前編に引き続き、アップルの学生向けイベント「Dream Classroom」で行なわれた宇川氏の講演をお届けしよう。
「MCダルマインコとMC九官鳥」のトラウマ
宇川 小学生くらいのときにダルマインコを飼ってたんですよ。「ピーコ」ちゃんて名前でした。
実はこのダルマインコ、岡山にいるおばあちゃんの畑に居たんですよ。ダルマインコはインドの鳥なので、多分、インドの船が運んできたんでしょう。おばあちゃんは港の近くに住んでいたんですが、いきなり電話が掛かってきて、「すごい珍しい緑色のわけわかんない鳥がいるんだけど、いる?」と聞かれて、取りに行ったらコイツがいたという。
野村 捕まえたんですか?
宇川 おばあちゃんがね(笑) もう捕獲してあったのをウチに持ち帰ったんですけど、変な鳴き方をしてるわけですよ。「うわ何なんだ」と思ったら、ダルマインコってオウムと同じで、人の言葉をマネるんですよね。よく聞いてみると、どうもタミル語っぽい。訳が分からない言葉で語られまくって、「コミュニケーション不能」みたいになって。
「これは日本語教えなきゃいけない」と思って俺が教えたのが……。そのとき漫才ブームだったんで、B&Bの「もみじまんじゅう」とたけしの「コマネチ」だったんです。そしたらインドの鳥が「コマネチ、コマネチ、もみじまんじゅう」ってずっと言ってたという。
野村 覚えたんですね。
宇川 覚えたんですよ。その後ね、同級生から九官鳥を引き取ったんです。うちは今まで鳥をいっぱい飼っていたし、ダルマインコもいるから友達になれるかもと思ってもらったんです。で、玄関の対面に九官鳥とダルマインコを「インスタレーション」してみたと(笑)
片やタミル語を話しまくって「コマネチ」「もみじまんじゅう」でしょ。向こうは、かつての家庭の対話から一部を拾ってきて「もしもしー」とか「いらっしゃい」とか「おかえり」とかずっと言ってるわけですよ。言ってみれば、毎日がMCバトル。フリースタイルのMCをステージに上げて、バトルしてるような世界だったと思うんですよ、彼らにとっては。
野村 それはちゃんとバトルになってたんですか?
宇川 なってましたよ。フリースタイルはMCがDisりあったり、上げあったりしながら、勝敗を決めていくじゃないですか。知らないうちに、それを無理やりステージに上げて、可哀想なことにMCダルマインコとMC九官鳥でやりあわせちゃった。
野村 タミル語を話せるようになったわけじゃない?
宇川 それがうつったら俺も面白いと思ったんだけど。さすがにそこにはポリシーがあるみたいで、最後まで俺が教えた言葉を覚えず、前の家庭で拾ってきた言葉を投げていました。でも、九官鳥が徐々に言葉を喋らなくなってきた。MCに敗退しちゃって衰弱して死んじゃったんです。それがすごいショックでした。
鳥にすごいハマって、鳥が発する声って昔から心のひだに残ってて、その一件があり、そこで始めるのが(スライドの)次。うずらなんですよ。