酒匂 雄二[執筆] 2/4 8:00

「ネットショップ担当者フォーラム」に掲載されている2025年の展望に関する記事や、1月に私が執筆した展望記事でも触れているように、新規顧客を獲得し続けることが難しくなっていると感じます。SEOや広告を行うにしても人員、予算、時間のリソースは必要なもの。であれば、既存顧客への対応がおざなりになっていないか見返し、購入頻度を高めるリピーター施策、CRMに立ち返ってみる2025年にしてみませんか?

「売ろう売ろう」とするあまり、いつの間にかお客さんから遠い場所にいないか?

イーザッカマニア ストアーズに学ぶ「ブランド作り」+ECメディア3社が語る“2025年のEC業界”【EBSの情報交換会1/11開催】 | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/13207

2025年1月11日に行われた、一般社団法人イーコマース事業協会(EBS)の第214回定例会に参加しました。基調講演は「イーザッカマニア ストアーズ」の浅野かおり氏が務め、「ブランドは誰がつくるのか」と題した講演で「ブランドとは何か」「誰が作り上げていくのか」について話していました。

同店は複数のECモールにおいて賞を獲得している人気店。1月30日に発表された「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2024」でも、総合賞4位、レディースファッションジャンル大賞、最強翌日配送大賞、ラ・クーポン大賞の4つを受賞しました。私も何度か購入したことがあり、スタッフの顔が見えるユニークな店舗運営や独創的な雰囲気に魅せられたファンの1人です。

はたから見れば「順調そのもの」という印象でしたが、同店の25年の歴史のなかには苦悩や葛藤があり、今も顧客との距離や関係値を模索し続けていることに驚きました。

2024年夏から浅野氏の講演を4回聞いてきたのですが、登壇するたびに自社への課題を見つけて持ち帰り、スタッフと共にサイトの改善に生かしていることに感銘を受けました。

その取り組みの1つと感じたのが、2024年11月からスタートした浅野氏によるコンテンツ「恥ずかしいから読まないでください(仮)」です。そこには店長としての心境、顧客への想いが等身大で綴られています。

恥ずかしいから読まないでください(仮) | イーザッカマニアストアーズ
https://e-zakkamania.com/f/contents/241108

時折レビューに返信したくなったり
(でもなんでその人だけ返信するんって言われたらどうしよう)
(レビュー返信してくれているスタッフが気を遣ってしまったらどうしよう)
Xとかで引用してアンサーソング的にお返事書いたらどうだろう
(勝手に引用とかしてイヤ!って思うお客さんだったらどうしよう)
(そもそもXあんまり使ってなくてお作法がわからないのにどうしよう)

どうしようどうしようって思ってたら、いつの間にかお客さんから遠い場所に座ってしまってました。

店名にもある「マニア」の通り、熱狂度の高いファンが多くいることは間違いありません。けれど、その域にあっても店長自身がこのような葛藤を抱え、その思いをまっすぐ発信していくことこそ、AI活用が進む時代において、ユニークであり続けるために大切なことではないでしょうか。

定例会の後半では、「ネットショップ担当者フォーラム」編集長の瀧川氏、「日本ネット経済新聞」の手塚康輔氏、「ECのミカタ」の吉見紳太朗氏と、国内を代表するECメディアが対談。

新規顧客獲得が困難になるなかでは既存顧客の引き上げが重要、F2転換を重視することの大切さについて資料をもとに意見を交わしました。新規参入、新規顧客の獲得競走が激化していくEC業界において、既存顧客に目を向けて気を配り、対話していくことがますます重要になることを両セッションから再確認しました。

2024年末、あるECオーナーから「出店して2年目、売り上げが伸び悩んでいる」と相談を受けた際、「既存顧客へのアクションをしてみませんか」と提案しました。確かに新規顧客獲得は足踏み状態でしたが、既存顧客は何百人もいることに立ち返り、クーポンコード付の年賀状を出してみることにしたそうです。

今でこそ、LINEやさまざまなCRMツールで既存顧客に対するアプローチも簡易になってきていますが、かつては多くのECサイトが電話やはがきによる接点強化を図っていました。

アナログ手法でのリピーター施策を推奨するわけではありませんが、「店舗の思いの熱量を下げることなく顧客に伝えるにはどうすれば良いか」と考えてみてはいかがでしょうか。ぜひ、みなさんの店舗でも既存顧客との接点強化を図る年にしていただければと思います。

要チェック記事

「SEOが理不尽なクソゲーになった」時代の生き方とは? 衝撃の移籍を発表した辻さんと渡辺さんが語った | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/e/2025/01/22/48494

SNSでシェアされているものなどを見ると、タイトルを額面通りに受け取った人も多いのではないかと思うのですが

"この場合のクソゲーは「難しすぎて普通にプレイしてもクリアできないゲーム」の意味ですよね。"

だと思います。私が子どもの頃には、そうした理不尽なクソゲーが多くありました。

Bingが悪質すぎる。Google検索を偽装。そこまでしてBingを使わせたいか | ニッチなPCゲーマーの環境構築Z
https://www.nichepcgamer.com/archives/microsoft-bing-disguises-itself-as-google-search-to-deceive-users.html

年始早々「『Bing』で『Google』と検索すると、表示される画面がひどい」と話題になりましたね。画面を少し上にスクロールすると、実は「Bing」の画面だとわかるのですが、Googleのトップ画面風なデザインをしていることが不評を買ったようです。2025年1月31日時点でも同じ状況でした。

DeepSeekが集める個人情報は「中華人民共和国にある安全なサーバに保存」 | ITmedia NEWS
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2501/28/news117.html

「App Store」で全米ダウンロード数トップ、日本の「App Store」の無料アプリランキングでは「DeepSeek-AI」が「ChatGPT」を抜いて首位になったことが話題になりました。「規制対象の半導体を使用しているのではないか」「OpenAIのデータを『蒸留』して開発していたのではないか」など、次々と新しい話が出てきています。しばらくは慎重に注視していきたいですね。

ChatGPT searchの弱点が露呈。隠しテキストで欺かれるAI(25年前のグーグル的) | Web担当者Forum
https://webtan.impress.co.jp/e/2025/01/10/48432

白背景に白いテキスト、フォントサイズをゼロにする――20年以上EC業界にいる人なら懐かしさすら感じる手法の数々。そうした隠しテキストに「GPT search」が欺かれているという報告。AI検索からのアクセスも増えていますが、使用者側としてはハルシネーションに気をつけたいところです。

こうした手法は主要な検索エンジンでは意味がないどころか悪手になりかねませんし、ユーザーに役立つコンテンツでもありませんよね。

【2025年最新調査】10代の検索行動と情報収集のリアルとは?~10代が狙う検索タイミングとテーマの全貌~ | eclore
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000140336.html

今後みなさんの店舗でも潜在顧客層になるであろう15歳~19歳を対象にした、検索を行う時間帯、場所、情報、ジャンル、キーワードの特徴についての調査データ。未来の新規顧客になりうる人たちの検索行動も知って、SEOに取り組んでいきたいですね。

今、みなさんにお伝えしたいこと

「自主的ブラック」のすゝめ。伸びる人の多くがやってること。 | さこっちのnote
https://note.com/sakocchi/n/n06e545a92d49

EC業界に15年以上携わる有識者3人で「ネッ担 ニュースまとめ」の連載再開! 意気込みやEC業界をアレコレ語り合う | ネットショップ担当者フォーラム
https://netshop.impress.co.jp/node/12282

「ネッ担まとめ」の前任者、運営堂の森野氏のメルマガ「毎日堂」でもピックアップいただいたのですが、その引き継ぎミーティングのときに出た話題から。

「新・ネッ担まとめ」をリレー形式で担当している3人のEC歴が合計すると50年を超えていて、「我々も老害化していることを受け入れよう」というお話です。時代の流れも働き方も変わり、人材確保も難しいなかで「『業務時間外でも仕事の勉強をしろ。スキルを磨け』とは言えない」という経営者に出会うことが増えました。

それこそ「ワシの若い頃はなぁ」なのですが、そんななかでも、夜間や休日に「自主的ブラックに頑張っている」人たちはやはり伸びていると感じることも多々あり。

自分の好きなものなら時間を忘れて見たり触れたりするのは、その好きなもののマーケティングに自分がハマっている証拠では? と考えると、少し変わるかもしれないですね。

それではまた次回! 酒匂(さこっち)の「ネッ担ニュースまとめ」をよろしくお願いいたします。

ECマーケティング人財育成は「EC事業の内製化」を支援するコンサルティング会社です。ECMJコンサルタントが社内のECチームに伴走し、EC事業を進めながらEC運営ノウハウをインプットしていきます。詳しくはECMJのホームページをご覧ください。

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