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JP2001305037A - 走査型プローブ顕微鏡及びこれを用いた光吸収物質の検出方法並びに顕微分光方法 - Google Patents

走査型プローブ顕微鏡及びこれを用いた光吸収物質の検出方法並びに顕微分光方法

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Publication number
JP2001305037A
JP2001305037A JP2000272456A JP2000272456A JP2001305037A JP 2001305037 A JP2001305037 A JP 2001305037A JP 2000272456 A JP2000272456 A JP 2000272456A JP 2000272456 A JP2000272456 A JP 2000272456A JP 2001305037 A JP2001305037 A JP 2001305037A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
sample
light
tunnel current
absorbing substance
amplitude
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000272456A
Other languages
English (en)
Inventor
Koji Maeda
康二 前田
Satoshi Hida
聡 飛田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Individual
Original Assignee
Individual
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Individual filed Critical Individual
Priority to JP2000272456A priority Critical patent/JP2001305037A/ja
Publication of JP2001305037A publication Critical patent/JP2001305037A/ja
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  • Measurement Of Length, Angles, Or The Like Using Electric Or Magnetic Means (AREA)
  • Length Measuring Devices With Unspecified Measuring Means (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 走査型トンネル顕微鏡(STM)探針を用い
て光吸収物質をナノスケールで直接検出する新しい装置
/方法を提供する。 【解決手段】 チョッパー6は、STMの定電流制御が
追随できないほど高い変調周波数でp−GaAs10表面に
ギャップ光(波長788nm,12mW/mm2)を入射角45°で断
続照射する。ロックインアンプ3は、変調トンネル電流
波形Itをロックイン検波して、トンネル電流振幅△Iを
求める。これによる二次元分布像には、通常のSTMト
ポ像には存在しない明るいコントラスト部分が観察され
る。これは、試料10の表面下の孤立欠陥における非発
光再結合により局所的に発生した熱が周囲に拡散し、欠
陥付近の表面で特に大きな熱膨張変位を起こすためであ
る。このことにより試料10中の欠陥を検出できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は光熱膨張などの現
象を利用して測定を行う走査型プローブ顕微鏡及びこれ
を用いた光吸収物質の検出方法並びに顕微分光方法に関
する。
【0002】
【従来の技術】探針と試料間に流れるトンネル電流を利
用して試料表面を観察する装置(Scanning T
unneling Microscopy,以下「ST
M」と記す)が知られている。
【0003】STMは電子のトンネル現象を利用して試
料表面の形状及び電子状態に関する情報を原子オーダー
の空間分解能で検出可能な装置であり、顕微鏡としての
用途のほかに微細加工装置、情報記録再生装置等の類似
装置への応用が可能である。
【0004】STMでは先端の尖った探針で試料面上を
走査しながら、探針と試料間の距離が数nm以下で発生
するトンネル電流をサーボ信号として距離を制御するこ
とによって測定信号を検出している。
【0005】STMの従来技術について説明する。図1
0は特開平6−137810号公報に開示されたSTM
の機能ブロック図である。
【0006】図10において、51は、先端が尖った探
針、52は、探針51と対向して配置された試料で、図
示しないXY走査信号発生回路およびXY走査駆動機構
によってXY軸方向に走査される。53は、探針制御用
アクチュエータで探針51をZ軸方向に移動させる。5
4は、探針と試料との間に電圧を印加するバイアス回
路、55は、バイアス印加状態で探針51と試料52と
を接近させると発生するトンネル電流を検出し電圧に変
換する電流電圧変換回路、56は、変換された電圧をさ
らに対数変換して出力する対数変換回路、57は、所望
のトンネル電流値を設定値とし、入力との差分信号を検
出する差分回路、59は差分信号の高周波分を除去し、
トポ信号を出力するローパスフィルター、58は、探針
Z制御信号発生回路で、LPF59の出力よりサーボ信
号を形成し、探針制御用アクチュエータ53に出力し
て、探針試料間の距離制御を行なわせる。61はローパ
スフィルター59から出力されるトポ(Topograph Imag
e)信号、62は対数変換回路56から出力されるカレ
ント信号で、画面情報信号として用いられる。
【0007】バイアス回路54によって先端の尖った探
針51と試料52間にバイアスを印加した状態で、探針
51を試料面に対して1nm付近まで接近させるとトン
ネル電流が探針―試料間に流れ始める。このトンネル電
流を電流電圧変換回路55によって電圧に変換し、対数
変換回路56を経て差分回路57によって所望の設定ト
ンネル電流値との差分信号を検出し、ローパスフィルタ
ー59、探針Z制御信号発生回路58を通してサーボ信
号を形成する。このサーボ信号を圧電素子などで構成さ
れる探針制御用アクチュエータ53に入力し距離制御す
ると同時に、図示しないXY走査信号発生回路によって
XY走査信号を入力し、試料面内方向に沿って走査しな
がら差分回路57、ローパスフィルター59を介して形
成されるトポ信号61、又は対数変換回路56の出力信
号であるカレント信号62をモニターし、画像処理を施
すことによって試料表面の形状、及び電子状態を反映す
る観察像を得ることができる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】ところで、半導体装置
に用いられる半導体は欠陥がないことが求められる。半
導体の製造工程において欠陥が生じないように配慮され
るとともに、製造後の半導体を検査し欠陥を発見するこ
とが行われている。
【0009】結晶欠陥があるとさまざまな問題が生じ
る。例えば、特開平10−135567号公報「半導体
レーザ素子」は次のことを開示する。半導体レーザ素子
において、従来使用されているII族元素であるMg、Z
n、Beなどのp型ドーパントでは、拡散係数が大きい
ため高濃度ドーピングができないという問題があった。
なぜなら、活性層まで拡散が起こると、活性層内部に非
発光センターを形成するために、発光効率が低下し、信
頼性に対して悪影響を及ぼし、また、コンタクト層から
の拡散によるキャリア濃度の低下で動作電圧増大の問題
を生じる。また、p型ドーパントとして拡散係数が小さ
いカーボンは、拡散効率を上げるため低温で成長させる
必要があるが、その場合に半導体に結晶欠陥が生じるた
め、非発光センターを形成する問題があった。
【0010】このような非発光センターが試料表面にあ
るときにはSTMで検出できても、試料内部に存在する
ときには検出が困難であった。また、非発光センターを
ナノスケールで直接検出することは困難であった。
【0011】この発明は係る課題を解決するためになさ
れたもので、半導体中の欠陥をナノスケールで直接検出
できる走査型プローブ顕微鏡及びこれを用いた非発光セ
ンターもしくはより一般的には光吸収物質の検出方法を
提供することを目的とする。また、新規なナノ分解能顕
微分光法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】この発明に係る走査型プ
ローブ顕微鏡は、試料に近接して設けられる探針と、前
記探針が前記試料の表面に近づいたときに生じるトンネ
ル電流を受けて前記トンネル電流を一定に保持するよう
に前記探針と前記試料間の距離を制御する負帰還制御器
と、光源と、前記光源の出射光を所定の時間間隔で透過
させる変調器と、前記光源の出射光から所定の波長の光
を取り出す分光器と、前記分光器の出射光を前記試料に
照射する照射手段と、前記変調器の変調信号と同期をと
ることにより前記トンネル電流の振幅を検出して出力す
る増幅器とを備えるものである。
【0013】好ましくは、前記増幅器の出力に基づき前
記試料における光吸収物質を検出する検出部を備え、前
記検出部は前記試料中の光吸収物質における光吸収にと
もなう光熱膨張効果を利用して検出を行う。
【0014】好ましくは、前記検出部は、トンネル電流
振幅が通常のトンネル電流振幅よりも大きいときに光吸
収物質と判定する。
【0015】好ましくは、前記増幅器の出力に基づき二
次元分布画像を生成する画像処理部を備え、前記検出部
は、前記二次元分布画像においてコントラストの高い部
分を光吸収物質と判定する。
【0016】好ましくは、前記検出部は、前記変調器の
変調周波数を増加させたときに、トンネル電流振幅が小
さくなり、かつ前記二次元分布画像におけるコントラス
トの高い部分が縮小するときに光吸収物質と判定する。
【0017】好ましくは、前記増幅器の出力に基づき前
記試料における光吸収物質を検出する検出部を備え、前
記検出部は前記試料中の光吸収物質における光の照射に
伴うチャージの変化を利用して検出を行う。
【0018】好ましくは、前記増幅器の出力に基づき前
記試料における光吸収物質を検出する検出部を備え、前
記検出部は前記試料中の光吸収物質における光の照射に
伴う試料収縮を利用して検出を行う。
【0019】好ましくは、前記増幅器の出力に基づき前
記試料における光吸収物質を検出する検出部を備え、前
記検出部は前記試料中の光吸収物質における光の照射に
伴う温度上昇が双安定性欠陥の準安定構造での滞在時間
を増加させることによる変位を利用して検出を行う。
【0020】好ましくは、前記分光器は、予め定められ
た範囲において取り出す波長を走査する。
【0021】この発明に係る光吸収物質の検出方法は、
変調された所定の波長の光を試料に照射するステップ
と、前記試料の光吸収物質付近の表面で熱膨張変位を生
じさせるステップと、前記試料に探針を近接させ、前記
探針が前記試料の表面に近づいたときに前記熱膨張変位
によって生じるトンネル電流を変調信号と同期をとるこ
とにより前記トンネル電流の振幅を検出して出力するス
テップと、前記トンネル電流の振幅に基づき前記試料に
おける光吸収物質を検出するステップとを備えるもので
ある。
【0022】この発明に係る光吸収物質の検出方法は、
変調された所定の波長の光を試料に照射するステップ
と、前記試料の光吸収物質付近の表面で光の照射に伴う
チャージの変化を生じさせるステップと、前記試料に探
針を近接させ、前記探針が前記試料の表面に近づいたと
きに前記光の照射に伴うチャージの変化によって生じる
トンネル電流を変調信号と同期をとることにより前記ト
ンネル電流の振幅を検出して出力するステップと、前記
トンネル電流の振幅に基づき前記試料における光吸収物
質を検出するステップとを備えるものである。
【0023】この発明に係る光吸収物質の検出方法は、
変調された所定の波長の光を試料に照射するステップ
と、前記試料の光吸収物質付近の表面で光の照射に伴う
試料収縮を生じさせるステップと、前記試料に探針を近
接させ、前記探針が前記試料の表面に近づいたときに前
記光の照射に伴う試料収縮によって生じるトンネル電流
を変調信号と同期をとることにより前記トンネル電流の
振幅を検出して出力するステップと、前記トンネル電流
の振幅に基づき前記試料における光吸収物質を検出する
ステップとを備えるものである。
【0024】この発明に係る光吸収物質の検出方法は、
変調された所定の波長の光を試料に照射するステップ
と、前記試料の光吸収物質付近の表面で光の照射に伴う
温度上昇が双安定性欠陥の準安定構造での滞在時間を増
加させることによる変位を生じさせるステップと、前記
試料に探針を近接させ、前記探針が前記試料の表面に近
づいたときに前記変位によって生じるトンネル電流を変
調信号と同期をとることにより前記トンネル電流の振幅
を検出して出力するステップと、前記トンネル電流の振
幅に基づき前記試料における光吸収物質を検出するステ
ップとを備えるものである。
【0025】この発明に係る顕微分光方法は、変調され
た所定の波長の光を試料に照射するステップと、前記試
料の光吸収物質を直接励起するステップと、前記試料に
探針を近接させ、前記探針が前記試料の表面に近づいた
ときに生じるトンネル電流を変調信号と同期をとること
により前記トンネル電流の振幅を検出して出力するステ
ップと、予め定められた範囲において前記光の波長を走
査しつつ上記ステップを繰り返すステップと、前記トン
ネル電流の振幅と波長の特性を求めるステップとを備え
るものである。
【0026】
【発明の実施の形態】以下では、光吸収物質を便宜上
「欠陥」と呼び説明に用いる。図1はこの発明の実施の
形態に係る、光熱膨張などの現象を用いたナノ分光顕微
鏡の構成図である。
【0027】符号1は超高圧走査型トンネル顕微鏡(U
HV−STM)、符号2はフィードバック回路である。
UHV−STM1は、図10に示した探針51、探針制
御用アクチュエーター53及びバイアス回路54あるい
はこれらの相当部分を備える。フィードバック回路2
は、図10に示した電流電圧変換回路55、対数変換回
路56、差分回路57、探針Z制御信号発生回路58及
びLPF59あるいはこれらの相当部分を備える。
【0028】探針を試料面に対して1nm付近まで接近
させるとトンネル電流が探針―試料間に流れ始め、この
トンネル電流を電流電圧変換回路、対数変換回路、差分
回路及びLPFにより探針Z制御信号発生回路のフィー
ドバック信号を発生し、探針のZ方向の位置を制御す
る。図示しないXY走査信号発生回路によってXY走査
信号を入力し、試料面内方向に沿って走査しながらフィ
ードバック回路2の出力信号であるトポ信号モニター
し、画像処理を施すことによって試料表面の形状、及び
電子状態を反映する観察像を得ることができる。
【0029】符号3はロックインアンプ、符号4は光源
であるハロゲンランプ、符号5はレンズ、符号6は光線
を一定間隔で断続するチョッパー(chopper)、符号7
はハロゲンランプ4の光から特定の狭い波長帯域の光を
分離するためのモノクロメーター(monochromator)、
符号8はモノクロメーター7からの光を導く光ファイ
バ、符号9は光ファイバ8の出射光を試料10上に集光
するための集光レンズである。ロックインアンプ3は、
外部参照信号との同期検波を行うための増幅器であり、
参照周波数で変調された信号を,非常に高い雑音レベル
の中から検出し測定することができる。ロックインアン
プ3は、チョッパー6の断続周波数信号fを参照信号と
してトンネル電流信号Itを取り込み、振幅イメージ(A
mplitude Image)信号として出力する。
【0030】単色光により電流振幅の二次元画像のみ得
るばあいは、上記において、ハロゲンランプ4、レンズ
5、チョッパー6、モノクロメータ7のかわりに、適当
な波長の断続光を発し得る単色光源(例えばレーザ)を
用いてもよい。
【0031】図1の光ファイバ8およびレンズ9は、光
源から試料に光を導く適当な光学系で置き換えてもよ
い。
【0032】照射光の断続周波数は、トンネル電流を一
定に保つフィードバック回路の応答周波数より十分高く
することによって、光照射に伴う変調信号がトンネル電
流に現れるようにする。
【0033】また、照射光の断続周波数は、光照射を受
けた探針および試料の巨視的熱膨張が十分平滑化される
ほど高くする。
【0034】図1の装置は、一定間隔で試料10上に特
定波長の光を集光させる集光光学系を備えるとともに、
断続周波数信号fを参照信号としてトンネル電流信号I
tを取り込み、振幅イメージ信号として出力するロック
インアンプ3を備える点で、従来のSTMとは相違す
る。ハロゲンランプ4、レンズ5、チョッパー6、モノ
クロメーター7、光ファイバ8及び集光レンズ9からな
る集光光学系と、ロックインアンプ3とを備えることに
より、試料(例えば半導体)中の非発光再結合センター
をナノスケールで直接検出することができる。
【0035】次に、この発明の実施の形態の装置/方法
について、図2のフローチャート、図3の動作原理の説
明図、図4の変調トンネル電流波形、図5の変調周波数
を変えたときのトンネル電流振幅ΔIのグラフ及び図6
の電流振幅ΔIの二次元分布像の模式図に基づいて説明
する。
【0036】図2に示すように、まず、所定の波長の断
続光を試料に照射する(S1)。例えば、p−GaAs試料
10の(110)表面に半導体レーザを用いて波長788
nm、12mW/mmのギャップ光を入射角45°で
断続的に照射する。照射される光は、チョッパー6によ
りSTMの定電流制御が追随できないほど高い変調周波
数で変調される。
【0037】所定の光を試料に照射することにより、試
料10の欠陥付近の表面で熱膨張変位を生じさせる(S
2)。光が照射されると、図3に示すように、試料10
の表面下の孤立欠陥において非発光再結合により局所的
に熱が発生し、この熱が周囲に拡散して欠陥付近の表面
で特に大きな熱膨張変位を起こす。この熱膨張変位によ
りトンネル電流が変化するので、この変化を観察するこ
とにより熱膨張、すなわち欠陥の存在を検知することが
できる。
【0038】STMで観察し、変調トンネル電流波形
(図4参照)をロックインアンプ3によりロックイン検
波し、電流振幅ΔIを求める(S3)。変調周波数を変
えたときのトンネル電流振幅ΔIのグラフを図5に示
す。Dは欠陥部分のトンネル電流振幅のグラフであり、
Pは欠陥がない部分のトンネル電流振幅である。欠陥が
ない場合は変調周波数を変えてもトンネル電流振幅は小
さい値のままほぼ一定であり、熱膨張がないことを示し
ている。欠陥がある場合はトンネル電流振幅は、欠陥が
ない場合よりも大きく、しかも変調周波数が高くなると
トンネル電流振幅は小さくなる。これは欠陥の部位にお
いて熱膨張して試料の表面と探針との距離が短くなった
こと、及び、変調周波数が高くなるのにともない、前記
熱膨張が平滑化され、トンネル電流の変調振幅が小さく
なることを示している。
【0039】図4の電流波形の周期は約0.6ms〜
0.7msである。これはチョッパー6のチョッピング
周期に対応している。熱膨張応答の特徴として、電流の
増加部と減少部のカーブが対称になっている。
【0040】電流振幅△Iの二次元分布像を求める(S
4)。試料10の表面を走査しながらステップS3の処
理を繰り返して電流振幅△Iの二次元分布像を求める。
二次元分布像の模式図を図6(a)(b)、実例を図7
(a)(b)に示す。図6(a)及び図7(a)は、図
5のグラフのA点(変調周波数:約1.3kHz)にお
けるトンネル電流振幅ΔIの二次元分布を示し、図6
(b)及び図7(b)は、図5のグラフのB点(変調周
波数:約1.9kHz)におけるトンネル電流振幅ΔI
の二次元分布を示す。図6(a)(b)のDの領域は同
じ位置を中心とするが、図6(a)のD領域の大きさは
図6(b)のそれよりもはるかに大きい。これは、チョ
ッピング周期が長いと欠陥で発生した熱が拡散して周囲
に広がり、チョッピング周波数で変調された熱膨張領域
が拡大するためであると考えられる。図6のような二次
元分布画像のDの領域は、従来のSTMのトポ像(Topo
graph Image)には存在しない明るいコントラストを有
する。
【0041】前記理由により、チョッピング周期を短く
すると分解能が高くなる。一方、あまり間隔を短くする
とトンネル電流振幅は小さくなるので検出が難しくな
る。
【0042】上記観測結果により孤立欠陥の有無及びそ
の位置を判定する(S5)。以上説明した、(1)欠陥
部位のトンネル電流振幅は欠陥がない部位のそれよりも
はるかに大きいこと、(2)変調周波数を増加するにつ
れて欠陥部位のトンネル電流振幅は小さくなるが、欠陥
がない部位のそれはほとんど変化しないこと、(3)二
次元分布画像における明るいコントラストの部分の存
在、(4)変調周波数を増加するにつれて前記コントラ
ストの部分が小さくなること、はいずれも孤立した非発
光欠陥の存在を示すものである。これらの現象は、表面
下の孤立欠陥で非発光再結合により局所的に発生した熱
が周囲に拡散し、欠陥付近の表面で特に大きな熱膨張変
位を起こすためとして良く説明できる。そこで、上記
(1)〜(4)の組み合わせを判断基準として観測結果
を評価し、孤立欠陥の有無及びその位置を判定すること
ができる。
【0043】以上のように、この発明の実施の形態1の
装置/方法によれば、光音響分光と同じ原理にもとづき
STM探針を用いて半導体中の非発光再結合センターを
ナノスケールで直接検出することができる。従来の装置
/方法では、数十μm程度の分解能しかなかったが、こ
の発明の実施の形態1によれば、十nm以下のはるかに高
い分解能で検出できる。
【0044】なお、上記説明において、本発明の実施の
形態1の装置/方法がもっぱら熱膨張効果に起因する現
象をとらえるものとして述べてきたが、本発明の実施の
形態1の装置/方法は熱膨張効果に限定されない(例え
ば、欠陥の光誘起変形そのものに起因する現象をとらえ
るものであってもよい)。
【0045】具体的には次のような現象であってもよ
い。 (1)光の照射に伴うチャージの変化 試料に光を照射するとキャリアが発生する。これがバン
ドギャップのなかの欠陥にトラップされ、そのたびにチ
ャージの状態が変わる。これをSTMで検出することが
できる。この現象は実効的にバイアス電圧の変化を誘起
し、電流が変化するのでこれを検出できる。 (2)光の照射に伴う試料収縮(表面が凹む) 試料に光を照射すると欠陥部分の荷電(チャージ)状態
が変わる。これに伴い欠陥構造が不安定化して原子変位
を起こすことに起因すると思われる。 (3)光の照射に伴う温度上昇が双安定性欠陥の準安定
構造での滞在時間を増加させることによる変位 双安定性(異なる構造の2つの状態を(準)安定配置と
して取り得る現象)を示す欠陥の安定構造と準安定構造
のエネルギー差が比較的小さい場合、温度が上昇すると
準安定状態の滞在時間が長くなる(一方の状態から他方
の状態にチャージが移動する)。このことにより、安定
配置と準安定配置の間の原子変位が表面変位を引き起こ
し、これが観測される。
【0046】発明の実施の形態2.次に、この発明の実
施の形態2に係る装置/方法について、図8のフローチ
ャート及び図9の波長を変えたときのトンネル電流振幅
ΔIのグラフに基づき説明する。
【0047】所定の波長の断続光を試料に照射する(S
10)。図1の装置を用いて発明の実施の形態1の場合
と同様に光を照射する。
【0048】非発光センターを直接励起する(S1
1)。所定の波長の光が照射されると、GaAsの試料10
のバンド間吸収以外にも非発光センターが直接励起さ
れ、特有のトンネル電流振幅特性を示す。
【0049】トンネル電流振幅を求める(S12)。図
1の装置を用いて発明の実施の形態1の場合と同様にト
ンネル電流振幅を求める。
【0050】照射光の波長をスキャンする(S13)。
予め定められた範囲、例えばλ=800nm〜1300
nmの範囲においてモノクロメーター7が出力する光の
波長を少しづつ変化させて、ステップS10〜S12を
繰り返す。この発明の実施の形態2では、図1の装置に
波長を段階的に変化させるスキャン装置を備える(図示
せず)。
【0051】ステップS10〜S13からトンネル電流
振幅−波長特性を求める(S14)。例えば、図9のよ
うなグラフが得られる。波長λを800nm〜1300
nmの範囲でスキャンさせたときに、1120nm付近
でトンネル電流振幅のピークが観測される。
【0052】ステップS14のトンネル電流振幅−波長
特性からピーク波長を求め分析を行う(S15)。この
手法により種々の物質の光エネルギー吸収に関する分析
が可能になり、これまでにないナノ分解能顕微分光法を
提供することができる。
【0053】この発明の実施の形態2の装置/方法によ
れば、GaAs(試料10)のバンド間吸収以外に非発光セ
ンターの直接励起に由来すると考えられるトンネル電流
振幅の励起波長依存性に基づき分光分析をSTM像の取
得と同時にナノスケールで行うことができる。この手法
は従来なかったものである。
【0054】なお、以上の説明において欠陥を検出する
場合を例にとり説明してきたが、本発明の実施の形態
1、2は、対象は欠陥に限定されず、一般に光吸収物質
で吸収にともない熱を発生するもの及び/又は欠陥の光
誘起変形を生じるもの、チャージの変化を生じるもので
あれば適用可能である。例えば、生体分子、化学分子、
不純物原子などを光吸収波長によって同定することが可
能である。また吸収スペクトルの微細構造から原子分子
の結合状態、電子状態を原子スケールで測定可能であ
る。これらの特徴は、極めて高い空間分解能をもつST
Mに、従来なかった元素分析機能を付与する。
【0055】本願発明は、光→熱振動膨張の現象を利用
してナノスケールの分析を行う装置/方法全般に適用で
きる。
【0056】本発明は、以上の実施の形態に限定される
ことなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内
で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内
に包含されるものであることは言うまでもない。
【0057】また、本明細書において、手段とは必ずし
も物理的手段を意味するものではなく、各手段の機能
が、ソフトウェアによって実現される場合も包含する。
さらに、一つの手段の機能が、二つ以上の物理的手段に
より実現されても、若しくは、二つ以上の手段の機能
が、一つの物理的手段により実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1に係るナノ分光顕微
鏡の機能ブロック図である。
【図2】 この発明の実施の形態1に係る非発光再結合
センターを例にした光吸収物質の観察方法のフローチャ
ートである。
【図3】 この発明の実施の形態1に係る装置/方法の
動作原理の説明図である。
【図4】 この発明の実施の形態1に係る装置/方法に
よる変調トンネル電流波形である。
【図5】 この発明の実施の形態1に係る装置/方法に
よる、変調周波数を変えたときのトンネル電流振幅ΔI
のグラフである。
【図6】 この発明の実施の形態1に係る装置/方法に
よる電流振幅ΔIの二次元分布像の模式図である。
【図7】 この発明の実施の形態1に係る装置/方法に
よる電流振幅ΔIの二次元分布像の実例である。
【図8】 この発明の実施の形態2に係る非発光再結合
センターを例にした光吸収物質の観察方法のフローチャ
ートである。
【図9】 この発明の実施の形態1に係る装置/方法に
よる、波長を変えたときのトンネル電流振幅ΔIのグラ
フである。
【図10】 従来の走査型プローブ顕微鏡の機能ブロッ
ク図である。
【符号の説明】
1 走査型プローブ顕微鏡 2 フィードバック回路 3 ロックインアンプ 4 ハロゲンランプ 5 レンズ 6 チョッパー 7 モノクロメーター 8 光ファイバ 9 集光レンズ 10 試料
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2F063 AA02 AA43 BB06 DA01 DA30 DB05 DD02 EA16 EB23 FA07 JA10 LA07 LA11 2F069 AA12 AA60 BB15 BB40 DD30 GG04 GG06 GG07 GG52 GG62 HH02 HH30 JJ07 JJ14 LL03 NN09 QQ05 QQ11

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料に近接して設けられる探針と、前記
    探針が前記試料の表面に近づいたときに生じるトンネル
    電流を受けて前記トンネル電流を一定に保持するように
    前記探針と前記試料間の距離を制御する負帰還制御器
    と、光源と、前記光源の出射光を所定の時間間隔で透過
    させる変調器と、前記光源の出射光から所定の波長の光
    を取り出す分光器と、前記分光器の出射光を前記試料に
    照射する照射手段と、前記変調器の変調信号と同期をと
    ることにより前記トンネル電流の振幅を検出して出力す
    る増幅器と、を備える走査型プローブ顕微鏡。
  2. 【請求項2】 前記増幅器の出力に基づき前記試料にお
    ける光吸収物質を検出する検出部を備え、前記検出部は
    前記試料中の光吸収物質における光吸収にともなう光熱
    膨張効果を利用して検出を行うことを特徴とする請求項
    1記載の走査型プローブ顕微鏡。
  3. 【請求項3】 前記検出部は、トンネル電流振幅が通常
    のトンネル電流振幅よりも大きいときに光吸収物質と判
    定することを特徴とする請求項2記載の走査型プローブ
    顕微鏡。
  4. 【請求項4】 前記増幅器の出力に基づき二次元分布画
    像を生成する画像処理部を備え、前記検出部は、前記二
    次元分布画像においてコントラストの高い部分を光吸収
    物質と判定することを特徴とする請求項2記載の走査型
    プローブ顕微鏡。
  5. 【請求項5】 前記検出部は、前記変調器の変調周波数
    を増加させたときに、トンネル電流振幅が小さくなり、
    かつ前記二次元分布画像におけるコントラストの高い部
    分が縮小するときに光吸収物質と判定することを特徴と
    する請求項2記載の走査型プローブ顕微鏡。
  6. 【請求項6】 前記増幅器の出力に基づき前記試料にお
    ける光吸収物質を検出する検出部を備え、前記検出部は
    前記試料中の光吸収物質における光の照射に伴うチャー
    ジの変化を利用して検出を行うことを特徴とする請求項
    1記載の走査型プローブ顕微鏡。
  7. 【請求項7】 前記増幅器の出力に基づき前記試料にお
    ける光吸収物質を検出する検出部を備え、前記検出部は
    前記試料中の光吸収物質における光の照射に伴う試料収
    縮を利用して検出を行うことを特徴とする請求項1記載
    の走査型プローブ顕微鏡。
  8. 【請求項8】 前記増幅器の出力に基づき前記試料にお
    ける光吸収物質を検出する検出部を備え、前記検出部は
    前記試料中の光吸収物質における光の照射に伴う温度上
    昇が双安定性欠陥の準安定構造での滞在時間を増加させ
    ることによる変位を利用して検出を行うことを特徴とす
    る請求項1記載の走査型プローブ顕微鏡。
  9. 【請求項9】 前記分光器は、予め定められた範囲にお
    いて取り出す波長を走査することを特徴とする請求項1
    記載の走査型プローブ顕微鏡。
  10. 【請求項10】 変調された所定の波長の光を試料に照
    射するステップと、 前記試料の光吸収物質付近の表面で熱膨張変位を生じさ
    せるステップと、 前記試料に探針を近接させ、前記探針が前記試料の表面
    に近づいたときに前記熱膨張変位によって生じるトンネ
    ル電流を変調信号と同期をとることにより前記トンネル
    電流の振幅を検出して出力するステップと、 前記トンネル電流の振幅に基づき前記試料における光吸
    収物質を検出するステップとを備える光吸収物質の検出
    方法。
  11. 【請求項11】 変調された所定の波長の光を試料に照
    射するステップと、 前記試料の光吸収物質付近の表面で光の照射に伴うチャ
    ージの変化を生じさせるステップと、 前記試料に探針を近接させ、前記探針が前記試料の表面
    に近づいたときに前記光の照射に伴うチャージの変化に
    よって生じるトンネル電流を変調信号と同期をとること
    により前記トンネル電流の振幅を検出して出力するステ
    ップと、 前記トンネル電流の振幅に基づき前記試料における光吸
    収物質を検出するステップとを備える光吸収物質の検出
    方法。
  12. 【請求項12】 変調された所定の波長の光を試料に照
    射するステップと、 前記試料の光吸収物質付近の表面で光の照射に伴う試料
    収縮を生じさせるステップと、 前記試料に探針を近接させ、前記探針が前記試料の表面
    に近づいたときに前記光の照射に伴う試料収縮によって
    生じるトンネル電流を変調信号と同期をとることにより
    前記トンネル電流の振幅を検出して出力するステップ
    と、 前記トンネル電流の振幅に基づき前記試料における光吸
    収物質を検出するステップとを備える光吸収物質の検出
    方法。
  13. 【請求項13】 変調された所定の波長の光を試料に照
    射するステップと、 前記試料の光吸収物質付近の表面で光の照射に伴う温度
    上昇が双安定性欠陥の準安定構造での滞在時間を増加さ
    せることによる変位を生じさせるステップと、 前記試料に探針を近接させ、前記探針が前記試料の表面
    に近づいたときに前記変位によって生じるトンネル電流
    を変調信号と同期をとることにより前記トンネル電流の
    振幅を検出して出力するステップと、 前記トンネル電流の振幅に基づき前記試料における光吸
    収物質を検出するステップとを備える光吸収物質の検出
    方法。
  14. 【請求項14】 変調された所定の波長の光を試料に照
    射するステップと、 前記試料の光吸収物質を直接励起するステップと、 前記試料に探針を近接させ、前記探針が前記試料の表面
    に近づいたときに生じるトンネル電流を変調信号と同期
    をとることにより前記トンネル電流の振幅を検出して出
    力するステップと、 予め定められた範囲において前記光の波長を走査しつつ
    上記ステップを繰り返すステップと、 前記トンネル電流の振幅と波長の特性を求めるステップ
    とを備える顕微分光方法。
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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN102043070A (zh) * 2010-10-22 2011-05-04 中国科学技术大学 反馈稳幅的调幅测力梯度仪及其扫描力显微镜和测频仪
JP2014202677A (ja) * 2013-04-08 2014-10-27 株式会社堀場製作所 赤外吸収測定装置及び赤外吸収測定方法
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