今年4月12日の夕刊フジに掲載された福家隆さんの記事が衝撃的でした。
2018年以降、名古屋市は身寄りがなく「孤独死」した13人の遺体を火葬せず、最長3年4カ月にわたり葬儀業者の保冷施設に放置していたというのです。一般的に孤独死した遺体が発見された場合、警察が入り現場検証が行われ、事件性がないと確認されれば行政に任せるようです。
身寄りがないと入院時も入院後も大変
最近、1人暮らしの友人が脳卒中になったり、病気で倒れたりしました。幸いいずれも自力で救急車を呼んで事なきを得たのですが、家族がいないと入院時や入院後の生活に大きな支障をきたします。親戚や友人たちが何とか最低限の生活用品を用意して病院に届け、大事には至らずにすみました。
私たちが病院に勤めていた時も、救急搬送された患者さんに身寄りがないと大変困惑しました。通常はまず、家族に病状説明をしなくてはなりません。個人情報ですので友人などにお話しするのは難しいでしょう。その場合は、仕方ないので医師の判断で治療を継続することになります。意識のない場合や重症の場合は自分で入院手続きをすることもできません。親族ではない友人に頼むことも困難ですので、事務方もかなり困るようです。
治療がうまくいって無事に退院できれば良いのですが、不幸なことにそのままお亡くなりになった場合は、一体誰が遺体を引き取るのでしょうか。また、残った家や財産の整理など誰がするのでしょうか。ひとごとではありますが心配になります。
グループLINEで生存確認
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大阪大学招へい教授
いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。
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