FRBの利下げは銀行救済!?

 12月の利上げ観測が強まっていた中で、11月30日に日本経済新聞が夜中の2時に発表した植田和男日本銀行総裁のインタビューは、「利上げ時期近づいている、2025年春闘の賃上げモメンタムをみたい。一段の円安はリスクが大きい、場合によっては対応が必要になる」と、何が言いたいのか分からない内容だった。

 円安による物価の暴騰だけは困るという気持ちは伝わってきた。だが、基本戦略は「円安による資産バブルや物価の上昇で大幅利上げに追い込まれない限り、2年くらいかけて半年に1回の0.25%の利上げを行う」のらくら路線である。

 日本は過去数十年間、経済と社会の安定を維持するために驚くほど多額の赤字国債を発行してきたため、政府の財政は非常に脆弱(ぜいじゃく)であり、わずかな金利上昇でさえ破滅的な事態を招きかねない。日本の対GDP(国内総生産)債務比率はおよそ250%である。

 日本は金利を上げることはできない。なぜなら、金利を上げると政府の予算が破綻し、低金利債務でいっぱいの年金基金のほとんどが破綻する可能性があるからだ。

 一方、米国では昨日のCPI(消費者物価指数)を受けて、12月25日のベーシスポイント利下げの確率は、賭け市場で94%に跳ね上がった。FRB(米連邦準備制度理事会)が金融政策を決定する際にインフレや失業率を考慮していないことは明らかだ。彼らが本当にやろうとしているのは、銀行部門の未実現損失を救済することである。

銀行の未実現損益の推移

(米国の銀行の投資有価証券の未実現損失は2024年第2四半期に5,129億ドルに達した)
出所:X(realejantoni)

ドル/円(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:楽天MT4・石原順インディケーター

パウエルFRB議長がビットコインを「デジタル版のゴールド」と発言

 トランプ次期政権がデジタル資産業界を支援するという期待がある中、なんとパウエルFRB議長が「ビットコインはデジタル資産であること以外はゴールドと同じである」と発言し市場を驚かせた。ちなみに、デジタルゴールドと呼ばれるビットコイン市場がゴールド市場並みの時価総額になれば、ビットコインは(12兆÷21万=)57万1,000ドルになる。

 ビットコインは先週、初めて10万ドル(約1,500万円)を突破した。同じく12月5日のブルームバーグの記事「ビットコイン、初の10万ドル突破-トランプ氏のSEC委員長好感」によると、トランプが先月5日の大統領選で勝利して以来、ビットコインの市場規模は約1兆4,000億ドル上昇しており、支持者らは10万ドルの節目について、ビットコインが現代の価値貯蔵手段であり、インフレリスクに対するヘッジ手段だという主張を裏付けるものだとみていると指摘した。

ビットコイン/ドル(日足)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

ビットコイン/ドル(週足)(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)

(赤:買いトレンド・黄:売りトレンド)
出所:トレーディングビュー・石原順インディケーター

 世界最大のヘッジファンドの一つ、ブリッジウォーター・アソシエイツの創設者であるレイ・ダリオは、「債券や借金などの負債資産から距離を置き、ゴールドやビットコインのようなハードマネーに投資する」と語ったと、サウスチャイナ・モーニング・ポスト紙が12月10日に報じた。

 無茶苦茶なMMT(現代貨幣理論)をやったイエレン米財務長官は昨日WSJ CEOサミットで、米国の財政赤字の膨張についてやや謝罪し、「もっと進展が見られなかったことを残念に思う」と認めた。

「財政責任を懸念している。財政赤字を削減する必要がある」と発言したが、イエレンがFRB議長または副議長を務めていた間に米国の債務は8.2兆ドル増加し、財務長官を務めていた間には8.5兆ドル増加した。いまさら、何を言っているのだろうか?

 ダリオは世界金融の基盤を揺るがす「負債マネー問題」が迫っていると警鐘を鳴らしている。ダリオはこれまでビットコインを承認していなかったが、ビットコインへの投資にかじを切ったようだ。