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JP2001287909A - 多孔質のケイ素酸化物塗膜 - Google Patents

多孔質のケイ素酸化物塗膜

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Publication number
JP2001287909A
JP2001287909A JP2000102446A JP2000102446A JP2001287909A JP 2001287909 A JP2001287909 A JP 2001287909A JP 2000102446 A JP2000102446 A JP 2000102446A JP 2000102446 A JP2000102446 A JP 2000102446A JP 2001287909 A JP2001287909 A JP 2001287909A
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JP
Japan
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silicon oxide
coating film
porous silicon
group
organic polymer
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JP2000102446A
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Takaaki Ioka
崇明 井岡
Nobushi Tamura
信史 田村
Hiroyuki Hanabatake
博之 花畑
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Asahi Kasei Corp
Original Assignee
Asahi Kasei Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 比誘電率の低くかつ基板との密着性が高く、
研磨に対する耐性をもつ、半導体素子の多層配線構造体
用の多孔質のケイ素酸化物塗膜を提供する。 【解決手段】 ケイ素酸化物の3次元骨格構造中にリン
原子を含有する多孔質のケイ素酸化物塗膜で骨格が主に
下記式(1)のケイ素酸化物の3次元構造により構成さ
れ、該ケイ素酸化物中のケイ素原子の全モル数に対して
リン原子を少なくとも0.01モル%以上含有し、0.
1〜500μmの範囲内の厚さである。 RSiO (1) (但し、式中RはC1〜8の直鎖状、分岐上および環状
のアルキル基、アリール基を表し、0≦x<2、0≦y
<2、0≦(x+y)<2、1<z≦2である)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、比誘電率が低く、
半導体製造工程適性に優れる、多孔質のケイ素酸化物塗
膜、該塗膜を形成することができる前駆組成物、および
それらを用いて得られる半導体絶縁被膜や配線構造体に
関する。
【0002】
【従来の技術】LSIをはじめとする半導体素子の多層
配線構造体用の絶縁層の素材としては、従来比誘電率が
4.0〜4.5であるシリカなどが一般的に用いられて
きた。しかし近年、LSI等の半導体素子の配線は高密
度化の一途をたどっており、これに伴って基板上の隣接
する配線間の距離が狭まっている。その結果、絶縁体を
挟んで隣接する配線がコンデンサーとして機能しうるよ
うになる。この時、絶縁体の比誘電率が高いとコンデン
サーの静電容量が増大し、その結果配線を通じて伝達さ
れる電気信号の伝達の遅延が顕著となるため、問題とな
っている。このような問題を解決するため、多層配線構
造体用の絶縁層の素材として、比誘電率のより低い物質
を用いることが検討されている。
【0003】そこで、例えば既存の素材を多孔質にし
て、比誘電率が1である空気との複合体としたものから
構成された、比誘電率がより低い絶縁層を得ようとする
試みがなされている。多孔質として代表的なものはシリ
カエアロゲルである。しかしシリカエアロゲルの製造に
は超臨界乾燥を行うことが必須である。そのためシリカ
エアロゲルの製造には長時間を要し、また非常に繁雑な
工程と特別な装置を必要とするので、シリカエアロゲル
から構成された絶縁層の製造工程を、現行の半導体素子
製造プロセスに導入することは事実上不可能である。ま
た米国特許第5,472,913号公報には、特殊な手
法を用いて超臨界乾燥を行わずに多孔質シリカを得る方
法が開示されている。しかし、そのプロセスはやはり極
めて複雑であるため、この方法を用いて、多孔質シリカ
から構成された絶縁層の製造工程を現行の半導体素子製
造プロセスに導入することは困難である。
【0004】一方、Journal of Macro
molecular Science−Chemist
ry,A27,13−14 p.1603(199
0)、特開平8−245278号、特開平7−1003
89号、並びにWO97/06896に記載の方法に
は、有機ポリマーの存在下でアルコキシシランの加水分
解・脱水縮合反応を起こさせてアルコキシシランをゲル
化することによって、均質な有機−無機複合体を得、得
られた複合体を加熱・焼成し、有機ポリマーを熱分解し
て除去することにより、多孔質シリカを得る方法が開示
されている。しかし上記方法によって得られた多孔質シ
リカは、耐薬品性や基板との接着性、研磨に対する耐性
が十分でないために、LSI製造工程において容易にク
ラックや剥離、摩耗などを生じやすく、従って半導体多
層配線用絶縁層に応用することはできない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上より明らかな通
り、本発明は現行の半導体素子製造工程において容易に
実施可能な方法で、比誘電率の低くかつ半導体素子製造
工程において十分耐えることのできる基板との密着性、
研磨に対する耐性をもつ、半導体素子の多層配線構造体
用の絶縁層を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】このような状況下におい
て、本発明者らは鋭意研究を行った結果、ケイ素酸化物
を主成分とし、リン原子を含む多孔質のケイ素酸化物塗
膜が、比誘電率が低く半導体素子の多層配線構造体用の
絶縁層として適しているのみならず、現行の半導体素子
製造工程において十分耐えることができる耐薬品性や基
板との密着性、研磨に対する耐性などの特性をもつこと
を見いだし、本発明を完成した。
【0007】本発明は 1.骨格が主に下記式(1)のケイ素酸化物の3次元構
造により構成され、該ケイ素酸化物中のケイ素原子の全
モル数に対してリン原子を少なくとも0.01モル%以
上含有し、0.1〜500μmの範囲内の厚さであるこ
とを特徴とする多孔質のケイ素酸化物塗膜、 RxySiOz (1) (但し、式中Rは炭素数1〜8の直鎖状、分岐上および
環状のアルキル基、アリール基を表し、0≦x<2、0
≦y<2、0≦(x+y)<2、1<z≦2である) 2.1に記載のケイ素酸化物中の全ケイ素原子のうち少
なくとも20モル%以上が式(1)においてx=1、y
=0,z=1.5であることを特徴とする、前記1に記
載の多孔質のケイ素酸化物塗膜、 3.比誘電率が3以下であることを特徴とする、前記1
〜2のいずれかに記載の多孔質のケイ素酸化物塗膜、 4.前記1〜3のいずれかに記載の多孔質のケイ素酸化
物塗膜を用いた半導体絶縁被膜、 5.(A)少なくとも1種の加水分解性シラン化合物
と、(B)少なくとも1種の有機ポリマーと、(C)前
記(A)に含まれる全ケイ素原子のモル数に対して少な
くとも0.01モル%以上の、リン原子を含有する少な
くとも1種の化学種とを含有することを特徴とする塗膜
前駆組成物、
【0008】6.5に記載の(A)に含まれる全ケイ素
原子のうち少なくとも20モル%以上が、下記式(2)
により表される構造であることを特徴とする、前記5に
記載の塗膜前駆組成物、 R1SiX3 (2) (但し、式中R1は水素原子または炭素数1〜8の直鎖
状、分岐上および環状のアルキル基、アリール基を表
し、Xは各々独立に炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素
数1〜6のアシル基、炭素数1〜8のジケトネート基、
ヒドロキシル基、ハロゲン基を表す。) 7.前記5または6に記載の塗膜前駆組成物を基板上に
塗布し、加水分解性シラン化合物の加水分解・脱水縮合
反応と有機ポリマーの除去を行うことを特徴とする前記
1〜3のいずれかに記載の多孔質のケイ素酸化物塗膜の
製造方法、 8.複数の絶縁層及びその上に形成された配線を包含
し、該絶縁層の少なくとも1層が前記4に記載の半導体
絶縁被膜より構成されてなることを特徴とする、多層配
線構造体、 9.前記8に記載の多層配線構造体を包含してなる半導
体素子、である。
【0009】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
多孔質のケイ素酸化物塗膜の骨格は下記式(1)に表さ
れるケイ素酸化物を主成分とする。 RxySiOz (1) (Rは炭素数1〜8の直鎖状、分岐上および環状のアル
キル基、アリール基を表し、0≦x<2、0≦y<2、
0≦(x+y)<2、1<z≦2である) 本発明の多孔質のケイ素酸化物塗膜はリン原子を含有す
ることを特徴とするが、本発明の多孔質のケイ素酸化物
塗膜は、半導体素子の製造工程でクラックや剥離、磨耗
などを起こさず、低誘電率の多層配線構造体用の絶縁
膜、特に半導体素子用の多層配線構造体用の絶縁薄膜と
して有用である。クラックや剥離、磨耗などを起こさな
い理由については、はっきりとは分からないが、ケイ素
原子よりも多くの共有結合が可能なリン原子により、ケ
イ素酸化物からなるネットワークの架橋密度がさらに上
がり、その結果として全体の骨格構造が強化されるから
と推定される。したがって、本発明ではケイ素酸化物薄
膜中の空孔度を十分に上げても、半導体素子製造工程で
も前述の欠陥を生じない。
【0010】リン原子の量は、ケイ素酸化物塗膜中のケ
イ素原子のモル数に対してリン原子0.01モル%〜2
0モル%、好ましくは0.1モル%〜10モル%とする
ことが好ましい。0.01モル%より少ないと、耐薬品
性や基板との密着性、研磨に対する耐性の向上が顕著に
現れないために本発明の趣旨に合致せず、また20モル
%より多いと均質な塗膜が得られない場合がある。ま
た、本発明の多孔質のケイ素酸化物塗膜はケイ素酸化物
中の全ケイ素原子のうち少なくとも20モル%以上が上
記式(1)においてx=1、y=0,z=1.5である
ことがより好ましい。20モル%以下であると、吸湿に
より比誘電率が上がってしまい、本発明の効果が十分に
発現されない場合がある。好ましくはモル30%以上、
より好ましくは50モル%以上である。全ケイ素原子の
うち全てが上記式(1)においてx=1、y=0,z=
1.5で表される構造であっても構わない。
【0011】このような多孔質のケイ素酸化物塗膜を得
る方法は種々のものが知られているが、一般的に加水分
解性シラン化合物を含む塗膜前駆組成物を塗布した後に
加水分解・脱水縮合反応(以降ゲル化反応と呼ぶ)を進
行させ、塗膜中に残存する溶媒を除去することによっ
て、ケイ素酸化物の3次元構造と有機ポリマーとの混合
物(以下、ケイ素酸化物−有機ポリマー複合体と称す
る)の塗膜を得る。その後有機ポリマーを除去すること
により本発明のリン原子を含有するケイ素酸化物を主成
分とする多孔質のケイ素酸化物塗膜を得ることができ
る。
【0012】本発明の多孔質のケイ素酸化物塗膜の比誘
電率は3以下であり、従来のシリカの比誘電率(4.0
〜4.5)よりも十分に低い塗膜が得られる。比誘電率
が2以下の超低誘電率塗膜の製造も十分に可能である。
このように比誘電率が低くなることによって、前述した
ような半導体素子の配線中を流れる電気信号の伝達遅延
が著しく抑制される。本発明のケイ素酸化物塗膜の厚さ
は0.1μm〜500μmの範囲である。特に半導体素
子の多層配線構造体用の絶縁層としては、通常0.1μ
m〜5μmの塗膜が用いられる。
【0013】以下に本発明の多孔質のケイ素酸化物塗膜
の製造方法について詳細に説明するが本発明は以下の記
載に限られるものではない。先ず初めに本発明における
塗膜前駆組成物について詳しく述べる。本発明の塗膜前
駆組成物が含有する加水分解性シラン化合物は下記の式
(2)〜(6)に示すものを用いることができる。 SiX4 (3)、 R1SiX3 (2)、 R12SiX2 (4)、 R123SiX (5)、及び X3Si−R4−SiX3 (6) (式中、R1、R2及びR3は、各々独立に、水素原子又
は炭素数1〜8の直鎖状、分岐上および環状のアルキル
基、アリール基を表し、R4は炭素数1〜6の2価の炭
化水素基を表わす。またXは各々独立に炭素数1〜6の
アルコキシ基、炭素数1〜6のアシル基、炭素数1〜8
のジケトネート基、ハロゲン基、ヒドロキシル基を表
す。) これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を
併用しても構わない。但し、上記(4)及び(5)より
選ばれる少なくとも1種の加水分解性シラン化合物は、
上記(2)、(3)及び(6)より選ばれる少なくとも
1種の加水分解性シラン化合物と組み合わせて用いるの
が好ましい。
【0014】本発明の加水分解性シラン化合物には、上
記(2)〜(6)に示す化合物の中から選ばれる少なく
とも1種以上の化合物を部分的に加水分解および/また
は脱水縮合してオリゴマーやポリマーにした構造をもつ
ものも含まれる。ケイ素原子に結合するXは加水分解性
官能基であり、アルコキシ基、アシル基、ジケトネート
基、ヒドロキシル基が適しており、この中でもさらにア
ルコキシド基、ヒドロキシル基が好適である。
【0015】なお、上記(2)〜(6)において式中X
が全てヒドロキシル基である場合には、加水分解反応は
それ以上起こらずに脱水縮合反応のみ進行するが、この
ような場合にも本発明においては便宜的に加水分解性シ
ラン化合物と称する。また、上記加水分解性シラン化合
物(2)〜(6)の各々と縮合させることが可能な他の
任意の加水分解性金属化合物、例えば、アルミニウム、
チタン、ジルコニウム、ホウ素、マグネシウム、ゲルマ
ニウム、亜鉛、スズ、ニオブ、鉛、ストロンチウム、リ
チウム、バリウムなどの金属原子からなる、炭素数1〜
6のアルコキシド、炭素数1〜6のアシレート、炭素数
1〜8のジケトネート、ハロゲン化物、水酸化物などを
上記の加水分解性シラン化合物(2)〜(6)に添加す
ることも可能である。この中でも好ましくはアルミニウ
ム、チタン、ジルコニウムを含む金属化合物が特に適し
ている。添加量は、用いる加水分解性シラン化合物の重
量に対し30重量%以下が好ましい。
【0016】本発明において、上記の加水分解性シラン
化合物(3)として用いることができるものの好適な例
として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラ
ン、テトラ(n−プロポキシ)シラン、テトラ(i−プ
ロポキシ)シラン、テトラ(n−ブトキシ)シラン、テ
トラ(t−ブトキシ)シラン、テトラ(i−ブトキシ)
シラン、テトラ(sec−ブトキシ)シランおよびこれ
らの部分加水分解物などが挙げられる。
【0017】加水分解性シラン化合物(2)として用い
ることができるものの好適な例として、トリメトキシシ
ラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラ
ン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシ
ラン、エチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメト
キシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、フェニル
トリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランおよ
びこれらの部分加水分解物などが挙げられる。
【0018】加水分解性シラン化合物(4)として用い
ることができるものの好適な例として、ジメチルジメト
キシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジ
メトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニ
ルジメトキシシラン、フェニルジエトキシシラン、メチ
ルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニ
ルメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジエトキシ
シランおよびこれらの部分加水分解物などが挙げられ
る。
【0019】加水分解性シラン化合物(5)として用い
ることができるものの好適な例として、トリメチルメト
キシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリフェニル
メトキシシラン、トリフェニルエトキシシラン、フェニ
ルジメチルメトキシシラン、フェニルジメチルエトキシ
シラン、ジフェニルメチルメトキシシラン、ジフェニル
メチルエトキシシラン、ジメチルメトキシシラン、ジメ
チルエトキシシラン、ジフェニルメトキシシラン、ジフ
ェニルエトキシシランおよびこれらの部分加水分解物な
どが挙げられる。
【0020】上記の加水分解性シラン化合物(6)とし
て用いることができるものの好適な例として、ビス(ト
リメトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリ
ル)メタン、1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタ
ン、1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、1,
4−ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、1,4−ビ
ス(トリエトキシシリル)ベンゼンおよびこれらの部分
加水分解物などが挙げられる。
【0021】上記に列挙した中でも特に、テトラメトキ
シシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラ
ン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、
メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラ
ン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシ
ラン及びトリメチルエトキシシランおよびこれらの部分
加水分解物が好ましい。本発明においては、より比誘電
率が低く、かつ半導体素子製造工程にさらに適する耐薬
品性や基板との接着性、研磨に対する耐性をもつ、多孔
質のケイ素酸化物塗膜を得るために、式(2)で表され
る加水分解性シラン化合物を全ケイ素原子の20モル%
以上となるように用いることも有効である。20モル%
以下であると、本発明の効果が十分に発現されない場合
がある。
【0022】本発明の多孔質のケイ素酸化物塗膜を製造
する際に加水分解性シラン化合物のゲル化反応を利用す
る場合、多孔質膜を得るためのスペーサー(空隙形成
剤)として有機ポリマーを併用する。本発明に用いられ
る有機ポリマーは特に限定されないが、好適に用いるこ
とができる有機ポリマーの例としては、ポリエチレング
リコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチ
レングリコールなどのポリエーテル類、ポリアクリルア
ミド誘導体、ポリメタクリルアミド誘導体、ポリ(N−
ビニルピロリドン)、ポリ(N−アシルエチレンイミ
ン)などのアミド類、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸
ビニル、ポリアクリル酸誘導体、ポリメタクリル酸誘導
体、ポリカプロラクトンなどのエステル類、ポリイミド
類、ポリウレタン類、ポリ尿素類、ポリカーボネート類
などが挙げられる。これらは単独のポリマーであっても
よく、複数のポリマーの混合物であってもよい。また、
有機ポリマーの主鎖は、本発明の効果を損なわない範囲
で、上記以外の任意の繰り返し単位を有するポリマー鎖
を含んでいてもよい。ポリマーの分子量は100〜10
0万の中から選ばれる。ポリマーの基本骨格が脂肪族で
あると、後述するように加熱焼成によって多孔質体に変
換するのが容易であるので好ましい。
【0023】用いられる有機ポリマーの中で適している
ものの具体的な例を下記に列挙する。 (a)ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコ
ール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレ
ングリコール、ポリペンタメチレングリコール、ポリヘ
キサメチレングリコール、ポリジオキソラン、ポリジオ
キセパンなどの脂肪族ポリエーテル。 (b)ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、ポリカプ
ロラクトントリオール、ポリピバロラクトン等の、ヒド
ロキシカルボン酸の重縮合物やラクトンの開環重合物及
びポリエチレンオキサレート、ポリエチレンスクシネー
ト、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンスベレー
ト、ポリエチレンセバケート、ポリプロピレンアジペー
ト、ポリオキシジエチレンマロネート、ポリオキシジエ
チレンアジペート等の、ジカルボン酸とアルキレングリ
コールの重縮合物、ならびにエポキシドと酸無水物との
開環共重合物、などの脂肪族ポリエステル。 (c)ポリエチレンカーボネート、ポリプロピレンカー
ボネート、ポリトリメチレンカーボネート、ポリテトラ
メチレンカーボネート、ポリペンタメチレンカーボネー
ト、ポリヘキサメチレンカーボネート等の、炭酸とアル
キレングリコールの重縮合物である脂肪族ポリカーボネ
ート。 (d)ポリマロニルオキシド、ポリアジポイルオキシ
ド、ポリピメロイルオキシド、ポリスベロイルオキシ
ド、ポリアゼラオイルオキシド、ポリセバコイルオキシ
ド等の、ジカルボン酸の重縮合物である脂肪族ポリアン
ハイドライド。
【0024】上記の中でも特に好ましいのは(a)に記
載の脂肪族ポリエーテルである。また、多孔質体へ変換
したときの収縮を少なく抑え、低い比誘電率をもつ多孔
質のケイ素酸化物塗膜を得るために、有機ポリマーが分
子内に少なくとも1つの重合性官能基を有していてもよ
い。この場合、得られるケイ素酸化物−有機ポリマー複
合体に含まれる有機ポリマーは3次元網目および/また
はグラフト状の構造となる。
【0025】用いられる官能基としてはビニル基、ビニ
リデン基、ビニレン基、グリシジル基、アリル基、アク
リレート基、メタクリレート基、アクリルアミド基、メ
タクリルアミド基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、
イソシアネート基、アミノ基、イミノ基、ハロゲン基な
どが挙げられる。これらの官能基は有機ポリマーの主鎖
中にあっても末端にあっても側鎖にあってもよい。また
有機ポリマー鎖に直接結合していてもよいし、アルキレ
ン基やエーテル基などを介して結合していてもよい。同
一の有機ポリマー分子が1種の官能基を有していても、
2種以上の官能基を有していてもよい。上記に挙げた官
能基の中でも、ビニル基、ビニリデン基、ビニレン基、
グリシジル基、アリル基、アクリレート基、メタクリレ
ート基、アクリルアミド基、メタクリルアミド基が好適
に用いられる。
【0026】また、有機ポリマーの末端基が加水分解性
シラン化合物と反応して共有結合を形成すると、後に有
機ポリマーを除去する際に、有機ポリマーの一部が膜中
に残存したりシラノール基が生成したりして、良質の多
孔質のケイ素酸化物塗膜を得ることができない場合があ
る。これを避ける目的で、有機ポリマーと加水分解性シ
ラン化合物との反応を制御するために、有機ポリマーの
末端のうち少なくとも1つが非反応性の置換基で置換さ
れていても良い。置換基は原料の加水分解性シラン化合
物と反応しないものであれば何を用いても良いが、具体
例として炭素数1〜18の直鎖状、分岐状および環状の
炭化水素基、アルキルエーテル基、アルキルエステル
基、アルキルアミド基、アルキルカーボネート基、およ
びシリル基などが挙げられる。
【0027】さらに、本発明において使用することが可
能な有機ポリマーとして、沸点が200℃〜450℃で
ある有機ポリマーが挙げられる。沸点がこの範囲である
と後述するような多孔薄膜化の製造工程における有機ポ
リマーの揮散が効率良く行われるので好ましい。有機ポ
リマーの添加量は、加水分解性シラン化合物1重量部に
対し10-2〜100重量部、好ましくは10-1〜10重
量部、さらに好ましくは10-1〜5重量部である。有機
ポリマーの添加量が10-2重量部より小さいと、多孔質
のケイ素酸化物塗膜の空隙率も小さくなり、従って比誘
電率が低下しないために、実用性に欠ける。また100
重量部より大きくても、多孔質のケイ素酸化物塗膜の強
度が非常に小さくなり実用性に乏しい。
【0028】本発明では、有機ポリマーの代わりに、重
合性有機モノマーを出発原料として用いることもでき
る。このとき、有機モノマーの中に2官能性の有機モノ
マーが含まれている場合、得られる複合体の中の有機ポ
リマーは3次元網目および/またはグラフト状の構造と
なる。好適に用いることができるものとしてアクリル
酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸
エステル、エチレンビスアクリレート、エチレンビスメ
タクリレート、α−シアノアクリル酸、α−シアノアク
リル酸エステルなどのアクリル酸およびメタクリル酸誘
導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、クロトン酸ビ
ニル、安息香酸ビニル、クロロギ酸ビニルなどの酸ビニ
ルエステル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、
N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキ
ルメタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N
−アルキルメタクリルアミド、N,N’−メチレンビス
アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルホ
ルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのアミド類、
スチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシスチレ
ン、ジフェニルエチレン、ビニルナフタレン、ビニルア
ントラセン、ビニルシクロペンタン、ビニルシクロヘキ
サン、5−ビニル−2−ノルボルネンなどのビニル基含
有炭化水素類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル
などのアクリロニトリル誘導体、N−ビニルピリジン、
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルイミダゾールなど
のビニルアミン類、ビニルアルキルエーテル、ビニルア
ルキルケトン、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グ
リシジル、エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0029】これらの有機ポリマーおよび重合性有機モ
ノマーは、単独で用いても2種以上を併用しても構わな
い。もちろん有機ポリマーと重合性有機モノマーを併用
することも可能である。重合性有機モノマーの添加量
は、加水分解性シラン化合物1重量部に対し10 -2〜1
00重量部、好ましくは10-1〜10重量部、さらに好
ましくは10-1〜5重量部であり、有機ポリマーと重合
性有機モノマーを併用する場合はその合計量が上記範囲
内にあるようにする。
【0030】重合性官能基を有する有機ポリマーや重合
性有機モノマーを用いた場合、重合反応を速やかに進行
させるために重合開始剤を添加してもよい。重合開始剤
はアゾ化合物や有機過酸化物などの熱ラジカル発生剤、
ジアゾ化合物、アジド化合物、アセトフェノン誘導体な
どの光ラジカル開始剤などの他に光酸発生剤、光塩基発
生剤などの公知のものが使用可能である。これらは単独
でも複数を併用してもよい。開始剤を用いた熱重合、光
重合は公知の方法で行う。重合開始剤の量は、重合性官
能基を有する有機ポリマー、および重合性有機モノマー
1重量部に対し10-3〜1重量部、好ましくは10-2
10-1重量部に設定する。
【0031】本発明の多孔質のケイ素酸化物塗膜を製造
する際に加水分解性シラン化合物のゲル化反応を利用す
る場合には、溶媒の存在は必ずしも必須ではないが、加
水分解性シラン化合物と有機ポリマーが相溶しにくい場
合が多いので、そのときにはこの両者を溶解する溶媒を
用いることが必要である。溶媒としては加水分解性シラ
ン化合物と有機ポリマーの両方を溶解するものであれば
特に限定することなく用いることが可能である。また原
料の加水分解性シラン化合物が不溶であっても、一定以
上の加水分解反応が進行した後に可溶となるものであれ
ば同様に使用することができる。
【0032】用いられる溶媒として、炭素数1〜6の一
価アルコール、炭素数1〜6の二価アルコール、グリセ
リンなどのアルコール類の他、ホルムアミド、N−メチ
ルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジ
メチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、
N−メチルアセトアミド、N−エチルアセトアミド、
N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセ
トアミド、N−メチルピロリドン、N−ホルミルモルホ
リン、N−アセチルモルホリン、N−ホルミルピペリジ
ン、N−アセチルピペリジン、N−ホルミルピロリジ
ン、N−アセチルピロリジン、N,N’−ジホルミルピ
ペラジン、N,N’−ジアセチルピペラジンなどのアミ
ド類、テトラメチルウレア、N,N’−ジメチルイミダ
ゾリジノンなどのウレア類、テトラヒドロフラン、ジエ
チルエーテル、ジ(n−プロピル)エーテル、ジイソプ
ロピルエーテル、ジグリム、1、4−ジオキサン、エチ
レングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコー
ルジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエー
テル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロ
ピレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、
ギ酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸エチル、エ
チレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチ
レングリコールジアセテート、プロピレングリコールモ
ノメチルエーテルアセテート、炭酸ジエチル、炭酸エチ
レン、炭酸プロピレンなどのエステル類、アセトン、メ
チルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチル(n
−ブチル)ケトン、メチルイソブチルケトン、メチルア
ミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなど
のケトン類、アセトニトリル、プロピオニトリル、n−
ブチロニトリル、イソブチロニトリルなどのニトリル
類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、スルホ
ランなどが好適に用いられる。これらの溶媒を混合した
り、他の任意の溶媒あるいは添加物を混合してもよい。
【0033】本発明においては、多孔質のケイ素酸化物
塗膜中にリン原子を含むことが必須である。リン原子の
導入にはどのような方法を用いてもよいが、例えばリン
単体や、リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ホスホン
酸、ホスフィン酸、およびこれらのアルキル置換体、ア
シル置換体、アルキルエステル、ジアルキルエステル、
シリルエステル、金属塩や、ホスフィン、ホスフィンオ
キサイド、およびこれらのアルキル置換体、アシル置換
体、シリル置換体、アミド、ハロゲン化物などのリン含
有化合物などを原料として予め添加しておくのが最も簡
便である。
【0034】また工程中にて上記リン化合物の溶液に浸
漬したり、蒸気に暴露したりする方法を用いてもよい。
上記リン化合物は1種類でも2種類以上の併用でもよ
い。その他、塗膜に対してイオン注入法など公知の方法
を用いてリン原子を導入してもよい。通常、半導体素子
の製造工程において絶縁層を加工するためにフッ素プラ
ズマが用いられるが、フッ素プラズマ処理により不揮発
性の化学種を生成するような原子が絶縁膜中に存在する
と、加工残さとして半導体素子中に残って、素子中の他
の材料を汚染したり加工の精度を著しく低下させたりす
る。このために絶縁層はケイ素、酸素、および水素によ
り構成されるのが一般的であり、これら以外の元素を含
む場合には加工プロセスが複雑化し、コストの上昇を招
くという問題があった。しかし、リン原子はフッ素プラ
ズマ処理によりガス状の化合物として容易に除去され、
加工残さとして膜中に残ることはない。この点からも、
本発明のリン原子を構造中に含む多孔質のケイ素酸化物
塗膜は、半導体素子用の多層配線構図体用の絶縁薄膜と
して有用である。
【0035】本発明では、加水分解性シラン化合物の反
応を促進するための触媒として機能しうる物質を添加し
てもよい。触媒として機能しうる物質の具体例として
は、塩酸、硝酸、硫酸、蟻酸、酢酸、蓚酸、マロン酸、
マレイン酸及びトルエンスルホン酸などの酸、並びにア
ンモニア水、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、トリ
エチルアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、ピペ
リジン及びコリンなどの塩基が挙げられる。酸、塩基は
それぞれ単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、酸、塩基の両者を用いて段階的に処理することも
可能である。ここでいう「段階的に処理する」とは、例
えば予め酸触媒で処理を施した後に塩基触媒で処理を施
すこと、又はその逆を指す。この場合、組成物に2種類
の触媒を添加する形になる。これらの触媒の添加量は、
加水分解性シラン化合物1モルに対し1モル以下、好ま
しくは10-1モル以下が適当である。1モルより多いと
沈殿物が生成し、均質な多孔質のケイ素酸化物塗膜が得
られ難くなる場合がある。
【0036】本発明において加水分解性シラン化合物の
加水分解反応を進行させるために水が必要な場合があ
る。この場合には水を予め塗膜前駆組成物中に添加して
もよいし、塗膜前駆組成物に上記の触媒を水溶液として
添加する場合には、その溶媒である水を用いてもよい。
また、加水分解性シラン化合物の加水分解を、周囲に十
分な水蒸気を含む雰囲気下で行う場合には、特に水を添
加しなくてもよい。本発明の塗膜前駆組成物に水を添加
する場合の適当な水の添加量は、加水分解性シラン化合
物に含まれる加水分解性官能基1モルに対し104モル
以下、好ましくは10モル以下である。104モルより
多いと、得られる多孔質のケイ素酸化物塗膜の均質性が
低下する場合がある。その他、所望であれば、例えば感
光性付与のための光触媒発生剤、基板との密着性を高め
るための密着向上剤、長期保存のための安定剤など任意
の添加物を、本発明の趣旨を損なわない範囲で本発明の
塗膜前駆組成物に添加することができる。
【0037】次に本発明の塗膜前駆組成物を多孔質のケ
イ素酸化物塗膜にする方法について説明する。本発明に
おいて加水分解性シラン化合物を含む塗膜前駆組成物を
溶液状態で用いる場合には、塗膜の形成は基板上に該塗
膜前駆組成物の溶液を基板上に塗布することによって行
う。塗膜の形成方法としては流延、浸漬、スピンコート
などの公知の方法で行うことができるが、半導体素子の
多層配線構造体用の絶縁層の製造に用いるにはスピンコ
ートが好適である。
【0038】基板としては任意のものを用いることがで
きるが、一般的にシリコン、ゲルマニウム等の半導体基
板、ガリウム−ヒ素、インジウム−アンチモン等の化合
物半導体基板等が用いられる。またこれらの表面に他の
物質の塗膜を形成したうえで用いることも可能である。
この場合、塗膜としては、アルミニウム、チタン、クロ
ム、ニッケル、銅、銀、タンタル、タングステン、オス
ミウム、白金、金などの金属からなる塗膜の他に、二酸
化ケイ素、フッ素化ガラス、リンガラス、ホウ素−リン
ガラス、ホウケイ酸ガラス、多結晶シリコン、アルミ
ナ、チタニア、ジルコニア、窒化シリコン、窒化チタ
ン、窒化タンタル、窒化ホウ素、水素化シルセスキオキ
サン等の無機化合物からなる塗膜、メチルシルセスキオ
キサン、アモルファスカーボン、フッ素化アモルファス
カーボン、ポリイミド、その他任意の有機ポリマーから
なる塗膜を用いることができる。
【0039】塗膜の形成に先立ち、上記基板の表面を、
あらかじめ密着向上剤で処理してもよい。この場合の密
着向上剤としてはいわゆるシランカップリング剤として
用いられるものやアルミニウムキレート化合物などを使
用することができる。特に好適に用いられるものとし
て、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミ
ノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチ
ル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−
(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメ
トキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエ
トキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラ
ン、3−クロロプロピルメチルジクロロシラン、3−ク
ロロプロピルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロ
ピルメチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピル
トリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメ
トキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメト
キシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシ
シラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシ
シラン、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシリルイ
ミダゾール、エチルアセトアセテートアルミニウムジイ
ソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトア
セテート)、アルミニウムビス(エチルアセトアセテー
ト)モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリス
(アセチルアセトネート)などが挙げられる。これらの
密着向上剤を塗布するにあたっては、所望であれば他の
添加物を加えたり、溶媒で希釈して用いてもよい。密着
向上剤による処理は公知の方法で行う。
【0040】以上のようにして得られた塗膜中の加水分
解性シラン化合物を、ゲル化反応によって架橋させる
と、二酸化ケイ素様の三次元網目構造を有したケイ素酸
化物−有機ポリマー複合体の塗膜となる。加水分解性シ
ラン化合物のゲル化温度は特に制限されないが、通常は
0〜350℃、好ましくは60〜300℃の範囲で行う
とよい。温度が0℃より低いと反応速度が小さく、加水
分解性シラン化合物が十分ゲル化するのに長時間を要
し、逆に350℃より高いと巨大なボイドが生成しやす
く、ケイ素酸化物−有機ポリマー複合体の塗膜の均質性
が低下する。
【0041】加水分解性シラン化合物のゲル化に要する
時間は熱処理の温度や触媒の量などによって異なるが、
通常数分間〜数日間の範囲である。一般に、加水分解性
シラン化合物のゲル化と溶媒の少なくとも一部の蒸発は
同時に起こるが、溶媒の沸点や触媒の種類、添加量を調
整することによって両者の速度を調節することも可能で
ある。該加水分解性シラン化合物のゲル化が完了した時
点で溶媒が塗膜中に残っている場合は、引き続いて塗膜
の乾燥を行い、残存する溶媒を除去する。乾燥温度は当
然用いている溶媒の種類によって異なるが、通常30〜
400℃の範囲で行う。また減圧下で乾燥を行うのも有
効である。ボイドの発生を制御し、均質なケイ素酸化物
−有機ポリマー複合体の塗膜を得るために、徐々に温度
を上昇させながら乾燥する方法も好ましい。
【0042】以上のようにして、ケイ素酸化物−有機ポ
リマー複合体の塗膜を得ることができる。この時、上記
の有機ポリマーは、会合せずにほぼ分子鎖の状態になっ
てケイ素酸化物−有機ポリマー複合体の塗膜中に分散し
ている。このようにして得られたケイ素酸化物−有機ポ
リマー複合体の塗膜は、公知の方法で得られる二酸化ケ
イ素塗膜に比べて比誘電率が低く、また厚膜形成性があ
るので、このままで半導体素子の多層配線構造体用の絶
縁層として用いることができる。しかし、さらに比誘電
率の低い、半導体素子の多層配線構造体用の絶縁層を得
ることを目的として、このケイ素酸化物−有機ポリマー
複合体の塗膜をケイ素酸化物を主成分とする多孔質のケ
イ素酸化物塗膜に変換することが好ましい。
【0043】ケイ素酸化物−有機ポリマー複合体の塗膜
の多孔質のケイ素酸化物塗膜への変換は、ケイ素酸化物
−有機ポリマー複合体の塗膜から有機ポリマーを除去す
ることによって行う。この時、上記した加水分解性シラ
ン化合物のゲル化が十分に進行していれば、ケイ素酸化
物−有機ポリマー複合体の塗膜中の、有機ポリマーの分
子鎖が占めていた空間が、多孔質のケイ素酸化物塗膜中
の空孔としてつぶれずに残る。その結果、空隙率が高
く、比誘電率の低い多孔質のケイ素酸化物塗膜を得るこ
とができる。
【0044】有機ポリマーを除去する方法としては、加
熱焼成、プラズマ処理、溶媒抽出などが挙げられるが、
現行の半導体素子製造工程において容易実施可能である
という観点から、好ましいのは加熱焼成である。この場
合、加熱焼成温度は用いる有機ポリマーの種類に依存す
るが、通常300℃〜500℃、好ましくは350℃〜
450℃の範囲である。500℃より高いと、多孔質の
ケイ素酸化物塗膜の空孔がつぶれて膜厚が著しく減少す
るとともに、比誘電率が上昇してしまう。また300℃
より低いと、有機ポリマーの分解が十分でなく、得られ
る多孔質のケイ素酸化物塗膜に不純物として有機ポリマ
ーに由来する有機物が残存するため比誘電率の低い多孔
質のケイ素酸化物塗膜が得られない。
【0045】加熱焼成時間は10秒〜24時間の範囲で
行う。10秒より少ないと有機ポリマーの分解が十分進
行しないので、得られる多孔質のケイ素酸化物塗膜に不
純物として有機ポリマーに由来する有機物が残存するた
め比誘電率の低い多孔質のケイ素酸化物塗膜が得られな
い。また通常有機ポリマーの熱分解は24時間以内に終
了するので、これ以上長時間の加熱焼成は意味をなさな
い。加熱焼成は窒素、アルゴン、ヘリウムなどの不活性
雰囲気下で行ってもよいし、酸素ガスを含有するガス、
例えば空気などの酸化性雰囲気下で行うことも可能であ
る。酸化性雰囲気下で加熱焼成することによって、加熱
焼成温度が低くなり、焼成時間が短縮される傾向にあ
る。また加熱焼成をアンモニア又は水素を含む雰囲気下
で行うと、上記の加水分解性シラン化合物のゲル化反応
により得られる生成物中に残存しているシラノール基が
反応して水素化あるいは窒化され、多孔質のケイ素酸化
物塗膜の吸湿性を低減させることができる。
【0046】こうして得られた塗膜の厚さは0.1μm
〜500μmの範囲である。この塗膜の厚さは、組成物
の粘度や塗布の際の回転速度を変えることによって制御
することができる。500μmより厚いとクラックが発
生する場合がある。半導体素子の多層配線構造体用の絶
縁層としては、通常0.1μm〜5μmの塗膜が用いら
れる。以上、本発明の塗膜前駆組成物を用いて、比誘電
率が十分に低く、かつ構造強度が十分に高い多孔質のケ
イ素酸化物塗膜を容易得る製造方法について記載した。
本発明の製造方法によれば、たとえば比誘電率が2.0
で、かつ半導体素子製造工程の一部である化学機械研磨
工程(CMP工程)における強試験条件下でも、十分適
正を示す薄膜が得られる。
【0047】本発明によって得られる多孔質のケイ素酸
化物塗膜、およびケイ素酸化物−有機ポリマー複合体の
塗膜は、現行の半導体素子製造工程において用いられる
公知の方法で任意の形状に加工することができる。得ら
れた多孔質のケイ素酸化物塗膜をシリル化剤で表面処理
して、吸水性を抑えたり、他の物質との接着性を向上さ
せたりすることも有効である。用いることのできるシリ
ル化剤の例としてトリメチルメトキシシラン、トリメチ
ルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチ
ルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチ
ルトリエトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、メチ
ルジエトキシシラン、ジメチルビニルメトキシシラン、
ジメチルビニルエトキシシラン、ジフェニルジメトキシ
シラン、ジフェニルジエトキシシラン、フェニルトリメ
トキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのアル
コキシシラン類、トリメチルクロロシラン、ジメチルジ
クロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルジクロ
ロシラン、ジメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロ
ロシラン、メチルビニルジクロロシラン、メチルクロロ
ジシラン、トリフェニルクロロシラン、メチルジフェニ
ルクロロシラン、ジフェニルジクロロシランなどのクロ
ロシラン類、ヘキサメチルジシラザン、N,N’−ビス
(トリメチルシリル)ウレア、N−トリメチルシリルア
セトアミド、ジメチルトリメチルシリルアミン、ジエチ
ルトリエチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾ
ールなどのシラザン類などが挙げられる。シリル化の方
法の例としては、塗布、浸漬、蒸気暴露などを挙げるこ
とができる。
【0048】本発明によって、現行の半導体素子製造工
程に十分耐えうる高い耐薬品性や基板との接着性、研磨
に対する耐性をもち、かつ比誘電率の低い多孔質のケイ
素酸化物塗膜が提供される。本発明の多孔質のケイ素酸
化物塗膜は、低誘電率の多層配線構造体用の絶縁層、特
に半導体素子の多層配線構造体用の絶縁層としてきわめ
て有用である。
【0049】
【発明の実施の形態】以下に実施例及び比較例により本
発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限
定するものではない。なお、ケイ素酸化物−有機ポリマ
ー複合体の塗膜および多孔質のケイ素酸化物塗膜の評価
は下記の装置を用いて行った。 (1)膜厚測定:Sloan社製DEKTAK−IIA
型表面粗さ測定装置を用いた。 (2)リン濃度測定:アルバックファイ社製ESCA5
400型測定装置を用い、相対元素濃度を測定すること
で、P原子のモル%(P原子の全Si原子に対するモル
比)を求めた。励起源はMgKα(15kV×26.7
mA)、分析面積は3.5mm×1mmであり、相対元
素濃度は、得られたスペクトルの面積強度から相対感度
係数補正を行うことで求めた。 (3)誘電率測定:SSM社製495型自動水銀CV測
定装置を用いた。 (4)化学機械研磨(CMP)試験:試料上に研磨スラ
リーを2滴滴下し、研磨パッド(直径17mm)を用い
て、上方から4.1psiの押圧を印可しながら140
rpmの速さで3分間研磨した。目視および光学顕微鏡
にて表面観察を行い、剥離の有無を観察した(塗膜が完
全に残っているものを○、下地基板が完全に露出してい
るものを×、その中間状態のものを△とした)。研磨ス
ラリーはシリカゾル系(シリカ濃度13%、一次粒径3
0nm、pH=10.8(アンモニア性))のものを使
用した。研磨パッドは発泡ポリウレタン系パッド(厚さ
約1.8mm)を使用した。
【0050】
【実施例1】メチルトリエトキシシラン1480g、テ
トラエトキシシラン480g、水615g、および85
%リン酸水溶液5.71gを混合し、前処理として50
℃にて8時間攪拌を行い、試料(A)を調製した。この
試料(A)790gにポリエチレングリコールジメチルエ
ーテル(Mn500、80wt%水溶液)266.6gを
加え全体を47重量%に濃縮後、プロピレングリコール
メチルエーテルアセテート566.5gを加えることで
塗膜前駆組成物である試料(B)を調製した。
【0051】
【実施例2】メチルトリエトキシシラン1480g、テ
トラエトキシシラン480g、水315g、および0.
01N硫酸300gを混合し、前処理として50℃にて
8時間攪拌を行い、試料(C)を調製した。この試料
(C)790gにポリエチレングリコールジメチルエーテ
ル(Mn500、80wt%水溶液)266.6gを加え
全体を47wt%に濃縮後、プロピレングリコールメチ
ルエーテルアセテート567gを加えることで試料(D)
を調製した。
【0052】
【実施例3】塗膜前駆組成物である試料(B)87g、
プロピレングリコールメチルエーテルアセテート33
g、および水2.5gを加え、塗膜前駆組成物である試
料(E)とした。この試料(E)を6インチシリコンウ
ェハ上に3ml滴下し、2000rpmにて60秒間回
転塗布した。その後空気中120℃にて1分間、窒素雰
囲気下200℃にて1時間、続いて窒素雰囲気下400
℃にて1時間焼成して多孔質のケイ素酸化物塗膜を得
た。得られた多孔質のケイ素酸化物塗膜の各物性値を表
1に示す。
【0053】
【実施例4】試料(D)87g、プロピレングリコール
メチルエーテルアセテート33g、85%リン酸水溶液
0.49gおよび水2.0gを加え、室温で1時間撹拌
することで塗膜前駆組成物である試料(F)とした。こ
の試料(F)を6インチシリコンウェハ上に3ml滴下
し、2000rpmにて60秒間回転塗布した。その後
空気中120℃にて1分間、窒素雰囲気下200℃にて
1時間、続いて窒素雰囲気下400℃にて1時間焼成し
て多孔質のケイ素酸化物塗膜を得た。得られた多孔質の
ケイ素酸化物塗膜の各物性値を表1に示す。
【0054】
【実施例5】実施例4で用いられる85%リン酸水溶液
を0.03gおよび水を2.46gとする以外は、すべ
て実施例4と同様の操作を行い、多孔質のケイ素酸化物
膜を得た。得られた多孔質のケイ素酸化物塗膜の各物性
値を表1に示す。
【0055】
【実施例6】実施例4で用いられる85%リン酸水溶液
を1.63gおよび水0.86gとする以外は、すべて
実施例4と同様の操作を行い、多孔質のケイ素酸化物塗
膜を得た。得られた多孔質のケイ素酸化物塗膜の各物性
値を表1に示す。
【0056】
【比較例1】実施例4で用いられる85%リン酸水溶液
を1N硫酸水溶液0.75gおよび水1.75gとする
以外は、すべて実施例4と同様の操作を行い、多孔質の
ケイ素酸化物塗膜を得た。得られた塗膜の各物性値を表
1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【発明の効果】本発明のケイ素酸化物の3次元骨格構造
中にリン原子を含有する多孔質のケイ素酸化物塗膜は、
比誘電率が低く、かつ半導体素子製造工程に必要不可欠
な構造強度を有することから、半導体素子の多層配線構
造体用の絶縁層として適しているのみならず、その原料
である塗膜前駆組成物を用いた製造方法は現行の半導体
素子製造工程において工業生産性の飛躍的な向上の達成
を可能にするものである。即ち、本発明の多孔質のケイ
素酸化物塗膜およびその塗膜前駆組成物は、LSI等の
半導体素子の多層配線構造体用の絶縁層の製造において
極めて有利に用いることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C09D 201/00 C09D 201/00 H01L 21/768 H01L 21/90 S Q Fターム(参考) 4G072 AA38 BB09 BB15 FF06 FF07 FF09 GG01 GG03 HH30 MM01 RR05 UU01 4J038 AA011 CE022 CF022 CG032 CG142 CG172 CK032 DE002 DF022 DG002 DJ022 DL031 FA042 FA062 FA082 FA092 FA102 FA122 FA152 FA222 HA056 HA386 HA441 JC20 NA17 NA21 PA19 PB09 PC02 PC03 5F033 GG02 RR04 RR29 XX12 XX25 XX33

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 骨格が主に下記式(1)のケイ素酸化物
    の3次元構造により構成され、該ケイ素酸化物中のケイ
    素原子の全モル数に対してリン原子を少なくとも0.0
    1モル%以上含有し、0.1〜500μmの範囲内の厚
    さであることを特徴とする多孔質のケイ素酸化物塗膜。 RxySiOz (1) (但し、式中Rは炭素数1〜8の直鎖状、分岐上および
    環状のアルキル基、アリール基を表し、0≦x<2、0
    ≦y<2、0≦(x+y)<2、1<z≦2である)
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のケイ素酸化物中の全ケ
    イ素原子のうち少なくとも20モル%以上が式(1)に
    おいてx=1、y=0,z=1.5であることを特徴と
    する、請求項1に記載の多孔質のケイ素酸化物塗膜。
  3. 【請求項3】 比誘電率が3以下であることを特徴とす
    る、請求項1〜2のいずれかに記載の多孔質のケイ素酸
    化物塗膜。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質
    のケイ素酸化物塗膜を用いた半導体絶縁被膜。
  5. 【請求項5】 (A)少なくとも1種の加水分解性シラ
    ン化合物と、(B)少なくとも1種の有機ポリマーと、
    (C)前記(A)に含まれる全ケイ素原子のモル数に対
    して少なくとも0.01モル%以上の、リン原子を含有
    する少なくとも1種の化学種とを含有することを特徴と
    する塗膜前駆組成物。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の(A)に含まれる全ケ
    イ素原子のうち少なくとも20モル%以上が、下記式
    (2)により表される構造であることを特徴とする、請
    求項5に記載の塗膜前駆組成物。 R1SiX3 (2) (但し、式中R1は水素原子または炭素数1〜8の直鎖
    状、分岐上および環状のアルキル基、アリール基を表
    し、Xは各々独立に炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素
    数1〜6のアシル基、炭素数1〜8のジケトネート基、
    ヒドロキシル基、ハロゲン基を表す。)
  7. 【請求項7】 請求項5または6に記載の塗膜前駆組成
    物を基板上に塗布し、加水分解性シラン化合物の加水分
    解・脱水縮合反応と有機ポリマーの除去を行うことを特
    徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多孔質のケイ
    素酸化物塗膜の製造方法。
  8. 【請求項8】 複数の絶縁層及びその上に形成された配
    線を包含し、該絶縁層の少なくとも1層が請求項4に記
    載の半導体絶縁被膜より構成されてなることを特徴とす
    る、多層配線構造体。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の多層配線構造体を包含
    してなる半導体素子。
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