SAPジャパンと日本ビジネスオブジェクツ(BO)は、2月26日、都内のホテルで共同記者会見を開いた。昨年10月のSAPによるBO買収発表以来、日本法人のトップが揃って会見するのはこれが初めて。
日本法人も存続、事業体・ブランドの独立性を維持
「SAPは、“オーガニックグロース”(自律的・内部的な成長)を戦略に掲げてきた。今回のビジネスオブジェクツ買収は決してその否定ではなく、それだけ例外的な判断だったと理解いただきたい」。SAPジャパン代表取締役社長兼CEOの八剱洋一郎氏はこのように話す。
独SAPが仏ビジネスオブジェクツを68億ドルで買収すると発表したのは昨年10月のこと。SAPはそれまで大型の企業買収を行なわず、自前での成長にこだわる姿勢を見せていた。ピープルソフトやシーベルなどのビッグベンダーを次々と手中に収めてきた米オラクルとは対象的だ。
八剱氏の説明によると、SAPが“例外的”な買収に踏み切った背景には、2005年に独本社が策定した、2010年までにソフトウェアライセンスの売上を倍以上にする目標があるという。その達成のため、「BPP(ビジネスプロセスプラットフォーム)やSME(中堅・中小企業)と並ぶ成長のエンジン」(八剱氏)としてビジネスオブジェクツ買収が決まった。
会見の中で八剱氏は、「SAPのERPは、企業の過去の成績を正確にレポートするもので、自動車でいえば“バックミラー”。ビジネスオブジェクツによって、過去を分析して未来の戦略策定を行なう“フロントガラス”の見通しもよくなる」と両社の補完関係を強調。その一方で、「SAPだけではなく他のベンダーとの相性もいい、ビジネスオブジェクツの良さは失いたくない」(八剱氏)として、ビジネスオブジェクツの中立性を維持する方針を説明した。
両社は今後も合併などの事業体の統合は行なわず、ビジネスオブジェクツはブランド、企業ともに存続する予定。これは日本法人においても同様で、短期的には相互販売などでシナジー(相乗効果)を高めながら、将来的な製品開発へ向けた協力体制を敷く。
オラクルなど、SAPにとっては競合となるビジネスオブジェクツのパートナー企業についても「100%関係を維持したい」(日本ビジネスオブジェクツ代表取締役社長の印藤公洋氏)という。製品の統廃合については「現在精査中であり、分からないことも多い。だが、少なくとも現時点の方向感としては各々の製品をそれぞれ成長させていく」(八剱氏)と説明する。