前回まで、男性更年期の謎と、熟年期になった「人生のたそがれ」を生き抜くことが難しい男たちの話をしました。
私は前立腺がんが全身の骨に転移したあとも、眼科医の妻が開業する医院の2階で、外来患者さんの診療を続けていますが、最近、そのようなたそがれを迎えた患者さんが診察にこられたので、お話をさせていただきたいと思います。
もちろんプライバシーがあるので実際の話とは少し違いますが、それほど極端に捏造(ねつぞう)しているわけではないのでお許しください。
男性ホルモンが減った理由とは
診察にやってきたのは定年を迎えてしばらくした男性です。
気力がわかない、眠れない、体調が悪いといった症状が強くなってきたため、人間ドックを受診されました。たまたま検査をしたら、男性ホルモンのテストステロン値が若干低かったので、私の外来に紹介がありました。
その方自身もテストステロンを補充することに疑問を抱いていたので、ちょうど知り合いの先生が私の医院を紹介したのです。
確かにテストステロン値は標準値より少し下回っていました。お薬手帳を確認してみると、コレステロールを下げるお薬をもらっています。
以前もお話ししましたように、コレステロールは男性ホルモンの原料ですので、コレステロールを下げるお薬を飲むとテストステロンが若干低くなることはあります。
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大阪大学招へい教授
いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。