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特別対談「伝える×伝える」 ~1on1で伝えること、伝わること~(全6記事)

1on1が「薄い雑談」で終わる、マンネリ化してしまう… 上司と部下の「対話」の質を高めるためには

一般社団法人プレゼンテーション協会が開催する、特別対談「伝える×伝える」シリーズ。今回は1on1コミュニケーションの専門家である世古詞一氏をゲストに迎え、1on1での上司と部下の対話がうまくいくコツ・実例などを語りました。1記事目となる本記事では、1on1を始めた企業が抱えがちな課題について、世古氏が解説します。

約9割の人が“伝えること”に難しさを感じている

前田鎌利氏(以下、前田):では、始めていきたいと思います。みなさん、こんばんは。よろしくお願いいたします。今月は12月で、もう年の瀬でございます(イベント開催は2024年12月16日)。

本日の「伝×伝(つたつた)」は、ゲストに世古さんをお迎えしてやっていこうと思います。今日のスケジュールは、ざっとここにあるとおりです。みなさん質問がありましたら、遠慮なくチャットにバンバン書き込んでいただきたいなと思います。

「伝えることは難しいですか?」という質問に対して、約9割近くの方が「難しい」とお答えになるぐらい、伝えるのは大変だということなんです。

アリストテレスが『弁論術』というものを書いて、そこから「こうやって伝えることをやればいいよ」というふうに教えて示していただいたんですが、そうは言っても2300年経って、なかなかみんな伝えるのが上手にならないなぁというところです。

現代のビジネスシーンでよく使うのがプレゼンテーションというツールなんですが、これ以外にもいろんなツールを使ったり、日常でコミュニケーションを取る瞬間もたくさんあると思います。まさに、日常がプレゼンテーションという状態じゃないかなと思うんです。

世の中がVUCAの時代になって不確実性が増大していく中で、これまでの常識が通用しない。だからこそ、みなさん個々人が成長する、スキルアップするということをやってます。

なんですが、みんなおしなべてスキルアップしていくと、なかなか差別化も図れなくなりますよね。セルフブランディング力も上げていかなきゃいけない中で、誰かに何かを伝える時の「伝え方」がしっかりと自分の中でスキルセットされていると、何を伝えても、どう伝えても、相手に伝わるようになっていくんじゃないかなと思います。

組織課題の多くは「対話」にある

前田:さあ、ということでプレゼンテーション協会なんですが、協会の理念は「念い(おもい)が伝わる世の中へ」です。みなさんの思いが、今日も講座を踏まえて伝わっていったらいいなという思いでスタートしていきたいと思います。

時間も限られていますので、さっそくいきたいと思います。本日の「伝×伝(つたつた)」のゲストは世古詞一さんです。世古さん、よろしくお願いいたします。

世古詞一氏(以下、世古):よろしくお願いいたします。みなさん、こんばんは。

森本千賀子氏(以下、森本):こんばんは。

世古:こんばんは。よろしくお願いします。最初は私が30分ほどお時間をいただきまして、お話しさせていただければなと思います。初めての方がほとんどかなと思いますので、何者なのかと、1on1についてしているお話をしていきたいと思います。

今は2社の代表をしております。組織人事コンサルタントということで、企業さまの組織に関する課題解決のサポートをさせていただいています。やっぱりその中でも、結局のところ組織課題は「話をしてないね」「話しましょう」という話になるんですよね。

だいたい1日集中討議をやって、事業課題の話や組織課題の話になってくるんですが、組織課題のソリューションは「話をする」になることが多くて。仕組みを作るにせよ、まずは「対話をしましょう」ということになるんですね。

私は前職がインターネットの会社で、VOYAGE GROUPという会社が創業した1999年ぐらいからおります。計8年いて辞めて、その後はフェローというかたちで、人事アドバイザーとして14年ずっと携わっていました。2023年から完全に外れたんですが、長いこと関わってきたんですね。

その会社が、「働きがいのある会社」の世界的な調査の日本の中規模部門で、2015年、2016年、2017年と3年連続で1位を取りました。

私も加わりながら、どうやったら働きがいを持てるのかといろいろやってきたんですが、やっぱり対話ができてないねというところで、今日の(テーマにもある)1on1を導入して試行錯誤してました。その時を1つのきっかけ、種にしながら、今でもブラッシュアップしております。

「マンネリ化してしまう」など、1on1に対する悩み

世古:心理的なものを専門にしているんですが、特に今はマネージャー層向けの研修が多いんです。マネジメントするようになって、チームとして成果を出さなきゃいけないとなってきた時に、やっぱり人間のことを知らないと、人の心理がわからないと、なかなかうまく進められないことはけっこう多くあるわけですよね。

みなさんも経験的に、「こういうタイプにはこういうことを言っちゃダメなんだよな」とか、いろいろ(知見を)お持ちだと思うんですよね、人に対するいろんな心理的な見方や、現場で使えるようなものを橋渡しして伝えております。

対話や1on1に関する書籍を3冊出させていただいています。7年前、2017年に『シリコンバレー式 最強の育て方』という本を出版しました。当時はまだ、1on1ミーティングという言葉が書籍の副タイトルになることもちょっとはばかられるぐらい、かなり知名度もない。

いわゆる外資系の企業は(1on1のことを)「ワンノンワン」って言うんですよ(笑)。そこで、外資かそうじゃないかをけっこう区別できるっていう。

この時にマニュアル的に書かせていただいたんですが、ちょうどヤフーさんも同じ年に(1on1に関する書籍を)出されて、日本の火付け役になっていただいて、いろいろ波及していった。

始めたはいいんだけども、「これ、なんか意味があるのかなぁ?」とか「なかなか続かない」というところが、いろいろ出てきたわけですね。その中でいろんなつまずきポイントがあるんですが、やっぱり「何を話せばいいんだっけ」「テーマに枯渇してしまう」「マンネリ化してしまう」という、テーマに関する課題が多くて。

2020年(出版)の『対話型マネジャー』という本で、上司と部下って何を話せばいいんだろう? というものをフレームワークでご紹介してきました。今日はこの話もさせていただきます。あと、上司側に必要なコミュニケーションスキルを解説しました。

部下がやる意味を感じていないと、1on1はうまくいかない

世古:2020年にコロナが始まって、いろんな会社で(1on1の導入が)さらにぐんと進んだんですね。リクルートマネジメントソリューションズさんのサーベイですと、だいたい7割ぐらいの企業さんで施策として導入されたというデータも出ていたりします。それが2022年ですね。そのぐらい一般化してきて、「1on1をしなきゃね」となってきたわけなんです。

これらの書籍もそうなんですが、上司・マネージャー向けの本とか、勉強の機会や研修はあるんです。まずは上司側が理解して「こういう対話が大事だね」というふうに、1on1をスタートさせるためのキーマンは上司側にあるんですが、これを継続させていく、あるいは質を高めていくためのキーマンは部下側にあるんですね。

「部下のための時間」と言っているので、部下側がこの時間に意味を感じてないと、目的を持たないと、いい時間にならないということです。

2023年(出版)の『マンガでよくわかる1on1大全』という本では、部下側の役割について半分ぐらい言及しています。あと、実際にどういう対話がいい対話なのか、いい1on1なのか、イメージが湧かない人が多いんですよね。

ブラックボックスになっていると言いますか、「他の人がどうやっているのかがわかりません」ということで、「こういう感じがいい対話なんじゃないかな」というのを9つぐらいバリエーションとして示したかたちになっています。日本の1on1の浸透における課題のフェーズなんですね。

「こういうことなんですね。まずはやってみましょうか。こういうテーマで話をするんですね。部下、上司にはこういうスキルが必要なんですね」というふうにして、組織に浸透させていくことが重要なんじゃないかなというところです。

そもそも1on1をやる目的とは何か

世古:Why・What・Howというかたちで、なんで(1on1をやるのか)と、何を話せばいいのか、そしてマネージャー・メンバーのそれぞれの役割についてお話ししていきたいと思います。

まずは目的なんですが、「なぜ」というところですね。やっぱりここがすり合ってないことが多くて、背景としては「組織でコミュニケーションがとにかく減っている」という話は聞くんですが、その減っている中身って何? というところです。

組織には2つのコミュニケーションがあります。左側は「短期的な成果、目標・仕事に焦点」と言ってますが、業務の話、実務の話はしているわけです。

右側が「個人の現状や気持ち、成長や将来に焦点」と言ってますが、部下やメンバーの方にスズキさんという方がいらっしゃるとしたら、そのスズキさんに焦点を当てた話です。

スズキさんがどういうことを思ってるのか、感じてるのか。別にスズキさんのプライベートな話ということでもなくて、その人が考えてること、感じてることの話ですね。

この右側の話をする場や時間が、気がついたらなくなっちゃっていたということです。いわゆる飲みニケーションだったり、夜に残業で残って「どう?」みたいな話をするとか、そういうのはなくなっている。

とにかく短い時間で効率化、生産性を上げるとなると、業務の話をいかに効率的にやっていくか。あとはあっても本当に薄い雑談だけで、左側の話に終始してる企業さんが多くなってきたわけです。

じゃあ、左側のコミュニケーションは何かというと、私は「情報交換のコミュニケーション」というふうに言ってるんですが、情報のやり取りですね。スズキさんというメンバーの方が営業の方で、Aというお客さんを担当していたとしたら、上司はスズキさんを介してAというお客さんの情報を知りたい。

たまたまスズキさんがお客さんを担当してるんですが、他の人が担当していたら、他の人からその情報を知ることができれば上司はいいわけですね。

モチベーションを維持しながら働くためのカギ

世古:この時にスズキさんはどういう存在かというと、いわゆる成果を生むためのリソース、経営資源です。ヒト・モノ・カネとも言いますが、リソースであり、役割であり、機能であり、情報源なんですよ。コトを成すために必要な存在として、リソースとしているということですよね。

もちろん我々はリソースなんですよね。役割なんですが、100パーセントその会社の中で役割だけでしか存在していないと、「これ、私じゃなくてもいいんじゃないかな?」「私がいる意味あるのかな?」と。その人にとっての意味とか、その人が仕事をやる意味とか、仕事をやる中でもやもやと思うことや感じることが出てくるわけですね。

人間がモチベーションを維持、継続させながら進めていくためには、私は「人間の対話」と言ってますが、右側の人間の対話も両輪で必要になってくるんじゃないかということです。

この右側の話をする時間が、なかなかなくなってきているんじゃないかということで1on1をやっているわけです。右側はいろいろあるんですが、左側はとにかく問題解決の話をしてるんですよ。

コトの話と人の話と言っていますが、コトを成すための話です。その時、人は「手段」です。右側は自律支援だけでもないんですが、その人が持っているものをどう最大化させていくかとか、自律を支援させていく。そういう「人」の話なんです。

「まぁそうだよね」って感じだとは思うんですが、人の話はわかるんだけど、具体的に何を話すのかイメージが湧かない人がやっぱり多いんですよね。それを見ていきたいと思います。

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