新・銀行サバイバル メガバンク 地銀 信金・信組#15Photo by Yasutaka Nagayoshi

業績好調が続く伊予銀行。高い収益性をけん引しているのが、お家芸である船舶金融だ。資金需要の高まりで他の地方銀行も続々と参入しているが、収益源とするのはそう容易ではない。特集『新・銀行サバイバル メガバンク 地銀 信金・信組』の#15では、船舶金融独特の内情や参入障壁を紹介する。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

需要が底堅い船舶金融
知られざる高い参入障壁も

 海運の伊予銀行――。地方銀行の多くは、業種を問わず地元企業と広く付き合う。故に特定の産業に強いといわれることはほとんどないが、伊予銀行は別だ。

 船舶金融(シップファイナンス)は、伊予銀行の“お家芸”。海事都市、愛媛・今治の拠点を軸に、長年にわたり海運業への融資に取り組んできた。実績とノウハウ、貸出残高は、地銀ナンバーワンである。

 船舶金融とは、船舶を取得・運用する船主企業に対する融資だ。ここ数年は船の大型化やそれに伴う船価の上昇が、船舶融資残高を押し上げている。

 また、新燃料船など環境対応船の需要が高まっており、船舶金融には今後も底堅い需要が見込まれている。

 そんな旺盛な資金需要には、多くの銀行が押し寄せる。伊予銀行の松崎哲也執行役員・シップファイナンス部長は、「他の融資先の資金需要が減る中で、船舶市場が好調となると、関心を寄せる銀行が増える。伊予銀行以外のプレーヤーも続々と参入している」と話す。

 伊予銀行は、銀行単独で船主を担当する「1船1行主義」を採用してきた。だが、船の大型化に伴い、1隻当たりの船価も上昇。リスク分散を図るため、他の銀行との協調融資を進めたい考えだ。

 一方、どの地銀も一朝一夕に船舶金融のうまみを享受できるかといえば、そう簡単ではない。船舶金融には高い参入障壁がいくつもあるからだ。公になる機会の少ない船舶金融の内情について、次ページで紹介する。