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110年の歴史に幕 映画史を彩ったテクニカラー社が突如閉鎖

2025年3月5日 19:00

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ハリウッド黄金期から映画に鮮やかな色彩をもたらし、110年の歴史を持つ映像会社テクニカラーが突如閉鎖に追い込まれた。米バラエティ誌の報道によると、ディズニーの新作実写版「白雪姫」を手がけていた同社の崩壊は、映像産業全体に衝撃を与えている。

1915年に設立されたテクニカラーは、映画フィルムの現像とカラープリント技術の会社として誕生した。「オズの魔法使」や「風と共に去りぬ」といった名作で使用された独自の「テクニカラー方式」は、白黒映画が主流だった時代に鮮やかな色彩表現を実現した革命的技術だった。デジタル時代の到来とともに事業を多角化し、2000年代以降は映画の視覚効果(VFX)制作へと業務を拡大。近年はMPCなどの有力VFX会社を傘下に収めて業界の重要な一角を担っていた。

経営危機の表面化は突然だった。2月21日、テクニカラーは「深刻な財政的課題」に直面していると従業員と顧客に通知。米国では大量解雇を予告する法的手続きを従業員に送付した。キャロライン・パロットCEOは週末を通じて解決策を模索したものの、2月24日には「新たな投資家を見つける広範な努力にもかかわらず」失敗に終わったとする社内メモを配信。これにより世界規模での事業停止が始まった。

この閉鎖により、アメリカ、イギリス、カナダ、インドなど世界各地で働く数千人のVFXアーティストが職を失う事態となった。匿名の元従業員によると、閉鎖が明らかになった職場は混乱し、オフィス備品の持ち出しが行われる「狂気」の状況になったという。

影響は進行中の映画制作にも及んでいる。ディズニーの実写版「リロ&スティッチ」や、トム・クルーズ主演の「ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング」などの大型プロジェクトは、新たなVFX制作会社を探す必要に迫られている。

パロットCEOは閉鎖の理由として「コロナ後の回復の難しさ、企業再編の複雑さ、脚本家ストライキによる顧客注文の減少」を挙げた。しかし多くの業界関係者は、長年の経営不振が主な原因だと指摘。実際、同社は2020年に一度破産保護を申請し、その後も何度も再編を繰り返していた。

VFX業界全体も低利益率や税額控除を追う拠点移動など構造的問題を抱えている。皮肉にも、第97回アカデミー賞では「デューン 砂の惑星 PART 2」の視覚効果賞受賞スピーチで、テクニカラー傘下のMPCが「素晴らしい」と称えられたばかりだった。

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