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エンタープライズコラボレーションの今と今後を鋭く分析

日本はニコニコ動画、欧米ではYouTube

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 年末である。年の終わりの恒例である今年のヒット商品番付もあちこちで発表されている。個人的に一押しだった「初音ミク(歌声自動合成ソフト)」は結局どの番付にも載らなくて残念だったが、もう一つ今年私が惹かれた「動画共有サイト」は、日経トレンディで3位、日経MJ新聞では小結とちゃんと番付入りをした。(但し、SMBCコンサルティングのヒット商品番付では動画関係は番付外)

 さて、この動画共有サイトだがどうも日本と欧米では、はやり方が違うようだ。というかなぜか日本ではニコニコ動画、欧米ではYouTubeとなっている。なぜこうして日本と欧米で違いが出るのか?本来こうしたマス分野は私の専門ではないのだがちょっと情報収集したところ、結構面白いものが集まったので一旦ここでまとめておく。
 
(その1)
 先日同僚がパオロ・マッツァリーノ氏の「つっこみ力」を貸してくれた。この本によると、日米のお笑い文化には差があるそうだ。以下この本の30Pからの引用。

アメリカで主流のお笑いは、スタンダップ・コメディとよばれる漫談です。コメディアンがジョークをしゃべり、客が笑うだけ。
(中略)
一方、日本の漫才にはボケとツッコミがいます。ボケ役がおもしろいボケをかませば、それだけでも笑えるはずなの、そこにあえて、つっこみという、ワンクッションをおくわけです。

 そう、日本文化にはわざとボケる、適当なタイミングで適切に突っ込むという風土があり、このセットで日本人は笑う。なるほどこれは、YouTubeとニコニコ動画の関係を上手く言い表しているかもしれない。
 

(その2)
 動画サイトを沢山見ているある人から聞いた話。

内外の動画サイトにアップされるパフォーマンス系の作品を見ていると、「踊ってみた系」「歌ってみた系」はYouTubeでもニコニコ動画でも多い、でも「描いてみた系」とか「混ぜてみた系(いわゆるMAD系の作品)」「作ってみた系(ニコニコ技術部?)」になるとYouTubeにはあまりなく、これってニコニコ動画の特徴かも知れない。

 これを聞いて私が思い出したのは、秋頃の「うつせみ日記」というブログのエントリー「日本のどこにでもいる『才能の無駄使い』」に寄せられたこのコメント

OLだった頃、会社で働いていた日本に超詳しいベルギー人が言ったことに納得してた。
日本文化は身内受けの凝り性文化だそう。
外国文化に負けまいとしているのではなく、世に意図的にインパクトを与えようとしているのでもなく、今ここにいる同じ価値観を共有する仲間からの喝采を浴びたいと考える。
その結果、同じものを志す者同士の「これすごいだろ、おもしろいだろ」合戦が始まり、そこで生み出される物が自然と研ぎ澄まされていく。
でもその競争は、敵対的なものではなく、お互いを尊敬しあいながら、静かに深く進行していく。

そしてある日、偶然目撃した異文化出身の人間(外国人)から、それがすごいものであることを知らされる。

なるほど、判るような気がする。あくまで内輪受けの延長で「ちょっと混ぜてみたんだけど…」というノリで作品を勝手につくって中途でもそれを見せ合う。それを皆で面白がって高速に回転する日本に対して、欧米ではパフォーマンスの際もある程度完成されたモノを発表するというような意識が根底にあるように感じる。

(その3)
 そして先日、日経BPオンラインに竹中正治さんの「ラーメン屋とマックの戦い」という興味深い記事が掲載された。その中に、日本人には異なる文化的要素を混在させつつジャンク化させず高い完成度をもった虚構世界を構築する能力があるされている。竹中氏は「マツケンサンバ」を例に以下のように述べている。

少し古い流行であるが、ワシントン駐在時代にNHK紅白歌合戦で初めて松平健の「マツケン サンバ」を見た時、私は心底驚いた。日本時代劇とラテン、サンバをフュージョンした「ハイブリッド 突然変異体」とでも呼ぶべき文化的モンスターだと思った。異なる文化的要素がフュージョン (融合)し、突然変異的な新機軸を生み出す文化的ダイナミズムを日本のポップカルチャーは 発揮しているのだ。
これは現代の大衆文化に限ったことではない。古今東西、異質な文化要素とのフュージョンは、 新しいパターンを生み出すダイナミズムの源泉だ。例えば「万葉集」は中国漢字の音を大和言葉に 当てはめた万葉仮名で書かれた当時日本の最先端の文化的フュージョンだった。

 なるほど、何かと何かを混ぜた作品を作るというのは、日本人の歴史的な気質に合っているのかも知れない。

 以上最近集めた3つの視点を紹介したが、何がヒットするかというのは国毎、文化毎に違うのだろうから、こうして国というか民族の風土面で見ていくといろんな蘊蓄が語れて面白いなと感じた。
 で、最後に私が自分で最近ふと気づいた仮説を書いて終わりにしたい。
 
 WiiFitのテレビコマーシャル(スキージャンプのやつ)を見ていてふと思ったのだが、これって3Dのバーチャル空間を体感するインターフェースなのではないかと。そういえばWiiリモコンもそうだなぁ。
 もしかして日本人って仮想世界(3D世界)に対して単にビジュアルなだけでは駄目で、仮想世界(3D世界)を身体で感じないと受け入れられないのかもしれない。もしかするとこれがSLが未だに日本で受け入れられない原因の一つになっているかもしれない。
 
 今年はヒット商品番付にはランキング入りできなかったメタバースだが、もしかすると来年には日本独自の身体に直に体感できる仮想世界がヒットするかもしれない。

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