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本稿では、地方自治体の広報誌に掲載された、1979年から2018年に生まれた新生児の名前を分析し、40年間にわたって、個性的な名前の割合が増加していることを明らかにした論文を、領域外の方にも理解していただけるように紹介しています。特に、日本の名前研究を進めることの難しさと、それをどのように解決してきたのかについて、やや詳しく説明しています。紹介している論文はオープンアクセスですので、どなたでもお読みいただけます。本稿では、「名前」と表記した際には、氏名の「名」(ファーストネーム)を意味しています。 概要 地方自治体の広報誌に掲載された、1979年から2018年に生まれた新生児の名前を対象に、個性的な名前の割合の経時的変化を分析しました。その分析の結果、個性的な名前の割合は40年間にわたって増加していました。個性や他者との違いを重視し強調する方向に、日本文化が徐々に変容していることを示唆して
坂本美理、竹内彩也花、浅葱 WOMEN: WOVEN ホームページ 坂本美理:応用哲学・倫理学、特に生殖と養育やParenthoodに関わる倫理を研究しています。現在は東京大学大学院死生学応用倫理専攻の博士後期課程に在籍しています。私は、哲学をする/研究する上で、数少ない女性の先輩や同輩に助けられてきました。私も誰かの助けになりたい、哲学への道が全ての人に開かれていてほしいという思いからWOMEN:WOVENの運営を行っていきたいと考えています。 竹内彩也花:専門は近代日本哲学、特に西田幾多郎をはじめとする京都学派の哲学。現在は京都大学文学研究科修士課程に在籍しています。「女性」ということを介した経験をもつ人とのつながりが少ない中で、WOMEN: WOVENという場は、私の研究にとって陰に陽に支えになってきたと感じています。こうした取り組みを引き継ぎつつ、私自身の哲学の関心や、さまざまな生
微生物のマジョリティは「培養できない菌」という未知の領域 「原核生物」はバクテリアやアーキアと呼ばれる微生物の仲間です。肉眼で見ることができないため馴染みの薄い存在ですが、その種類と存在量はもう一方の生物群である「真核生物」(動物、植物、菌類、原生生物)よりも多いと推定されています。ところが、性質や実物の写真などを記載してカタログ化すると、上記5つのグループのなかで最も薄い図鑑になってしまうのは原核生物です。善玉・悪玉菌と呼ばれる乳酸菌や大腸菌などのように、性質がよく知られている菌は原核生物全体でみるとごくわずかしかいません。 ある菌種の性質を知るためには、他の菌から完全に分離して人工的に培養し増殖させる必要があります。大まかに見積もって全原核生物の99%は人工的に培養することができない「未培養」の菌のため、性質が未知なのです。 1千万種は下らないといわれている原核生物の大多数が未知のまま
魚類の多くは眼を閉じない 陸にすむ脊椎動物にとって、眼を乾燥や異物から守る閉眼行動は重要です。私たちヒトも、眼を乾燥から守るための瞬きをはじめ、睡眠時、眼にゴミが入ったときなど、さまざまなシーンで眼を閉じますよね。 一方、水の世界では、眼を閉じる生きものは少数派です。陸にルーツを持つ生きものたち(鯨類、海牛類、ペンギン類、ウミガメ類)や一部のサメの仲間などに限られ、魚類の多くは眼を閉じるための瞼(まぶた)すらもちません。しかし、そんな固定観念をひっくり返してくれる魚に、私は職場である水族館で出会いました。 その生きものの名は、フグ。トラフグなど一部の種が高級食材として全国的に流通する、私たち日本人に馴染み深い魚のひとつです。フグは、水槽の底で休んでいる(?)ときや眼が障害物にぶつかったとき、眼に病気が出たときなどに、眼を閉じることがあります。 魚が眼を閉じるなんて! という意外性を感じ、そ
私たちの「予測する」という能力 プロ野球選手は時速100km以上で飛んでくる小さなボールをバットで捉え、ホームランを打つことができます。私たちは混み合った雑踏のなかでも他人とぶつかることなく進んでいくことができます。このように人間は、行動を迅速かつ正確に行うために“予測をする”という能力があります。これから起こることに対しての何らかの予測があってこそ、短時間に正確な行動を生じさせることができるのです。私たちは次に何が起きるのかを常に予測しながら行動しているのです。 では、この予測という能力を詳しく調べることはできるのでしょうか? 予測は行動の調節を行っており、その調節は頭の中、すなわち脳で起きています。人間が予測している最中の脳を調べること——これが予測の研究です。 脳活動から予測を探る 脳の活動は、脳の継続的かつ電気的な波である「脳波」として観察することができます。脳波は、頭皮上に電極を
異なる種同士をかけ合わせた「雑種」が持つ特徴に共通点はあるか? – 動物分類群を横断したメタ解析で明らかになったこと 雑種個体が持つ特徴 生物は別の種の個体と交配する「交雑」をしばしば起こします。両親の遺伝子が足し算的に子の特徴を決める、という私たちが無意識に持っている先入観からすれば、異なる種同士の両親から生まれる雑種第1世代の個体は、両親の平均的な特徴を持つことになるでしょう(雑種第1世代同士のカップルから生まれた子を雑種第2世代と呼びます)。 今回の研究データに含まれている、交雑を起こす生きものの例。画像はすべてWikipediaより引用。 しかし実際には、雑種第1世代はしばしば両親よりも早く成長して大きくなったり、より甲高い声で鳴いたりするなど、両親が持たなかった性質を持つことがあります。さらに農業では、雑種第1世代は親となった品種よりも品質が安定しやすいということが経験的に知られ
メタン生成アーキアとは? メタンという分子は、現代社会を支えている燃料資源である一方、二酸化炭素の約25倍という強力な温室効果ガスでもあります。メタンは主に、地熱によって有機物が分解されることで生産される「熱分解起源」と、微生物が有機物を分解することによって生産される「微生物起源」の2つの作用によって生産されます。このうち、微生物起源のメタンは、地球全体で放出されるメタンの69%を占めるとされています。 メタンを生産する微生物は「メタン生成アーキア」と呼ばれるアーキア(古細菌)に分類される嫌気性微生物であり、水田や家畜の胃袋などの身近な場所から海底下の深部地下圏など幅広い環境に生息しています。メタン生成アーキアは種類によって異なる基質(メタンの元になる材料)を利用することが知られています。現在までに、二酸化炭素還元型・メチル基栄養型・酢酸発酵型の3つの経路がわかっていますが、近年では石油な
材料や薬の開発に必要不可欠な物性計算 物理学、化学、生物学の分野において、より良い材料(電池、磁石、半導体、超伝導体、高分子、触媒、太陽光発電など)や病気(がん、エイズ、インフルエンザなど)を治療する新薬の開発は、研究者や技術者にとって常に大きな課題であり続けてきました。特に昨今は、クリーンエネルギーや新型コロナウィルスなどの問題に世界が直面していることで、これらの課題は多くの人々が身近に感じていることでもあると思います。 このような材料や薬の開発においては、物質(分子や結晶)のさまざまな物性を知ることが必要不可欠です。たとえば、物質の最も基本的な物性であるエネルギーや電子密度は、現代のコンピュータシミュレーション技術を用いて、高い精度で計算することができます。 シミュレーションは量子物理学の方程式に基づいており、特にコーン–シャム方程式に基づく密度汎関数法(1998年ノーベル化学賞受賞)
1600年にイギリスから日本へ渡った三浦按針 ウィリアム・アダムス(日本名・三浦按針)は、1564年にイギリスのジリンガムで生まれました。34歳のとき、航海士としてオランダ船に乗って極東を目指しましたが、航海は困難を極め、5隻からなる船団で出航したなかで唯一リーフデ号に乗っていた僅かな生存者だけが1600年に現在の大分県に漂着しました。 アダムスは徳川家康に外交顧問として重用され、通訳や大型船建造を任せられるなど活躍の場を得ました。その功績によって旗本に取り立てられ、苗字・帯刀を許されただけでなく、領地も与えられました(the first SAMURAI from England)。「按針」は水先案内人を意味し、「三浦」は領地の相模の国・三浦郡(現在の横須賀市)に由来します。 1609年には現在の長崎県平戸市でイギリス商館の開設にも尽力しました。1614年、アダムスはクローブ号でイギリスに
私たちは、量子液体と呼ばれる無数の電子の協力現象について数理的な手法を用いて調べることで、その新しい性質を明らかにしました。本稿では、この研究の成果とその背景にある多数の電子による協力現象について、物質の物理学のおもしろさを交えつつお話していきます。 物質の性質の起源を探るには? わたしたちの身の回りにはさまざまなものがあり、それがなぜそのように振る舞うのか不思議なことで溢れています。その疑問を解き明かそうとするとき、多くの場合は、”もの”を分解してその構成要素の性質を調べることになります。そして、次々と要素還元していくと、ほとんどのものは原子にたどり着きます。では、原子の性質が理解できれば、すべての物の性質がわかるようになるのでしょうか? 単純に要素をレゴブロックのように組み合わせることで、構造体の性質がわかる場合もありますが、多数の構成要素が協調することで、思いがけない性質が現れること
人は他者から褒められると伸びる 「私、褒められると伸びるタイプなんです!」という言葉をよく耳にしますが、この言葉には、実は科学的な根拠があります。脳神経科学の先行研究によれば、人は他者から褒められたとき、脳の報酬系関連の領域、特に腹側線条体を活性化することが知られています。線条体は記憶の定着に重要な役割を果たしています。 最近の研究では、ある運動トレーニングを行った際に他者から褒められると、運動技能が効果的に習得されることが明らかにされています。その研究では、実験参加者にある指の動かし方(キーボードのキーをある順番でできるだけ早く叩く)をトレーニングさせ、次の日にその動きを思い出して再度指を動かしてもらうという課題をさせました。参加者はトレーニング中に他者から褒められるグループとそうでないグループに分けられていました。すると、他者から褒められたグループは褒められていないグループに比べて、次
脳があるから眠るのか? 睡眠は私たちにとって欠かすことのできない生理現象のひとつです。生物は睡眠をとることで、身体を休養させ、心身のメンテナンスを行っています。睡眠不足になると、疲労が溜まり、考えがまとまらなくなるといった体力や集中力の低下が起こります。 睡眠はヒトをはじめとする高等哺乳動物にのみ与えられた生理現象ではありません。爬虫類や魚類などの脊椎動物にくわえ、ショウジョウバエなどいわゆる下等動物にすらその存在が確認されています。では、動物の睡眠の起源は一体どこまで遡れるのでしょうか? 睡眠の起源を遡るうえで重要なキーワードがあります。それは「脳」です。睡眠は脳によって制御され、脳機能の維持や安定性に深く関わっていることが、多くの研究結果からわかっています。言い換えると、睡眠と脳は密接に関与しているため、お互いに切り離せない関係性になっています。 一方で、脳は動物の進化過程で獲得された
アフリカの穀物生産に大きな被害を与える寄生植物ストライガ 人口の増え続けるアフリカでは、食糧不足が非常に深刻な問題となっています。しかしその大きな原因が、ある雑草によって引き起こされていることはあまり知られていません。それは、別名「魔女の雑草」と呼ばれ恐れられるストライガという寄生植物です。 ストライガは、トウモロコシやソルガムなどアフリカの主要穀物に寄生してそれらを枯らせてしまい、その被害額は年間1兆円にものぼるともいわれるほどの大きな問題を引き起こしています。今回のコラムでは、ストライガを撲滅してアフリカの食糧問題の解決を目指す私たちの研究活動を紹介したいと思います。 ストライガは、ソルガム畑一面にピンクの花を咲かせていた。2019年7月、ケニアにて撮影。 寄生植物とはどんな植物? そもそも寄生植物とはどのような植物なのでしょうか? 私たちがよく知る植物は、地面に根を張り、光合成によっ
感性の定量評価への社会ニーズ 工業製品や食品などの検査や評価においては、人間の五感を用いて判定する「官能評価」という方法が用いられています。これまでの官能評価は開発者や評価者の主観評定による手法が主でしたが、主観に頼った評価では商品開発などではさまざまな要因による限界があり、嘘をつけない脳活動からの定量評価法の開発が求められています。 たとえば、アンケートやモニター調査で主観(感想)を聞くという手法がよく用いられますが、主観による回答は評価者がヒトである以上、忖度というバイアスがかかってしまい、課題評価や過小評価をしてしまいがちです。さらに、本人のコトバや選択行動による評価は、必ずしもその人の「生の声」ということにはなりません。本人にとっては「本音」であったとしても、実はその本人も気づいていない脳が感じている興味度が、ヒトの感じてるモノへの評価、さらには将来的な購買行動につながっている可能
酔っぱらいの歩行はランダムウォーク たくさんお酒を飲んだ酔っ払いは、右へ左へとふらふらと千鳥足で歩きます。この酔っ払いは歩き続けたらどのようになるのでしょうか? その結果はコイントスを行い、表が出たら右に、裏が出たら左に1歩移動し、移動した先でこれを繰り返したようなランダムウォークに従います。 しばらくランダムウォークを繰り返したあとにウォーカーがいる場所の確率分布は、出発した地点が高い確率となる分布に従います。つまり、酔っ払いは右に左にランダムに移動しますが、歩き続けても、右に進みすぎたり、左に進みすぎたりすることなく、出発位置付近にいることが多いということです。 ランダムウォークは、酔っぱらいの歩行から、 株価の変動まで、さまざまな不規則性を持つシステムの確率過程モデルとして使われています。コンピュータサイエンスの分野では、ランダムなシステムでの計算アルゴリズムの設計のために使われてい
生物はどのように動く? 生物において、空間を移動する性質は普遍的にみられます。動物個体はもちろんですが、細胞でも移動する性質をもつものもあります。では、生物はどのような移動パターンを示すのでしょうか? そして移動の法則はあるのでしょうか? 多くの方が子供のころに、地面をフラフラと歩くアリを眺め、このアリは何を考えてどこへ行くのだろう? と疑問に思ったことがあると思います。この疑問は素朴ですが、学術的にも重要な観点を含んでいます。 個体が環境とどのように相互作用し、移動や動きを形成するのかといった行動の仕組みの理解は、行動学や神経科学における重要なテーマですし、移動パターンの違いが個体の適応度にどのように影響するのかの理解は、行動の進化を考える行動生態学の重要なテーマです。さらに移動は、社会や生態系といったマクロな現象へも影響を及ぼすことから、社会科学や生態学においても重要であるといえます。
奇妙な現象の舞台となる氷界面 普段から私たちが何気なく接している水ですが、このありふれた液体が、液体の常識からすると極めて奇妙な液体だということを、意識されている方は少ないかもしれません。 よく知られている水の特異な性質の例としては、4℃で密度が最大値をとるという性質が挙げられ、他の液体で一般的に見られる線形的な密度の温度変化と比べてみると、水の異常性を実感することができます。このような性質がなければ、たとえば海水に浮かぶ氷河等といった、今日私たちの住む地球で見られる景色は、まったく異なったものになっていたかもしれませんし、そもそも、私たちが存在することすらできなかったかもしれません。 私たちの世界を支えるこの奇妙な液体ですが、驚くことに、その特異物性の起源は未だに解明されていないのです。このミステリアスで重要な水の固体としての形態は氷ですが、その表面である「水蒸気/氷界面」は、さらに奇妙
ホヤは私たちに近い動物? ホヤは、私たちに比較的なじみの深い生きもので、聞いたことがある方も多いでしょう。ホヤは、いわゆる「ホヤ貝」等とよばれている食べものです。「貝」とよばれるように、ホヤの成体は外部に「被のう」という殻を形成し、また二枚貝のように岩などにくっついて動きません。指摘されなければ、見ただけではホヤが動物であることすらわからないかもしれません。 実はホヤは、貝とはかなり異なる動物で、最新の研究では、私たちヒトを含む脊椎動物にもっとも近縁の無脊椎動物であるとされています。大人(成体)のホヤをみてもそれを信じることは難しいでしょうが、ホヤの幼生を見ると両者の近縁性がよくわかります。 ホヤの幼生は「オタマジャクシ」の形をしていて、まるでカエルのオタマジャクシや魚の1種にみえ、成体とうって変わって活発に泳ぎ回るのです。それだけでなくホヤのオタマジャクシ型幼生には、脊索や背側中枢神経系
音楽と脳の関係とは? 脳は音楽をどのように聴いているのでしょうか? 近年、世界中の研究機関によってこの疑問が徐々に解き明かされつつあります。音楽は言語のように、その地域特有の文化を象徴しますが、それと同時に、地域や言語に関わらず誰でも享受することのできる「世界共通言語」でもあります。このように、言語の発達的起源を理解をするうえでも、音楽と脳の関係は重要なテーマとなっています。 たとえば、特別な音楽教育を受けてきたような音楽家は脳の聴覚機能が発達しており、それに伴って言語聴覚機能も向上すると報告されています。しかし、これまで明らかにされてきたことのほとんどが一般的な西洋音楽理論に基づいた音楽(クラシックやポップス)に関わることであり、日本伝統音楽の「邦楽」(雅楽等)がヒトの脳にどのような効果をもたらすのかに関してはほとんど注目されてきませんでした。 我々は、この日本伝統音楽の学習を特別に訓練
三畳紀は、恐竜や広義の哺乳類(哺乳形類)、魚竜や首長竜、カメ、トカゲなどが出現し、繁栄し始めた時代です。ただし、化石記録をみるとワニの系統(クルロタルシ類)が陸上生態系の主要な地位を占め、恐竜が多様化し、世界中に生息域を広げるまで数1000万年もかかったと見積もられています。恐竜は、三畳紀の下積み時代に、どのように繁栄の準備を進めていったのでしょうか? 三畳紀の生態系。ティラノサウルスに似たワニの系統が繁栄し、哺乳類の祖先(左上)はおろか、恐竜(左下)も小さな存在だったと考えられている。イラスト制作:恐竜くん (c) 2018 Masashi Tanaka ニューヨークから発掘された恐竜の初期進化過程 恐竜が繁栄し始めた時代の地層は、現在の北米東海岸、ニューヨーク周辺ニューアーク盆地に分布しています。発掘現場と言えば、人里離れた荒野や砂漠のイメージですが、大都会マンハッタンの対岸にも化石は
フンボルトペンギンの糞の最大飛距離は約1.34m! – 理論物理学者が本気出してうんちの軌道を計算してみた ペンギンの糞から飼育員さんを守るために 「ペンギンの糞がものすごい勢いで飛んでくるので、直撃して困るんです」桂浜水族館の飼育員である藤澤史弥氏のそんな一言から本研究は始まりました。 ペンギンといえば主に南半球に生息する飛べない海鳥ですが、世界有数の水族館数を誇る日本では他国に比べ非常に多くのペンギンが飼育されています。本研究の舞台となった高知県高知市の名勝・桂浜にある小さな桂浜水族館でも2020年7月現在49匹のフンボルトペンギンが飼育されています。 ペンギンは自分の巣の外に向かって糞を遠くへ飛ばす習性があります。これに興味をもったVictor Benno Meyer-Rochow氏とJozsef Gal氏は、糞を遠くへ飛ばす際の直腸圧の強さを計算した結果を2003年に学術雑誌Pol
結晶構造解析の難しさ 物質・材料の機能と性質の多くは、結晶構造(原子の並び方)によって決定されます。例として、ダイヤモンドと黒鉛はいずれも炭素原子からなる物質ですが、結晶構造が異なるため、見た目や硬さ、電気伝導性など、その物性は大きく異なっています。このように結晶構造を知ることは物質・材料研究の出発点であり、結晶構造の詳細な解析はさまざまな物理現象の理解や高機能な材料の開発につながります。 結晶構造を知るためにはいくつかの手段がありますが、最も普及しているのはX線を利用した手法です。物質にX線を照射すると、X線は物質を構成する原子の周りにある電子により散乱されます。原子や分子が規則的に並んだ物質(結晶)の場合、散乱されたX線は原子や分子の並び方(結晶構造)に応じて回折パターンと呼ばれる独特な強度分布を示します。この現象を利用して結晶構造を調べることができます。 X線回折(XRD)は、ひとつ
こちらでご支援いただいた資金をもとにおこなった調査にもとづく論文が、このたびJournal of Economics and Management Starategyという企業経営に関連する経済政策の分野上位誌に無事受理されました。最新のプレプリントは以下のサイトで閲覧することができます。https://osf.io/preprints/socarxiv/cnqmr/ この論文では、今回のコロナ禍のような政策決定のためのデータが不足する危機下でどのようにエビデンスにもとづく意思決定をすればよいかについて一つの分析フレームワークを提示しています。 持続化給付金や雇用調整助成金などの補助金の支給やその額を決定するためにはそれが中小企業の存続などの政策目的にどれだけ資するものかを考慮する必要がありますが、そうした政策の効果は、通常、実際に支給を行って事後的にデータを収集して因果推論を行って初めて
ヘビとカエルの攻防 捕食者と被食者は、共進化の過程でさまざまな戦術を発展させてきたと考えられています。両者の駆け引きに関する研究はこれまで数多くなされており、また、どのような行動が捕食や捕食回避に適しているのかを評価する理論的研究も進んでいます。しかしながら、戦術と呼ばれるものが実際どのように機能しているのかについて実証的な知見は十分に得られていませんでした。 捕食回避における従来の一般的な認識のひとつに、捕食者に近づかれないうちに逃げた方が逃げ切りやすいというものがありました。しかしながら、この認識のもとでは説明のつかない行動をとる動物もいます。「ヘビににらまれたカエル」という言葉があるように、カエルの多くは、天敵であるヘビに直面するとまず静止します。そして、ヘビに至近距離まで近づかれてから逃げ始めます。 この行動は、捕食者の接近を許すという点で専ら生残性を低めるものとして考えられてきま
カブトムシ幼虫の急速な成長は冬支度のため? カブトムシは日本人にとってなじみの深い昆虫であり、幼虫を成虫まで育て上げた経験のある方も多いでしょう。夏の終わりに孵化した幼虫は腐葉土や堆肥を食べて成長し、翌年の初夏に蛹になり、7月ごろに成虫へと羽化します。つまり、カブトムシは一生の大半の期間である約8か月を幼虫として過ごします。幼虫の成長はとても早く、孵化した幼虫は2回の脱皮を経て、2~3か月後には1000倍近くもの体重に成長します。しかし、その後、蛹になるまでの約半年間に体重の増加はほとんどみられません。なぜ体重は幼虫の初期に飽和してしまうのでしょうか? カブトムシの一生。 このことに対する有力な答えは“冬があるから”であると考えられます。カブトムシの幼虫は10℃以下になると摂食などの活動がほとんど停止します。夏の終わりに孵化した幼虫は約3か月後に冬を迎えることになります。その前にできるだけ
ポストコロナ時代の大学論 – これからの大学はどうあるべきか? 徳島大・野地学長と東大・吉見教授に聞く 新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に伴う大学業務のオンライン化等により、大学の在り方を問い直す声が出始めている。アカデミストが4月25日に開催したオンラインイベントでは、徳島大学 野地澄晴学長と東京大学大学院情報学環 吉見俊哉教授を迎え、それぞれの「ポストコロナ時代の大学像」を伺うなかで、これからの大学はどうあるべきか、その答えを探っていった。本稿ではアカデミスト代表・柴藤亮介をモデレーターとして行った野地学長と吉見教授の対談の様子をお届けする。ぜひ下記のインタビュー記事もあわせてご覧いただきたい。 徳島大学・野地澄晴学長の地方国立大学再興戦略 – 応用物理学から分子生物学、そして大学経営へ 大学はもう死んでいる?- 東京大学・吉見俊哉教授 徳島大学・野地 澄晴 学長 19
人文学・社会科学系研究者にとって、「非常勤講師職」はどういう意味をもつか? – アンケート調査から見えたこと ※ 本記事は、academistのクラウドファンディングプロジェクト「人文・社会科学分野の若手研究者が抱えるキャリアの問題とは?」をもとに行われた調査結果を報告したものです。 はじめに アカデミアにおける近年の共通の課題として、若手研究者の育成をめぐる問題を挙げることができるでしょう。ですが、当然のことながら一言で若手研究者の育成といっても、その環境は分野間において大きく異なります。特に、人文学・社会科学系においてはポスドクとしての雇用先が少なく、専業非常勤講師(複数の大学の非常勤講師職によって生計を成り立たせている研究者)からテニュアへの就職が一般的である以上、非常勤講師歴を含めた教育経験の積まれ方は、研究者のキャリア形成において非常に重要な影響を与えていると考えられます。 しか
コロナ禍に伴い、研究活動や大学教育のオンライン化が急速に進もうとしている。しかしオンライン化の動きは、オープンサイエンスの文脈ではすでにはじまっており、特に研究者以外の人々がインターネットを通じて研究に参画する「シチズンサイエンス」は欧米を起点に盛り上がりを見せている。ポストコロナ時代において、研究活動や大学教育はどこまでオンラインに移行していくのだろうか。そしてそのときの大学の価値とは何であり、今後どのように担保されていくのだろうか。 このようなオンライン時代のアカデミアについて議論することを目的に、若手研究者有志を中心として「オンライン時代のアカデミアとは何か?– オープンサイエンス ワークショップ2020」が開催された。当日は、吉見俊哉氏(東京大学)、川口康平氏(香港科技大学)、小野英理氏(京都大学)によるそれぞれ20分間の話題提供の後に、片野晃輔氏(MIT Media Lab)、柴
ゼニゴケにはあってタバコにはない遺伝子を追求したら、100年越しの謎が解明できた – 名古屋大・藤田祐一教授インタビュー【前編】 植物にとって、最も重要な栄養成分のひとつである窒素。空気中には大量に含まれるありふれた元素だが、植物の生育にはそのままでは利用できないため、現状では肥料として補給する必要がある。しかし、将来的に空気中の窒素を自ら肥料に変換して生育する植物が実現できれば、作物生産に伴う環境・エネルギー負荷を大幅に軽減できるかもしれない。そんな夢のような「窒素固定作物」実現のカギとなるのが、ニトロゲナーゼという酵素だ。 ニトロゲナーゼは、一部の原核生物だけが備えている酵素で、大気中の窒素をアンモニアに変換する能力をもつ。名古屋大学大学院生命農学研究科 藤田祐一教授は、ニトロゲナーゼを植物でも機能させるというアプローチで、窒素固定作物の創出を目指している(参考:academist J
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