[go: up one dir, main page]
More Web Proxy on the site http://driver.im/

Cuさんのオタク日記

Twitter:math_ter0713

数物Ad5thの振り返り

こんにちは.この記事は数物セミナー Advent Calendar 2024 1日目の記事です.

数物セミナー Advent Calendar 2024 - Adventar

Cuです.数物セミナーでは会長などをしていました.

先日行われた数物セミナー アドバンスド 5th の思い出を話します.

運営について

システム

今回は副指揮をしました.指揮はよぞに全てをぶん投げました.へへへ.隙を見せたよぞが悪いよ.

今回は私発案で新しいシステムを導入しました.というのは

事前に班長と本を決めてある班を用意する!

というものでした.

というのも,最近のアドバンスド合宿は,参加者はほとんど学部生(院生が1桁人しかいないことも……)で合同合宿ちょっと背伸び版の様相を呈していました.まぁ悪くはないんですけど,本来は大学院生向けのイベントなのでもうちょっとやることのレベルを上げてみたかったのです.

で,ですよ.アドバンスドな内容を合同合宿と同じリレーセミナー形式で行うにはちょっと問題があったのです.通常のリレーセミナーとは

  1. 班で分かれる
  2. 各々の興味/レベルを確認
  3. 本を挙げる
  4. 本を決定する

という方法でやる内容を決定していました.

このシステムでは,2の「興味/レベルを確認」のときに取っ散らかり,ちょっとやりたかったことができない……となることがなくもないのです.合同合宿の場合は,皆学部生で2がズレすぎることは少ないのですが,院生メインとなると分野の細分化ゆえに興味が合わないことや,うっかり院生のなかに学部生が混ざってしまいレベル帯が合わないことが生じます.(実際,どちらも過去のアドバンスド合宿での私の経験なんですけどね)

アドバンスド合宿のアドバンスド化の1つの問題はここかなぁ……と感じていたため,改善したいと考えていたのです.じゃ,どうするか.そりゃ班員の興味とレベルが事前に合っておけばいいのです.てなわけで班長制を提案しました.

「あ,これやるのか.じゃあ参加します!」という人だけで班を組めばもちろん問題は起こらないんだよ~!

会場

郡山の猪苗代青少年交流の家でやりました.

施設はキレイで飯もそこそこ美味しかったです.風呂もでかい.
なんか布団のマットは東京オリンピックの選手村で使われたやつだそうです.なんか工学的でよかったです.(こなみ)

電波はときどきやばいけど概ね良い感じでした.また郡山に近いことから,いざというときの買い出しもやりやすかったです.実際,合同合宿中はホワイトボードシート買いに行きましたし.

数物セミナーちゃんステッカー

というものを作りました.

アイスブレイクの賞品にしました.もらった人のウケも良かったので,またやりたいですね.

リレーセミナー

表現論1班でした.物理っぽいことをしました.

上智大学数学講究録から『可解格子模型と共形場理論の話題から』を読みました.

dept.sophia.ac.jp

メンツは,私(アイマスが好きな人)の他,ボルダリングが好きな人・場の量子論が好きな人・超平面配置が好きな人の合計4人でした.

リレーセミナー最初は本を読まずに各々の興味分野の話をしていました.真面目にしなさいよ.私はクーロン枝の定義の話をしました.

その後,本を読みました.なんやかんや全員発表できてよかったです.また物理屋さんがいたので物理の背景を教えてもらえたのは学びでした.
私は菅原構成法をおっかけました.こいつはアフィンリー代数からビラソロ代数を作るってやつです.計算がわちゃわちゃしていましたが,誤植が少なかったことですっきり読めました.
そもそもはヤンギアンについて知見を深めたかったです.お前ヤンギアン関係ないやんと思われるかもですが,私のパート以外は概ねヤンギアンを取り扱っていました.だいたいのオチを説明しときます.一応, \mathfrak{sl}_2 は知っているものとして書きます.

  1. アフィンリー環  \hat{\mathfrak{sl}_2}カシミール元(元ネタの  \mathfrak{sl}_2 などでは定義されるめっちゃ良い性質の元)っぽいものを取ります.具体的にちょっと.
     \mathfrak{sl}_2 の基底を  I_1 = H, I_2 = E , I_3 = F と,その”双対”基底  I^1 = \dfrac{1}{2} H, I^2 = F , I^3 = E を取ります.その上で  \sum_{i=1}^3 I_i I^i としたのが元々のカシミール元でした.(並べてんのは普遍包絡環を考えてる.)
    アフィンリーとは,リー環の元と単項式  x, \cdots ,x^n, \cdotsテンソルしたものに中心拡大(一次元リー環  \mathbb{C} c をいい具合に直和で追加したもの) でしたので,アナロジーを考えるのであれば
     S'(n) = \dfrac{1}{2}\sum_{i=1}^3 \sum_{m \in \mathbb{Z}} (I_i \otimes x^{n-m}) (I^i \otimes x^{m}) 
    とするのです.
  2. ただこれだとちょっとうまくいかんことがあるのです.実際に計算する場合,いい具合に項がキャンセルするなどして有限和の形になってもらわないとしんどいので,ちょっと細工します.具体的には場の量子論などで出てくる正規化順序積を導入します.
     : (X \otimes x^n) (Y \otimes x^m) :
    \begin{cases}
    (X \otimes x^n) (Y \otimes x^m) \quad (m < n)\\
    \dfrac{1}{2} \{ (X \otimes x^n)(Y \otimes x^m)+(Y \otimes x^m)(X \otimes x^n)\}  \quad (m = n)\\
    (Y \otimes x^m)(X \otimes x^n) \quad (m > n)
    \end{cases}
    と定めます.で,さっきのを
     S(n) = \dfrac{1}{2}\sum_{i=1}^3 \sum_{m \in \mathbb{Z}} :(I_i \otimes x^{n-m}) (I^i \otimes x^{m}): 
    と修正するのです.
  3. アフィンリー環  \hat{\mathfrak{sl}_2} のレベル  k 表現(中心  c の作用が定数  k 倍になるような表現)を相手取ることにします.
  4. この表現に対して  \dfrac{1}{k+2} S (n) とおくと,実はこいつらがビラソロ代数の生成元の公理を満たします.すげえ!
  5. 話は変わりますが,レベル  k 表現  N M_1, \cdots , M_N を用意してきます.そして,リーマン面を持ってきて  N 点を固定します.
  6. リーマン面上定義され高々選んだ点にしか極を持たない  \hat{\mathfrak{sl}_2} 値関数の集合を考えます.(自然にリー環の構造は入る)選んだ点でローラン展開することを考えると,点の数だけ  \hat{\mathfrak{sl}_2} 値形式的ローラン級数の集合の部分集合への全単射が得られます.(この集合もリー環になる)
  7. こいつらを直和で集めたのに中心を追加したリー環 \hat{\mathfrak{g}_N} などとおいておきましょうか.
    これは  M_1 \otimes \cdots \otimes M_N に自然に作用しますので,その作用の像で剰余した表現を  CC とおきます.これは WZW 模型の conformal coinvariant の空間と言われます.WZW 模型はアフィンカッツムーディーリー環がうまあじになる共形場理論の模型……らしいです.物理的に詳しいことはそんなに書けへん.とりあえず共形場理論に関するものです.
  8. そういえばビラソロ代数が作れるよってときに  k+2 で割っていましたよね.じゃあレベル  -2 の表現を考えるとなんかバグりそうじゃないですか.
  9. 実は全然バグらなくてうまいことやったら Gaudin 模型というものが生えてくるのです.すげ.特にこの本私のパートまでは Gaudin 模型をメインで取りあつかっているのです.要するに盛大な伏線回収をしたってわけでした.

これをもっと一般的にやるとシフトヤンギアンと  W 代数の関連性が分かるっぽいです.すごそうですね.

いろいろ

これ銀杏ですかゲームと句会もできました.楽しかったです.特にとーるさんの新手には感動しました.

おわりに

次回のアドバンスド合宿 6th は来年3月7日から9日に開催する予定です.

5th同様の班長付き班はもちろん,ちょっと勉強したい人・学び直したい人など向けのやさしめ班も作られるかもしれません.そのうち分野紹介PDFが出るため,楽しみに待っておいてください.

あ,もちろん運営で参加しますよ.それでは数物数物~!