男性更年期障害に関しては、2~3年に1度ぐらいのペースで、マスコミからいろいろ問い合わせがやってきます。どうやら今年は男性更年期障害の当たり年のようで、いろいろな取材をされていると思います。
マスコミが戸惑うわけとは?
泌尿器科の代表的な先生たちは「男性ホルモンが減っているので、それを補充すればよい」という非常に単純な意見ですから、マスコミの皆さんも分かりやすいと思います。
しかし、私のところに意見を聞きに来たマスコミの方々は、一様に戸惑います。まず私の患者さんの多くが男性ホルモンを補充していないのに治っていること。これまで説明していたように男性ホルモンだけでは男性更年期障害を説明できないこと。男性更年期障害のほとんどはストレスによるうつ病や不安障害であることなどを説明します。すると、多くのマスコミの方が混乱されます。
こんなことをテレビや新聞、雑誌でくわしく書いても、ほとんど理解してもらえないと考えるからでしょう。結局、マスコミで報道されるのは「男性ホルモンが減ってきたので、男性ホルモンの補充をすれば改善する」という非常にシンプルな構図です。少し良心的な場合は、最後に「男性ホルモンだけで解決するとは考えず、他にもストレスなどの影響がある」という私の意見を少し取り上げてくれます。
男性ホルモンを補充している医師も、最近は男性ホルモンの補充とともにカウンセリングなどが有効だと言い始めました。やはり男性ホルモンの補充だけで男性の更年期障害を治すことに限界を感じているからでしょう。それでも、どうしても男性ホルモンの補充は外したくないようです。
ホルモン補充に副作用は?
男性ホルモンの補充に全く副作用がないのであれば、問題も少ないと思いますが、前立腺がんや多血症などにつながる心配があります。また、本当にうつ病や不安障害がひどい場合は、治療が遅れることが懸念されます。…
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大阪大学招へい教授
いしくら・ふみのぶ 1955年京都生まれ。三重大学医学部卒業後、国立循環器病センター医師、大阪厚生年金病院内科医長、大阪警察病院循環器科医長、米国メイヨー・クリニック・リサーチフェロー、大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻准教授などを経て、2013年4月から17年3月まで大阪樟蔭女子大学教授、17年4月から大阪大学人間科学研究科未来共創センター招へい教授。循環器内科が専門だが、早くから心療内科の領域も手がけ、特に中高年のメンタルケア、うつ病治療に積極的に取り組む。01年には全国でも先駆けとなる「男性更年期外来」を大阪市内で開設、性機能障害の治療も専門的に行う(眼科イシクラクリニック)。夫の言動への不平や不満がストレスとなって妻の体に不調が生じる状態を「夫源病」と命名し、話題を呼ぶ。また60歳を過ぎて初めて包丁を持つ男性のための「男のええ加減料理」の提唱、自転車をこいで発電しエネルギー源とする可能性を探る「日本原始力発電所協会」の設立など、ジャンルを超えたユニークな活動で知られる。「妻の病気の9割は夫がつくる」「なぜ妻は、夫のやることなすこと気に食わないのか エイリアン妻と共生するための15の戦略」など著書多数。