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巨大地震による機器落下で「データにアクセスできない」……事業停止を回避するために事前にできること

【後編】地震の被害事例・BCP対策

 いつ起こるかわからない大規模な地震。企業が保有するデータだけでなく、事業継続そのものを脅かすこともある。前編でも述べたが、企業の事業停止など最悪の事態を回避するためには、企業のデータ保護の強化が大切だ。地震が起きた際は、従業員の安否確認など人命は最優先だが、停電やインフラの損壊で情報システムが壊れ、サーバーなどが物理的に被害を受ける可能性がある。地震被害に遭う前に、企業の情シス担当者は何をすべきなのか。直近の大型地震被害からの教訓と弊社の考えをお伝えする。

突然の地震で機器が落下 損傷がなくても内部故障の場合も

 地震発生後、弊社への相談で最も多いのが、「機器が落下し転倒・故障した」という事案である。地震による機器の落下や転倒は見た目では破損していないように見えるが、実際は内部が破損しているケースが多い。物理的に壊れている場合、内部の部品が破損する可能性が高く、そのままの状態で通電してしまうと、さらに障害が進む恐れがある。

画像を説明するテキストなくても可

地震被害でよくあるデータ消失例(デジタルデータソリューション「データの防災ガイドブック」より抜粋

[クリックすると拡大します]

 この他にも、地震による停電の影響で電力が突然停止し、過電流で生じる「ショート」と電気の供給が一瞬止まる「瞬電」が機器の故障につながるケースもある。実際に弊社が対応した具体事例を見ていこう。

 2018年、北海道胆振地方を震源にマグニチュードは6.7の大地震が発生。道内のある企業は、停電によりサーバーが正常に動かず終了し、再アクセスできない状態に陥った。データの量はおよそ50TB近くで、そのうち約20TBのバックアップを取得していなかった。大量に保存していたのは気象データで、時間とともに変化するため再取得が不可能。大型のサーバーということもあり、弊社のエンジニアが現地に向かい、サーバー3台とHDD45本を解析した。サーバー機器からデータの複製作業を行い、およそ2兆480億文字(1TB)の中から目視で必要な情報を探し、手入力で誤った情報を訂正した。10日かけて全て解析し、復旧。

 同じく2018年の大阪北部地震(マグニチュード6.1)では、ある社会福祉法人で、社内のPCが衝撃を受け、故障した。直後に異変は感じなかったそうだが、再起動すると強制終了してしまう状態に。再び再起動をかけると画面に大量の文字が出現し、他の操作ができなくなってしまった。弊社のエンジニアがHDDを開けると、ディスク内でデータの読み書きする役割を担う「磁気ヘッド」が破損していることが判明。正常な磁気ヘッドは、ディスクの表面に浮かぶように動いてデータを扱うが、何らかの理由でディスクに触れてしまうと傷をつけ、それが「スクラッチ障害」になってしまうのだ。依頼者に話を聞くと、地震後に数回HDDを起動したという。地震の揺れでHDD内の磁気ヘッドが破損した状態のまま通電し続けたことでスクラッチ障害になり、ディスクの状態が悪化してしまったと考えられる。

画像を説明するテキストなくても可
外見は綺麗な状態のHDD(実際の大阪地震の被害写真)

 上記の相談事例のようにならないために、情シス担当者は日頃からどんな備えをするべきなのか。地震による機器の落下や転倒は、見た目だけでは破損がないように見えるケースが多いが、実際は内部破損している可能性が高い。まずできることは、機器の落下や振動による被害を防ぐことだ。具体的には、ハードディスクやサーバーは耐震性のある棚などに設置し、地震の振動や衝撃を和らげる対策をとる。高い場所に置かないのはもちろん、壁際に設置し、転倒した際の影響を最小限にしてほしい。単純なことではあるが意外とできていない企業が多い。

 地震で物理的に損傷を受けたハードディスクからのデータ復旧は難易度が高い。そのため、事前にバックアップ体制を整えておくことも重要だ。万が一、精密機器が落下してしまった場合は、慎重に持ち上げ、無理に動かさずそのままの状態で保管してほしい。機器の外観に変化はなくても通電するとショートや部品破損を引き起こすこともあるので、落ち着いて対応することが大切である。

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バックアップを取っていても起こりうる、データ消失の危機  

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この記事の著者

熊谷 聖司(クマガイ マサシ)

デジタルデータソリューション株式会社 代表取締役社長2000年にデジタルデータソリューション株式会社へ入社。2014年9月代表取締役社長に就任。2007年以降、国内データ復旧市場にて14年連続日本一を獲得し続けている他、2017年以降、フォレンジクス事業、サイバーセキュリティ事業の立ち上げと成長をけ...

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