おれの家にロシア製かどうかもあやしいマトリョーシカがある。カラフルに彩色してある民族衣装の女性。五層。 もしあなたの家にもマトリョーシカがあったら試して欲しいのだけれど、マトリョーシカをじっと見つめてみてほしい。なんだか不安になってこないだろうか? 本当に五層なのか、って。 いままで何度も小人形を出しつづけてわかっているはずなのに、もしかしたら一番最後の人形の中から六番目の人形が出てくるんじゃないか、今回は、なんて。 もちろん、そんなことあるわけないのにね。 五番目の人形の中がからっぽであることを確認して、おれは胸をなでおろす。すべての人形を順に戻しながら、そのときふともうひとつの可能性に気付く。六番目が内側にあるとは限らないんじゃないのか? おれは窓の外に気配を感じ、振り返る。星がまたたく夜空を仰ぐ。 ……おれが……というか、この宇宙が五番目と六番目の間にあるって可能性も……。