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「Slack Frontiers Japan」基調講演、Slack導入企業のコクヨ、ウーブン・プラネットもゲスト登壇

“Digital HQ=Slack”が不確実性の時代の企業に求められる理由

2022年05月18日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

 Slackは2022年5月17日、同社で今年最大のイベント「Slack Frontiers Japan」を開催した。2年半ぶりに日本で開催されたSlack Frontiersは、東京の会場(虎ノ門ヒルズフォーラム)とオンラインのハイブリッド形式となり、Slackを通じたDXやハイブリッドワークの実現、企業/組織カルチャーの変革など、幅広いテーマのセッションが展開された。

 基調講演では、Slack日本のカントリーマネージャーである佐々木聖治氏やSlack CEOのスチュワート・バターフィールド氏が登壇し、現在のSlackが掲げる「Digital HQ(デジタル中枢)」ビジョンについて詳しく説明。また、現在開発を進めている“次世代プラットフォーム”やSalesforceとの統合強化など、これからのSlackがどのように進化していくのかも紹介した。

 さらにSlackのユーザー企業であるコクヨ、ウーブン・プラネット・ホールディングス(Woven Planet)もゲスト出席し、それぞれがSlackを採用した理由や、Slack活用を通じて取り組んでいる変革について語った。

セールスフォース・ジャパン Slack 日本韓国リージョン事業統括 常務執行役員 カントリーマネージャーの佐々木聖治氏

Slack CEO 兼 共同創業者のスチュワート・バターフィールド氏

「理想の職場とは『従業員がどこに集まるか』で決まるものではない」

 Slackは2018年6月に日本でのビジネスを正式始動した。それから4年半の間に、Slack Japanの人員規模は数十名から200名超へと成長し、日本市場も世界第2位の規模となっている。

 さらに、2021年10月には買収によってSalesforceファミリーに加わり、Salesforceが推進する「Salesforce Customer 360」ビジョンをより強固にし、価値を高めるツールと位置づけられている。

 そんなSlackにとって、さらにあらゆる企業にとっての大きな転換点となったのが、2020年の世界的なパンデミック発生だ。日本では1960年代の高度成長期から形を変えつつ続いてきた「オフィスフロア中心の働き方」が、パンデミック発生によって「すべて変わってしまった」と、佐々木氏は述べる。

 「(パンデミック発生で)職場に、物理的にアクセスできなくなったため、理想的と思っていた物理的なオフィスは“壊れた”。そして、短期間に多くの業務がリモートワークに移行した。そこで起きたのが、デジタルスペースと物理的スペースの逆転。物理的スペース、つまりオフィスの役割は『デジタルで進む仕事を補完する役割』に変わった。多くの人が、働く場所にとらわれる必要がないことに気づいた」(佐々木氏)

2020年のパンデミックにより、オフィスとデジタルの位置づけに「大転換」が起きた

 ただし、これはリモート/デジタルのワークスペースだけが必要だという意味ではない。Slackが昨年ナレッジワーカーを対象に行ったグローバル調査の結果を見ると、従業員の76%が「柔軟なリモートワークを希望」する一方で、61%が「(同僚や顧客との)対面での会話が懐かしいと実感」している。さらに「仕事へのエンゲージメントは高く、積極的に働けている」とした回答者も、リモートワークの従業員で78%、オフィス勤務者で72%となっており、従業員はどちらの勤務形態にもそれぞれ価値を見いだしていることがわかる。

 「こうした調査結果は矛盾しているわけではない。仕事を対面とリモートに分ける二元論から脱却すべきときが来たのかもしれない。本当の意味での『理想の職場』というのは、人々がどこに集まるかではなく、組織が共有するミッションの中で『自分が組織の一員である』と感じられるかどうかで決まると考えている」(佐々木氏)

予測不可能な時代の企業に必要な「アラインメント」とDigital HQの役割

 そうした考えから佐々木氏は、理想の職場環境とはお互いにつながることができる、働き方に対する多様なニーズを柔軟に満たせる、誰もが参加できてビジネスに貢献できるといった条件を満たす場であり、「それを実現するのがDigital HQだ」と続ける。

 「Digital HQとは、物理的にどこにいるかにかかわりなく、誰もが実力を発揮でき、高いエンゲージメントを可能にする職場。そしてSlackは、皆さんにとってのDigital HQになる」(佐々木氏)

 SlackというDigital HQでは、「組織の壁を超えた協業を促進する」「働く場所や時間をもっと柔軟にする」「さまざまな業務ツール、アプリ、システムを連携させて業務を自動化できる」という、3つの重要な要素を提供するという。

Digital HQとしてのSlackが実現する、重要な3つの要素

 では、そうした要素の提供によって企業や組織はどのように変わるのか。Slack CEOのバターフィールド氏は、それを「アラインメント」という言葉で表現する。「協力、団結」などとも訳される言葉だ。

 「アラインメントとは『全員の目指す方向を揃える』という意味だ。全員の目指す方向が揃っていないと、いくらエネルギーを注いでも意味がなく、費やした労力は無駄になる。一方で、それが揃っていれば前に進むことができる。アラインメントは、どんな規模の組織にも共通する根本的な問題である」(バターフィールド氏)

 特に、現在のような予測不可能な変化が次々に起こる時代において、組織が急な変化にもアジャイルに適合していくためには「組織全員の方向性を常に揃え直せる状態が必要」であり、そうした状態を実現するのがDigital HQ=Slackだという。Slackの重要な特徴である「チャンネル」は、必要に応じて柔軟かつ迅速に作成することができ、関係者間および組織全体での質問や情報共有を活性化する。「それ(チャンネル)はアラインメントを生み、アジリティを実現する強力なツールだ」(バターフィールド氏)。

 さらにバターフィールド氏は、企業を取り巻くここ数年の状況変化をふまえて“連携方法(つながり方)”を見直し、製品においてさまざまな革新を行ってきたと紹介した。「Slackコネクト」は機能を進化させ、組織どうしをつなぐだけでなくセキュリティや検索性を向上させた。チャンネル内で気軽に音声会話ができる「ハドルミーティング」は働く場所を、簡易録画/録音投稿機能「クリップ」は働く時間を柔軟にする機能だと言える。

 もうひとつ、現在のSlackが注力している分野が、自動化を促進する「プラットフォーム」だ。Slackでは毎週100万ものインテグレーション(他のアプリとの連携)がユーザーによって開発されているが、昨年11月の米Slack Frontiersでは“次世代プラットフォーム”実現のためとして、ワークフロービルダーの大幅強化だけでなく、Slack CLIやSDK、メタデータ機能を発表している。バターフィールド氏は、この変化によってプラットフォームの利用が大幅に増加し、開発者やIT部門とビジネス部門のコラボレーションが促進されるだろうと語る。

 さらにSalesforceとの統合も進む。4月に開催されたSalesforceの開発者向け年次イベントでは、Salesforceの主要クラウドサービスとの統合機能、そしてSalesforce Platform上でのSlack連携アプリ開発ツール群が発表されている。Salesforce.com 共同CEOのブレット・テイラー氏がビデオ出演し、Salesforce Customer 360ビジョンを加速させるものとして、Salesforce側でも大きな期待をしていることを語った。

Slackの次世代プラットフォームは開発者向けにベータ公開されている

Salesforce.com 共同CEOのブレット・テイラー氏(右)は「Digital HQとSalesforceのCustomer 360を統合することで、新しい働き方の時代において企業を成功に導けると確信している」とコメント

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