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八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム関連事業で六価クロムなど基準超える有害物質検出

 八ッ場ダム事業により、ダム予定地周辺に造られている住民の移転代替地や道路に有害な鉄鋼スラグが使用された問題について、国交省関東地方整備局は仕事納めの昨日、調査結果を公表しました。

 関東地方整備局による記者発表は、こちらに掲載されています。
 http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000614913.pdf

 鉄鋼スラグについての調査は、同局によって三月にも発表されていますが、先の調査で問題とされていなかった八ッ場ダム予定地住民の移転代替地などで有害スラグが露出していることを8月5日に毎日新聞が一面トップで取り上げました。
 これを受けて、国交省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所は、9月18日から改めて調査を開始しました。

 関東地方整備局の記者発表によれば、環境基準を超えた有害スラグが検出された工事施工箇所と分析結果は以下の通りです。

キャプチャ2

 キャプチャ

 今回の調査結果の発表により、初めて国交省は八ッ場ダム事業で環境基準を超える有害スラグが使用されていたことを認めました。また、有害スラグが確認された場所では、当該スラグの撤去工事を行うことも明らかとなりました。
 
 しかし、鉄鋼スラグ問題は、これで幕引きという状況からは程遠いのが現実です。
 今回、有害スラグの検出が明らかとなった個所の多くは、有害スラグを使用した佐藤建設工業の資材置き場であった場所で、有害資材の露出が誰の目にもよくわかる場所でした。鉄鋼スラグは資材置き場に置かれた後、八ッ場ダム予定地で広範囲に使われた可能性が高いのですが、今回の調査について国交省八ッ場ダム工事事務所は、「現時点で鉄鋼スラグの混入の可能性がある材料が露出した状態となっている工事を対象に調査」(八ッ場ダム工事事務所が地元住民に配布した「鉄鋼スラグに関する調査の中間とりまとめについてのお知らせ」より、平成26年10月吉日)としています。
 鉄鋼スラグが露出していない箇所は、最初から対象外です。また、実際に鉄鋼スラグが露出している場所で、住民が要望しているにもかかわらず調査が実施されなかった箇所もあります。
 したがって、今回の分析結果は氷山の一角であると言わざるをえません。

関連記事を転載します。

◆2014年12月26日 毎日新聞
 http://mainichi.jp/select/news/20141227k0000m040048000c.html
ー八ッ場ダム関連:六価クロムなど…基準超える有害物質検出ー

 国土交通省は26日、有害物質を含む「鉄鋼スラグ」とみられる建設資材の使用が確認された八ッ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の移転代替地など56工事のうち27工事で環境基準を超える有害物質が検出されたとする分析結果を公表した。このうちダム用道路の2工事では毒性の強い六価クロムが初めて検出された。また、有害物質が検出された代替地には既に2軒の住宅が建っており、国交省は住民の意向を踏まえスラグを撤去する方針を示した。

  国交省は、八ッ場ダム建設に伴う水没予定地から立ち退きを求められた住民の移転代替地の工事に有害スラグが無許可使用された疑いを毎日新聞が8月に報じたことを受け、9月に調査を開始。10月には代替地や同県内の国道など56工事でスラグとみられる資材の使用を確認したとする中間調査結果を公表し、今回はこの56工事について有害物質の含有量などの分析を行った。

 それによると、八ッ場ダム用道路の2工事で環境基準(1リットル当たり0.05ミリグラム)を超える最大同0.22ミリグラムの六価クロムの溶出を検出。これらを含め27工事でフッ素の含有量や溶出量が環境基準を超え、最大は約7倍の溶出量だった。27工事のうち、長野原町上湯原地区の代替地には既に2軒の民家が建ち、庭などでスラグが地表に露出して住民が触れる可能性もある。国交省は「家の下ではなく敷地内、庭の一部に使われている」と説明する一方、「できるだけ早く撤去したい。手に触れない措置も必要だと思う」との見解を示した。

 27工事のうち八ッ場ダム関連は8工事で、基本的にスラグを撤去する一方、国道関連の19工事についてはすぐに撤去せず県と対応を協議する。国道の大部分は既に開通済みのため、交通への影響に配慮したとみられる。

 スラグはいずれも大手鉄鋼メーカー・大同特殊鋼(名古屋市)の渋川工場(群馬県渋川市)から排出され、渋川市の建設会社が販売または自社の工事に利用したとみられる。国交省によると、撤去費用は大同が負担するという。同社は「多大なご心配やご迷惑をおかけしていることをおわびする。今後も誠意を持って対応する」とのコメントを発表した。

 代替地への移転を予定する70代の男性は「撤去は当然。国は当初、代替地に使っていないと言っていた。他にも使われたところはないのか徹底的に調査すべきだ」と話した。【杉本修作、角田直哉】

 ◇六価クロムとフッ素
 六価クロムはメッキなどに用いられ、毒性が強く、皮膚炎や肺がんなどを起こす恐れがある。フッ素は金属の研磨などに用いられ、虫歯予防効果が知られるが、高濃度になると歯に白い斑点ができたり骨折リスクが高まったりする研究がある。

◆2014年12月26日 共同通信
 http://news.nifty.com/cs/headline/detail/kyodo-2014122601002205/1.htm 
ー八ツ場ダム工事現場で有害物質ー

 国土交通省関東地方整備局は26日、群馬県長野原町の八ツ場ダム建設に伴う八つの工事現場で、土壌汚染対策法に定められた環境基準の最大7倍近いフッ素が検出されたと発表した。このうち二つの現場では六価クロムも基準を超えた。有害物質を含む建設資材「鉄鋼スラグ」が原因とみられ、同省はスラグの入った砂利や盛り土の撤去を決めた。

 同省は9月から、鉄鋼メーカー大同特殊鋼(名古屋市)のスラグが使われたとされる県内の道路改良や、ダム関連など計56の工事現場を調査していた。

 八つの現場の中には、ダム水没に伴い住民が移転した代替地も一部含まれていた。

◆2014年12月27日 読売新聞群馬版
 http://www.yomiuri.co.jp/local/gunma/news/20141226-OYTNT50358.html
ー27工事で基準超す有害物質 国交省分析ー

 八ッ場ダム建設の代替地などで鉄鋼スラグと類似する材料が確認された問題で、国土交通省関東地方整備局は26日、詳しい分析試験を行った県内56工事の施工箇所のうち27工事(48%)から、環境安全品質基準の基準値を超えるフッ素などの有害物質が検出されたと発表した。

 分析試験は、有害物質を含む鉄鋼スラグの出荷を認めている大同特殊鋼渋川工場の出荷記録が残る47工事、類似材料の混入が確認された9工事が対象。この結果、フッ素と六価クロムの溶出量が、それぞれ最大で基準値の6.88倍、4.4倍だったことが判明した。

 基準値を超える有害物質は、長野原町の八ッ場ダム建設代替地でも検出。上湯原地区では、二つの住宅地の敷地内で基準値超の有害物質が確認された。庭の埋め戻しや、資材置き場の敷き砂利に材料が用いられたという。同整備局は、この2か所を含め、八ッ場ダム関連の施工箇所で基準値を超えた材料を撤去する方針だ。

 上武道路の盛り土などでも、基準値超の有害物質が確認されており、同整備局は「今回は材料そのものを調査したが、その直下の土壌に影響がないかも調べる」としている。

◆2014年12月27日 朝日新聞
 http://www.asahi.com/articles/ASGDV5GFQGDVUHNB00R.html
ー群馬)有害スラグ検出で8工事の土壌撤去へ 八ツ場ダムー

 大同特殊鋼渋川工場が排出し、県内の工事現場で建材に使われた鉄鋼スラグの一部から有害物質が検出された問題は、八ツ場ダム(長野原町)の関連工事の一部で土壌の撤去が必要な事態に至った。国土交通省関東地方整備局は26日に記者会見し、ダム関連の8工事13カ所で撤去を進めることなどを発表した。費用は大同特殊鋼が負担する方向で、本体工事の工程には影響しないとしている。

 整備局は県内の工事現場など計56工事を調べ、27工事の32カ所で基準値を超える有害物質を検出。国道17号バイパス(上武道路)や八ツ場ダム関連の工事で、ダム関連の一つの下田残土置場整備工事ではフッ素の含有量が3・8倍で溶出量は6・6倍、六価クロムの溶出量は4・4倍だった。

 整備局の高橋克和・技術調整管理官は「我々が知らないところで起こっていた」「早く調整して撤去する」などと説明した。(上田雅文)

◆2014年12月27日 東京新聞社会面
ー八ッ場ダム移転先 8ヵ所で有害物質 フッ素など基準超過ー

 国土交通省関東地方整備局は二十六日、群馬県長野原町の八ッ場ダム建設をめぐり、住民の移転先など八ヵ所で環境基準を超える有害物質のフツ素などが検出されたと発表した。

 八ッ場ダム関連以外でも県内の十九ヵ所で環境基準超の有害物質を検出。整備局はこれらの大半について、大同特殊鋼渋川工場(同県渋川市)が出荷した「鉄鋼スラグ」が原因とみている。

 住民の移転先などでは有害物質を早急に撤去し、大同特殊鋼に費用を支払わせる方針。
 移転先では人が住む住宅が二軒あり、住宅敷地内で環境基準の約一・六倍のフツ素を検出。

 八ッ場ダム関連ではほかに、道路の舗装材からフツ素が環境基準の六・八倍検出され、二十七ヵ所中で最大だった。有害物質の六価クロムは工事用道路の舗装材など二ヵ所で環境基準の最大四・四倍が検出された。

 鉄鋼スラグは、鉄の精製時に排出される砂利のような資材。フツ素は人体に入ると骨折の恐れが増え、六価クロムは発がん性が指摘される。

 国交省は、県内の工事現場で鉄鋼スラグから環境基準を超える有害物質が出た問題を受け、鉄鋼スラグの出荷記録などがある県内五十六ヵ所を調査していた。

◆2014年12月27日 東京新聞群馬版
 http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20141227/CK2014122702000164.html 
 ー八ッ場代替地など有害物質 住民 不安隠せずー

 
 県内各地で、有害物質の「フッ素」と「六価クロム」を含む「鉄鋼スラグ」を使った建設資材が使われていた問題。八ッ場(やんば)ダム(長野原町)の代替地と工事現場に加え、前橋市内を中心とした国道・上武道路一帯でも、国土交通省の調査で有害物質が環境基準を超えた。ダムの代替地への移転を控える住民などからは不安の声が上がっている。 (伊藤弘喜、菅原洋)

 「調査は数値が低く出そうな場所を選んだのではないか。素直には結果を受け入れられない」
 ダムの水没予定地に住み、これから代替地へ移転する六十代男性は、これまでに国交省が行った現地調査に立ち会ったが、こう疑念を隠さなかった。

 水没予定地に住む女性は「地元説明会で国交省は鉄鋼スラグ問題を小さく抑えようとしていた。本気で調査したとは思えない」。長野原町の牧山明町議は「記録に残っていない工事で、スラグが使われた可能性は否定できない。さらに調査する必要はないのか確認していきたい」と話した。

 一方で、国交省の調査結果によると、有害物質が検出された二十七カ所のうち、ダムの計画地に関連する八カ所を除く十九カ所は全てが上武道路一帯だった。車道予定地の盛り土などに鉄鋼スラグが露出している場所もあり、六価クロムは環境基準を超えなかったが、フッ素は環境基準の一~四倍程度が検出された。国は現場を立ち入り禁止にするなどの対策を検討する。

 国交省は二十七カ所について、地下水への影響などを調べるため、土壌汚染対策法に基づく分析試験も実施する。撤去費用などは、大半のスラグを出荷したとみられる大同特殊鋼の渋川工場(渋川市)に請求する方向で調整している。

 県庁で調査結果を説明した国交省関東地方整備局の担当者は「有害物質が健康に及ぼす影響は、判断できない。大同特殊鋼がスラグを納入した業者が介在し、自分たちの知らないところでスラグが混入していた。周辺住民の安全を確保し、再発を防止したい」と説明した。

◆2014年12月27日 上毛新聞
 ースラグ問題で国交省調査 27工事で基準値超 フッ素、六価クロム 八ッ場関連8工事ー

 鉄鋼メーカー、大同特殊鋼渋川工場(渋川市)のスラグ問題で、国土交通省関東地方整備局は26日、国直轄工事でスラグが使われていた疑いがある56工事の有害物質の含有量を調査した結果、計27工事で六価クロムかフッ素が基準値を上回ったと発表した。8工事13カ所は長野原町の八ッ場ダム事業関連で、うち1工事2カ所は代替地の民有地だった。同局は8工事13カ所について、有害物質が含まれる採石などを早急に撤去することを決めた。

 採石など早急に撤去
 同局によると、1工事2カ所は川原湯地区内。有害物質はこのうち1カ所で資材置き場の敷き砂利に混入され、別の1カ所では側溝などを埋め戻す際の材料として使われていた。いずれの場所も民家が建つ土地の一角。同局は「図面などから民家の直下には使われていない」と説明する。

 別の1工事は民有地の進入路の敷き砂利として使われた。残る6工事は工事用道路などに利用された。
 撤去費用は主に大同特殊鋼が負担する方向という。
 八ッ場関連以外の⑲工事では、すべて国道17号上部道路だった。大半の場所は前橋市内で、盛り土や路盤として使われた。この対応について同局は県、渋川市とつくる連絡会議で協議した上で検討するとした。

 27工事の調査結果をみると、六価クロムは、溶出量の環境安全品質基準(1リットル当たり0.05ミリグラム以下)の最大4.4倍となった。フッ素は溶出量基準(0.8ミリグラム以下)の最大6.9倍、含有量基準(1キログラム当たり4千ミリグラム以下)の最大3.8倍だった。

 土壌汚染対策法は、溶出量基準に関しては人が生涯その地下水を1日2リットル飲み続けても、含有量基準は子どもが生涯その土壌を1日200ミリグラム接種しても、それぞれ健康に基本的に影響がない濃度と定めている。

 ただ同局は、今回の調査は工事に使われた材料に有害物質が含まれているかを調べるもので、土壌汚染の有無は「分からない」としている。今後は有害物質が検出された材料直下の土壌汚染を調べるとした。
 同局企画部の高橋克和技術調整管理官は「われわれの知らないところで起こっていた事態。住民の安心安全をできるだけ早く確保するため、関係機関と調整していきたい」と述べた。

 一方、水資源機構群馬用水管理所は同日、スラグが使われたと確認されていた同用水の水路脇にある管理道路計1945メートルなどについて、撤去工事が完了したことを明らかにした。

◆2014年12月27日 毎日新聞群馬版
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20141227ddlk10040094000c.html
ー八ッ場ダム建設:代替地の有害スラグ撤去へ 安全確保やっと始動 国交省「関係機関と連携」 /群馬ー

 八ッ場ダム建設に伴い水没する地区から立ち退き、移転した住民が暮らし始めた代替地に、基準を超える有害物質が含まれていることが確認された。国土交通省関東地方整備局は26日公表した分析結果に基づき、有害物質を含む鉄鋼スラグを撤去する基本方針を示した。ようやく地元住民の安全確保に向けて動き出した形だが、国道17号上武道路などの工事箇所については、すぐに撤去しない意向を明らかにした。

 国交省は、1991年度以降に県内で施工した直轄の約3800工事のうち、スラグとみられる材料の混入が確認された工事や、大同特殊鋼にスラグの出荷記録が残る工事の計56件について、有害物質の溶出量と含有量を分析していた。

 JIS品質基準に基づく溶出量試験では、八ッ場ダム関連の19工事のうち8工事でフッ素が基準を上回り、最大約6・9倍を示した。うち2工事で最大4・4倍の六価クロムを検出。国道17号上武道路など高崎河川国道事務所の管轄では37工事のうち19工事で最大約4・6倍のフッ素を検出し、六価クロムはすべて基準内だった。八ッ場ダム、上武道路関連を合わせると計27工事で環境基準を超える有害物質が検出された。

 県庁で分析結果を発表した関東地方整備局の高橋克和・技術調整管理官は「我々が知らないところで、こういうことが起こっていた。住民の安全安心を確保するため、関係機関と連携を密にしたい」と話した。今後、一般市民の手に触れることがないように早急に対策をとるという。

 八ッ場ダム関連では基準超の有害物質が出た工事箇所のスラグを基本的には撤去する。上武道路関連については「一般の人が簡単には入れない」として現時点での対応は未定。今後、国と県、渋川市でつくる連絡会議を開き、該当箇所への立ち入り禁止措置などの対策を調整する方針という。

 県と市は大同からのスラグ出荷記録などを調べ、調査結果をまとめている。

 また、独立行政法人水資源機構「群馬用水管理所」は26日、大同製スラグが使われた群馬用水の側道など計16カ所でスラグの撤去が完了したと発表した。【角田直哉】