した2以上の温度計測器と、前記温度
計測器から得られた時系列データを用いて温度計測器設
置点近傍の溶鋼流速を計算する溶鋼流速演算手段と、各
温度計測点での前記溶鋼流速を生じさせる渦を計算する
渦演算手段と、前記渦が鋳型内全域に形成する流速ベク
トル分布を計算する流速ベクトル演算手段と、前記流速
ベクトル分布から溶鋼の鋳型内下降流速を推定する下降
流速演算手段と、出力手段を有することを特徴とする溶
鋼流速センシング装置。にある。
【0009】
【発明の実施の形態】まず、前記(1)に係る発明のう
ち、連続鋳造設備において鋳型内長辺に設置した2以上
の温度計測器から得られた時系列データを用いて、各計
測時間で2点以上の温度計測器設置点近傍の溶鋼流速を
計算し、次に各計測点での各当該流速を生じさせる渦を
求め、次にその渦が鋳型内全域に形成する流速ベクトル
分布を計算する方法について図面を見ながら説明する。
図1は、本発明の鋳型内全域の凝固シェル厚センシング
方法の流れ図である。図4は、本発明の鋳型長辺に熱電
対を設置した場合の鋳型内全域の凝固シェル厚センシン
グ方法の説明図である。本発明においては、iを熱電対
番号とし、半径R(メートル)、渦度Ω(/秒)の渦モ
デル9が渦中心(Xv,Yv)にあると考え、その渦モ
デル9の熱電対5の設置位置(Xi,Yi)に誘起する
流速ベクトル10の絶対値が、熱電対からの換算流速絶
対値(スカラー値)8と等しくなるようにすることで、
渦モデル9が渦中心(Xv,Yv)を同定し、求められ
た渦モデル9が鋳型1内のすべての点に誘起する流速ベ
クトルを求めることができる。
【0010】具体的には、各熱電対5の設置位置(X
i,Yi)の流速U(メートル/秒)の絶対値は各点の
温度Tiの関数として式(1)で表わされる。図4
(a)はこの分布をイメージにしたものである。図4
(a)に示すように、従来の方法では熱電対の設置位置
5以外では流速分布が表示されることはない。あるいは
図2に従って熱電対データから各点でのシェル厚分布を
計算するが、このときも、熱電対設置位置のみのデータ
のみ得られる。本発明においては、半径R(メート
ル)、渦度Ω(/秒)の渦モデル9が渦中心(Xv,Y
v)にあると考え、その渦モデル9の熱電対5の設置位
置(Xi,Yi)に誘起する流速ベクトル10即ちU
(Xi,Yi)=(ui,vi)は、次式(3)で表わ
される。
【式3】 具体的には、特開平7−323356号公報記載の式を
用いて、渦の鏡像の番号jの総和をΣとした次式(4)
を、整理することによって式(3)が得られる。
【式4】 (4)式でjは壁とメニスカスを対称軸としたときの渦
の鏡像の番号で、J=1が実像でJ=2〜4が鏡像であ
り、(Xvj、Yvj)はj番目の像の中心座標(±X
v,±Yv)を示す。また、各渦中心から流速を求める
点へのベクトルがy軸となす角をθそのベクトルの絶
対値をrとした。ここで、流速Uの絶対値と流速ベク
トル10の成分ui,viが次式(5)を満たすように
すると、変数Xv,Yv,R,Ω4つに対し、熱電対5
の設置位置(Xi,Yi)につき1個の方程式が立てら
れ、原理的には熱電対5の設置位置(Xi,Yi)を4
点とることにより、変数Xv,Yv,R,Ωが求まる。
【式5】 これにより渦モデル9の渦中心(Xv,Yv)を同定す
ることができる。
【0011】つぎに求められた渦モデル9が鋳型1内の
任意の点(x,y)に誘起する流速ベクトル(u,v)
は、式(4)を用いて次式(6)で求めることができ
る。
【式6】 この方法において、R,Ωは鋳型内の幾何学的な仮定か
ら別に求まる場合が有り、その場合は、熱電対5の設置
位置(Xi,Yi)は2点で可能である。また熱電対5
の設置位置(Xi,Yi)が5点以上の場合は、誤差が
最小となるように各点での方程式(3)を解くことで渦
モデル9の渦中心(Xv,Yv)を同定することができ
る。
【0012】次に、前記(2)に係る発明のうち、連続
鋳造設備において鋳型内短辺に設置した2以上の温度計
測器から得られた時系列データを用いて、各計測時間で
2点以上の温度計測器設置点近傍の溶鋼流速を計算し、
次に各計測点での各当該流速を生じさせる渦を求め、次
にその渦が鋳型内全域に形成する流速ベクトル分布を計
算する方法について図面を見ながら説明する。図8は本
発明の鋳型短辺に熱電対を設置した場合の鋳型内全域の
凝固シェル厚センシング方法の説明図である。
【0013】本発明においては、iを熱電対番号とし、
半径R(メートル)、渦度Ω(/秒)の渦モデル9が渦
中心(Xv,Yv)にあると考え、鋳型長辺幅をWと
し、座標の原点をメニスカスの中央に取った場合、当該
渦モデル9の熱電対5の設置位置(Xi,±W/2)に
誘起する流速ベクトル10の絶対値が、熱電対からの換
算流速絶対値(スカラー値)8と等しくなるようにする
ことで、渦モデル9が渦中心(Xv,Yv)を同定し、
求められた渦モデル9が鋳型1内のすべての点に誘起す
る流速ベクトルを求めることができる。具体的には、各
熱電対5の設置位置(Xi,±W/2)の流速U(メー
トル/秒)の絶対値は各点の温度Tiの関数として式
(1)で表わされる。従来の方法では熱電対の設置位置
5以外では流速分布が表示されることはない。あるいは
図2に従って熱電対データから各点でのシェル厚分布を
計算するが、このときも、熱電対設置位置のみのデータ
のみ得られる。あるいは短辺のみに熱電対が設置されて
いる場合、長辺の流速分布は推定できなかった。本発明
においては、半径R(メートル)、渦度Ω(/秒)の渦
モデル9が渦中心(X0,Y0)にあると考え、その渦
モデル9の熱電対5の設置位置(Xi,±W/2)に誘
起する流速ベクトル10即ちU(xi,±W/2)=
(ui,vi)は、式(4)に座標(xi,±W/2)
を代入することにより次式(12)で表わされる。
【式12】 この式は渦の角速度Ω、渦の半径R、渦の中心座標成分
x0、y0を変数とするので、熱電対を短辺の片側に4
点以上設置し、それぞれに対して式(12)を作り、連
立させて連立方程式を解くことにより求めることができ
る。つぎに求められた渦モデル9が鋳型1内の任意の点
(x,y)に誘起する流速ベクトル(u,v)は、式
(4)を用いた式(6)にて求めることができる。
【0014】上記の何れかの方法で得られた鋳型内全域
の流速ベクトル分布を用いて、各計測時間で浸漬ノズル
からの溶鋼吐出流速を計算し、次に溶鋼のモールド内下
降流速を推定する前記(3)の発明に係る方法について
図8を見ながら説明する。上記の方法で浸漬ノズルから
の溶鋼吐出流11より上の流速ベクトル分布を予測する
ことができ、それらを誘引する、浸漬ノズルからの溶鋼
吐出流11の流速U0とその下流の流速Ujetを実験的
な関係式(13)を用いて推定することができる。
【式13】 ここでLは吐出孔からの吐出流に沿った距離(メート
ル)、Ujet(L)は距離Lでの流速の絶対値(メート
ル毎秒)、U0は吐出流速(メートル毎秒)、d0はノ
ズルの直径(メートル)、C1とk、k2、k3,L0
は実験的に得られた定数である(C1=6.0、k=-
1.0、k2=1.0、k3=1.0、L0=5×d
0)。また溶鋼のモールド内下降流12の流速Udown
(メートル毎秒)を実験的な関係式(14)を用いて推
定することができる。
【式14】 ここでLは吐出孔からの吐出流に沿った距離(メート
ル)、Udownは流速の絶対値(メートル毎秒)、C2と
m,L1は実験的に得られた定数である(C2=5.
0、m=−0.5、L1=5×d0)。また、吐出流に
垂直な流速分布u(r)は、吐出孔からの距離L(メー
トル)の位置での半値幅b(L)を用いて式(15)で
表される。
【式15】 吐出孔から壁面に衝突するまでの範囲では、式13で求
めたUjetを式16に代入してu(r)を求める。
【式16】 壁面に衝突した後の範囲では、式14で求めたUdownを
式17に代入してu(r)を求める。
【式17】 ここでrは吐出孔から吐出流中心に沿った距離Lのある
位置から垂直方向の距離(メートル)、u(r)は流速
の絶対値(メートル毎秒)、C3、C4、C5は実験的
に得られた定数である(C3=0.05,C4=0.
7、C5=0.7)。
【0015】以上で鋳型内だけでなく、鋳型の下部の全
域の流速分布も予測することができる。つまり、鋳型の
下部の任意の点(x、y)に対し、吐出孔から吐出流中
心に沿った距離Lとその位置Lから垂直方向の距離rに
(x、y)があるように、かつ、rが最小となるように
Lとrを一意に決めることができる。得られたLとrと
渦を計算するのに使用したΩとRからU0、Ujet、Ud
ownを求め、最終的に、鋳型の下部の任意の点(x、
y)での流速u(r)が得られ、吐出流中心に沿った距
離Lの線に沿ってu(r)の単位ベクトルを設定するこ
とで流速ベクトルを求めることができる。更に下降流速
を求めた後、鋳型の下部の任意の点(x、y)での流速
u(r)をシェル厚分布、介在物分布の式に代入する。
次に、鋳型内の全域の流速ベクトル分布を用いて、論文
“Yamada, Y. and Suzuki, N. : Numerical Simulation
and Visualization for Fluid Motion with Solidific
ation in Continuous Casting, WCCM-III, Makuhari, p
p. 1772-1773 (1994)”や日本機械学会第6回計算力学
講演会論文集“山田、鈴木「連続鋳造における流動凝固
シミュレーション」pp.360−361(199
3)”に書かれているように、凝固開始点であるメニス
カスから各点での流速絶対値の関数である凝固成長速度
を積分することにより、前記(1)又は(2)の発明に
係る鋳型内全域の凝固シェル厚分布を計算することがで
きる。
【0016】具体的には、任意の点(x,y)において
シェル厚抜熱量q(ワット/平方メートル)、溶融金属
温度T∞(℃)、溶融金属の凝固温度Tm(℃)、溶融
金属の密度ρ(キログラム/立方メートル)、溶融金属
の潜熱L(ジュール/キログラム)、凝固速度V(メー
トル/秒)、鋳造速度Vc(メートル/秒)、鋳込み方
向の計算間隔Δx(メートル)、凝固開始点からの鋳造
距離方向への総和Σ(−)に対して次式(7)が成立す
る。抜熱量q、熱伝達率hは(2)式を用いて任意の点
(x,y)における流速から見積ることで、凝固速度V
(メートル/秒)が計算され、任意の点(x,y)にお
けるシェル厚分布δ(x,y)を計算することができ
る。
【式7】 また、全領域の流速分布が与えられているため、介在物
の位置をラグランジュ積分することにより介在物移流を
推定することができる。具体的には、日本流体力学会
編、「混相流体の力学」(朝倉書店1991)180頁
に記載にある式を変形した次式(8)により、時刻tに
おける介在物速度Vp(t)(メートル/秒)、抵抗係
数Cd(=24/Re+6/(1+√Re)+0.4:
Reはレイノルズ数)、流体との相対速度(u−Vp
(t))(メートル/秒)、外力による加速度g(メー
トル/平方秒)、時間刻みΔ t(秒)に対して介在物
の動きXp(t)(メートル)を求めることができる。
気泡の動きXp(t)は介在物速度Vp(t)(メート
ル/秒)の時間積分により求めることができる。
【式8】
【0017】
【実施例】以下、図1から図5の図面を参照しながら、
本発明の実施例について具体的に説明する。図5は本発
明の鋳型内全域の凝固シェル厚センシング方法を用いて
推定した溶鋼流速ベクトル図である。連続鋳造設備にお
ける内のり幅(長辺)1m、厚さ(短辺)30cm、メ
ニスカス〜鋳型下端までの距離(深さ)60cmの鋳型
1において、直径20cm2孔の浸漬ノズル4から溶鋼
2が連続鋳造鋳型1に供給され、連続鋳造が行われてい
る。溶鋼2は連続鋳造鋳型1の表面から抜熱され、凝固
し凝固シェル3を形成する。この凝固シェル3はロール
6により引き抜き速度毎分1mで連続鋳造鋳型1の下方
から引き抜かれる。この凝固シェル3の厚さの分布、介
在物の分布、気泡の分布は鋳込まれた鋳片の品質に影響
する。このため従来から、鋳片品質のモニターのため、
鋳型1の冷却銅板内部に熱電対5を鋳込み面から5cm
の深さに両端からそれぞれ10cm,30cm,上端か
ら10cm,30cmの位置に片面8個ずつ設置し、温
度を時系列でモニターした。
【0018】本発明においては、半径R(メートル)、
渦度Ω(/秒)の渦モデル9が渦中心(Xv,Yv)に
あると考える。 各熱電対5の設置番号i=1〜4とし
て左側の4点について設置位置を次式(9)のように定
める。
【式9】 発明の実施の形態の手順に従い、i=1〜4に対し次式
(10)を得る。
【式10】 式(10)を変形すると次式(11)を得る。
【式11】 式(11)の4方程式を用いて変数Xv,Yv,R,Ω
が求まり、渦モデル9の渦中心(Xv,Yv)が同定さ
れる。
【0019】つぎに求められた渦モデル9が鋳型1内の
任意の点(x,y)に誘起する流速ベクトル(u,v)
は、式(6)で求めることができる。この解法で得られ
た流速ベクトル溶鋼流速ベクトル図を図5に示した。メ
ニスカスから浸漬ノズルの吐出口上端まで0.2mとし
た。次に、鋳型内の全域の流速ベクトル分布を用いて鋳
型内全域の凝固シェル厚分布、介在物移流をラグランジ
ュ積分により推定した。凝固シェル厚分布を図6に,介
在物分布を図7に示す。図6において、凝固シェル厚を
ミリメートル単位で等高線で示した。浸漬ノズル吐出口
位置近傍で10mm、メニスカスから0.4mの深さで
14mmとほぼ実績に近い値が得られた。
【0020】また、図7において、表示範囲を図6と同
様としたときの介在物分布(介在物分布とは均一に介在
物を流入条件として与えた場合の相対的な個数密度割合
[−]で、数密度が最大の部分を1とし、0.2刻みで
等高線で表示した。図9に鋳型下部までの鋳型内全域の
流速ベクトルの予測計算例を示す。式13から式17ま
でを用いて、流速ベクトルを求めた。図9(a)は鋳型
短辺の中央断面での流速分布を、図9(b)は鋳型長辺
の凝固面での流速分布を示す。このように3次元的な流
速分布が求まるので広範囲の介在物、気泡の3次元的な
挙動を計算することができる。
【0021】
【発明の効果】本発明により、連続鋳造鋳型内の長辺又
は短辺に設置した温度計測器から得られた時系列データ
を用いて、各計測時間で2点以上の温度計測器設置点近
傍の溶鋼流速を計算し、次に各計測点での各当該流速を
生じさせる渦を求め、次にその渦が鋳型内全域に形成す
る流速ベクトル分布を計算しているため、溶鋼流速ベク
トル分布を推定することができ,これにより凝固シェル
厚、介在物又は気泡の分布を求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の鋳型内全域の凝固シェル厚センシング
方法の流れ説明図である。
【図2】従来の凝固シェル厚センシング方法の流れ説明
図である。
【図3】連続鋳造鋳型における鋳型温度計測方法の説明
図で、(a)は連続鋳造鋳型短辺中央部断面(図3
(b)のB−B断面)、(b)は連続鋳造鋳型長辺断面
(図3(a)のA−A断面)である。
【図4】(a)従来の熱電対設置位置における流速分布
の計算方法の説明図である。 (b)本発明の鋳型長辺に熱電対を設置した場合の鋳型
内全域の流速ベクトル分布計算方法の説明図である。
【図5】本発明の鋳型内全域の凝固シェル厚センシング
方法を用いて推定した溶鋼流速ベクトル図である。
【図6】本発明による凝固シェル厚分布の推定例であ
る。
【図7】本発明による介在物分布の推定例である。
【図8】本発明の鋳型短辺に熱電対を設置した場合の鋳
型内全域の流速ベクトル分布計算方法の説明図である。
【図9】(a)本発明の鋳型短辺の中央断面での流速分
布を示す実施例である。 (b)本発明の鋳型長辺の凝固面での流速分布を示す実
施例である。
【符号の簡単な説明】
1 連続鋳造鋳型 2 溶鋼 3 凝固シェル 4 浸漬ノズル 5 熱電対 6 引き抜きロール 7 冷却ボックス 8 熱電対からの換算流速絶対値(スカラー値) 9 渦モデル 10 渦モデルの誘起流速ベクトル 11 浸漬ノズルからの溶鋼吐出流 12 溶鋼のモールド内下降流

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】連続鋳造鋳型内長辺に設置した2以上の温
    度計測器から得られた時系列データを用いて、各計測時
    間で温度計測器設置点近傍の溶鋼流速を計算し、次に各
    計測点での各当該流速を生じさせる渦を求め、次にその
    渦が鋳型内全域に形成する流速ベクトル分布を計算し、
    当該流速ベクトル分布を用いて鋳型内全域の凝固シェル
    厚分布を推定することを特徴とする連続鋳造鋳型内全域
    の凝固シェル厚センシング方法。
  2. 【請求項2】連続鋳造鋳型内短辺に設置した2以上の温
    度計測器から得られた時系列データを用いて、各計測時
    間で温度計測器設置点近傍の溶鋼流速を計算し、次に各
    計測点での各当該流速を生じさせる渦を求め、次にその
    渦が鋳型内全域に形成する流速ベクトル分布を計算し、
    当該流速ベクトル分布を用いて鋳型内全域の凝固シェル
    厚分布を推定することを特徴とする連続鋳造鋳型内全域
    の凝固シェル厚センシング方法。
  3. 【請求項3】連続鋳造鋳型内に設置した2以上の温度計
    測器から得られた時系列データを用いて、各計測時間で
    温度計測器設置点近傍の溶鋼流速を計算し、次に各計測
    点での各当該流速を生じさせる渦を求め、次にその渦が
    鋳型内全域に形成する流速ベクトル分布を計算し、当該
    流速ベクトル分布を用いて、各計測時間で浸漬ノズルか
    らの溶鋼吐出流速を計算し、次に溶鋼の鋳型内下降流速
    を推定することを特徴とする連続鋳造鋳型内全域の溶鋼
    流速センシング方法。
  4. 【請求項4】請求項1〜3の何れか1項に記載の方法で
    得られた鋳型内全域の流速ベクトル分布を用いて気泡お
    よび/又は介在物の拡散分布を計算し、可視化表示する
    ことを特徴とする連続鋳型内全域の鋳片品質オンライン
    可視化センシング方法。
  5. 【請求項5】連続鋳造鋳型内に設置した2以上の温度計
    測器と、 前記温度計測器から得られた時系列データを用いて温度
    計測器設置点近傍の溶鋼流速を計算する溶鋼流速演算手
    段と、 各温度計測点での前記溶鋼流速を生じさせる渦を計算す
    る渦演算手段と、 前記渦が鋳型内全域に形成する流速ベクトル分布を計算
    する流速ベクトル演算手段と、 前記流速ベクトル分布から鋳型内全域の凝固シェル厚分
    布を計算する凝固シェル厚演算手段と、 出力手段を有することを特徴とする凝固シェル厚センシ
    ング装置。
  6. 【請求項6】請求項5記載の温度計測器、溶鋼流速演算
    手段、渦演算手段,流速ベクトル演算手段及び出力手段
    に加え、 流速ベクトル分布から気泡及び/又は介在物の拡散分布
    を計算する気泡介在物拡散演算手段を有することを特徴
    とする鋳片品質オンライン可視化センシング装置。
  7. 【請求項7】 連続鋳造鋳型内に設置した2以上の温度
    計測器と、 前記温度計測器から得られた時系列データを用いて温度
    計測器設置点近傍の溶鋼流速を計算する溶鋼流速演算手
    段と、 各温度計測点での前記溶鋼流速を生じさせる渦を計算す
    る渦演算手段と、 前記渦が鋳型内全域に形成する流速ベクトル分布を計算
    する流速ベクトル演算手段と、 前記流速ベクトル分布から溶鋼の鋳型内下降流速を推定
    する下降流速演算手段を有することを特徴とする溶鋼流
    速センシング装置。
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