8月27日の「朝日新聞デジタル」に、作家の星野智幸による「言葉を消費されて―『正義』に依存し個を捨てるリベラル」と題した文章が掲載された。この文章をめぐってSNSを中心に賛否が沸き起こり、大きな話題になった。 星野は、政治や社会を語る言葉が「敵か味方かを判断する材料でしかなくなっている」と言う。本来、政治の言葉は、異なる価値観を持つ者が、社会を何とかやっていくための橋渡しをするものである。なのに、「共感する者同士の居場所」を構成する存在になっており、むしろ社会の分断を加速させていると指摘する。 星野は、日本の右傾化に懸念を表明し続けてきた。経済が低迷し、承認のリソース不足が深刻になる日本社会で、「普通の人」だと思ってきた人たちが、生まれによって自己の尊厳を保証するナショナリズムに寄りかかる。その先に外国人への排他的な言説が生まれてくる。