駒沢商会は成長していたとはいえ、規模は国内最大手のバリューマックス社の3分の1。会社存亡の危機に際し、創業者の息子で2代目社長の駒沢一郎は、宮前久美に次のように語っている。 「ハハハ。バリューマックス社のほうが強い? 私の認識はまったく逆です。立場が弱いのはバリューマックス社のほうですよ」 数カ月後、駒沢商会はバリューマックス社に買収されるが、駒沢一郎はなんと、バリューマックス社の筆頭株主に収まっていた。なぜ買収を仕掛けたバリューマックス社のほうが不利なのか。規模の大きな会社に飲み込まれたはずの駒沢一郎は、なぜ強気の交渉を貫くことができたのか。 バリューマックス社の提案は、〈山倉メソッド〉という独自の武器を持つ駒沢商会と、大企業に強いバリューマックス社が一緒になれば、双方の強みが生きるWin-Winの関係になるというものだった。だが、一見もの柔らかで、つねに笑顔を絶やさず、敵をつくらない印