長年家電業界を見てきた価格.com編集長が、価格.comが保有するさまざまなデータと、自身の知識・経験をベースに、家電製品の最新トレンドを解説。今押さえておくべき機能やスペックを紹介しつつ、コスパ、性能、ユーザー評価などの観点から、今買って間違いなしの製品を厳選して紹介する。
第57回は、新生活シーズンの春先に需要が伸びる小型冷蔵庫の最新トレンドについて解説する。
【図1】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーの閲覧者数推移(過去3年)
図1は、過去3年間における価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーの閲覧者数推移を示したものだ。これを見ると、冷蔵庫・冷凍庫の需要のピークは夏に来ていることがわかる。多くの方が想像するように、食品などを冷やす冷蔵庫は冬期よりも夏期に活躍するイメージが強いが、冷蔵庫の心臓部であるコンプレッサーにもそれだけ負荷がかかりやすく、夏期に故障するケースが多い。そのため、夏期に買い換えを考える人が多いと推察できる。
では、その次のピークは? と見てみると、比較的小さな山ながら、例年1~3月の時期に需要が伸びていることがわかる。このうち、1月の山は、いわゆる年末年始の商戦期に関わる需要増という側面が強いが、2~3月にかけての山は、春から始まる新生活シーズンに合わせた、いわゆる新生活需要と言っていいだろう。
【図2】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーの閲覧者数推移(過去半年)
図2は、ここ半年の同カテゴリーの閲覧者数推移を示したものだが、今シーズンの場合も、やや弱いながらも2月から3月にかけて需要が上がってきていることが見て取れる。ただ、昨年・一昨年と比べると、その動きは鈍く、冷蔵庫に関して見るなら、新生活需要は今ひとつ盛り上がっていないようにも見える。
【図3】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける売れ筋製品の庫内容量別割合(2025年2月時点)
それでは、価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける、売れ筋のサイズはどのあたりになるのだろうか。図3を見ると、最も多い庫内容量サイズは「200L未満」の29.28%となっており、一般的に売れ筋と言われるファミリータイプの「400~500L未満」(23.80%)や「500~600L未満」(17.27%)を超える一大勢力となっていることがわかる。この200L未満の製品を、本稿では「小型冷蔵庫」と位置づけ、この時期に需要が高まるこの小型冷蔵庫の最新トレンドについて、解説していく。
【図4】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける主要メーカー別の閲覧者数推移(過去3年)
図4は、価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける主要メーカー別の過去3年間における閲覧者数推移を示したものだ。価格.comではこれまで三菱電機の人気が頭ひとつ抜けて高い状態が続いていたが、2024年に入ったくらいから三菱電機の人気が落ちてきて、ほかのメーカーと混戦状態に入っていることがわかる。三菱電機と首位争いをしているのはパナソニックで、一時期は東芝がこれにからむ展開もあったが、直近ではパナソニック、三菱電機、東芝という順番で人気となっている。なお、比較的上位をキープしていた老舗メーカー・日立は人気を落としており、シャープ、AQUAと4位グループを構成するようになっている。
この人気の変化を説明するには、ここ1年ほどの冷蔵庫市場の状況変化を理解する必要があるだろう。まず首位陥落の三菱電機だが、もとより人気のメーカーではあったものの、2024年は在庫薄のために販売価格が上がってしまい、これまでのような人気が維持できなかったという理由がある。これに対して首位に立ったパナソニックも、販売価格が高止まりして人気が下がったものの、やや設計が古く価格が安い廉価版シリーズを出したのが当たり、人気を維持した。また、本稿で取り扱う小型冷蔵庫のジャンルでもヒット製品が出たため、全体の底上げにつながったと言える。
このように1位、2位のメーカーの製品がいずれも価格高騰したこともあり、比較的値頃感の強い製品をそろえていた東芝の人気が浮上。逆に日立は、製品価格が高止まりし続けた結果、人気を落とした。この結果がこの1年の冷蔵庫市場の人気変化に大きく影響を与えていると言っていいだろう。
【図5】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける小型冷蔵庫・人気製品別の閲覧者数推移(過去約1年)
では、本稿でフォーカスする小型冷蔵庫の動きについて見てみよう。図5は、この1年強で人気だった小型冷蔵庫4モデルの閲覧者数の推移を示したものだが、大きく人気を伸ばしたのが、パナソニックの「NR-B16C1」および「NR-B18C1」の2モデルであったことがよくわかるだろう。
この2モデルは、2023年末に発売された新モデルで、設計を抜本的に変更した新シリーズの第一弾モデルとなる。特徴は、このクラスの冷蔵庫に搭載されることは珍しいインバーターを採用したこと。インバーターは静音性が高いので、このクラスの冷蔵庫が設置されることの多いワンルームや1Kなどの間取りのマンションでは、夜間の騒音が気にならないため、大きなメリットとなる。その分、価格は高めだが、それでもこの2モデルは昨年1年間大ヒットとなった。今では後継モデルの「NR-B16C2」および「NR-B18C2」が登場したため、人気は下がってきたが、それでも新モデルに比べて価格が安いことから今も一定の需要を維持している状況だ。小型冷蔵庫の世界では、購入しやすい低価格であることが第一と考えられてきたふしがあるので、上記2モデルのヒットはかなり衝撃的だった。
なお、ほかのメーカーについて言えば、数年間にわたってマイナーチェンジを繰り返してきているので、旧型、新型で性能差はほとんどない。そのため、新型モデルが投入されているにもかかわらず、昨年人気だったモデルが今も価格の安さから人気を保っているケースが多い。図5で言えば、三菱電機の「MR-P15J」がそのいい例で、昨年10月に発売された後継モデル「MR-P15K」とは最安価格で5,000円ほどの差があるため、今も流通在庫のある旧モデルのほうが人気となっている。逆に東芝の例は、モデルチェンジがうまくいったケースで、旧モデル「GR-V15BS」に比べて、昨年12月に発売された「GR-W15BS」のほうが5,000円ほど安いため、人気は新モデルにシフトしている。
【図6】価格.com「冷蔵庫・冷凍庫」カテゴリーにおける小型冷蔵庫・人気製品別の閲覧者数推移(過去3か月)
図6は、直近3か月における小型冷蔵庫・人気製品別の閲覧者数推移を示したものだ。こちらを見ると、ロングランとも言える三菱電機の「MR-P15J」が、この時期再び人気となっているほか、パナソニックの新モデル2機種も人気を上げてきている。逆に、これまで高い人気を維持してきた東芝「GR-V15BS」の人気が急激に下がっているが、これは、上記で説明した新モデル「GR-W15BS」の価格が下がってきたのにしたがって、人気がこちらへとシフトしてきたためだ。なお、このカテゴリーでは比較的強そうな、シャープの「SJ-D15P」であるが、最安価格が5万円を超えており、最安価格で4万円前後の製品が多いこのカテゴリーではやや不利な状況となっている。
昨今の物価上昇の影響もあって、今シーズンの新モデルは総じて価格が高めに推移している。庫内容量150Lの製品でも、もはや4万円以下で購入することは難しくなってきているので、この春このクラスの冷蔵庫を購入するのであれば、2023年発売の旧モデルを中心に選んだほうが賢そうだ。
※当記事のデータは、「価格.com DataCompass」を使って作成しています。
「価格.com DataCompass」とは、価格.comのビッグデータを基に購入検討ユーザーの動向を分析できる法人向けのマーケティングサービスです。
※最安価格とユーザー満足度・評価は、いずれも2025年3月5日 時点のものです
価格.com最安価格:39,777円
発売日:2023年12月中旬
ユーザー満足度・評価:★4.62(12人)
庫内容量:156L(冷凍室:60L)
昨年2024年に大ヒットとなった小型冷蔵庫。このクラスでは珍しいインバーターの搭載により、19dBという静音性を実現。キッチンとベッドの場所が近いワンルームマンションなどで使うのに最適な設計となっている。また、60Lものビッグフリーザーを搭載し、冷凍食品などの保存にも便利。ミニマムデザインのボディともあいまって、販売価格は高めだが一躍人気となった。庫内容量180Lの兄弟モデル「NR-B18C1」も人気だ。
価格.com最安価格:37,548円
発売日:2024年12月上旬
ユーザー満足度・評価:★--(0人)
庫内容量:153L(冷凍室:43L)
2024年12月に発売された最新モデルでありながら、すでに4万円を切っている高コスパモデル。最近の冷蔵庫では珍しく、冷蔵庫の庫内容量を大きめに取っており、110Lという大容量を実現しているのが特徴だ。消費電力も270kWhと小さく、静音性も十分。バランスの取れた製品となっている。
価格.com最安価格:38,118円
発売日:2023年10月20日
ユーザー満足度・評価:★4.59(17人)
庫内容量:146L(冷凍室:46L)
「価格.comプロダクトアワード2024」の生活家電部門で大賞を受賞したほどの高評価モデル。設計自体はきわめて一般的だが、3段全段ガラスシェルフや、大容量ドアポケットなどの使いやすい設計で、静音性も22dBとかなり高い。後継モデル「MR-P15K」も発売されているが、機能的には大きな差のないこちらのほうが最安価格で5,000円ほど安く、おすすめだ。
価格.com最安価格:35,560円
発売日:2023年11月1日
ユーザー満足度・評価:★5.00(1人)
庫内容量:148L(冷凍室:61L)
ハイアールが発売するスリムな小型冷蔵庫。本体幅は約440mmしかなく、狭いスペースにも置きやすい。しかも冷凍室は61Lの大容量で、3段のクリアバスケットで整理しやすいのがポイント。冷蔵室も縦方向に長く、ガラス棚の高さを変えられるため、長めのボトルなども収納しやすい。
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