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ハッカー側に立ち情報発信や人材紹介の支援活動、法的トラブルに巻き込まれた際の弁護士紹介も

日本ハッカー協会設立、正しい認識の普及と活躍の場づくり支援

2018年09月19日 07時00分更新

文● 谷崎朋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

 2018年9月13日、一般社団法人 日本ハッカー協会(略称 JHA:Japan Hackers Association)の設立記念パーティが都内で開催された。ハッカーに対する社会の理解や正当な評価を促す「メディア事業」、優秀なハッカー人材を雇用者とつなぐ「人材紹介事業」、法的トラブルに巻き込まれたハッカーを救援する「弁護士紹介事業」の3つを主軸に、国内ハッカーへの支援活動を展開する。

日本ハッカー協会のホームページ。「日本のハッカーがもっと活躍できる社会を作る」を設立目的に掲げる

ハッカー側と雇用側、双方からの正しい情報発信とマッチングを支援

 同協会では“ハッカー”を、「主にコンピュータや電気回路一般について常人より深い技術知識を持ち、その知識を利用して技術的な課題をクリアする人々」と定義する。しかし、そんな彼らの中には「能力は高いのに適切に評価されず、活躍の場を見つけられないでいる人も多い」と同協会の代表理事、杉浦隆幸氏は述べる。

日本ハッカー協会の代表理事、杉浦隆幸氏

 自身もハッカーである杉浦氏は、ネットワークセキュリティ製品を開発/販売するネットエージェントで代表取締役社長を務めていた頃、光る才能を持ちながらも埋もれたままの人材と数多く出会ったという。要因はさまざまだが、一番は「ハッカー側と雇用側の双方で十分に情報を発信、共有できていないことにある」と、杉浦氏は指摘する。

 「ハッカー側は、自分の技術力や知識、実力レベルを正確に伝えきれていないことが多い。他方で雇用側は、実務経験や実績以外でハッカーの能力を測る判断基準が乏しく、採用後も彼らの能力をうまく引き出せない」(杉浦氏)

 同協会ではこうしたギャップを埋めるべく、活動を展開していく。まずは、ハッカーが本来どういう人たちなのか、どんなことに貢献できるのかを広く周知するためのメディア事業を行う。具体的には、Webサイトの記事などを通じてハッカーの活動や実績、バズワードや時事問題などを解説、紹介する。

 2つめが人材紹介事業だ。登録ハッカーは、JNSA(日本ネットワークセキュリティ協会)の「セキュリティ知識分野(SecBoK)人材スキルマップ2017年版」を下敷きに独自開発したスキル定義と、「初心者」や「経験者」など4段階のレベル設定とを組み合わせてスキルセットを登録。さらに「会話が苦手」「朝起きるのが苦手」「レスポンスが早い」といった個人の特性や、雇用側の社風や環境などを協会側がヒアリングし、マッチング精度を上げる。必要に応じて、必要なスキル強化項目や、雇用側の環境整備などのアドバイスも行う予定という。

日本ハッカー協会が行う人材紹介事業の概要

法的トラブルに巻き込まれたハッカーへの弁護士紹介や費用補助も

 そして3つめが、弁護士紹介事業である。技術力と知識を駆使して今までにない面白いこと、革新的な何かを生み出そうとするハッカーは、ときにはまだ法整備が進んでいない領域に踏み込む大胆さも求められる。だが、そのためにサイバー犯罪の疑いをかけられ、法的トラブルに発展することもある。

 同協会に登録することで、ハッカーは弁護士費用などの金銭的な補助が得られるほか、証拠が必要な場合には弁護士を通じてデジタルフォレンジックなど技術支援を協会側より受けられる。補助金は、人材紹介事業で得られた収益の一部が充てられる。

 「特に個人で活動するハッカーにとって、こうした支援はうれしい」と評価する来場者のあるハッカーは、デジタル社会における言論の自由や活動を保護、啓蒙する米国の電子フロンティア財団(EEF)のような存在になるのではないかと語った。1990年に設立されたEFFも、これまで法廷における弁護士費用の提供や弁護士の紹介といった活動を行っている。

 「個人であっても、ハッカーが安心してチャレンジできる仕組みを提供したい」(杉浦氏)

コンピューターウイルス検体の合法的取り扱いのための研究会を検討中

 日本ハッカー協会の会員は、次の3種類となっている。

登録会員:個人対象。会費無料。人材紹介サービスへの登録、仕事や弁護士の紹介、今後開始予定のサービス(勉強会やワーキンググループなど)が利用できる。

正会員:総会での議決権を持つほか、ワーキンググループなど各種活動に参加できる。

賛助会員:法人対象。総会での議決権はない。人材紹介サービスの手数料の割引、優先的な人材紹介、またデジタルフォレンジックなど技術支援が発生したとき、該当サービスを提供している場合は優先的な案件の紹介など。

 同協会の収益源は、人材紹介事業と会費、寄付金。メディア事業や弁護士紹介事業、協会で提供する各種サービスなどに充てられる。

 そのほか、直近の取り組みとしては「ウイルス対策研究会」の発足準備も進めている。特に個人でウイルスの解析や研究などを行う場合に大きな課題となる、合法的なウイルス検体の共有/取り扱いのための枠組みを用意するという。

ペネトレーションテスト向けツール群「ShinoBOT」作者からも設立を祝うスタンド花が

 「理事や幹事には業界で信頼と実績があり、悪いことに技術を使わないと信用できる方々にお願いした」と杉浦氏。現在はセキュリティ業界のメンバーが中心だが、今後は業界を越えたハッカーの輪を広げていきたいと展望を明かす。

(左から)理事の堤大輔氏、石川英治氏、上野宣氏、杉浦隆幸氏、園田道夫氏、宮本久仁男氏、幹事の斎藤健一氏

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