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OPS (野球)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

OPS(オプス、オーピーエス)は On-base plus slugging の略。野球において打者を評価する指標の1つで、出塁率長打率を足し合わせた値。打席あたりの総合的な打撃貢献度を表し、数値が高いほど、打席あたりでチームの得点増に貢献する打者だと評価される。出塁率と長打率の和によって簡単に求めることができ、得点との相関関係が非常に強い[1]ことからセイバーメトリクスでは重用される指標である。

概要

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1984年にセイバーメトリクスの祖、ビル・ジェームズディック・クレイマーピート・パーマーと共同提唱した指標である。その契機は「得点」の多い方が勝つという野球のルールにおいて、より多く得点を記録することこそが攻撃の目的であるはずなのに、攻撃のランキングが四死球や長打を評価しない打率順で掲載されることに彼らが疑問を持ったことに始まる[2]。なお、出塁率の最大値が1.00、長打率の最大値が4.00なので、OPSの最大値は5.00となる。

OPS

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このように生まれたOPSの利点は、比較的簡単に求められる数値でありながら、得点との相関係数が非常に高い点にある。具体例として、2008~2017年のNPBでは、試合あたり平均得点との相関の強さを表す決定係数は打率が0.68に対してOPSは0.92となっており、チームにおける得点の多さのおよそ9割以上をOPSが示す高低で説明できることとなる[3]。このような得点との相関の強さと簡単な算出方法ゆえにメジャーリーグで2000年代以降普及し、現在では打者成績の公式記録に採用されており、MLB公式サイトの打者成績表が標準状態ではOPSの上位順で表示される設定になっていたり、北米の放送局が制作する中継映像では打率・ホームラン数・打点の打撃三大タイトルと同等かそれ以上の優先度で表示されるようになるなど重要視されている。

日本プロ野球でも、2006年よりヤクルト監督に就任した古田敦也が前年にリーグ最高のチーム打率ながら最少得点に終わった打線を改善するため、出塁率とともにOPSの重視を明言している。また、2009年には広島東洋カープ監督のマーティ・ブラウンがOPSを重視した打線を組むと公言したことで注目され[4]、米国球界経験者のG.G.佐藤は西武ライオンズとの契約においてOPSに応じた出来高を導入した[5]

2023年のMLBでは、全選手の打撃成績を合計した際のOPSは.734であった[6]

Adjusted OPS+

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シーズンやリーグの異なる選手同士を比較する場合、リーグ平均を100として傑出度を測るOPS+が有用である。 OPS+は平均に対する得点力の大きさをパーセンテージで表している。OPS+が100の打者は平均的であり、OPS+が150の打者は平均より50%高い得点力を持つ[7]

  • OPS+ = 100 × (出塁率 ÷ リーグ出塁率 + 長打率 ÷ リーグ長打率 - 1) ÷ パークファクター補正

もしくは

  • OPS+ = 100 × (出塁率 ÷ リーグ出塁率* + 長打率 ÷ リーグ長打率* - 1)

 リーグ出塁率*:パークファクター補正されたリーグ出塁率
 リーグ長打率*:パークファクター補正されたリーグ長打率

OPSによる格付け

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OPSの開発者であるビル・ジェームズは、OPSを用いて以下のように打者をAからGランクまでの7段階に格付けできるとしている[8]

ランク 評価 OPSの範囲
A 素晴らしい .9000以上
B 非常に良い .8334 - .8999
C 良い .7667 - .8333
D .7000 - .7666
E 平均以下 .6334 - .6999
F 悪い .5667 - .6333
G 非常に悪い .5666以下

OPSの注意点

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打者の特徴が分かる指標ではないこと
二つの数値を足すため「長打はないが出塁率が高い」打者なのか、「出塁率は低いが当たれば大きい」打者なのかは読み取れない。これに対し、米国のメディアは打率、出塁率、長打率の3指標を「打率/出塁率/長打率」とひとまとめにして記載することで問題を解決している。さらに詳しく選手の性質を知りたい場合はBatted BallPITCHf/x等のデータを利用する。
走塁面の利得を含んだ指標ではないこと
OPSでは選手が出塁した後の進塁の成否は評価対象に含まれない。そのためより正確な得点生産力を測るには、走塁を評価した指標と併用する必要がある。
出塁が過小評価されていること
得点と非常に高い相関関係を持つが、得点期待値からプレーの得点価値を算出するLinear Weights[9]と比較すると、出塁能力がやや過小評価となる問題点がある[10]。より正確に打者としての総合力や貢献度を測る指標としてLinear Weightsに基づくwOBA (Weighted On-Base Average) 等が存在し、それらは現在セイバーメトリクスにおいてもっとも使用される[11]

OPSに関する記録

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日本プロ野球

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※出塁率は1985年以降現在に至るまで採用されている方法によって計算(宇佐美徹也「プロ野球記録大鑑」および各年発行の「ベースボールレコードブック」の個人記録欄より機械的に算出)。

通算記録

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順位 選手名 OPS
1 王貞治 1.080
2 松井秀喜 .996
3 アレックス・カブレラ .990
4 落合博満 .987
5 柳田悠岐 .944
6 タフィ・ローズ .940
7 張本勲 .9334
8 中西太 .9325
9 小笠原道大 .929
10 ブーマー・ウェルズ .927
順位 選手名 OPS
11 松中信彦 .925
12 レロン・リー .924
13 山本浩二 .923
14 長嶋茂雄 .919
15 掛布雅之 .913
16 清原和博 .909
17 門田博光 .907
18 レオン・リー .902
19 山内一弘 .900
20 田淵幸一 .896
  • 2024年シーズン終了時点、通算4000打数以上の選手を対象。

シーズン記録

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順位 選手名 所属球団 OPS OPS+[注 1] 記録年 備考
1 王貞治 読売ジャイアンツ 1.293 251 1974年 セ・リーグ記録
2 ランディ・バース 阪神タイガース 1.258 235 1986年
3 王貞治 読売ジャイアンツ 1.255 263 1973年
4 落合博満 ロッテオリオンズ 1.244 211 1985年 パ・リーグ記録
5 ウラディミール・バレンティン 東京ヤクルトスワローズ 1.234 237 2013年 セ・リーグ右打者記録
6 落合博満 ロッテオリオンズ 1.232 217 1986年
7 アレックス・カブレラ 西武ライオンズ 1.223 234 2002年
8 王貞治 読売ジャイアンツ 1.211 243 1967年
9 王貞治 読売ジャイアンツ 1.210 261 1966年
10 王貞治 読売ジャイアンツ 1.204 205 1976年
  • 2024年シーズン終了時点

参考記録

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2000打数以上4000打数未満
順位 選手名 OPS
1 R.バース 1.078
2 R.ペタジーニ 1.051
3 C.マニエル .988
4 鈴木誠也 .985
5 村上宗隆 .9652
6 T.ウッズ .9647
7 吉田正尚 .960
8 イチロー .943
9 T.オマリー .941
10 G.アルトマン .938
  • 記録は2024年シーズン終了時点
各年度リーグ平均記録
年度 日本野球連盟 備考
1936年秋[12] .592 [注 2]
1937年春[13] .625
1937年秋[13] .649
1938年春[14] .626
1938年秋[14] .612
1939年[15] .603
1940年[16] .559
1941年[17] .547
1942年[18] .529
1943年[19] .533
1944年[20] .595
1946年[21] .677
1947年[22] .611
1948年[23] .629
1949年[24] .727 ラビットボールを採用
年度 セントラル・リーグ パシフィック・リーグ 備考
1950年[25] .727 .700 セ・パ両リーグでラビットボールを採用[注 3]
1951年[26] .704 .648
1952年[27] .666 .674
1953年[28] .673 .648
1954年[29] .659 .644 [注 4]
1955年[30] .618 .642 [注 5]
1956年[31] .596 .607
1957年[32] .608 .622
1958年[33] .623 .620
1959年[34] .627 .635
1960年[35] .636 .655
1961年[36] .633 .669
1962年[37] .619 .668
1963年[38] .666 .667
1964年[39] .673 .675
1965年[40] .633 .657
1966年[41] .644 .648
1967年[42] .676 .657
1968年[43] .678 .678
1969年[44] .668 .675
1970年[45] .645 .692
1971年[46] .640 .714
1972年[47] .692 .720
1973年[48] .658 .708
1974年[49] .705 .690 [注 6]
1975年[50] .697 .694 パシフィック・リーグで指名打者制を導入
1976年[51] .755 .689
1977年[52] .780 .691
1978年[53] .764 .714
1979年[54] .744 .766
1980年[55] .726 .797 パ・リーグで3球団が200本塁打を記録[注 7]
1981年[56] .729 .748
1982年[57] .700 .729
1983年[58] .760 .761
1984年[59] .760 .762
1985年[60] .771 .789 [注 8][注 9]
1986年[61] .717 .770
1987年[62] .733 .722
1988年[63] .706 .730
1989年[64] .719 .768
1990年[65] .737 .765
1991年[66] .716 .738
1992年[67] .719 .731
1993年[68] .708 .714
1994年[69] .718 .752
1995年[70] .728 .690
1996年[71] .739 .721
1997年[72] .728 .735
1998年[73] .712 .745
1999年[74] .746 .731
2000年[75] .726 .749
2001年[76] .728 .768 [注 10]
2002年[77] .707 .723
2003年[78] .752 .790
2004年[79] .772 .790 [注 11]
2005年[80] .742 .742
2006年[81] .715 .709
2007年[82] .728 .706
2008年[83] .715 .732
2009年[84] .703 .740
2010年[85] .740 .739
2011年[86] .642 .656 セ・パ両リーグで統一球を採用
2012年[87] .648 .658
2013年[88] .699 .708
2014年[89] .720 .707
2015年[90] .674 .702
2016年[91] .698 .706
2017年[92] .696 .706
2018年[93] .730 .723
2019年[94] .716 .717
2020年[95] .714 .703
2021年[96] .698 .683
2022年[97] .678 .668
2023年[98] .668 .664
2024年[99] .645 .650

メジャーリーグベースボール

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通算記録

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  • 2024年シーズン終了時点、通算3000打席以上の選手を対象[100]。●印は2024年閉幕時点で現役選手。
Adjusted OPS+ 通算記録
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順位 選手名 Adjusted OPS+
1 ベーブ・ルース 206
2 テッド・ウィリアムズ 190
3 バリー・ボンズ 182
4 ルー・ゲーリッグ 179
5 ロジャース・ホーンスビー 175
6 マイク・トラウト 173
アーロン・ジャッジ
8 ミッキー・マントル 172
9 ダン・ブローザース 170
10 ジョー・ジャクソン 170
  • 2024年シーズン終了時点[101]

シーズン記録

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順位 選手名 所属球団 OPS OPS+ 記録年 備考
1 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 1.422 263 2004年 ナ・リーグ記録
2 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 1.382 255 1920年 ア・リーグ記録
3 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 1.381 268 2002年
4 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 1.379 259 2001年
5 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 1.358 239 1921年
6 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 1.309 239 1923年
7 テッド・ウィリアムズ ボストン・レッドソックス 1.288 235 1941年
8 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 1.278 231 2003年
9 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 1.258 225 1927年
10 テッド・ウィリアムズ ボストン・レッドソックス 1.257 233 1957年
Adjusted OPS+ シーズン記録
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順位 選手名 所属球団 Adjusted OPS+ 記録年 備考
1 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 268 2002年 ナ・リーグ記録
2 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 263 2004年
3 バリー・ボンズ サンフランシスコ・ジャイアンツ 259 2001年
4 フレッド・ダンラップ セントルイス・マルーンズ 256 1884年 UA記録、右打者記録
5 ベーブ・ルース ニューヨーク・ヤンキース 255 1920年 ア・リーグ記録
6 239 1921年
1923年
8 ロス・バーンズ シカゴ・ホワイトストッキングス 235 1876年 ナ・リーグ右打者記録
テッド・ウィリアムズ ボストン・レッドソックス 1941年
10 233 1957年

脚注

[編集]

注釈

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  1. ^ パークファクター補正はされていない。
  2. ^ 大東京軍史上最少の0本塁打を記録
  3. ^ 松竹ロビンス日本記録の908得点を記録
  4. ^ 近鉄パールス2リーグ制後最少の27本塁打を記録
  5. ^ 大洋ホエールズ2リーグ制後最少の290得点を記録
  6. ^ 上記の通り、王貞治が歴代最高OPSを記録
  7. ^ 特に近鉄バファローズパ・リーグ記録の239本塁打、歴代最高のOPS.864を記録
  8. ^ 上記の通り、落合博満がパ・リーグ最高OPSを記録
  9. ^ 阪神タイガースセ・リーグ記録のOPS.841を記録
  10. ^ 大阪近鉄バファローズ日本記録の587四球を記録
  11. ^ 読売ジャイアンツ日本記録の259本塁打

出典

[編集]
  1. ^ 1.02 Essence of Baseball”. 1.02 Essence of Baseball. 2021年7月15日閲覧。
  2. ^ マイケル・ルイス著「マネーボール」124-127ページ(邦訳・文庫版)
  3. ^ 1.02 Essence of Baseball”. 1.02 Essence of Baseball. 2021年5月8日閲覧。
  4. ^ “ブラウン作戦”OPS重視打線で勝負!,スポーツニッポン,2010/03/14閲覧
  5. ^ 西武GGが大トリ更改、OPS出来高導入,日刊スポーツ,2010/03/14閲覧
  6. ^ 2023 Major League Baseball Standard Batting
  7. ^ Prospectus Q&A”. Baseball Prospectus (2007年3月11日). 2013年12月17日閲覧。
  8. ^ James, Bill. The 96 Families of Hitters. The Bill James Gold Mine, 2009, p.24.
  9. ^ Linear Weights”. FanGraphs. 2013年7月2日閲覧。
  10. ^ OPS and OPS+”. FanGraphs. 2013年7月2日閲覧。
  11. ^ wOBA”. FanGraphs. 2013年7月2日閲覧。
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関連項目

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外部リンク

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