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ターゲットはSRだった? 1980年代に生まれたフラットトラックレプリカ「FT400」

ターゲットはSRだった? 1980年代に生まれたフラットトラックレプリカ「FT400」ターゲットはSRだった? 1980年代に生まれたフラットトラックレプリカ「FT400」

 フラットトラックレースはアメリカでの人気が高く、日本においては一時的なブームはあったものの根付いてはいない。その本場アメリカのフラットトラックレースにホンダが参戦したことで、今回紹介するFT500/400は生まれたと言えるだろう。

 
文/後藤秀之
 

ホンダのフラットトラックレース参戦が生んだFT

 アメリカの二輪レース業界で人気の高いのが、未舗装のオーバルコースを走るフラット(ダート)トラックレースだ。ケニー・ロバーツやフレディ・スペンサー、エディ・ローソンといったアメリカを代表するGPライダーたちは皆フラットトラックレース出身であり、彼らのライディングはGPを変えたと言える。ノリックこと阿部典史もアメリカのフラットトラックレースで修行を積み、バレンティーノ・ロッシはフラットトラックをトレーニングに取り入れた。

 1970年代までのフラットトラックレースの王者はハーレーダビッドソンであり、そのワークスレーサーXR750は無敵と言える強さを誇っていた。ケニー・ロバーツはヤマハのXS系ツインエンジンを搭載したマシンで1973年と1974年にAMAグランドナショナルチャンピオンを獲得、続く1975年シーズ向けにヤマハはTZ750ベースのエンジンをを搭載したTZ750ダートトラッカーを投入した。速すぎるTZ750ダートトラッカーはケニーに勝利をもたらすことはなく、ケニーは1978年からWGPにフル参戦することになる。

 ホンダは1979年からフラットトラックレースへの参戦を開始、当初はCX/GL500系のエンジンをベースにしたマシンで戦った。このマシンはその後NS750と呼ばれることになるが、元々縦置きのエンジンを横置きに積むというかなり無茶な改造が行なわれていた。フレディ・スペンサーは1980年からホンダと契約し、フラットトラックレースとロードレースに並行して参戦したが、フラットトラックレースでチャンピオンを獲得することはできなかった。1983年にデビューしたNS750の後継となるRS750Dは、4バルブ化さたXLV750Rベースのエンジンを搭載。1984年から1987年まで4年連続でチャンピオンを獲得するに至った。

 ホンダは1982年、このフラットトラックレース用バイクをモチーフにした「FT500」を発表、アメリカでは「アスコット」のペットネームで、日本では中型免許制度に合わせた「FT400」との二本立てで発売された。

 

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フラットトラックレースは当時あまり日本に馴染みがなかったためか、ホンダはFTを「個性的なスタイリングのロードスポーツ」とプロモーションしている。

 

 

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タンク、サイドカバー、シートカウルのデザインから、フラットトラックレーサーのイメージを強く感じさせるリアビュー。

 

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ポジションはロードバイク寄りで、上半身は軽く前傾する。ステップは体軸よりも少し前に出る感じで、下半身はリラックスした感じだ。

 

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シート高は790mmと400ccのロードモデルとしては少し高めだが、車体がスリムなので足付き性は良好。171cm、65kgのライダーが跨ると、軽くかかとが浮く。

 

 
 
 

XL系のタフなSOHC4バルブエンジンを搭載

 FT500/400のエンジンはオフロードバイクXL500S系のものがベースになっており、空冷4ストロークSOHC4バルブである。FT500はボア×ストロークが89×80mmの497cc、FT400はストロークを69mmとした398ccとなる。吸・排気に各々2個のバルブを持つ4バルブによって高い燃焼効率を実現し、単気筒エンジンながら2本のエキゾーストパイプを採用することで排気効率をより向上させるなどして一層力強いトルクを生み出している。また、エンジンの振動を低減させる2軸式バランサーの採用し、ミッションは中・低速域に重点をおいたギアレシオの5速となる。始動方式はセルフスターター式で、無接点式CDIやオートカムチェーン・テンショナーを採用していた。

 

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エンジンはXL500Sベースの空冷4ストロークSOHC4バルブ。最高出力は27PS/6500rpm、最大トルクは3.2kgm/5000rpmだ。

 

 

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400はストロークを69mmに変更することで398ccに排気量を変更。ボアではなくストロークで排気量を変更するのはSRと同じ手法だ。

 

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シングルエンジンながら4バルブであり、排気効率をアップするために2本出しのエキゾーストパイプを採用している。

 

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ブラックアウトされたサイレンサーは、シングルらしい小気味良いエキゾーストノートを奏でる。

 

 「FT」は当然「フラットトラック」の略なのだが、発売当時のホンダはFT500/400を「中排気量単気筒エンジン搭載の軽くスリムなロードスポーツ車」と発表した。「オフロードバイクの由来の単気筒エンジンを搭載したロードスポーツ」というパッケージ、これは1978年に発売されたヤマハのSR500/400とほぼ同じコンセプトと言え、ホンダはこのFT500/400をSRの対抗馬として国内に投入したと考えられる。

 

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SR500/400は、オフロードバイクXT500系のエンジンを搭載したロードスポーツ。SRも排気量をストロークで調整している。

 

専用フレームにアルミキャストホイールを装備

 FT500/400のデザインは小型のタンクやゼッケンプレートをイメージさせる大きな面を持つサイドカバー、そしてシャープなテールカウルのデザインなどフラットトラックレーサーをイメージさせるものであった。ヘッドライトは小型の角形で、その下にルーバーを持つカバーが取り付けられていたのも印象的だ。

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特徴的な角形ヘッドライトと、その下に取り付けられる樹脂製のカバー。カバーの下にはホーンが取り付けられている。

 

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メーターは80年代風の角形で、スピードとタコのニ眼タイプ。インジケーター類はセンターにまとめられ、タコメーター内に速度警告灯が確認できる。

 

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ヘッドライトの切り替え、パッシング、ウインカー、ホーンのスイッチがコンパクトにまとめられた左のスイッチボックス。

 

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右のスイッチボックスにはヘッドライトのオンオフ、キル、セルフスターターのスイッチが取り付けられている。

 

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小ぶりなタンクの容量は13L。タンクのデザインは、フラットトラッカーをモチーフにしている。

 

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シートはしっかりとした大きさと厚みがあり、タンデムにもしっかり対応。後端には傾斜が付き、ラインがシートカウルにスムーズに繋がる。

 

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フラットトラックレーサー風のデザインに仕上げられたテールカウル。公道仕様のため大型のフェンダーやテールライトが取り付けられる。

 

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「FT400」または「FT500」のロゴが入るサイドカバーはかなり大きく、ゼッケンプレートをイメージさせる。

 

 フレームは軽量かつスリムで高剛性のスチール製ダイヤモンドフレームで、FTシリーズ用の専用開発されたもの。サスペンションはフロントにセミエア式のテレスコピックフォーク、リアツインショックでホンダ独自のF・V・Q・ダンパーが採用された。ホイールは5本スポークのアルミキャストホイールを採用し、フロント19インチ、リア18インチという当時のロードバイクとしては一般的なサイズで、タイヤはチューブレスタイプを採用している。ブレーキは前後ディスクブレーキで、フロント296mm、リア276mm径の大径ディスク+2ポットキャリパーを組み合わせている。

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星型5本スポークのアルミキャストホイールを採用し、フロントのサイズは19インチ。サスペンションはセミエア式。

 

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フロントブレーキは296mm径のローターと片押し2ポットキャリパーの組み合わせ。シングルだが十分な制動力を発揮。

 

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リアホイールは18インチとされ、4.25インチ幅のタイヤを履く。リアショックにはホンダ独自のF・V・Q・ダンパーが装備される。

 

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リアブレーキはローター径が276mmにダウンするが、キャリパーはフロントと同じ片押し2ポットキャリパーが組み合わされる。

 

 FT500/400は1985年までら生産が終了し、非常に短命に終わってしまった。しかし、1986年にはRS750Dのチャンピオンを記念してFTR250が発売された。このFTR250も短命に終わるのだが、後にストリートトラックブームの火付け役となり、2000年にFTR223として「FT」の名前は再度復活した。

 

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チャンピオマシンRS750Dのレプリカとして誕生したFTR250だが、当時は人気が出ずに3年ほどで終売となってしまった。

 

 

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終売から10年ほど経って突如FTR250の人気に火がつき、ホンダは2000年にFTR223を発売するに至った。

 

FT500・400主要諸元(1982)

・全長×全幅×全高:2225×775×1190mm

・ホイールベース:1435/1425mm

・シート高:790mm

・乾燥重量:159kg・158kg

・エンジン:空冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒497・398cc

・最高出力:33PS/6500rpm・27PS/6500rpm

・最大トルク:4.0kgm/5000rpm・3.2kgm/5000rpm
・変速機:5段リターン

・燃料タンク容量:13L
・ブレーキ:F=ディスク、R=ディスク

・タイヤ:F=3.50/-19、R=4.25/-18
・価格:42万8000円・42万3000円(当時価格)

撮影協力:バイク王つくば絶版車館

 

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