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ICT来し方行く末

チューリングとノイマン--ベル研とプリンストン高等研究所に集った2人の天才

菊地泰敏 (アルテリア・ネットワークス)

2025-02-05 06:00

 のどかで、どこか武蔵野の雰囲気を感じさせる米国ニュージャージー州マレーヒル。ニューヨーク・マンハッタンからおよそ1時間の距離である。まぁ、リンカーントンネルが渋滞していなければ――の話であるが。

 現在、Nokiaの傘下にあるベル研究所(ベル研)は、このマレーヒルにある。ベル研の歴史については、ここでは語らないが、昔も今も、電気・電子・情報通信、そして広く自然科学に関する世界でトップクラスの研究所と言ってよいであろう。特に、1940年代のベル研が現代のICT産業の礎を作り上げたと言っても過言ではない。

 前回の終わりで触れたように、Claude E. Shannonを中心としたきら星のごとくベル研に参集した天才たち。幸か不幸か、時代の要請もそこに少なからぬ影響を与えた。Shannonがベル研※1に足を踏み入れたのは1937年。大学院のインターンシップである。その後、1940年の夏にもう一度訪れ、プリンストン高等研究所※2で1年を過ごしたのち、正式にベル研に奉職することになる。

※1:この当時のベル研はマンハッタンのウェストビレッジほかに散在していた。

※2:Institute of Advanced Study。日本語では「プリンストン高等研究所」とされている。

 ベル研をご存じではない方も、「トランジスタや太陽電池※3が発明されたところ」と言えば、その社会的なインパクトをご理解いただけるであろう。さらに付け加えれば、誰もが知っている通信の量を測る単位の「bit」(ビット)もベル研で名づけられた単位である※4

※3:結晶型シリコン太陽電池。

※4:「Binary Digit」という概念自体はShannon、名称については同僚のJohn W. Tukeyによる。

 そして、1948年にShannonの歴史的な論文である「通信の数学的理論(The Mathematical Theory of Communication)」が発表される。これ以降、「情報」と「通信」は相互に強く依存しながらも、独立的に発展を遂げていく。「通信」側の発展で特筆すべきベル研時代のShannonの同僚には、Harry Nyquist※5 やRichard W. Hamming※6がいるが、今回は「情報」側の2人をご紹介したい。蛇足だが、もちろんShannonは、「情報」と「通信」の間の存在である(前回参照)。

※5:スウェーデン生まれの物理学者。スウェーデン名はHarry Theodor Nyqvist。情報通信の世界では「ナイキスト周波数」「ナイキスト間隔」で知られる。

※6:米国の数学者。情報通信の世界では「ハミング符号」で知られる。

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