桜の蕾がほころび出すと毎年思い出すのだが9年前の今頃、通っていた精神科の主治医から会社を休職することを強く勧められ、翌朝上司に震える手で休職願いを出し、何を話したか緊張と不安感のあまり何も思い出せないが、ともかくそれから2ヶ月半の休職期間に入ることになった。うつ病で休職なんてまさか自分がそんな立場になるとは夢にも思っていなかったので、症状の辛さから休めることの有り難さよりも遥かに、うつ病で休職するということがまるで人間の尊厳を失ってしまうかのような思いに駆られたことを、振り返れば鮮明に思い出す。 *** その数ヶ月前、2005年当時31才の僕は若手から中堅に差し掛かるかどうかという立場で、年の暮れにそれまで勤務していた人事部から本社の営業部に異動することになった。社内では花形とされる、聞けば誰でも名前を知っている大企業を相手にした大きな取引を担う役割だった。今思えば勝手に描いた幻想だったの