イランの映画監督ジャファル・パナヒは不屈の人です。アッバス・キアロスタミ監督の愛弟子であり、カンヌ(95年カメラドール)、ベネチア(2000年金獅子賞)、ベルリン(06年審査員特別賞)と世界三大映画祭で実績を残したものの、政府への反体制的な活動を理由に2010年から“20年間の映画監督禁止令”を受けてしまいました。映画製作・脚本執筆・海外旅行・インタビューを禁じられていながら、それでもなお彼は映画への情熱を失わなかったのです。2011年には『これは映画ではない』というアイロニカルな題名で、自宅で撮影した映像(この頃は自宅軟禁状態だったのです)をUSBに収め、お菓子の箱に隠して国外に運んでもらうという方法でカンヌ映画祭に出品。見事キャロッス・ドールに輝きました。本作『人生タクシー』でもまた、斬新かつユーモアに満ちた手法で、テヘランの“現在”を切り取っていきます。 活気に満ちたテヘランの街を走