◇民宿 生計が立たず兼業 「父と母が好きだった土地。思い出をつなぎたい」。男性(60)は母の遺品を整理しながら言った。住民の平均所得が全国最低だった熊本県球磨(くま)村。母は民宿を切り盛りし、2月に81歳で他界した。いったん閉じた民宿を自ら再開しようと覚悟を決めたが、人口減に直面して昔のにぎわいを取り戻せるか。「地方創生」が統一地方選のテーマというが、地域再生の道はかすんでいる。【川上珠実】 【数値で裏付け】アベノミクスで所得格差拡大 急流下りで有名な球磨川と並行する国道沿いの民宿で、男性が後片付けをしていた。母の四十九日で、兵庫県三田市から1人で帰省したという。 民宿は27年前に両親が始めた。眼下の清流と、奥にそびえる山々の雄大な景色が、アユ釣りで訪れる宿泊客を楽しませてきた。 父は4年前に亡くなり、母が1人でどうにか続けてきた。だが、最近は常連客以外少なくなり、ぎりぎりの経営が