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タデイ・ポガチャルが山岳ステージ2勝でホームチームの責務果たす ここからワンデーレースが軸のスケジュールへ【Cycle*2025 UAEツアー:レビュー】
サイクルロードレースレポート by 福光 俊介タデイ・ポガチャルが総合優勝で2025シーズン幕開け
空に向かって高らかに突き上げた拳。タデイ・ポガチャル(UAEチームエミレーツ・XRG)のこのシーンを、われわれは今年何度見ることだろうか。チームの本拠地・UAE(アラブ首長国連邦)での戴冠は、これが3年ぶり3回目。チームとしてもここ2年はタイトルを獲れずにいたから、絶対エースのポガチャルを“シーズン序盤の最大目標”に充てて復権を図った甲斐があった。
「シーズン最初のレースを勝つことができてとてもうれしい。ここで結果を出すことだけに集中してきた。目標を果たせたいまを心から楽しみたい」(ポガチャル)
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狙い通りの華々しいシーズンイン。世界王者の証であるマイヨ・アルカンシエルは、UAEの砂漠地帯にもとりわけ映えた。シーズン初戦で試運転の意味合いもあったはずだが、ここぞという場面ではしっかりと踏み込む。平坦にカテゴライズされた第1ステージからスプリントに参戦すると、12.2kmの個人タイムトライアルに設定された第2ステージでは3位と上々の走り。山岳ステージを前に、臨戦態勢を完全に整えた。
上りスプリントさながらの急加速で今季初勝利
“持ち場”で躍動したのは第3ステージ。全長21.6km・平均勾配5.4%のジュベル・ジャイスの上りに照準を定めると、逃げをすべてキャッチしたアシスト陣の働きに応えるべく、山頂のフィニッシュを目前に猛進。約20人に絞られていた集団から飛び出すと、上りスプリントさながらの急加速で今季初勝利となるステージ優勝。母国スロベニアから両親が駆けつけた中で、リーダージャージに袖を通した。
「もう少しレインボージャージ(アルカンシエル)のまま走っても良かったのだけどね」と笑ったポガチャルだけど、第4ステージ以降はレースリーダーとして堂々と立ち回った。チーム力でもって横風分断を仕掛けるなど、決して手は緩めない。第5ステージにいたっては、チームメートのドメン・ノヴァクとともに集団から抜け出して逃げグループへ。さすがにスプリンターチームが追いかけて逃げ切りはならなかったけど、中間スプリントポイントで3秒のボーナスタイムを得るなど抜かりない。どこまでも攻撃姿勢を貫いた。
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【ハイライト】UAEツアー 第7ステージ|Cycle*2025
「逃げる予定だったかって? そんなつもりはなかったんだ。でも、集団の先頭に立ったらおもしろいことが起こったんだ(笑)。逃げ切りはさすがにできなかったけど、レース終了時間がはるかに早くなったよ。それだけでも大成功じゃない!?」(ポガチャル)
順調に、快調に走り続けるポガチャルにとって、“本番”は最終の第7ステージだった。今大会で再三再四トライしてきた横風分断で、個人総合上位陣の数人を振り落とすことに成功。2つの大集団が30秒から1分程度の差で長く追いかけっことなったが、最後の勝負どころである山岳のジュベル・ハフィートを前にその差は拡大。ポガチャルとしては登坂距離10.7kmの上りに集中するだけで良くなった。
ここで機能したのがルネ・ヘレホーツとフロリアン・フェルミールスの両ベルギー人ライダーだった。北のクラシック要員として今季チーム入りした2人は、中東レース特有の砂漠地帯での強い風に対応するために今大会のメンバーに加わっていた。「ポガチャルと一緒のチームで走れるだけでうれしい」とエキサイトする両人だけど、大会を通じて大エースを守ってきた。この日も、平坦区間でのハイペースを築くと、最後の上りでも渾身の牽引。彼らが役目を終えたフィニッシュ前7.8kmで、真打ちとバトンタッチした。
「僕にとっては理想的なレース展開だった。それを演出してくれたのはルネとフロリアンだ。彼らの働きに何としてでも応えないといけないと思ったよ。誰の攻撃も、脅かされることも僕にとっては許されないことだった」(ポガチャル)
アタックに反応したジュリオ・チッコーネ(リドル・トレック)とオスカー・オンリー(ピクニック・ポストNL)を振り切ると、あとはフィニッシュまでそのペースを維持するだけ。十二分なリードを得た王者は、最終コーナーで待っていたファンとハイタッチをかわしながら頂上のフィニッシュラインへと達した。
「今大会を通して、他チームからの協力を得られる局面が少なかった。それは仕方のないこと。ならば、自分たちでやるしかなかった。最後の1日もハードだったけど、持ちこたえられてホッとしているよ」(ポガチャル)
超高層ビル群あるドバイを駆け抜ける
かくして、大会覇者だけに贈られる“ユニティ・トロフィー”を掲げたポガチャル。個人総合2位となったチッコーネとの最終のタイム差1分14秒は、このコンペティション7回の歴史の中で最大タイム差。勝利したのは2つの山岳ステージだったけど、平坦もタイムトライアルも、最初から最後まで集中した走りが結果として反映されたといえよう。
さあ、こうなると気になるのは2025年シーズンのレーススケジュールである。あれこれと、希望的観測も含めたさまざまな声が飛び交ったポガチャルの周辺だけど、いよいよ本人が口を開いた。
「ドーフィネ(クリテリウム・デュ・ドーフィネ)まではステージレースに出場しない。ここからはワンデークラシックに気持ちを切り替えていくよ。さあ楽しもう!」(ポガチャル)
これではっきりした。ワンデーレース注力の理由を問われて「1日走ればすぐに家に帰れるからだよ!」なんて冗談めかすポガチャルだけど、チームとしてもエースの希望を大事にし全力でサポートするという。
具体的には、ストラーデ・ビアンケ(3月8日、イタリア)、ミラノ〜サンレモ(3月22日、イタリア)、E3サクソクラシック(3月28日、ベルギー)、ヘント〜ウェヴェルヘム(3月30日、ベルギー)、ロンド・ファン・フラーンデレン(4月6日、ベルギー)、アムステル・ゴールドレース(4月20日、オランダ)、ラ・フレーシュ・ワロンヌ(4月23日、ベルギー)、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ(4月27日、ベルギー)を予定。レコン(試走)を行ったことが話題となったパリ〜ルーベについては、特段触れられていない。
同時に、クラシックキャンペーン後に高地トレーニングを行うことも明かし、ドーフィネとツールへとつなげていく算段だ。
ちなみに、ポガチャルに沸くUAEからはるか遠く、ポルトガルではヨナス・ヴィンゲゴー(ヴィスマ・リースアバイク)もボルタ・アオ・アルガルヴェで個人総合優勝。サイクルロードレースシーンの中心に立つ2人が、そろって最高のシーズンインを果たした。これからのシーズンへの楽しみは、膨らむばかりである。
ジョナタン・ミランはステージ2勝
もちろん非公式ではあるのだけれど、“世界スプリント選手権”と称されるほどにスプリンターの競演となるのもUAEツアーの華。ときに個人総合争いよりも見ものとなるスピードバトルは、今年も期待に違わない熱戦となった。
いささか早すぎたポガチャルの加速をうまく利用しながら、オープニングウィンを飾ったのがジョナタン・ミラン(リドル・トレック)。トラック競技でも共闘するシモーネ・コンソンニを発射台に、第4ステージも制して今大会2勝。
ティム・メルリールはステージ2連勝
そのミランを追い込んだヨーロッパ王者のティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)が、第5ステージ以降のスプリントで主演に。3年連続となるUAEでの勝利で勢いに乗って、続く第6ステージでは雑然とする集団を真っ先に抜け出して圧勝。リードアウトトレインを失いながらも、最後に決めたのはやはり勝負勘だった。
実質ナンバーワンスプリンターの称号であるポイント賞のグリーンジャージは、ミランが袖を通した。ステージ2勝以降も上位進出を連発。最終・第7ステージではポガチャルらとともに先頭グループに入って、中間スプリントを1位通過するなどジャージ獲得へ奮闘した。
「グリーンジャージが個人的な目標だったからすごくうれしいよ。チッコーネの個人総合2位にも貢献できて、チームプレーヤーとしても役に立てることが証明できた。それでも、完璧な7日間だったわけではないから、いくつかのミスを検証しなければならない。学ぶことは常に大切なんだ」(ミラン)
改めて最終結果を整理すると、個人総合トップ3がポガチャル、チッコーネ、ペリョ・ビルバオ(バーレーン・ヴィクトリアス)の順。ポイント賞がミランで、ヤングライダー賞には個人総合4位に食い込んだイバン・ロメオ(モビスター チーム)。この大会独自の賞である中間スプリント賞は、毎ステージ逃げを打ったジョルジェ・ジュリッチ(チーム ソリューションテック・ヴィーニファンティーニ)が獲得。チーム総合はモビスター チームが受賞した。
文:福光 俊介
福光 俊介
ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う
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