“100年企業”目前の老舗は、日本食文化を世界に広げ、コロナ禍で感染拡大防止に貢献したグローバル企業だった!

「食と医」。あらゆる国・地域のあらゆる人に関わるこの領域で事業を展開し、持続可能な社会づくりに貢献している企業がある。宝ホールディングスだ。老舗酒造メーカーである傘下の宝酒造のイメージが強いが、その“正体”は、売上高の過半を海外で稼ぐグローバル企業である。

米国で大人気の日本食レストランを支える陰の立役者

 サンフランシスコに程近いカリフォルニア州バークレーの街角に溶け込む日本食レストラン。板前姿のシェフの威勢の良い声が響く店内では、米国人の親子が、好物だというカリフォルニアロールや、枝豆などのおつまみと一緒に日本酒を楽しんでいる。さらには、豆腐や刺し身をアテに、複数の地酒を飲み比べたり、かん酒をおちょこでたしなんだりする「通」の客もいる。

 この情景は、決して特別なものではない。今や米国には2万3000店を超える日本食レストランがあり、中長期的に増加しているのである。ここまで日本食が海外において日常に浸透するようになった背景には、ある企業の存在がある。グローバルに拠点網を広げている宝ホールディングスだ。

 宝ホールディングスといえば、国内で「松竹梅」「宝焼酎」「タカラcanチューハイ」などの酒類、「タカラ本みりん」といった調味料などを展開する傘下の宝酒造を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、後述するように同社は、宝酒造を含めて三つの事業領域を持ち、売上高の55%を海外で稼ぐグローバル企業なのである。

 次ページからは、宝ホールディングスの隠れた稼ぎ頭である海外事業と、コロナ禍で大きな役割を果たしたバイオ事業という二つの事業について詳しく紹介する。