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「デブになってからのほうが人生楽しい」体重100kg超のバーレスクダンサー

「豊満すぎるバーレスクダンサー」D-stage(ディーステージ)
「豊満すぎるバーレスクダンサー」D-stage(ディーステージ)

バーレスクダンスのグループ「D-stage(ディーステージ)」は、メンバーが3人。FURUCHINさん、ゆ~きさん、Saku-sanさんの全員が、体重100kgを超えています。彼女たちがパフォーマンスを披露するためには「ステージの床が丈夫である」という条件が欠かせません。

「『デブ』って言葉は、言う人が呪いをかけた気持ちで言うから悪口になる」というリーダーのFURUCHINさん。以前は「こんな身体を人に見せたくない」と思ったこともあるそうですが、今は「楽しい!」という気持ちでステージに臨んでいるそうです。

ぽっちゃりした体型の女性ばかりを集めたイベント「デブカワNIGHT」の主催者でもあるFURUCHINさんに、D-stageとしてパフォーマンスを続けることの意味と「デブ」でいることの楽しさについて聞きました。

「私、終わったわー」と絶望したこともあった

ーー「デブ」であることにコンプレックスを抱いている人もいると思います。しかし、FURUCHINさんは、それを前向きにとらえているように見えますね。

FURUCHIN:なんなんでしょうね。以前、電車に乗っていたら隣にカップルが座ってきて、男が彼女に向かって「なーなー。隣、デブだと思わない?」って、聞こえる声で言ってきたことがあるんです。それで私は、彼女に「ねーねー。こんな男と付き合ってバカじゃない?」って。そういうことを言っちゃう性格なんですよね。

ーーコンプレックスを解放する力っていうのは、どこからくるのでしょうか。

FURUCHIN:最初はやっぱり、自分にとってもコンプレックスで、「日陰に生きる」みたいな感じだったんですけど、あるとき男友だちに20年ぶりくらいで会ったんですよ。その人は昔、私のことを「いいな」って思ってたらしくて、久しぶりに会うから、手を握っちゃおうかなくらいの気持ちで来た。なのに、私は太っていたから「どうしたんだ?」って言われて。「そこまでなったら『キャラクター』だ」って。あー、そうなんだ! って思ったことがあって。

D-stageリーダーのFURUCHINさん(中央)
D-stageリーダーのFURUCHINさん(中央)

ーーそれが、「D-stage」として人前で踊ることにつながったのでしょうか?

FURUCHIN:昔、ライブハウスで働いていたんですが、そこで知り合った友だちで、バーレスクダンサーをやってる女の子が「にぎやかしの役で出ない?」って誘ってくれたんです。ゴシック風のバーレスクで、村の美女をだまして誘拐する、悪い双子の役でした。それをやったとき「これ、デブだけでやったら面白いな」と思って、検索したんですよ。「バーレスク」と、「plump(豊満)」とか「fat(太い)」とかで。そしたら海外には、私よりもっと大きい人たちのバーレスクのグループがあった。「これだ!」と思って。

ーーメンバーを集めはじめた、と。

FURUCHIN:それより前、2011年から「デブカワNIGHT」っていう、ぽっちゃりさんが集まってパフォーマンスをするイベントを主催してたんです。そこに出ている女の子とか、ほかのイベントで知り合った子に声をかけてみた。「一緒にやんない?」って。それが2012年ごろですね。

ーーその「デブカワNIGHT」というイベントは、どんな経緯ではじめたんですか?

FURUCHIN:私、20歳ぐらいのとき、80kgあった体重を48kgまで減らしたんですけど、その後また太っちゃったんで、絶望してたんですよ。「需要ないわ」「終わったわー」みたいな感じで。それで、大きいサイズの服を「ぽっちゃり」というワードで検索してたら、ぽっちゃりさんの彼氏彼女を募集する掲示板を見つけたんです。実際に会ってみたら、すごくかっこい人が来て。

それで味をしめてカップリングパーティにも行ったんです。そのパーティでは、男女の人気1位とか2位が発表されるんですけど、私はいきなり1位になって。選ばれると気持ちがいい。「デブのなかのデブじゃん、私!」とか思って。他の子も同じ感覚を味わえたら気持ちいいだろうなと思ったんです。

ロフトプラスワンでポーズをとるD-stage(ディーステージ)

ーー「デブカワNIGHT」に出演できる基準というのは、あるんですか?

FURUCHIN:もともとは「(服のサイズが)3L以上」って言ってたんですけど、LサイズとかLLとかでも「出たい」っていう子がいるんで、一応写真を送ってもらって判断しています。筋肉とかがあって体が大きいのを「デブ」と勘違いしている女の子が結構いるんですよ。あと、「プラスサイズ」と「リアルサイズ」って違うと思うんですよね。リアルサイズというのは標準体型。健康面では問題がないのに、モデルサイズじゃないがために、自分はデブだと思っている子がいて、これは不幸だなと思いますね。

ーーフルチンさんは「デブ」という言葉をどうとらえていますか?

FURUCHIN:デブって悪口として言われるんですけど、もともとは「でっぷりした」という江戸時代からある言葉から来てるという説もあって。悪口として使われているから悪口になっているだけ。「デブですけど何か?」みたいな感じでいたらいいんじゃないか、と。それを言う人が「デブ」って呪いをかけた気持ちで言うから、デブなんで。痩せてる人にも、呪いをかけて「やせ!」って言ったら、それは悪口になりますよ。

ギリギリまで脱ぐことも「楽しー!って思ってます」

ーーD-stageの活動を続けることができたのは、なぜだと思いますか?

FURUCHIN:実は1回きりで終わる予定だったんです。ただ、そのときの出演者から紹介された人が「今度自分のイベントをやるんだけど、このグループで出ない?」って言ってくれて、オファーがかかってしまった。「もう1回やろうか」みたいな感じでそこに出たんです。そういう感じで、観た人が「今度うちで出ない?」みたいなのが続いて。やめられない状態になっていった感じですね。

ーー練習にも時間を費やしてきたのでしょうか。

FURUCHIN:最初はすごく練習してましたね。地元に誰でも利用できるスペースがあって。劇団とか趣味で和太鼓している人たちが使える会館みたいな場所です。あとはダンススタジオですね。オールナイトで練習もしましたね。最初はメンバーが5人くらいいたんです。5人もいると、スケジュールを合わせるのが大変で。結局オールナイトで練習することになったりして。

ーー結成後、何度かメンバーチェンジをされていますよね。

FURUCHIN:忙しいときだと、週1でライブがあって、リハーサルもあって、さらにテレビの取材とか映画の撮影が入っちゃったこともあって。その合間に仕事をすると、彼氏と会う時間がなくなる。遊ぶ時間がなくなるからって辞める子がいるんです。ぽっちゃりの女性って、基本、欲望に忠実なんで(笑)

あとは、バーレスクとかステージに上がるということを甘く見ている子もいて。ライブハウス時代に見てきたアーティストレベルのパフォーマンスを求めて叱っちゃうと、辞めちゃうんですよ。まずは自分がお手本を示さないとついてこないですし。難しいところですね。

ーーD-stageでは、かなりギリギリまで脱ぐこともあるようですが、抵抗はないんですか?

FURUCHIN:「楽しー!」って思ってます。もともとバーレスクダンスで脱いでる女の子たちを見て、綺麗、かっこいいって思ってて。私たちがやる前から、チェリータイフーンさんっていう、アメリカでも有名なバーレスクダンサーがいらっしゃって。その方が、ぽっちゃりバーレスク専門のワークショップを開いてくださったんですよ。でも出席したら、うちのメンバーと、元メンバーばかり(笑) 他にもうちみたいな「プラスサイズ」のバーレスクダンサーがアメリカみたいにいっぱい出てきたら、それだけでイベントができるのになって思ってます。

ーーライバルが出てくることも歓迎しているということですね。

FURUCHIN:そうですね。いっぱい出てきたら認められるというか。それにうちのグループは、アングラとメジャーのあいだにいるのが気持ちよいと思うので。メジャーにいっちゃうと、制約が出てくるじゃないですか。清潔なイメージを保たなくちゃいけないとか。でも、そういうのはあまり得意じゃないというか、私はちょっと「狂ったこと」が好きなんで。

踊るD-stage(ディーステージ)

「自分がみじめだと思ったら終わり」

ーーいまコンプレックスを抱いている人は、それをどうやって打破すればいいと思いますか?

FURUCHIN:人としてネガティブになって、つまらない人になっちゃうよりは、それをキャラクターとして受け止めたほうがいい。それを「自虐」と受け取る人もいると思うんですけど、自虐ではなくて。このあいだのイベントでご一緒した「スーパー猛毒ちんどん」(障がい者を中心としたバンド)さんがツイッターで言ってたんですけど、「俺たちはみんなを勇気づけるためにいるんじゃない」って。いい言葉だなと思って。

それとはまた違うんでしょうけど、自分がみじめだと思ったら終わりだと思うんですよね。デブでもブサイクでも、それをキャラクターとして、個性として……「個性」という言い方もすごくイヤなんですけど、キャラクターとしてどう生かそうかって考えたほうがいいと思います。

ーー振り切ったほうがいい、ということですね。

FURUCHIN:私、デブになってからのほうが人生楽しいんです。やりたかったことが実現できているので。私は今年結婚したんですが、夫も、私がふつうのデブだったら結婚してくれなかったと思います。きっと、私が「カッコいいデブ」だったから、結婚してくれたんだと思います。

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土井大輔 (どい・だいすけ)

ライター。小さな出版社を経て、ゲームメーカーに勤務。海外出張の日に寝坊し、飛行機に乗り遅れる(帰国後、始末書を提出)。丸7年間働いたところで、ようやく自分が会社勤めに向いていないことに気づき、独立した。趣味は、ひとり飲み歩きとノラ猫の写真を撮ること。好きなものは年老いた女将のいる居酒屋。

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