しっかりした編集方針のもと、15人の執筆者が一糸乱れず編集方針を守って、ていねいにつくった本である。編集方針が確固としていて、言葉も明晰で、誤読の余地がない。迷いもブレもなく、目的に従ってまっしぐらの直球である。 日韓で政治的社会的問題となった朴裕河『帝国の慰安婦』を擁護する15人の著者による論文集である。 本書編集の直接のきっかけは「まえがき」(西成彦)に書かれているように、2016年3月に東京大学で開催された研究集会<「慰安婦問題」にどう向き合うか/朴裕河氏の論著とその評価を素材に>である。 「対話」を求めた研究集会(3.28集会)だったが、「オウムのように過去の主張をくり返す」(3頁)、「『ドグマ』にしがみつこうとする『帝国の慰安婦』批判の声は想像以上にかたくなで、『対話』らしい『対話』は成立しなかった」(5頁)からであるという。 つまり、問題は批判者の「ドグマ」である。あるいは、
わたしは阿Q(あキュー)の正伝を作ろうとしたのは一年や二年のことではなかった。けれども作ろうとしながらまた考えなおした。これを見てもわたしは立言の人でないことが分る。従来不朽の筆は不朽の人を伝えるもので、人は文に依って伝えらる。つまり誰某(たれそれ)は誰某に靠(よ)って伝えられるのであるから、次第にハッキリしなくなってくる。そうして阿Qを伝えることになると、思想の上に何か幽霊のようなものがあって結末があやふやになる。 それはそうとこの一篇の朽ち易い文章を作るために、わたしは筆を下すが早いか、いろいろの困難を感じた。第一は文章の名目であった。孔子様の被仰(おっしゃ)るには「名前が正しくないと話が脱線する」と。これは本来極めて注意すべきことで、伝記の名前は列伝、自伝、内伝、外伝、別伝、家伝、小伝などとずいぶん蒼蝿(うるさ)いほどたくさんあるが、惜しいかな皆合わない。 列伝としてみたらどうだろう
衆議院議員会館で行われた「 2016 ナヌムの家のハルモニを迎えて 今伝えたいこと」の簡単なレポート。 89歳の姜日出(カンイルチュル)ハルモニ、90歳の李玉善(イ・オクソン)ハルモニお二人がいらっしゃった。...
梁澄子 朴裕河(パク・ユハ)著『帝国の慰安婦』(朝日新聞出版)は、多角的で総合的な批判を加える必要がありますが、ここではその被害者認識のみ取り上げます。 日本で発売されて以来、いわゆるリベラル派のメディアや知識人に賞賛されていることに危惧を感じています。評価する論調としては、①「慰安婦」にされた女性たち「一人一人の様々な、異なった声に耳を傾け」ている、②自国(韓国)のナショナリズムに「公平に」向き合った「孤独な」仕事である、といったものです。 まず、①に関わる本書の記述です。 「被害者」としての記憶以外を隠蔽するのは、慰安婦の全人格を受け入れないことになる。それは、慰安婦たちから、自らの記憶の〈主人〉になる権利を奪うことでもある。他者が望む記憶だけを持たせれば、それはある意味、従属を強いることになる。 私は、こうした考え方には全面的に同意できます。私を含め被害者支援をしてきた人たちは、みな
まあ、うんざりするほど見かけるので、amazonで検索できるものをまとめて見ました。 前世紀 書名 出版年月 作者 主張崩壊時期 予測正否 大予言 中国崩壊のシナリオ 1989/9 黄 文雄 1990年代 はずれ 中国は崩壊する―ドキュメント「北京の55日」中国民主革命の最前線をゆく 1990/6 滝谷 二郎 改革開放中国は崩壊する 1998/9 玉川 信明 産経文化人の黄文雄氏はこの頃から、中国は崩壊するとか言っていますが、1989年出版ですからかれこれ27年になりますね。恥とか知ってたらヘイト商売ができないことがよくわかります。 第一次安倍政権期 書名 出版年月 作者 主張崩壊時期 予測正否 中国は猛毒を撒きちらして自滅する―全世界バブル崩壊の引き金を引くのも中国 2007/9 宮崎 正弘 崩壊する中国逃げ遅れる日本―北京五輪後に始まる戦慄のシナリオ 2008/1 宮崎 正弘 2008
ソウル東部地方裁判所が2015年2月17日、『帝国の慰安婦』が被害者の名誉を毀損しているとして出版停止と接近禁止を求めた裁判において、「著書内容のうち34カ所を削除しなければ出版、販売、配布、広告などをできない」と一部訴えを認めた仮処分決定を下しました。その決定文を以下に記します。 目次(Webページ用) 主文 申請趣旨 理由 1.基礎事実 2.当事者の主張 3. この事件の本の出版禁止などを求める部分に関する判断 a.関連法理 b.日本軍慰安婦の「性奴隷」であり「被害者」としての地位 c.原告などの日本軍慰安婦に対する日本国の法的責任 d.この事件の本の原告らの人格権を重大に侵害する内容として削除を命令した部分 e.この事件の本の残りの部分の出版禁止などを求める申請に関する判断 4.結論 別紙1 図書目録 別紙2 引用目録 ソウル東部地方裁判所 第21民事部 決定 事件:201
日本軍「慰安婦」問題・関西ネットワークのブログです。私たちは日本軍「慰安婦」問題の解決をめざして、関西を中心に活動しています。 朴裕河『帝国の慰安婦 植民地支配と記憶の闘い』(朝日新聞社)読了。 読んでいて気疲れする本というのが、通読しての第一印象だ。その気疲れというのは、「どう捻じ曲がればこんな受け取り方ができるのか」という徒労感である。引用される資料から導き出される結論が、私と全く違う。それが悪意なのか良心なのか……間違いないのは、彼女は私たち日本軍「慰安婦」問題の解決を求める運動に対して明確な敵意をもっていて、自分こそが良心であると「見られたい」という強烈な意欲だ。 巻末に、「慰安婦問題に関わってきた人や関心のある人は言うまでもなく、これまで声をあげてこなかった人たちの声が、倫理的で合理的な「第三の声」となって出会う契機となることを願っています」と結んでいることをみてもわかるとおり、
まるでデジャ・ビュを見ているように、かつてと同じ事態が繰り返されている。右派が声高に「慰安所」制度に対する日本軍・日本政府の責任を否認し被害者への二次加害を繰り広げている最中に、一般には「右派」とは認識されていないメディア、言論人が一冊の本を激賞している。 「朴がやろうとしたのは、慰安婦たちひとりひとりの、様々な、異なった声に耳をかたむけることだった。そこで、朴が聞きとった物語は、わたしたちがいままで聞いたことがないものだったのだ。」 (高橋源一郎、『朝日新聞』、14年11月27日) 「この本は、「慰安婦」を論じたあらゆるものの中で、もっとも優れた、かつ、もっとも深刻な内容のものです。これから、「慰安婦」について書こうとするなら、朴さんのこの本を無視することは不可能でしょう。そして、ぼくの知る限り、この本だけが、絶望的に見える日韓の和解の可能性を示唆しています。」 (高橋源一郎、Twitt
|日付別:2013年03月29日の記事|くるしくても
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