しばらく前からホームページが更新されなくなり、不定期に送られてきていた新入荷品カタログも途絶えたきりになっていたので気になっていたのだが、新世界レコード社がやはり閉店していたようだ。見てきた人の話によれば、この3日に店が閉ざされ、閉店する旨の張り紙があったそうな。ロシア音楽専門の、ユニークな店だったのだが。
まあ、ロシアの音楽は好きだったので、東京は神田の古書センターにあった店には何度か足を運んだのだが、そもそもロシア音楽の知識もなければロシア文字も読めず、店頭に並んでいる品のどれに手を出していいものやら分からず。はじめは手探りのジャケ買いで、まるでピント外れのものを手に入れてしまったりの連続だった。
素直に”お勧めの品”など尋ねればいいものを、そこが音楽ファンとしてのプライドだけは膨れ上がっているマニアの浅ましさ、店に入り店員を前にすると”すべてに通暁した客”を無駄に演じてしまうのだ。バカだねえ。
素直に店と付き合えるようになったのは、東京を離れ、郷里に都落ちして通信販売を利用するようになってからだ。電話やらメールやらで注文しだしたおかげで、素直に「何を聴いたらいいのだろう?」という、今思えばなんでもない質問が素直に出来るようになったのだった。なにをやっとるのか。
それにしてもかの店の開店裏事情というもの、興味は惹かれたのだが尋ねることもなく終わってしまった。
ロシアの文物専門に扱う輸入品店を営むに至った理由というのは、純粋にロシア文化に関心があったせいか、それとも政治的理由のシッポくらいはくっ付いていたのか。それとも、かっての歌声喫茶ブームなんかの流れを汲むロシア民謡好みの流れを汲むのだろうか。今となっては知る由もなし。
”新世界”なる訳ありっぽい、今日の感性からすると”新”ゆえに逆に古臭いような、さらに一回りしてまた新しいようなネーミングが気になる。
何しろことがロシア絡みなので、勝手に一世代(やら二世代やら)前の青春群像の幻など思い浮かべて、五木寛之好み(?)の波乱万丈の物語など作り上げていたのだが。
それがあなた、戦前の満州国まで遡る国際間の陰謀物語で、白系ロシア人の少女と旧日本軍の諜報員との禁じられた恋物語など横糸に絡めて。うん、この話、書いてみれば面白いかも知れんな。まあ現実は、絶対にそんな面白いものではありえないのだが、普通。
しかし、当方の新世界レコード社との今となって思えば最後の取引は、こちらのオーディオでは再生できない、まあ不良品のCDが届いてしまったので、それの返品をした、なんてものだったので、なかなかこれも後味の悪いものがある。
長い音楽ファン稼業、さまざまなレコード店との付き合いがあったものだった。そしてその付き合いはいつもこんな風に突然に断ち切られて終わる。行き慣れた店に出かけてみると、ある日、その場はもぬけのカラになっていて、閉店事情を告げる短い文章が書かれた一片のメモ用紙が貼られている・・・なんてのはまだマシな方で、ただ何も言わずにいなくなっただけ、なんてのも普通にあったなあ。
そうそう、あの店の主人、今はどうしているんだろうなあ、などともう20年も前の付き合いを思い出して遠い目になったりするのだが、なに、こちらだっていつ失職してCDを買いたくても買えなくなり、あえなく音楽ファン引退、なんて事にならないとも限らないのさ。諸行無常。
さて、それでは逝ってしまった新世界レコード社を悼み、これからロシア民謡集でも聴きまくるか。それとも、ロシアン・ポップスにしておいたほうが前向きだろうか。
時はもう夜明け近く、窓の外はひどい雨降りになっている。
そのレコード会社が経営していたお店ではないかと
察っしますが、カリーナは行ったことがアリマセン♪
♪≪カチューシャ≫のお客様がシャリアピンの唄っているロシア民謡CDが欲しくて探し回り結局そこ(新世界レコード社)で買ったヨとの事でした♪
後にこのような事になるとは知る由もなく、「新世界レコード社のシャリアピン」を聴きました~♪
今日の東京は終日曇天、そして時に強い雨・・・
それにしてもこの閉店、我が国におけるロシア音楽への興味の先細りを象徴する事柄、と考えるとなかなか寂しいものがありますね。
昨日の午後, 知人から電話があり
"新世界レコード社つぶれたんだって!"
というので慌てて検索してここに来ました.
新世界レコード社は創業者が旧社会党の関係者だったようです. 冷戦下で東側の文化が排除されないようにという政治的な動機があったと聞きました. その意味では当初の社会的使命は終えていたのかもしれません. 新世界という名前はドヴォルザークの交響曲から採ったものと思われます.
1週間前も社員のサトーさんを飲みに誘おうと
別の知人といっしょに電話していたのですが
電話回線がまだ生きていて案内が流れたので
臨時休業かなにかと思っていました.
しばらく前からオーナー社長は音楽の商いに興味をなくし, 趣味の中古カメラに専念していたようです. ただしカメラ部門がビジネスとして成り立っていたのかは疑問ですが. CD 輸入のほうは海外への発注から営業・店番までをサトーさんたち少数のスタッフで支えていたようですが, 矢折れ力尽きという感じでしょうか...
サトーさんの行方が心配です.
来週あたり飲みに連れ出して励まそうと
電話をくれた知人と計画しています.
新世界レコード社閉店、残念なことでした。
今回はいろいろ関連情報をいただき、ありがとうございます。
そうですか、やっぱりある程度の政治的動機はあったのですね。そして確かのその辺の使命は果たし終えていたのかも知れません。(まあ、我々顧客にしてみれば、まだまだ続けて欲しい店でしたが)
”新世界”とは、私は”革命成就後の新しい世界”をイメージしているのかと半分は思っていました。まあ、あと半分はドヴォルザークだろう、でしたけどね(笑)
>サトーさんの行方が心配です.
>来週あたり飲みに連れ出して励まそうと
>電話をくれた知人と計画しています.
この計画、その後どうなったか、お知らせいただけると幸いです。勝手ですが、どうかよろしく・・・
新世界レコード社のように歴史のある店は、なんとなくつぶれることなんかないように思っていただけに私もずいぶんショックでした。そうですねえ、何とか復活を、と祈るよりないですね。
100ans-de-solitudeさん
あっ、まことにすみませんが、よろしくお願いいたします。新世界レコード社始末紀、とでも言うんですかねえ、皆、知りたく思っているはずです。(そして、復活の可能性?)
最近ずっとお店にも行ってなかったし、佐藤さんはどうしてるのかな・・・なんて気になっていたのですが、今日閉店を知りました。すごくショックです。とても悲しいです。
100ans-de-solitudeさん、佐藤さんとお友達なのですね。私は以前はよく一緒に遊んだりしていたのですが、最近はすっかりご無沙汰してしまっていて・・・でも、すごく心配です。「心の友」佐藤さん、お元気にしていらっしゃるのでしょうか。何かわかりましたら、ご連絡していただけると嬉しいです。よろしくお願いいたします。
新世界レコード社は、もったいないことになってしまいましたね。ロシア音楽がもっと活発に動いていて、世界の注目を集めていたら、こうならずにすんだのでしょうか?そういうものでもないのかな?
何とか再興の時を祈願したいところですね。
昨日、会社の定時後、ダッシュで神保町へ行ってきました。懐かしい古書センターへ行くと、エレベータのところに閉店のご案内が・・・やっぱり本当になくなってしまったんだ、そう思うと、とても悲しくなりました。
何か事情がつかめないかと思い、古書センターの他のお店の方に聞いたところ、今日、社長を見かけたとのこと。もう一度、新世界レコードの閉じられた扉の前に行くと、たしかに中で音がしています。ノックすると、懐かしい社長の顔が出てきました。
その後、少しお話をさせていただきました。そして佐藤さんとも連絡をとることが出来ました。それは良かったのですが、やはり、がらんとしたお店を見ると、胸がつまりそうになりました。
ロシア音楽や文化を発信する、貴重な貴重なお店だったのに・・・新世界レコードがなかったら、ロシアのことをこんなには好きにならなかったと思います。同じ思いの人もたくさんいると思うのですが・・・残念でなりません。
本当に「新世界」の名前が消えてしまうのかな?何とか再出発する道が開けると良いのですが・・・。そうなることを心から願っています。
長文失礼いたしました。