容量無制限のクラウドストレージサービスを展開する米BitcasaのCEO、ブライアン・タペッチ氏が開発者向けの新サービス発表のために来日、アスキークラウドのインタビューに応えた。
BitcasaはDropboxなどのパブリッククラウドを活用したストレージサービスのひとつ。日本でのユーザー数や利用データ量の伸びが顕著なことから、開発者向けAPIサービス、「CloudFS Platform」と同時に日本を拠点にしたクラウドストレージの展開も発表した。
CEOのタペッチ氏は2013年の9月にCEOに就任。過去にZyngaやBitTorrent、EAなどのエグゼクティブを歴任した業界のベテランだ。
Q:今回の発表について背景を教えて下さい。
A:日本でのBitcasaの利用が伸びていることが、今回の2つの発表につながっています。日本は北米に次いで2番目に多いユーザー数となります。全ユーザーの14%、有料会員の23%となっています。それを支えるために日本でのデータストレージの拠点をオープンすることとサードパーティがアプリケーションに組み込むことを可能にするAPI「CloudFS Platform」を発表しました。CloudFSはCloud File Systemの略です。
Q:他のクラウドストレージベンダーと違うのはどこですか?
A:Bitcasaの特徴的な部分は、ファイルの暗号化とブロックと呼ばれるデータへの分割が全てクライアント側で行われることでしょう。また復号のためのデータマップもクライアント側で暗号化されますので、保存先となるクラウドサービスがどこであれ、完全に暗号化が可能です。NSAやBitcasaの社員ですら中を見ることは出来ないのです。これは他のクラウドストレージベンダーにはない特長だと思います。
我々のサービスはキーバリューストアが実現できるクラウドプラットフォームであれば実現可能ですので、AWSであれGoogleのクラウドサービスであれWindows AzureであれOpenStackであれBitcasaのデータ保存先になれるのです。このAPIを使えばどんなアプリケーションでもクラウドサービスの違いを意識すること無く容量が無限のストレージを実現出来るということになります。それはこれまで私達が常に顧客から求められていたことなのです。
Q:今回のCloudFS Platformを開発者に公開することの経緯を教えて下さい。
A:これまでに何度も既存ユーザーからAPIの公開についてリクエストを貰っていました。それに応えるためにAPIのアルファバージョンを公開したのは2013年11月です。その際の参加者は5000ユーザーでしたが、今回のベータバージョンでも多くのユーザーが参加することを希望しています。
Q:CloudFS Platformをより多くの開発者に使って貰うためのトレーニングやイベントの予定は?
A:日本は我々にとってとても大事な市場です。インフラが整備されていること、多くの開発者がいることなどがその理由です。その重要な市場で成功するためにAWSなどのパートナーと共に開発者をサポートするつもりです。
Q:AWSは競合ではなくてパートナーという位置づけですか?
A:AWSは我々にとっての良きパートナーです。マイクロソフトのAzureも大事なパートナーですよ(笑)。我々がユーザーにとってシンプルで簡単なクラウドストレージを提供し、そのバックエンドをAWSが受け持つ、2つを繋ぐ複雑な部分はBitcasaが担当するという構造はユーザーが求めている姿なのです。その時のバックエンドはAWSでもGoogleでもAzureでも良いし、OpenStackでも良いのです。それこそがユーザーが求めていることだと思います。
Q:このAPIの発表によって日本での売上はどのくらい伸びると予想していますか?
A:これまでの売上に比べて4倍の成長を期待しています。今回のサービスはパートナーがアプリケーションに組み込んで活用することでギガバイトというレベルでなくテラバイトレベルでのデータ量の増加が進むと予想しています。売上が前年比4倍と言っても我々は全体で70名の社員の小さい会社ですからそれほど大きな額にはならないと思います(笑)。我々はまだマイクロソフトとは違いますからね(笑)。
Q:将来、Bitcasaはどんな会社を目指しているのですか?
A:我々はクラウドファイルシステムサービスを全ての人に提供するベンダーになりたいと思います。その市場規模は巨大だと思っています。全てのデバイスに付いているローカルストレージはいずれクラウド側に移行するでしょう。その時にクラウドファイルシステムとしての役割を果たす会社になりたいと思います。そのために2014年の第3四半期には日本に最初の海外の拠点を作りたいと思っています。日本は魅力的ですが単独では難しいとも思いますので、日本企業とのパートナーシップも考えつつ検討を進めています。そうしないといつまでも私が行ったり来たりしないといけません。それはどうも私の妻が望んでいる仕事では無いようですから(苦笑)。
参考サイト:https://www.bitcasa.com/platform (英文)