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「マッカン」を含む日記 RSS

はてなキーワード: マッカンとは

2024-08-18

煮詰まる」はいかにして「結論が出る」という意味になったか

それでは夏休み自由研究を発表したいと思います

最初

現在のところ「煮詰まる」という言葉は、「議論交渉がまとまって結論が出る」という用法が正しいとされ、「議論が進まなくなって行き詰まる」という用法誤用であるとされている。「煮詰まる」という言葉がどのように用いられてきたのかに興味を持ったので、その変遷を辿っていこうと思う。ソースはだいたい国会図書館デジタルコレクションである

注意として、ここでは「煮詰まる」と「煮詰める」を区別して、「煮詰まる」の用例のみを追っていくこととする。現在においても「煮詰める」のほうには「行き詰まる」という用法はなさそうだからである

白樺派の例

調べてまず気付くのは武者小路実篤が「煮詰まる」を多用していたこである。そして同じく白樺派有島武郎長与善郎、その影響を受けたという岸田劉生木村荘八なども「煮詰まる」を用いている。まるで実篤から伝染したようである。それらは概ね「無駄な修飾を排して凝縮されている」あるいは「態度が一つに決まっていく」というような用法であり、いずれもポジティブ意味で使っているところが共通している。いくつかの例を挙げる。

大正10年 武者小路実篤自分脚本に就て』

僕は脚本はどうしても人間精神のあらわれである上に、煮つまったものであることを要求します。


大正10年 有島武郎『筆頭語』

心が二元的である間は、即ち或る機縁によって煮つまって一元的にならない間は、どこまでも二元なり多元なりの生活を押し通して行くがいいと思う。


大正11年 木村荘八『泰西名画家伝』

長官デリニのあやが「うまく」かかるもかからぬもなく、競技――即(すなわち)対抗の空気は忽ち煮つまるばかりであった。


大正13年 長与善郎『書斎より』

牛のよだれのようにだらだらした書きぶりがいかんのは問題にもならぬ事であるが、さればと云って何でも只無暗に簡潔に端折って書きさえすればいいと云う事を一つおぼえて、まるで電報文句のような言葉さえつかえば煮つまったいい文章だ、と思っている人の文章は又不自然な、とらわれた感じのするものである


昭和5年 岸田劉生演劇美論』

全体として、一つの美しさを出すけれど、旧劇の如く煮つまった味はなく、その美は甘く、低級である


白樺派以外の例

もちろん白樺派以外の用例も同時期にあった。意味的にはさまざまだが、ネガティブ用法も多かったようだ。

明治40年イヴィッド・パーリー『くらげ』

この説明には余程可笑しな点がある、で、僕は云った。

『じゃ、この国では、宗教煮詰まって了ったのですネ。』

もとは『The Scarlet Empire』というタイトルアメリカ小説である。原文は「It looks as if religion may correctly be said to have gone to seed, in this country.」となっており、「gone to seed」は「盛りを過ぎて衰える」という意味なので、つまりそういった意味で「煮詰まる」が使われていると考えられる。「加熱しすぎて水分が飛んでしまった」ようなイメージだろうか。

大正9年 ドストエフスキー白夜

私が余りに余計なことを喋舌り、私の心の中で長い間煮つまっていたことを必要もないのに述べ立てたことを、而もそれに就いては私は書いたものから読むように話すことが出来たのだ

こちらも翻訳書。英文は「I had unnecessarily described what had long been simmering in my heart」。「心の中でくすぶり続けていた」とか「ずっと感情が渦巻いていた」といったイメージか。

大正10年 岡本一平へぼ胡瓜』

何処かに法華宗があると見え、この熱気の世界の中へ煮詰まった声でお題目をいきみ出してる。

真夏暑い日に遠く法華宗お題目が聞こえてくる…という場面で、この「煮詰まった声」は「重苦しく絞り出している」ような印象を受ける。もの煮詰まったあとのドロドロとしたイメージだろうか。

大正12年 佐々木味津三『呪はしき生存

単にそれを考えるだけでも、彼は天地が煮つまるように感じていたたまらないような震撼を覚えた。

「居た堪らない」というので、世界が煮られて、そこにいられなくなるような感じだろうか。ぎゅっと狭窄するような感覚もあるかもしれない。

昭和2年歌舞伎 第三年第十三号』

森金之丞は正直にこれに答えるが、だんだん議場(公議所)の空気が煮つまって行き怒声、罵声騒然たる裡に第一場は閉じて行く。

議論が悪い方向に盛り上がってヒートアップしているという描写結論が出そうにないという点では現在の「誤用」のほうに近いか

昭和6年 大高巌『近代支那文学史上の先駆者

かるが故に自己生活を安泰ならせんが為には儼然として己れが階級城壁を固守しなくてはならない。科挙制度がそれだ。かかる試験制度採用することは一に権力者に反抗する意志学問の為に煮つまらせ、又一には士大夫階級思想擁護有為なる人材を作ることになる。

こちらは「集中させる」「浪費させる」ようなニュアンスか。

昭和9年 式場隆三郎バーナード・リーチ

高村光太郎は余り外に出ない。併し仕事は煮つまってきていると思う。暫らく作品を見ない。

この式場隆三郎白樺派との交流があったらしいが、「作品を見ない」ということは、ここでの用法は「行き詰まる」に近いのではないか

昭和10年 丸山幹治『黒頭巾を脱ぐ』

勿論コチコ官僚型で煮つまって、倒さにふっても水っ気もないような人ではなく、時代に対する感受性は強く、好んで人の長所認識する感服癖さえある。

こちらは「頭が固い」というような用法

昭和10年 ギュスターヴ・フローベールジョルジュ・サンドへの書簡

では左様なら。もう遅いのです。頭がまるで煮詰まりそうです。

翻訳書。英文は「Adieu, it is late, I have an aching head.」なので、普通に頭痛がすることを言っているのか、それとも「悩んで行き詰まっている」的な意味なのかはわからない。

戦後の例

戦前武者小路実篤を中心に、小説詩歌戯曲などの文学的文脈で使われることが多かった「煮詰まる」だが、戦後になると現在のような「議論交渉煮詰まる=結論が出る」といった用法が登場し、やがて支配的になっていったようだ。

それに関してわかりやすいのは「国会会議検索」で、戦前の「帝国議会会議検索」では「煮詰まる」はほとんどヒットしないが、国会会議録では1950年代あたりから見られるようになる。さらに用例を確認していくと1960年代から爆発的に増えていったようだ。労使交渉文脈が多いように思われるので、そのあたりをきっかけに流行りはじめたのかもしれない。

となると次に気になるのは「議論煮詰まる」=「行き詰まる」という用法がいつごろ確立されたのかということである。どうやって調べればよいか。たとえば「煮詰まってしまった」みたいな形だとネガティブ文脈で使われていそうだ。ということで検索してみよう。

昭和34年週刊現代

しか日本側は表面上は「朝鮮総連相手にせず」とその抗議を重視せず、裏では字句は修正せずとも運用面に幅をもたせるという妥協の動きに期待を寄せていた。それが、日赤相手にせざるをえない北朝鮮赤十字から真向に攻撃を受けたのだから問題は煮詰ってしまった。


昭和44年『先見経済

やはり人間災害にあってみないとなかなかわからないもので、そういったことで安堵感を持っている。しかしジワジワと危機に瀕してきているわけで、そのとき判断をあやまると、残念ながら煮詰まってしまう。


昭和47年ミュージックライフ

ハイスクールからジュニアカレッジヘと進んだアリス達は2年間のカレッジライフ煮詰まってしまい、カリフォルニアに向かったのである


昭和50年キネマ旬報

その後の二本は結局むしかえしのドラマをやるしかなくて、無残な作品になってしまった

あれも、会社方針企画貧困の為せる業で、プロデューサー監督も完全に煮詰まってしまったんですよ


昭和51年レコード芸術

あい自由さが背景にあってのこの音楽じゃなくて、すごい煮詰まっちゃってて、つらいだろうなというところで出て来る音なんですね。


昭和53年スイングジャーナル

でも、いつか自分のやりたいことをやらないと苦しくなるというか煮詰まちゃうわけだよね。


昭和54年ジャズ批評

昔は、自分が何をやっていいかからなかった。やり過ぎると煮詰まってしまうし。


昭和56年週刊読売

「でも、仕事ばっかりしていると煮詰まちゃう」「煮詰まちゃうってのは、息詰まる、退屈する、スランプに陥るって意味なんです。」


昭和60年 毛利子来岡島治夫・末永蒼生『「体」発、宇宙へ』

たとえば原稿書いてて、もう煮詰まっちゃって、しょうがない、寝よう、横になると、ア、と思いついちゃう


昭和60年 チャールズ・シェフィールド放浪惑星

その問題ととっくんでいるうちにわたしの頭は煮詰まってしまい、あとをマッカンドリューにゆだねた。


昭和60年 松浦理英子いちばん長い午後』

実はそれは性的遊戯の一環ではなく、二人の交際煮詰まってしまったあげくのもがき合いであった。


結論が出る」用法と比べれば圧倒的に少ない。とはいえ1970年代くらいからは、日常語として「行き詰まる」的な用法もわりと広まっていそうな感じはする。というか「結論が出る」用法議論交渉文脈しか使えず、それ以外のときは「行き詰まる」用法になることが多かった、という感じではないか

ちなみに、この「行き詰まる」用法誤用として問題視されるようになったのは2000年ごろらしい。実際、Google Booksで「煮詰ま誤用」などと検索すると2000年以降の書籍しか引っかからない。

まとめ

といったところか。

煮詰まる」のコアイメージは「熱されることで水分がなくなっていき固形分だけが残る」というようなものであろう。

それをポジティブに捉えると「余分なものが削ぎ落とされて本質がはっきりする」といった意味合いになり、ネガティブに捉えると「瑞々しいものが失われて停滞する」といった意味合いになる。たとえば「議論」にポジティブイメージ適用すると「論点が整理されて結論がはっきりする」になり、「思考」にネガティブイメージ適用すると「新しいアイディアが生まれなくなり行き詰まる」になるわけだ。

もともとの料理としては「美味しくするために煮詰める」ことも「熱しすぎて煮詰まってしまう」こともあるわけで、どちらのイメージで使うのも自然感覚である。当初から煮詰まる」は多義的比喩表現だったのだから、「これが唯一正しい用法なのだ」などとはあまり気にしなくていいのではないだろうか。

発表は以上となります。ご清聴ありがとうございました。

2023-07-08

おすすめしないが俺はめちゃめちゃ好きなSF

おすすめSFを知りたかったら、こういうリストから選んで読めばよいよね。どれを読んでも損はないよ。

ローカス賞 オールタイム・ベスト賞

SFファン度調査 SF本の雑誌オールタイムベスト100版

 

こういうリストにはあまり入ってこないけど自分の中では特別思い入れのあるSF作品について書くよ。

そうは言っても有名な作品ばかりなので、「隠れた名作」は期待しないでほしい。SFをよく読む人ならとっくに読んでる作品ばかりと思うよ。

 

ソングマスターオースン・スコット・カード

心揺さぶる歌、とか、音楽世界を変える、とかよく言うけど、この作品に出てくる少年はそんな比喩的意味じゃなくてガチ歌声で人を操れてしま特殊能力者。この作者は『エンダーのゲーム』が押しも押されぬ大人作品だけど、音楽を長くやっている自分の中ではこっちのほうがずっと上だった。てか、カード少年いじめるの好きだよな。なお、古本しか手に入らない。

『幻詩狩り』川又千秋

ソングマスター』が歌なら、この作品は〈詩〉が主役。その詩は、読むと異常な感覚に襲われて、発狂して死んだり意識が別次元に飛ばされたりする。読むドラッグ、というかもっとヤバい超自然的なしろもの発狂するのは作中人物たちなんだけど、それを読んでるこっちの脳みそもかなり揺さぶられる。

日本SF大賞も獲ってるし上のリストにも入ってるので一般的尺度でもおすすめなんだけど、あまり話題にならないし自分の中ではかなり特別なので書いた。最近復刊したけど、これもずいぶん長い間古本しか手に入らなかったんだよ。

渇きの海』アーサー・C・クラーク

月面で流砂に呑み込まれ遊覧船を救出する話。アポロが月に人を送る前に書かれた話なので今となっては色々変なところもあるけど、制約条件の中で知恵と創意工夫を総動員して生き延びる、っていうストーリーは興奮する。『火星の人』とか映画アポロ13』とかも同じよね。プロジェクトXっていう感じでハラハラキドキする。遊覧船の客の中に「余計な時に余計なことする困ったやつ」がいないのもいい。万が一映画化したら、そういうキャラを足されちゃうだろうな。

さよならダイサウルス』ロバート・J・ソウヤー

恐竜絶滅の謎を探りにタイムマシンで太古の地球に赴いた研究者たちが「えっ、そうだったの?マジ?」ってなる話。これはやられたなあ。

しかしソウヤーってあんま人気なくね? 自分コニー・ウィリスかに近いにおいをソウヤーにも感じていて、どんなにおいかと言うと、「誰でも読めるSF」っていう感じ。

プロパーSF特にハードSF界隈って、科学SFというジャンル自体精通してないとわかりにくいものが多くて、それこそがSFファンを喜ばせる要素になってるし、同時に門外漢を遠ざける要素にもなってると思う。その点ソウヤーはちゃんと「門外漢視線」を意識した(それでいてストーリーはきちんとSFしている)作品になってて、スラスラ読めて楽しい。逆にそれが気難しいSFオタク趣味には合わないのかもしれないね。『ゴールデンフリース』とか『ターミナルエクスペリメント』とかも面白いよ。

20億の針』ハル・クレメント

地球人&そいつ寄生したアメーバ状の宇宙人コンビを組んで、地球に逃げ込んだ宇宙凶悪犯を追う話。早い話が寄生獣+バディもの

ハル・クレメントは『重力への挑戦』がどっしりしたSFで人気なんだけど、こっちはわりと痛快エンタメ寄生獣のミギーはなんかふてぶてしい高飛車なヤツだったけど、こっちの寄生宇宙人はやけに腰が低くていいヤツ。

つぶやき

人気投票ランキングに並ぶ作品をあらかた読んでしまってから読書いちばん楽しいフェーズと思う。「たくさん読んで、自分だけのお気に入りを探す」っていう。

もろちんハズレを引くこともあるのでタイパは悪いけど、当たった時の喜びも大きい。

ランキング常連作品は誰が読んでも面白くて当たり前だけど、「いつも惜しいところで選外」な作品の中にも当然ながらお宝がごろごろしているよ。

みんなも「僕の/私の一冊」があったら紹介してね。

 

https://anond.hatelabo.jp/20230709215312

チャールズ・シェフィールドの諸作品

シェフィールドいいよね…

マッカンドルー〉シリーズはマジ大好きでここに入れようかどうしようか最後まで迷った。

ただ『星ぼしに架ける橋』が未読なのを引け目に感じてて、外してしまった…

2016-11-27

http://anond.hatelabo.jp/20161127082710

とりあえずイーガンクラークも行けるんならハードSFとつくものをあさっていけばいいとおもう。

超高重力下の中性子星で生きる生命とか、中性子星に行くにはどんな装備が必要かとかが詳細に描かれた『竜の卵』とか、ちょっと話のノリ自体ライトすぎるかもだけど『マッカンドルー航宙記』とか。

もちろん気に入った作者のそれぞれの続編読んでもいいけど2001年シリーズ最終作の3001年は読んじゃダメ。巻末でずっこけるから

イーガンに関しては順列都市ディアスポラいけるんなら他の短編集や長編もそんなのばっかりだから楽しくて仕方ないはず。

意識関係イーガン読んじゃうと他は少し物足りなく感じちゃうので、(もう売ってないけど)『マインズ・アイ』とか『ゲーデルエッシャーバッハ』とかの心の哲学系の本にまで手をだすハメになる。

2014-09-13

コーヒー飲みたいなー。

コーヒー?お前コーヒー飲めたっけ?苦いの全然ダメだろ?」

飲めるよ!黄色い、細長い缶のやつ。えっへん。

マッカンなんてただのクソ甘い汁だろ。威張るな」

むきゅー。

「鳴くなよ、お前ホントキモいな」

だってー。

だって何だよ」

コーヒー飲みたいんだもん。

「じゃあ仕方ないな、セブン寄っていこう。残すなよ」

こうして部長は、外回りからの帰りに、僕にセブンカフェを買ってくれたのです。

はぴはぴはっぴはっぴーす。

 
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