真田広之氏が主役を演じるドラマ「SHOGUN 将軍」が世界的なヒットになっている。「SHOGUN」の成功から導き出せるグローバルビジネスの教訓とは何か。(山中 俊之:著述家/コラムニスト)
「エミー賞に加えて、ゴールデングローブ賞まで!」と驚嘆した人も多かったのではないか。高い評価を得た米国のドラマ配信作品「SHOGUN」のことである。
私も早速ディズニープラスで視聴した。創作であるため、そもそも事実関係と違う点は多い。また漂着した外国人にいきなり暴行を振るうなど、歴史的事実と違うシーンも一部あった。しかし、日本的な情景、当時の身分に基づく人間関係、日本人と漂着したヨーロッパ人との関係が見事に描かれていたように思った。
視聴していない読者の方も多いと思うので、同ドラマについて簡単に説明したい。
※以下、映画の内容を含みますので、まだご覧になっていない方はご注意ください。
「SHOUGUN」は、英国出身(で後に米国の国籍を取得した)小説家ジェームズ・クラベルが執筆した、関ヶ原の合戦の直前期に着想を得た創作だ。
豊臣秀吉死後の日本で、秀吉側近の石堂和成(石田三成がモデル)と対立している吉井虎永(徳川家康がモデル)は、自陣営の武将の妻・戸田鞠子(細川ガラシャがモデル)を大坂に人質として送り込み、石堂に鞠子が殺されたことで他の有力大名が石堂から離反し、関ヶ原の戦いの勝利が見えてくるというフィクションである。
日本に漂着した英国人航海士ジョン・ブラックソーン(ウィリアム・アダムズ、後の三浦按針がモデル)の目を通した日本の社会、風俗も描かれる。
謀略、暴力、女性蔑視……。英国人の目線で当時の日本の闇が描かれているが、ドラマとして妙に惹きつけられる。当時の日本のリアリティにこだわっているからだ。
これまでの米国制作の映画やドラマで登場する日本人は、明治以降でもなぜかちょんまげをしていたり、不自然な眼鏡をしていたり、腹切りを過度に強調したストーリーになっていたりと、「へんてこ」な日本人が描かれていた。
今回は、在米20年を超える俳優、真田広之さんが演じるだけでなく、プロデュースや演出にも関わったことが大きい。その結果、日本人の役は日本人か日本人にルーツのある俳優が演じる、日本人の役は日本語で演じる、日本での撮影と同程度に日本的な舞台装置を設定するといったことが実現した。
それが今回の大ヒットにつながったのだろう。
さて、本ドラマの成功から、我々ビジネスパーソンは、グローバルビジネスの観点から、どんなヒントを受け取ることができるだろうか。