[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/コンテンツにスキップ

元日

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
メキシコシティ新年を祝う花火2013年
2010年の元日を祝うパレード

元日(がんじつ)は、新年を迎えるの最初の。日付はグレゴリオ暦では1月1日日本改暦前、太陰太陽暦では旧暦の正月一日)。元旦(がんたん)ともいうが、この場合は特にその日のを指すこともある[1]

暦法と元日

[編集]

元日は正月新年を迎える年初の日である。しかし、は繰り返すもので、どの季節を年初にしても記年法上問題はなく、太陽暦(特にユリウス暦グレゴリオ暦)では1月1日そのものに天文学的な意味は特にない[2]

なお、1月1日以外を年初とする暦法も存在する[2]太陽暦に基づきながらも、元日が1月1日ではない暦法もあった。例として、フランス革命暦では、葡萄月(ヴァンデミエール)1日が元日とされた。その日はグレゴリオ暦では9月22日から9月24日の間と、グレゴリオ暦1月1日とは大きなずれが生じていた(実際、フランス革命暦最終日となった1805年12月31日はフランス革命暦14年雪月(ニヴォーズ)10日であり、これは葡萄月を1月、果実月(フリュクティドール)を12月と数えると、4月10日に相当する)。

各国の元日

[編集]

1月1日を祝日として公休日としている国は多い。

日本

[編集]

日本では明治から大正昭和前期まで皇室行事である四方拝にちなみ、「四方節(しほうせつ)」と呼ばれて祝祭日の中の四大節紀元節、四方節、天長節明治節)の一つとされてきた。

1948年(昭和23年)公布・施行の国民の祝日に関する法律(昭和23年7月20日法律第178号)第2条により、四方節に代わって「年のはじめを祝う」ことを趣旨とする国民の祝日となった。

日本各地では、元日の1月1日から1月3日まで(三が日)、または「松の内」[注 1] までを特に「お正月(おしょうがつ)」と呼んでこれを尊重し、毎年この時期独特の行事や慣習が執り行われる。

かつてはほとんどの店舗が休みであったが、1990年代にダイエーが日本のスーパーマーケットとして初めて元日営業を開始し、2013年にはそごう・西武が、大手百貨店として初めて元日営業を開始した。

中華圏

[編集]

太陰太陽暦等による中国暦を使用していた王朝時代の中国では、それらの暦を基準として新年を祝っていた。中華民国では、孫文臨時大総統に就くと、黄帝紀元4609年11月13日(1912年1月1日)を中華民国元年元旦とすると宣言した[3]。ただ、新年を祝う行事は今でも旧暦に基づいて行われ、春節と呼ばれる。

中華民国(台湾)では、1月1日は「開国記念日」として休日になる。また、中国大陸、香港、マカオなども1月1日は休日である。

フィリピン

[編集]

フィリピンでは大晦日12月31日)から元日にかけて爆竹空砲によって新年を祝う風習がある[4]

元日と元旦

[編集]

「元日」に類似する言葉として「元旦」があり、「元日」と同じ意味を指す場合と、「元日の朝」を指す場合がある。『日本国語大辞典』等では、「元旦」は「元日」と「元日の朝」の両方の意味を持つとしている[1]。『デジタル大辞泉』では両方の意味を紹介しつつも、「旦」が「朝・夜明け」の意であることをもって、「『元旦』を『元日』の意で使うのは、本来は誤り」としている[5]

しかし、『新撰漢和辞典』は、「旦」という漢字自体に「いちにち」という意味があるとしている。それらの用法の事例として、「月の初めの日」を表す「月旦」[6]や、「よい日」を表す「吉旦」[7]がある。

日本の中世における文献では、室町中期の文明本節用集が、

元旦 ゲンタン 正月一日

とする一方、17世紀の日葡辞書は、正月の「アシタ」(朝)と語釈する。

また、近代以降の国語辞典においては、『新註漢和大辞典 : 熟語詳解』(1913年)は「正月元日のあしたをいふ」と、元日の朝を指すと説明する一方で[8]、より古い『言海』(1889-1891年)は「ぐわんにちニ同ジ」[9]、『帝国大辞典』(1896年)は「元日といふにおなじ」[10]と、単に元日と同義語であると紹介する例もみられる。

その他、坂口安吾の『新春・日本の空を飛ぶ』(1951年)において

元旦正午DC四型四発機は滑走路を走りだした。

のような用例が見られる。

「元旦」は中国語から日本語へと輸入された語彙であるが、現代中国語で元旦は1月1日を指し、「元日の朝」という意味は存在しない。例えば、中華民国(台湾)の国語辞典では、「一年的第一日」(1年の最初の日)と記されている[11]

宋代の中国語文献においても

正月朔日,謂之元旦,俗呼為新年。(正月の一日は、元旦といい、俗に新年とも呼ぶ)

といった「元日」の意での用例が見られる[12]

甲骨文字の「旦」の形

なお「」という文字の形について、『説文解字』では「从日見一上。一,地也」と説明されており、またそこから発展して「太陽(日)が地平線(一)から昇ったさまを象る」と説明されることがあるが、これらは隷書楷書などの後世の形に基づく俗説である。甲骨文字金文の形を見ればわかるように、「旦」の下端の横線は「囗」(この要素は単独では後の「丁」字に対応する)を簡略化したもので、地平線とは関係がない。[13][14][15][16]

元日の行事

[編集]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 元々は1月15日まで、現在は一部地域を除き7日までを指す。

出典

[編集]
  1. ^ a b 日本国語大辞典第二版編集委員会・小学館国語辞典編集部編『日本国語大辞典』第二版、小学館 2003年 ISBN 4095219017
  2. ^ a b 1年の始まり”. 国立天文台 天文情報センター 暦計算室. 2017年4月16日閲覧。
  3. ^ 宏觀周報『孫中山的革命之路』行政院僑務委員會、2016年。 
  4. ^ 新年のお祭り騒ぎ、ドゥテルテ大統領への恐怖で負傷者減 比”. AFP (2017年1月2日). 2017年4月16日閲覧。
  5. ^ 「元旦」の意味”. goo国語辞書. 2024年5月9日閲覧。
  6. ^ 「月旦」の意味”. goo国語辞書. 2024年5月9日閲覧。
  7. ^ 「吉旦」の意味”. goo国語辞書. 2024年5月9日閲覧。
  8. ^ 中村徳五郎『新註漢和大辞典 : 熟語詳解』松雲堂、1913年、133頁https://dl.ndl.go.jp/pid/936732/1/84 
  9. ^ 大槻文彦『言海 : 日本辞書 第1-4冊』大槻文彦、1889-1891、304頁https://dl.ndl.go.jp/pid/992954/1/224 
  10. ^ 藤井乙男, 草野清民 編『帝国大辞典 第1版』三省堂、1896年、581頁https://dl.ndl.go.jp/pid/2387590/1/296 
  11. ^ 辭典檢視 「元旦 : ㄩㄢˊ ㄉㄢˋ」”. 教育部重編國語辭典修訂本. 2024年5月9日閲覧。
  12. ^ 夢粱録 第1巻』(維基文庫)自由的圖書館(中国語版ウィキソース
  13. ^ 張世超; 孫凌安; 金国泰; 馬如森 (1996), 金文形義通解, 京都: 中文出版社, pp. 1659–61 
  14. ^ 季旭昇 (2014), 説文新証, 台北: 芸文印書館, pp. 538–9, ISBN 978-957-520-168-5 
  15. ^ 李守奎 (2019), 漢字為什麼這麼美, 西安: 陝西師範大学出版総社有限公司, pp. 10-13, ISBN 978-7-5695-0771-3 
  16. ^ 徐超 (2022), 古漢字通解500例, 北京: 中華書局, p. 34, ISBN 978-7-101-15625-6 

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]