ワンさんの金魚の飾りもの・財源滾滾(ツァイ ユエン グェングェン)
夏風邪をこじらしすっかり寝込んでしまっております。
真面目なエントリーが続いたので本日は与太話であります。
10日ほど前の話であります。
●ワンさんのお土産・「千客万来」赤い金魚の飾りものの効用か?〜ビニール袋に入った山盛りキムチを手土産に久しぶりにやって来たキム君。
以前もエントリーでご紹介した、私の仕事仲間で、中国人のワンさんは、来日して16年、とっても優秀なITエンジニアかつ企業家でありまして、もう10年来のつき合いになります。
以前ワンさんをご紹介したエントリー。
■がんばれ!香港ディズニーランド〜のっけから大ブーイングの巻
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20050922/1127359598
私の本業であるIT開発で、中国・大連にあるソフト会社と提携しておりまして、その会社との交渉や管理を上海出身のワンさんにお願いしている関係でワンさんは年中私の事務所に出入りしているのでした。
で、先日、大連帰りのワンさんが事務所に来て仕事の打ち合わせをしたのですが、ワンさんは手土産に布地でできた赤い金魚の飾りものを持ってきてくれました。
「これはね財源滾滾(ツァイ ユエン グェングェン)といってお金が貯まると言われる縁起物なんですよ。しかも金魚がついてるのは珍しいんです。
「中国では赤い金魚は縁起がいいんですよ。これを壁につるせば、千客万来で商売は大繁盛です」
言うやいなや私の事務所の壁に方角を気にしながらそれをぶら下げるワンさんなのでした(苦笑
うーん、せっかくの善意をいやだとも言えない私なのですが、ちょっとこの事務所には不釣り合いな真っ赤な金魚の飾りものなのでありました。
その後大連の開発進捗の話などワンさんと社員を交えて小一時間ほど摺り合わせをしていたら、思いも掛けない人から電話連絡がありました。
電話の主は私の講師をしている学校の卒業生で私が日本で保証人をしていた韓国人・留学生のキム君でした。
以前キム君をご紹介したエントリー。
■中韓キムチ紛争で思い出したキム君の自家製キムチの話
http://d.hatena.ne.jp/kibashiri/20051103/1131002983
今は韓国の某家電メーカーに勤めているキム君ですが、今回、出張で久しぶりに来日しているとのこと、今日は急遽時間ができたので突然で失礼ですができればこれからごあいさつに伺ってもよろしいでしょうか、という主旨の電話でした。
逢えば4,5年ぶりになろう教え子からの嬉しい来訪の電話に私はとても嬉しくなり、夜の会食を約束しました。
「いや、ワンさん、その千客万来の金魚、効用あらたかじゃないですか」
赤い金魚ぶら下げたとたんのキム君来訪の電話に、私は少々驚きワンさんは鼻高々なのでありました(苦笑)
せっかくだからワンさんも夜会食ご一緒にいかがとお誘いしたら、人なつこい笑み(ワンさんは笑うとちょっとジャッキーチェンに似ているのです)で「喜んで」と快諾。
さっそく、東京・麻布にある創作日本料理の店を予約、キム君の来社を待ちました。
午後6時過ぎ、キム君が来社、久しぶりの再会を喜び、ワンさんも紹介しました。
嬉しかったのは、すっかり社会人となったキム君の手土産は、期待通りのビニール袋に入った山盛りキムチなのでありました(苦笑
●楽しい会話が弾むお店にて〜「招かざる客」からの不幸の電話が私を襲う
私とワンさんキム君の3人でお店に着いたのは予約時間の7時を少し回っていました。
で、案内された席が4人掛けのテーブルが用意された他の部屋とは襖で仕切られている畳敷きの小さな座敷でありました。
あぐらをかいて座る私の前で、キム君が座り、その左横にワンさんが座り・・・??
いや、ワンさんは座るのにいたく苦労していました(苦笑)
結局うまくあぐらをかけなくて、座布団を2枚にして立て膝をつくような形でなんとか座ることができたのでした。
おもしろいですね、同じ極東の民族同士でも、板の間で生活する習慣のある朝鮮・韓国の人は畳生活にすぐ適応できますが、上海出身の中国人・ワンさんはあぐらをかく習慣などないのでしょうか、座布団に座るのにとても難渋しておるのでした。
私とキム君はビールで、お酒の飲めないワンさんはウーロン茶で乾杯。
その後、料理に舌鼓を打ちながら、楽しい会話が弾みました。
ワンさんもキム君も日本滞在期間が長く日本語がとても流暢なので会話はもちろん日本語でした。
助かったのは二人とも大の日本料理通でありましてほとんどの日本料理を美味しそうに残すことなく平らげくれるのには、なにやら見ていてとても嬉しく感じました。
8時を過ぎた頃でしょうか、お店の人から私宛に電話が入ったというので、私だけ中座して電話に出てみるとなんと、やはり同業者のアメリカ人スティーブ氏でありました。
聞けば今六本木のアメリカンクラブで一人で一杯やっていたのだが、所用で私の会社に電話したら私が麻布で食事をしていることを社員から聞いて、一緒に飲まないかと言うことで電話したというのです。
まあ確かに麻布と六本木では隣町なのでありますが、私はいまワンさんとキム君の3人で食事をしている事情を説明して、今日は遠慮すると一旦断ったのでありますが、なんと本人は今もうタクシーの中で5分10分でこの店に到着する、というではありませんか。
ふう。まったくアメリカ人というやつは・・・
・・・
それにしても、やれやれ、思わぬところで日米中韓、四ヶ国による会談が突如設定されてしまったのであります(苦笑
しかも、遅れてくるアメリカ人中年デブはどうやらすでにかなりのアルコール度数に達している様子なのであります(汗
●スティーブ、お前は江戸時代の牢屋の囚人の長(おさ)か(爆
しばらくして真っ赤な顔をしてご機嫌のスティーブ氏が登場しました。
何回か面識のあるワンさんには「ハーイ」とウインクし、初対面のキム君には「ナイスツーミーチュー」と満面の笑みであいさつ、ごつい手でキム君の手をちぎれんばかりに握手します。
「クソッ、タタミか」
畳を見てスティーブ氏が小声で悪態をつくのを私は聞き逃しませんでした。
フフフ、そうかこいつも絶対あぐらがかけないに違いない、そのトドのような巨体では絶対無理だろう、イタズラ心が芽生えた私は、今更部屋変更はできないしお前が勝手に来たんだから我慢して座れ、と促してみました。
座布団をワンさんのように2枚にしてなんとかあぐらになっていないあぐらをかき座ろうとするスティーブ。
で、座ったとたん、だるまさんのように後ろにごろんと倒れてしまいました。
ドテン。
倒れた本人も含めて一同大爆笑。
しょうがないので私の隣に座ったスティーブだけは座布団を5枚にして椅子のようにして納まりました。
ただでさえでかいのに座高が異常に高くなったスティーブ氏なのでした(爆
なんとも珍妙な4人組のできあがりであります。
で、ビール大好きのスティーブ氏を交えてあらためて「チェース」と乾杯したのであります。
しかし・・・
私ははたと困りました。
さっきまでは和気あいあい楽しい会話がはずんだのですが、この4人の組み合わせでは共通の話題が持ち出しにくいのに気が付いたのです。
私と中国人のワンさんは仕事の話がおもでありました。韓国人のキム君とは4年ぶりだし主に講師と学生という立場での会話が中心でありました。で、米国人のスティーブ氏とは同業とは言いながら飲み仲間であり、政治の話や経済の話などまさに飲み屋のオヤジ談義ばかりしてきたのであります。
もしこの場で、スティーブにいつもの調子でテポドンの話や政治の話をされたら・・・・・(恐
・・・
いかんいかんいかん(汗
私は政治的な話はいっさい止めておこうと心に誓いました。
ところが、私があえて無難な話をとあれこれ話題を考えているうちに、スティーブがかってにキム君にいきなり直球勝負で話し始めちゃったのです。
「ヘイ、ミスターキム、おたくのノムヒョンの最近の外交政策ですが、どう評価していますか?」
このアメリカ人は教科書日本語つまり敬語しか話せないのでありますが通ぶって2人称を「おたく」を乱発するのです、酔った勢いでしょうか、いつも以上に声がでかい、しかも一人座布団を5枚も重ねて座っているので、物理的にも私たちを見下してふんぞり返っているわけです(苦笑
お前は一人だけ座布団高くしてえばっている、江戸時代の牢屋の囚人の長(おさ)か(爆
不遜なスティーブ氏の質問にキム君のレスポンスを心配した私ですが、さすがキム君は大人の対応です。
「アメリカや日本や中国やロシアと国際協調を計りながら北朝鮮と会話を進めることが重要だと思います」
ふう、無難な会話にホッとした私ですがすぐに話題を変えてみました。
「キム君、久しぶりの日本の夏はどうですか、ムシムシしますでしょ?」
キム君が「韓国も暑いですがやはり湿度は日本の方が高いようですね」と話し、ワンさんが「大連も日本より暑いときもありますがやはり湿度は日本が高いですね」と続けてくれました。
●ヤスクニ! タケシマ! スティーブ、お願いだから君は少しだまってくれないか(爆)!
そのときです。
「日本の夏と言えばやはりヤスクニですね。」
・・・(大汗
やれやれ(苦笑
このアメリカ人はこの場でどうしてもアツイ政治談義をしたいようです。
「夏と言えばヤスクニだけど、ミスターワン、8月15日に小泉首相が靖国に行くと言われていますが、おたくはどう思われますか?」
「私は政治の話は得意ではありませんので」とワンさんが遠慮してると、少々お酒に酔ってきたのかキム君が口を挟んできました。
「率直に言わしてもらえば、私たち韓国人としては、靖国には日本の首相には行って欲しくありません。ただ私たち若い世代はいつまでもそのような昔の問題に捕らわれるのではなく、未来を共に歩むこれからの韓日関係を建設的に考えていきたいと思っています」
じーん。
うんうん、キム君、君は大人で立派である。
それにつけてもこのアメリカ人デブは、少々不躾がすぎるぞ。
私は再度話をそらすことにしました。
「そう言えばスティーブ、先月、家族で沖縄に遊びに行ったんだってね」
「うん、美しい島だったよ。島と言えばミスターキム、タケシマ・・・」さらに話そうとするスティーブをさえぎって私。
「スティーブ、お願いだから君は少しだまってくれないか!!」
「お前はアメリカ大統領か!」
・・・(沈黙
4人はしばらくお互いの顔を見合わせた後、誰からともなく大笑いいたしました。
・・・
そのあと、この奇妙な4人組でなんとカラオケに行き、夜中の1時まで大騒ぎしてしまいました。
・・・
私の感想ですか?
結果的には楽しい一夜でございました。
実際の日米中韓、四ヶ国の政府関係も、韓国や中国がワンさんやキム君ぐらい大人の対応をしてくれるならば、もう少しよくなるのかな、などと思ってみたり・・・
しかし、あらためて振り返ると、例のワンさんの金魚の飾りものは確かに「千客万来」の効用があるなあとしみじみ実感したのであります。
・・・
でもね、よくよく考えて見ると商売のお客様は一人も来てなかったんですよね(苦笑
ワンさんの金魚の飾りもの財源滾滾(ツァイ ユエン グェングェン)は、お金のほうは換えって飲み代で散財してしまい減ってしまうという、とんだ「千客万来」なのでありました(苦笑
その日から夏風邪こじらしちゃったし。
本日は与太話でございました。
(木走まさみず)