IV号戦車とは、ドイツが第二次世界大戦時に使用した中戦車で、大戦全期にわたってワークホースとしてドイツ機甲師団の中核を担った縁の下の力持ちである。
概要
ドイツ再軍備に伴い計画された戦車開発の中で、対戦車戦闘のIII号戦車に随伴し歩兵火力支援を行う車両としてIV号戦車が開発されることになった。そのため開発秘匿名称もベグライトヴァーゲン(B.W.)として呼ばれることになる。III号戦車のときと同じく複数社の競作が行われ、クルップ社のB.W.I.が選ばれることになる。
車体のコンセプトはIII号戦車以上に大きいターレットリングをもち、後の発展改良に耐えうる形をもつほか、バスケット型の砲塔などを備えていた。ただしその他の部分では保守的な装備で、サスペンションはIII号戦車のトーションバー方式ではなくリーフサスペンション(板バネ)方式を選択した。歩兵支援ということもありそれほど過大な砲を積むことはないという考えもあったかもしれない。
1937年10月より生産がスタートしたIV号戦車(A型)だったが、もともと歩兵火力支援ということもあり、火力(7.5cm/L24)も装甲(20mm)も貧弱なものだった。これは当時の諸外国における歩兵支援戦車、ルノーR35やMk2マチルダIIに比べると火力は同等でも装甲という面では見劣りしていた。とはいえ装甲が軽いことは機動力に優れているということでもあった。以後、F1型(F型前期)までじりじりと装甲は厚くなるものの、短砲身7.5cmは相変わらずのままだった。
とはいうもののフランス戦で予見できた対戦車火力の貧弱さはバルバロッサ作戦以降の独ソ戦で完全に露見。ソ連軍戦車T-34にたいしてIII号戦車、IV号戦車共に火力で対抗できず、8.8cm Flakの水平発射でなければ撃破できないという状況に陥り方針転換、F2型で7.5cm/L43という長砲身7.5cmに換装(直後G型よりL48に変更)。合わせて装甲も車体前面50mmに増加され、ここにIII号戦車に代わって対戦車用戦車としてドイツ軍戦車部隊の主力となり、以後J型にいたるまで細かいアップデートを繰り返していくことになる。V号戦車が開発されたあとも生産は続き、実質ドイツ軍戦車部隊の中核として最初から最後まで戦うことなり、ワークホースと呼ばれる所以となった。
またその車体を生かしてさまざまなバリエーションの車両が現れた。代表的なものとしてはIV号突撃砲、IV号突撃戦車<ブルムベア>、IV号駆逐戦車、ナースホルン、フンメルといった自走砲、メーベルワーゲン、ヴィルベルヴィントといった自走対空戦闘車両などなどである。
このように様々な活躍をしているが、同時期に活躍したⅢ号戦車や大戦後期に劣勢になったドイツ軍を支えたパンター(Ⅴ号戦車)やティーガー(Ⅵ号戦車)といった戦車のせいで一般ではあまり知られていない可哀想な戦車であった。
しかし、2012年秋に放映されたアニメ「ガールズ&パンツァー」においてなんとⅣ号D型が主人公たちの乗車として登場し、大活躍した。その甲斐あってか、ありがたいことにパンターにも引けを取らない知名度を獲得した。また、そのおかげか日本各地の模型ショップからⅣ号をはじめとする戦車のプラモデルが軒並み売り切れるという現象も一時起きた。知名度が上がるよやったねⅣ号!
バリエーション
- Panzerkampfwagen IV Ausf.A(IV号戦車A型)
- 先行量産型。Sd.Kfz.161の特殊車両番号が与えられた。
- 以降の型とは細かな点で差異があるものの、基本的なデザインは既にこのA型でまとまっていた。
- 武装は75mm戦車砲37型(7.5cm KwK 37)1門、7.92mm MG34機銃を砲塔同軸に1挺と車体前面右側に1挺の合計2挺。
- 主砲の75mm砲は短砲身ゆえに初速度が低く先述の通り対戦車戦闘には力不足であることは確かであるが、主力戦車と位置付けられていたIII号戦車が当時装備していた主砲の37mm砲と比べたら純粋なエネルギー量では勝っており、むしろ強力なものであったといえる。事実、この砲はIII号戦車の主砲では撃破し得ない対象を攻撃することも念頭に入れられていた。
- 無論、本来の任務である歩兵支援のための榴弾の威力も抜群で、兵士やトラックといった軟目標に対し圧倒的な力を発揮した。当時のヨーロッパ各国の軍隊は歩兵や軽車両を中心とした構成であったため、電撃戦においては比較的少数の配備数ながらその特長を存分に生かすことができた。
- そして何より、75mmというのが当時としては破格の巨砲であったことが本車の大きなポイントである。後に登場するアメリカのM3リー/グラント中戦車やフランスのルノーB1ですら限定旋回式で75mm砲を装備している中で、これを短砲身ながら全周旋回式で乗せたドイツの技術力は世界を驚かせるには十分なものであった。
- 1937年10月から1938年3月にかけて35両が生産された。本車の実戦参加はできるだけ短くする予定ではあったが、実際は戦車不足によって独ソ戦の初期まで前線に赴いた。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.B(IV号戦車B型)
- A型の改良型。
- 外見上の特徴としては、車体前面の操縦席部分の出っ張りをなくし30mmに増圧した1枚板への変更、車体機銃の廃止、視察口の形状変更などが挙げられる。車体上部戦闘室の最大幅が狭くなったことにより車内容積が減ったため、装弾数は75mm戦車砲弾80発、7.92mm機銃弾2400発となった。また、エンジンが強化され最高速度が40km/hに上がった。
- 1938年4月から同年9月にかけて42両が生産された。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.C(IV号戦車C型)
- B型の改良型だが、点火装置の性能を上げたエンジンへの変更やボルト止めタイプの増加装甲に対応するようになったことを除けばほぼ同様のものである。
- 1938年9月から1939年8月にかけて134両が生産された。本来なら140両生産される予定だったが、このうち6両は後述する「IV号架橋戦車」として作られることになったのでこのような数字となった。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.D(IV号戦車D型)
- 本格的な生産型だが、操縦席の出っ張りや車体機銃の存在からその外見はA型に近いものとなっている。7.92mm機銃弾数は2700発に増えた。
- 各部の装甲も増圧され最大35mmとなった。さらに1940年6月よりボルト止めタイプの増加装甲や工具箱が取り付けられるようになった。また、アフリカ向けに冷却用ルーバーなどを追加した熱帯型も生産を開始した。
- 1939年10月から1941年5月にかけておよそ230両が生産された。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.E(IV号戦車E型)
- D型の改良型だが、車体前面の装甲を50mmに増圧し他の部分へも増加装甲板を取り付け、キューポラが新型になった以外は細部の変更のみでそれほど変化はない。
- なお、本車を鹵獲した英軍よると、本車両の正面装甲に対しては2ポンド砲の場合約460m以内で貫通可能とし側面の場合は約914mで貫通可能と判断された。また装甲板に関してもある点では英国のそれと比較しても10%程度優良であるが、逆に接合法に関してだけは良いとは言えないと評価された。
- 足回りにも改良を加えたため、装甲強化による重量増加にもかかわらず速度は42km/hに向上した。
- 1940年9月から1941年4月にかけて223両が生産された。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.F1(IV号戦車F1型)
- E型の改良型で、はじめから防御力に優れた1枚板方式の装甲板で構成された車体を持つ。これに伴い、車体前面はB/C型と同様の出っ張りのないものとなったが車体機銃は残っている。砲塔側面のドアが2枚観音開きになった点で以前の型と識別できる。7.92mm機銃弾数は3150発に増えた。
- 本車はもともと支援戦車の直系であるF型として生産が開始されたが、生産途中に起こったいわゆる「T-34ショック」により主砲の長砲身化が行われた。これが後述するF2型であり、そちらが生産されてからは区別のためにF1型と称されるようになった。
- 1941年4月から1942年3月にかけておよそ470両が生産された。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.F2(IV号戦車F2型)
- 早急な対戦車戦力の増強のため、従来の24口径75mm戦車砲37型に代わりこれを長砲身化した43口径75mm戦車砲40型(7.5cm KwK 40 L/43)を搭載したもの。Sd.Kfz.161/1の特殊車両番号が与えられた。
- 長砲身化したことにより弾速が上がり貫徹力が大幅に上昇、これまで対処に苦慮したT-34やKV戦車を撃破し得る火力を手に入れた。また北アフリカ戦線においては8.8cm FlaKに次ぐ高火力かつ機動力のある兵器として、イギリス軍の各戦車はもちろんM4シャーマンとも互角かそれ以上に渡り合うことができた(ただしこれは、搭乗員の経験の差等からくるもので兵器性能からくるものではない)。イギリス軍は本車を「Mk.IVスペシャル」と呼んでひどく恐れ、味方からは「IV号スペツィアル」と呼ばれ大いに歓迎された。
- 長砲身化によって弾薬長が伸びたにもかかわらず、車体各部の改良によって装弾数は87発に増えている。ただし重量の増加により最高速度は40km/hとなった。
- 榴弾を使用した軟目標の攻撃も従来通り行えるが、生産の名目がそうであるように本車は専ら対戦車戦闘を行うようになった。よって以降の歩兵支援は、余剰となった本シリーズの短砲身砲塔を搭載したIII号戦車N型が受け持つようになった。
- 1942年3月から同年7月にかけて175両が生産され、さらに25両がF1型から改造された。なおF2型の呼称は生産途中の5月まで使用されたものであり、以降はG型に改称した(便宜的に「G初期型」と呼ぶこともある)。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.G(IV号戦車G型)
- F2型に続いて生産されたものだが、当初から75mm戦車砲40型を搭載することを前提としたもの。
- 生産当初はF2型と全く同じ仕様であったが、途中から制退機の改修や30mmの増加装甲を溶接(後にボルト止めに変更)する改良などが行われた。また、1943年1月からは視察口の強化、同年3月にはキューポラの改良と増加装甲「シュルツェン」の装備も施された。
- そしてこれらと同じタイミングで主砲が43口径から48口径に改められた75mm戦車砲40型(7.5cm KwK 40 L/48)となった。5口径分(=375mm)は一見わずかばかりにしか見えないが、これにより威力が1割増しとなったので決して侮れるものではない。48口径型とは砲先端のマズルブレーキで見分けられ、43口径型が全体的に丸みを帯びたもの、48口径型が40型75㎜対戦車砲(7.5cm PaK 40)とほぼ同様の角張りのある横長のものを持っている。使用砲弾は従来通りであるため装弾数の変化はなかった。
- 1942年5月から1943年6月にかけておよそ1800両が生産された。このうち増加装甲を取り付けたものは800両前後である。この数字の大きさから、本車がIII号戦車に代わる主力戦車として生産されるようになったことがよく分かる。
- なお本車生産中の1942年8月よりヒトラーの命令で、修理のため前線から引き上げてきた従来型のIV号戦車に対しG型と同じ仕様にして再び前線へ復帰させる措置が取られた。
以下の表は48口径型による各連合国軍側主力戦車に対する有効距離(ただし飛翔する砲弾に対しやや傾いている場合である)。 -
M4中戦車 クロムウェル チャーチル T-34/85 T-34/76(※) KV(※) 車体正面上部 0m 1800m 100m 0m 1000m 記載なし 正面下部 1300m 1400m 100m 0m 記載なし 300m 防盾 100m 1600m 500m 100m 記載なし 記載なし 砲塔正面 1000m 1000m 700m 700m 1000m 300m - ※この表のT-34/76及びKV-1に対する有効距離は、75㎜戦車砲40型によるものではなく、弾頭重量及び初速がほぼ同等の7.5cm pak40による数値である。使用弾は通常徹甲弾だと思われるが射撃条件やKVの型式は不明。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.H(IV号戦車H型)
- G型の改良型で、事実上の最終発展型である。Sd.Kfz.161/2の特殊車両番号が与えられた。
- この時期にはより強力なティーガーやパンターの生産が始まり、その後出現したIS-2やT-34/85や76㎜砲&17ポンド砲搭載型M4等の連合国軍戦車との正面戦闘では不利であると判断されていたが戦線の拡大に生産が追い付かず依然として主力戦車の座についた。
- 車体前面の装甲はG型後期と同様に50mm+30mmの増加装甲ボルト止めであったが後に80mmの一枚板に変更、そして主砲をはじめから7.5cm KwK 40 L/48とするなどG型が生産途中に取り入れてきた改良を一貫して行った。さらにヤーボ対策として砲塔上面の装甲を最大25mmまで増圧しキューポラに対空機銃架を設けた。
- これにより車体正面はM4シャーマンやT-34/76の主砲に対し十分な防御性能を手に入れることができたが逆に、もっとも被弾率の高いはずの砲塔正面及び防盾は車体のバランスの限界によりF1型と同じ50㎜のままであり、M4シャーマンの75㎜砲により多少角度が付いた場合でも1500m以上の距離から撃破された。この欠点は欧州戦線終結まで改善されなかった。
- より重量が増加したため最高速度は38km/hとなったが、新型変速機の導入で安定した走行性能を発揮した。
- 1943年4月から1944年7月にかけておよそ3000両が生産された。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.J(IV号戦車J型)
- 生産を容易にするため各所の簡略化に主眼を置いたもの。
- 最大の変更点は航続距離を伸ばすために砲塔旋回用のモーターを廃し燃料搭載量を増やしたことであり、それまで210kmだったのが320kmと約1.5倍に伸びた。砲塔については電気式から手動式になったことで速度が遅くなり不評であったとされる一方で、ハンドル旋回では装填手も砲手の補助に当たることができる上に傾斜地における動作では電気式よりも有利であったという利点もあった。
- また、シュルツェンが「トーマ・シールド」と呼ばれる金網のものとなった。銃砲に対しては無力だがバズーカなどの成形炸薬弾に対して威力を発揮したとの言説があるが、実際には1943年5月に各種銃砲弾を用いた実弾試験で通常型と同等の防御力が確認されており、量産体制が整わずここまで採用が遅れたのであって成形炸薬弾対策として導入された訳ではない。
- 1944年6月から1945年3月にかけておよそ2400両が生産された。
ドイツ軍降伏後も東欧諸国やフィンランドではしばらく現役で使われ、シリア軍はチェコスロバキアからJ型を購入。後に中東戦争でスーパーシャーマンやセンチュリオンと交戦する事となる。ある意味固定砲台に近いが。
スペック一覧
A~F1型(短砲身)
IV号戦車 | A型 | B型 | C型 | D型 | E型 | F1型 |
---|---|---|---|---|---|---|
全長 | 5.60m | 5.92m | ||||
全幅 | 2.90m | 2.83m | 2.84m | |||
全高 | 2.65m | 2.68m | ||||
重量 | 18.4t | 18.8t | 20.0t | 21.0t | 22.3t | |
乗員 | 5名(車長、砲手、装填手、操縦手、通信手) | |||||
最高速度 | 35km/h | 40km/h | 42km/h | |||
航続距離 | 140km | 200km | ||||
武装 | 7.5cm KwK37戦車砲×1 7.92mm MG34機銃×2 |
|||||
携行弾数 | KwK37:122発 MG34:3000発 (75発入り弾倉×40) |
KwK37:80発 MG34:2400発 (75発入り弾倉×32) |
KwK37:80発 MG34:2700発 (75発入り弾倉×36) |
|||
装甲圧 | 10~20mm | 10~30mm | 10~35mm | 10~50mm |
F2~J型(長砲身)
IV号戦車 | F2型 | G前期型 | G後期型 | H型 | J型 |
---|---|---|---|---|---|
全長 | 6.62m | 7.02m | |||
全幅 | 2.84m | 2.88m | |||
全高 | 2.68m | ||||
重量 | 23.0t | 23.5t | 25.0t | ||
乗員 | 5名(車長、砲手、装填手、操縦手、通信手) | ||||
最高速度 | 40km/h | 38km/h | |||
航続距離 | 200km | 210km | 320km | ||
武装 | 7.5cm KwK40(L/43)戦車砲×1 7.92mm MG34機銃×2 |
7.5cm KwK40(L/48)戦車砲×1 7.92mm MG34機銃×2 |
|||
携行弾数 | KwK40:87発 MG34:3150発(75発入り弾倉×42) |
||||
装甲圧 | 10~50mm | 10~80mm |
派生型
本車は特に大戦中期以降から様々な種類の自走砲のベースとなったことからも、本車の汎用性の高さが窺える。
- Brückenlegepanzer IV(IV号架橋戦車)
- それまで小型で非力なI号戦車やII号戦車の各タイプを改造したものに代わる架橋戦車。
- 車体全長を大きく上回る9mにもわたる大きな橋梁を抱えている姿が特徴的である。
- 1939年8月から1940年9月にかけてC型及びD型からそれぞれ6両ずつの12両が改造され、フランス戦に投入された。しかし予想よりも実用性がそれほど高くなかったため、一部は戦車型に戻された。
- Panzerbefehlswagen IV(IV号指揮戦車)
- 長砲身型の主砲弾数を15発減らし、大型無線機や通信装置などを搭載した指揮戦車。
- 1944年3月より前線から引き上げられた車両からの改造で88両、J型から新規製作で17両が生産された。
- Tauchpanzer IV (IV号潜水戦車)
- D型に潜水能力を付与した潜水戦車。基本的な仕様はIII号潜水戦車と同様である。
- III号潜水戦車と同様に「あしか作戦」で使用する予定であったが、中止となったため独ソ戦を戦うことになった。
- 1940年におよそ40両が改造された。
- Artillerie-Panzerbeobachtungswagen IV(IV号砲兵観測戦車)
- 間接照準にて攻撃を行う自走砲部隊向けに作られた観測戦車。
- キューポラが突撃砲と同様のものになり、ハッチから砲兵鏡を使っての着弾地点観測が可能となった。
- 1944年7月から133両が改造または新造された。
- Sturmpanzer IV"Brummbär"(IV号突撃戦車「ブルムベア」)
- IV号戦車の車台に150mm突撃榴弾砲43型(15cm StuH 43)を搭載した自走重歩兵砲。
- 詳しくは「ブルムベア」を参照。
- Sturmgeschütz IV(IV号突撃砲)
- IV号戦車の車台に48口径75mm突撃砲40型(7.5cm StuK 40 L/48)を搭載した突撃砲。Sd.Kfz.167の特殊車両番号が与えられた。
- 1943年11月にIII号突撃砲を生産していたアルケット社が爆撃されたことを引き受けて、III号突撃砲の戦闘室をIV号戦車の車台に搭載することによる代替を目的として開発された。
- 1943年末から1945年4月にかけて1111両が生産された。
- Jagdpanzer IV(IV号駆逐戦車)
- IV号戦車の車台に48口径75mm対戦車砲39型(7.5cm PaK 39 L/48)を搭載した駆逐戦車。Sd.Kfz.162の特殊車両番号が与えられた。
- III号戦車に代わり主力戦車となっていたIV号戦車をベースとして、より対戦車戦闘に特化した車両として開発された。固定戦闘室なので射界は限られていたが、戦車型よりも防御力とコストの面では有利であった。
- 1944年1月から同年11月にかけておよそ800両が生産された。
「IV号駆逐戦車」の記事も参照。 - Panzer IV/70(V)(IV号戦車/70(V))
- IV号駆逐戦車の主砲をより強力な70口径75mm対戦車砲42型(7.5cm PaK 42 L/70)に換装した駆逐戦車。通称「ラング(ドイツ語で「長い」の意)」。(V)は生産工場のフォマーグ社(Vomag)を指すものである。Sd.Kfz.162/1の特殊車両番号が与えられた。
- パンターと同様の火力とIV号戦車を上回る防御力を兼ね備えた本車は非常に強力な兵器ではあったが、48口径砲の時から抱えていたノーズヘビーの問題がさらに悪化してしまったため足回りの改良に手間取った。
- 名称が「駆逐戦車」から「戦車」となっているが、これは本車の配備において「長砲身の砲を搭載する戦車」として取り扱い、戦車部隊と共に行動させるために変えたものと思われる。
- 1944年8月から1945年3月にかけておよそ900両が生産された。
- 「IV号駆逐戦車」の記事も参照。
- Panzer IV/70(A)(IV号戦車/70(A))
- IV号戦車J型の車台にIV号戦車/70(V)の戦闘室を搭載した駆逐戦車。(A)は設計工場のアルケット社(Alket)を指すものであるが、実際の量産は4号戦車と同じニーベルンゲン製作所で行われている。
- (V)よりも車体容積が増加したため装弾数が増えているが、重量も増したため足回りの改良が行なわれている。
- IV号戦車/70(V)と並行する形で280両が生産された。
- 「IV号駆逐戦車」の記事も参照。
- 8.8cm PaK 43 auf Fahrgestell Panzerkampfwagen III/IV"Nashorn"(88mm対戦車砲43型搭載III/IV号火砲搭載車両「ナースホルン」)
- 生産性をアップするために、III号戦車とIV号戦車の部品を組み合わせた「III/IV号火砲搭載車両」に88mm対戦車砲43型(8.8cm PaK 43)を搭載した対戦車自走砲。「ナースホルン」とは「サイ」のことである(当初は「スズメバチ」を意味する「ホルニッセ(ヴェスペと同じ)」とつけられていたが、ヒトラーが虫の名前を嫌ったため1944年2月27日付で変更された)。Sd.Kfz.164の特殊車両番号が与えられた。
- 駆逐戦車とは異なり防御力の面で難があったが、オープントップであるため十分な視界が得られた上にティーガーIをも上回る絶大な火力を持っていたため、アウトレンジから連合軍を圧倒した。
- 1943年2月から1945年3月にかけて494両が生産された。
- 15cm sFH 18 auf Fahrgestell Panzerkampfwagen III/IV"Hummel"(150mm重榴弾砲18型搭載III/IV号火砲搭載車両「フンメル」)
- ナースホルンと同じくIII/IV号火砲搭載車両に150mm重榴弾砲18型(15cm sFH 18)を搭載した自走榴弾砲。「フンメル」とは「マルハナバチ」のことである(これもナースホルンと同日に取りやめとなったが、代替の名前が与えられなかったためその後も部隊内では専らフンメルと呼ばれ続けた)。Sd.Kfz.165の特殊車両番号が与えられた。
- 「ヴェスペ」に次ぐ自走榴弾砲として開発され、陣地転換が容易な間接攻撃兵器として戦果を挙げた。またグリーレ自走歩兵砲のように主砲を撤去して弾薬を搭載した弾薬運搬型も作られたが、これも野戦整備のレベルで砲を搭載することができた。
- 1943年2月から終戦にかけて714両が生産された。
- Flakpanzer IV "Möbelwagen"(IV号対空戦車「メーベルワーゲン」)
- IV号戦車の砲塔を撤去し20mm高射機関砲38型4連装仕様(2cm Flakvierling 38)または37mm高射機関砲43型(3.7cm FlaK 43)を搭載した対空戦車。
- 詳細は「2cm FlaK」を参照。
- Flakpanzer IV"Wirbelwind"(IV号対空戦車「ヴィルベルヴィント」)
- IV号戦車の砲塔を撤去し20mm高射機関砲38型4連装仕様(2cm Flakvierling 38)を専用砲塔に搭載した対空戦車。
- 詳細は「2cm FlaK」を参照。
- Flakpanzer IV"Ostwind"(IV号対空戦車「オストヴィント」)
- IV号戦車の砲塔を撤去し37mm高射機関砲43型(3.7cm FlaK 43)を専用砲塔に搭載した対空戦車。
- 主砲を連装型である37mm高射機関砲43型2連装仕様(3.7cm Flakzwilling 43)とした「オストヴィントII」も計画されていたが、後にに開発中止となった。
- 連合軍の進出により、1945年3月までにわずか40両ほどしか完成しなかった。
- Flakpanzer IV"Kugelblitz"(IV号対空戦車「クーゲルブリッツ」)
- IV号戦車の砲塔を撤去し30mm高射機関砲103/38型2連装仕様(3cm Flakzwilling 103/38)を専用砲塔に搭載した対空戦車。
- 搭載機関砲は航空機用の「3cm MK 103」から改造されたもので、2cm FlaKよりも火力や射程に優れ3.7cm FlaKよりも連射性に長けていた。さらに砲塔はドイツ対空戦車では初の密閉式で二重構造を持つ特殊なものとなっており防御力の面でも優れていた。
- しかし構造が複雑であることから開発は遅れ、結局量産されることはなかったが試作車の内1両がカッセル近郊の戦いに投入され残骸が発見されている。
- Zerstörer45(ツェルシュテーラー45、45式対空駆逐車)
- IV号戦車の砲塔を撤去し30mm高射機関砲103/38型4連装仕様(3cm Flakvierling 103/38)を専用砲塔に搭載した対空戦車。
- ヴィルベルヴィントの派生型として開発され、同車が搭載する2cm Flakvierling 38の銃架をそのまま利用し砲身のみを3cm FlaK 103/38に取り替え戦闘能力をさらに高めたものである。そのため外見はヴィルベルヴィントとほぼ変わりない。
- 試作1両の生産のみに終わり、これに伴ってヴィルベルヴィントIII号戦車仕様も開発中止となった。
- Munitionsträger IV(IV号弾薬運搬車)
- IV号戦車の砲塔を撤去し、600mmまたは540mmの砲弾と専用のクレーンを搭載した弾薬運搬車。
- カール自走臼砲に弾を補給するために作られたもので、カール1両あたり3両(うち予備1両)が充当された。
- 生産時期は不明だが、13両がD~F型から改造された。
- Panzerkampfwagen IV Ausf.G mit Drehmomentwandler(IV号戦車G型 流体変速機搭載型)
- 現代の自動車やディーゼル式鉄道車両に用いられている、いわゆる「トルクコンバータ」を搭載した試作車両。車体後部が大きく膨らみ、なおかつ丸みを帯びている点が外見上の特徴である。
- 1944年7月頃に1両が試作されたのみで量産はされなかった。
関連作品
動画
静画
MMDモデル
模型紹介
価格は全て税抜である。
- タミヤ IV号戦車D型(1/35スケール)
- タミヤから発売されているD型のキットで、シリーズ番号は96。
- 模型を取り扱う家電量販店でも入手が可能で、定価は2500円である。
- 支援戦車時代を象徴するD型をタミヤならではの作りやすさで気軽に再現できる。
- 大戦初期に見られたベレー帽をかぶり戦車から身を乗り出す戦車兵3体の人形が付属し、これに合わせて75mm短砲身砲は装填部や空薬莢受けも再現されたタイプとなっている。さらにフランス戦後に増加装甲を追加したタイプや、北アフリカ向けの熱帯型を作ることも可能である。
- キット自体は発売当初から変化はないので、少し手を加えればさらに完成度はアップする。
- タミヤ IV号戦車H型(1/35スケール)
- 同じくタミヤから発売されているH型のキットで、シリーズ番号は209。
- 模型を取り扱う家電量販店でも入手が可能で、定価は3900円である。
- D型の発売から20年近くたって登場したこのキットは金型を一新されており、部品数は増えたもののゲートやパーティングラインの処理が最低限度になったため組み立てやすさが向上、円滑な作業と高い精度で主力戦車として変身した本車を再現できる。また増加装甲は溶接とボルト止めの2種から選べる。
- 通常の戦闘服と防寒迷彩服の2種から選べる車長のフィギュアが付属し、D型と同様に装填部や薬莢受けも再現されている。
- それなりに値段がするが相応以上の価値はあるので、D型からステップアップする際は是非ご検討を。
- サイバーホビー IV号戦車A型(1/35スケール)
- サイバーホビーから発売されているA型のキット。品番は6747で、スマートキットに属する。
- 模型専門店または通信販売で入手できる可能性があり、価格は5000円程度である。
- 多くの新金型を取り入れたパーツの精度は高く、履帯も加工がいらない「マジックトラック」を採用。主砲はライフリングがすでに切ってあり、同軸機銃も開口加工済み。砲塔内部も多くの部品で構成され完成後も見ごたえは十分ある。
- 部品総数は1142と非常に多い(タミヤ製D型は148)ので気長さが必要となる。しかしポーランド戦におけるIV号戦車は本車がその象徴と言えるので、そういった情景を作るならぜひ挑戦して頂きたい。
- 同社からはB型、D型熱帯仕様も発売されている。
- プラッツ ガールズ&パンツァー IV号戦車D型 あんこうチームver(1/35スケール)
- プラッツから発売されているキット。同社の「ガールズ&パンツァー」シリーズのうち初期のものである。
- 模型を取り扱う家電量販店でも入手が可能で、定価は4800円である。
- キットそのものはサイバーホビー製のものを利用しているが、履帯が組み立てやすいゴム製、説明書もファン向けにキャラクターがふんだんに使用されておりオリジナルのデカールも付属する。
- ただしそれ以外の部分は海外キットをそのまま持ってきているため、かなり手ごたえのあるキットである。プラモデルの経験が不十分だと感じたら、まずはタミヤ製各タイプからの製作を推奨する。
- 逆を言えば「国産キットと海外キットの中間的な立場」とも言えるため、ある程度慣れたモデラ―がステップアップに活用するのもオススメである。
- 同社からはD型改(H型)のキットも発売されているが、基本的な内容は変わらない。また本シリーズは後期よりキット内容が分かりやすいように工夫されている。
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- ガールズ&パンツァー:主人公が所属する「あんこうチーム」の車両としてD型が登場
- 宮崎駿の雑想ノート:主役機としてJ型が登場。
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