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ある読書好き医療コンサルタントの「書評」ブログ!

年間60~70冊ほど読んでます。原則毎週日曜日に更新しますが、稀にプラスαもあります。本好きの方集まれ!

夜明け前(が一番暗い)

 

おはようございます。

 

読書がライフワークになっている

医療業界のコンサルタント

ジーネット株式会社の小野勝広です。

 

世情と言いますか

何だか先行き不安が拭えませんね。

 

そんなのいつの時代だって

同じだとも言えそうですけど

本当に大丈夫か?

5年後、10年後はどうなってるんだ?と

心身をすり減らしている人は

おそらく少なくはないのだろうなと思います。

 

政治も、行政も、財界も

ゴリ押ししかできないし、

条理を尽くして語るとか

説明責任とか

反対意見を持つ人へのリスペクトとか

もう全くなくなってしまって

強弁すれば押し通せるという

まあ恥ずかしい大人が権力を握っています。

 

私たちは子供たちに

こんな社会を残していいのでしょうか?

 

今回ご紹介する書籍は、

【 夜明け前(が一番暗い)】 です。

 

 

本書をピックアップした理由

『 夜明け前(が一番暗い)』

内田 樹 朝日新聞出版 を読みました。

 

いいタイトルですよね。

内田本でこのタイトルなら理由は要りません。

 

ちょうど、あれ内田さんの著書、

最近読んでないかもと思ったので

つい手が伸びました。

 

もうライフワークのようになっています。

 

目次

第1章 骨身にしみる教訓

第2章 「よりましな未来」が語れなくなった時代

第3章 パンデミック東京五輪

第4章 「負のスパイラル」に入った政治と日本社会

第5章 米国と中国、漂流する世界

第6章 成熟しない日本の教育

第7章 映画とドラマが内包する豊饒

 

感想

相変わらずの内田節が連発していますね。

とても勉強になりました。

 

内田さんの著書の場合は

私ごときがどうこう言うよりも

恒例の私がグッと来た箇所をご紹介したほうが

息吹を感じることができると思います。

 

仕事は自分で選ぶのではない。

仕事に呼ばれるのだという職業観を

私は健全だと思う。

若い人がそこに向かうということは、

教育と医療と農業が

いま最も切実に支援を求めている領域だからだ。

いずれも「それなしでは人間が生きていけないもの」であり、

そしていずれもが危機的状況に瀕している。

だから、そこからの支援を求める声が

耳を澄ましている若者たちのもとに届くのだろうと思う。

(P.15)

 

どこかに自分にピッタリの仕事があるはずだ。

どこかに自分を高評価してくれる職場があるはずだ。

 

こんなふうに自分を主人公にして

主語をいつも自分にしているようでは

天職とは出会えないと思います。

 

スキルと経験というキャリアがあれば

自ずと導かれるものなのですよね。

キャリアがないと

どこにも辿り着けません。

 

時々「今の日本で一番必要なものは?」と訊かれる。

「親切」ですと答えることにしている。

この世で一番大切なものは親切であるというのは、

長く生きてきて骨身にしみた教訓である。

(P.35)

 

そうだよね、親切って大事だよね。

素直にこう思える人が

今の日本にどれだけ存在するでしょうか?

 

そんな事より

「今だけカネだけ自分だけ」。

さっさと得るものを得たらFIREしたいんだよ。

 

人を足蹴にしようが

何しようが

自分が金を得ることが大事だろ…みたいな人も

少なくないでしょうね。

 

分け合えば余るのに

分捕り合えば足りなくなる。

 

最近、足りないのは

こういう風潮に根本的な要因がありそうです。

 

子どもを育てるのも、

弱者を支援するのも、

死者を弔うのも、

ほんらい集団の事業である。

「自己責任」というような

尖った言葉はここには似合わない。

(P.41)

 

素直にそうだなと思いました。

 

資本主義社会が進み

拝金主義が蔓延るようになり、

民主主義社会を踏みにじるかのような

権力者の私利私欲が目立つようになり

一般の国民たちも

そういう方向に流されているように感じます。

 

人類の歴史を冒涜しているでしょうか?

私たち人間が生きるというのは

どういうことを指すのでしょうか?

 

何だか根本からやり直さねばならないとすら

つい感じてしまうのですよね。

 

生まれてからずっと

「どちらかというとろくでもない方向」に

一方向的に社会が向かう時代しか知らない人たちは

同じようには推論しないだろう。

彼らにとって、

変化は劣化以外の意味を持たない。

彼らの経験が推しえるのは

「どうせ明日はもっと悪くなる」ということである。

ならば、現状維持は生存戦略上、

合理的な選択である。

想定内の苦痛の方が

想定外の幸福よりも生きる基盤としては安定的だ。

「知らぬ仏より馴染みの鬼」と言うではないか。

投票にも行かず、デモもせず、

日本の衰退をぼんやり眺めている人たちは、

「予測可能な仕方で黒雲が衰微してゆく現状」を

受け入れる方が

「よりましな未来」を虚しく夢見るよりも

現実的で賢明なふるまいだと、

たぶん信じているのだ。

(P.51)

 

何だか絶望的ですよね。

若者が悪いのか、

若者に希望を与えない中高年が悪いのか、

こんな構図を作った社会が悪いのか、

まあすべてに原因はあると思いますけど

それでも歴史を振り返れば

こんなことは何度もあったと思うのです。

 

そして真っ暗闇から

ひと筋の光明を見い出して

明るい未来を創りあげてきたのも

まごう事なき事実でありましょう。

 

何とかしないと

政官財の既得権を持つ奴らに

やりたい放題にやられますよね。

 

まずは政治改革でしょうか?

 

過去を顧み、

未来に備えるという営みが

虚しく思えるというのは

ほとんど「文明史的危機」と言わなければならない。

人の一生はどれほど長く感じられようと

実は刹那に過ぎないという覚地から

人間はその進化を始めた。

だとすれば、昨日ははやかき消え、

明日は寸前まで予測不能という

「無視界飛行」を強いられている現代人には

もう「一生」という概念そのものに

リアリティーがなくなっている。

そんな人に人間的成熟を求めるのは

論理的に不可能である。

(P.58)

 

過去、現在、歴史という時間軸を見失い

「今だけ」を刹那的に生きてしまう現代人。

 

他者との共生を見失い

自己中心主義に陥って

カネ、カネ、カネとお金ばかりを追い掛ける。

 

これが人生だとしたら

あまりにも安易ですし、

人類の存続は難しくなるのかもしれませんね。

 

日本のテクノロジー

気がついたらずいぶん劣化していた。

おそらくどの事例も、

システム設計を受注した企業が

中抜きして下請けに丸投げし、

そこがまた中抜きして孫請けに再委託し、

そこがまた……ということが

繰り返された結果だと思う。

当初予算の何分の一にまで削られた

安値で引き受けた末端の小企業が、

タイトな納期で、社員を寝かせずに

システムを組んで納品したことの結果なのだろう。

日本の技術力が衰えているのではなく、

働く人一人一人の知的技能を

最大化するためにはどうすればよいのかという

一番たいせつなことに「上の人」が

頭を使わなくなったせいである。

どの組織でも、

質の高いアウトカムをめざすよりも、

管理コストを最小化することの方が優先されている。

現に、これらの技術的な失敗は

どれも「こんなんじゃ使い物になりませんよ」と

にべもなく言う「諫言の士」がいれば

阻止できたはずのことである。

そういう人たちが排除され、

上の指示にひたすら頷くだけの

イエスマンで組織が詰め尽くされたせいで

日本の技術力はここまで落ちたのだと思う。

(P.65)

 

ちょっと長いのですが

メチャクチャ重要な個所と考えて

できるだけ多く記述しました。

 

日本経済低迷の元凶でもあり

大失敗した戦前、戦中と似たような組織の構図であり

よく言えば日本らしさでもあり

悪く言えば日本ってホント駄目だねというところですね。

 

企業献金の禁止。

ここからじゃないですか?

 

本業の役目を終えても

楽して稼ごうとする大企業と政治家が結託して

新陳代謝を止めてしまうから

こういう事態になるわけです。

 

江戸時代の幕末とか

大東亜戦争の頃と同じ現象です。

 

私たちの手で再生できるか

外圧によってでしか変えられないか。

 

まさかトランプさんが

企業献金の禁止を求めてきて

一気に改善したりして。

 

「空語」や「定型句」を濫用する人間を信じるな。

(P.93)

 

内田さんがお父様に教わったらしいですが

他にも

「人を見る時は、

 自分の哲学を持っているかどうかを見ろ」とも

教わったそうです。

 

カネと権力。

そんなものに支配されている現代社会。

 

人間も劣化するばかりでしょうか。

哲学を学ばないと

表層的なものしか見えなくなりますね。

 

「最悪の事態」を想定するのは

わが国の風土病のようなものだからである。

本邦には

「最悪の事態を想定すると、

 最悪の事態が到来する

(だから最悪の事態についてはできるだけ考えない方がいい)」

という独特な信憑が存在する。

これはどのようなものであれ

日本の組織に属したことのある人なら

身に覚えがあると思う。

旧日本軍ではそれは「敗北主義」と呼ばれた。

(P.123)

 

賢者は歴史に学ぶ。

愚者は自らの経験に学ぶ。

 

まあそういうことなのでしょうね。

愚者が権力を握るから

こういうことになる。

 

昨年度から「キャリア・パスポート」と

いうものが導入された。

子どもたちが小学校から高校まで

「自らの学習状況やキャリア形成を見通したり

 振り返ったりしながら、

 自身の変容や成長を自己評価できるよう

 工夫されたポートフォリオ」だそうである。

小学校低学年から「やってみたいこと」や

「おおきくなったらなりたいもの」を

記入しなければならない。

どうして文部科学省はそれほどまで

子どもの成長過程を管理したがるのか。

どうして子どもが無駄な迂回をすることなく、

決められた軌道を最短距離・最短時間で進むことが

人生の緊急時だと信じられるのか。

私には理解できない。

(P.200)

 

私にはちょっと理解できるかも(笑)。

 

これはキャリアコンサルタントという資格を

国家資格にしたことと同じ病根です。

 

政策立案者が致命的に世の中を知らない。

文部科学省や、そこにぶら下がっている人たちでは

もう実態に合う政策は出せない。

 

ただそれだけです。

小学校から中学、高校、そして一流大学に入り

国家公務員試験に合格するような

エリートには見えない世界が広がっているのですよね。

 

どこまで失敗したら気づくでしょうか。

いや、結局失敗を認めなければ失敗じゃないという

頭デッカチの理屈なんだし

革命でも起きない限りずっとダメだろうな。

 

評価

おススメ度は ★★★★☆ といたします。

 

本書は「AERA」のコラムを集めたようですが

雑誌向けだからなのか

文章量が少なめです。

 

ですから内田さんの主張が

わかりやすくはあるものの、

そこから面白くなるのに…というところで

ぶつ切りになってしまう印象を持ちました。

 

もっと語らせてあげれば

もの凄い展開になるのに…とちょっと残念。

 

私たち1人1人の心掛けと行動次第で

真っ暗闇の現代が

スッキリした夜明けになればいいですね。

 

多方面に渡る考察は

さすがに唸らせられましたし

とても参考になりました。

 

それでは、また…。

 

 

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