アイキャッチ&記事内の写真撮影:筆者
蒸れずに軽い自立式のメッシュシェルターが登場!
国内の登山ギアメーカー<ヘリテイジ>の「クロスオーバード—ム」といえば、発売から人気を集め続けている自立式の超軽量シェルターです。
そのクロスオーバードームから派生した新製品が、2025年の4月上旬に限定生産でリリースされます。それが「クロスオーバードーム KAYA」。
商品名に付け加えられた“KAYA”とは“蚊帳”のことで、ネーミングからイメージできるとおり、インナーは高い通気性を誇るフルメッシュで作られています。
近年の暑すぎるサマーシーズンに、フルクローズのテントやシェルターで寝苦しい思いをしたことはないでしょうか。クロスオーバードーム KAYAはそんな悩みを受けて解決するために開発された商品であり、虫などの侵入を防ぎつつ抜群の通気性で快適な夜を過ごすためにメッシュインナーが採用されました。
荷物を軽くしたい人や沢登り愛好家におすすめ
クロスオーバードーム KAYAは本体のメッシュ構造による通気性の高さだけでなく「Wウォールポールスリーブ式最軽量クラス」と謳うように、重さも注目ポイントのひとつです。メッシュインナーのみで570g※、レインフライを併用しても760g※という軽さを実現し、泊まり装備の軽量化を担う期待のシェルターといえるでしょう。
※付属するペグ8本・ガイライン4本・収納袋(合計130g)は含まない
また、軽量シェルターは沢登りにもおすすめ。荷物の軽量化が求められる沢登りではタープの下で眠るユーザーが多いですが、皮膚を露出していると虫に刺される可能性があり、それを防ぐためにツエルトで眠ると今度は蒸し暑さが気になる羽目に……。
虫刺されを気にせず涼しい一晩を約束してくれるクロスオーバードーム KAYAは、沢登りで使用するシェルターの最適解になる可能性も秘めています。
収納サイズと重量からチェック!
それでは実際にクロスオーバードーム KAYAの細部を見ていきましょう。まずは収納サイズとサンプル品の重量を確かめました。
収納サイズはビックリするほどコンパクト
収納サイズは写真のとおり、ケースに入れたスマートフォーン(iPhone14)と比べてみても、自立式シェルターとは思えないほどコンパクト。一般的な薄手のサマーシュラフより一回りも二回りも小さいサイズ感です。
長さを測ってみると、ポールの仕舞寸は38cm、本体は24✕直径10cmという大きさでした。
サンプルの重量もカタログスペックと遜色なし!
重量を量ってみると、メッシュインナーとレインフライだけで531.9g。ここにポールの重量274.2gと付属するペグの重量92.3gも加えると、総重量は898.4gという結果になりました。この数値は、カタログスペックの760g+付属品130g=890gとほぼ同じ。
謳い文句にあるとおり、まさにダブルウォールの自立式シェルターの中で最軽量の部類に入るといえるでしょう。
フィールドで泊まって感じたGood!なポイント
収納サイズとスペックだけでも興味を惹かれるクロスオーバードーム KAYA。その実際の使い心地を、冬のテントサイトでチェックしてきました。オフィシャルの情報だけでは判然としない細部の仕様まで良かった点をレポートします!
- 直感的に作業できるスリーブ式で設営は手間いらず
- フロアスペースは意外とゆったり
- 付属のレインフライで雨にも対応
- 天井にあるループでランタンなどを吊るしておける
直感的に作業できるスリーブ式で設営は手間いらず
設営方法は2本のポールをクロスするスリーブに通して立ち上げるおなじみの方法。難しさはまったくなく、誰もが直感的に作業できるはずです。
また、各スリーブの末端は袋とじになっているので、テントの四隅にポールエンドを差し込む手間が半分に省ける作りも好印象でした。
フロアスペースは意外とゆったり
フロアサイズの大きさは、短辺95cm✕長辺200cm✕高さ95cm。スリーピングバッグを広げてもほかの荷物を置けるほど十分なスペースを確保することができました。
天井高に関しても筆者の身長は182cmあるのですが狭さは気にならず、逆にパネルがメッシュで透けているからか開放感のほうが勝っている印象。圧迫感はまったくありませんでした。
付属のレインフライで雨にも対応
付属するレインフライを取り付けると1枚目の写真のとおり。これで雨水の侵入を防ぎながらあらゆる天候で快適に眠ることが可能です。レインフライの縫い目はしっかりシームテープで目止め処理されているので、生地が薄いながらも耐水性には安心感がありました。
ちなみに、レインフライの末端と地面とのクリアランス(すき間)は約6cm。メッシュインナーのフロアの立ち上がりは約14cmあったので、地面に落ちて跳ねた雨水や泥がレインフライの隙間から入ってくる心配もありません。
また、フロアの立ち上がりのおかげで冷気の侵入も最小限に止められ、さほど寒さが気にならずに眠れたのは意外な発見でした。
天井にあるループでランタンなどを吊るしておける
天井にはランタンなどを吊るすのに役立つループがありました。これのほかに四角形になる位置にループが4つ取り付けられているので、細引きなどを使って物干しを自作することも可能です。
軽量なシェルターではありますが、細かな使い勝手を疎かにせず作られている点は好感をもてる特徴といえるでしょう。
テストで気づいた“う〜ん”なポイント
使い勝手に優れ、性能や細部の作りにも抜け目がないクロスオーバードーム KAYAですが、どんなにいい商品でも満足できない点はいくつかあるもの。最後にテストで気になった点を紹介します。
- レインフライを使っても前室はゼロに等しい
- 結露はメッシュをすり抜けて落ちてくる可能性あり
レインフライを使っても前室はゼロに等しい
一般的なダブルウォールの構造は本体とフライの間に前室と呼ばれるスペースが生まれ、ここに靴を置いたり煮炊きをしたりすることができます。
しかし、クロスオーバードーム KAYAの前室はとても狭く、靴を横にして並べて置いておくのが精一杯。レインフライを閉じた状態での煮炊きは生地に引火する危険性が高く、現実的ではないでしょう。
雨の日にガスバーナーを使って調理をする場合、レインフライを開けて濡れるのを我慢するか、レインフライの代わりにタープを使って煮炊き用のスペースを確保するか、少々工夫が必要そうです。
結露はメッシュをすり抜けて落ちてくる可能性あり
朝起きて天井を見上げると、レインフライの内側に結露が発生していました。これはどんなシェルターにも起こりうることなので大した欠点には感じません。
ただし、中で荷物を整理していると写真のような水滴を発見。これはおそらく、レインフライの内側に発生した結露が雫となって落ちてきて、メッシュパネルをすり抜けた状態だと思われます。
乾燥する冬の時期だから結露の発生は少なかったものの、これが湿気の多い夏だったら……。寝ている間に水滴が落ちてくる可能性は否定できないと感じました。
この点については、念の為メーカーにも確認してみたところ、このような回答をもらっています。
ヘリテイジ
弊社のテストでは、レインフライ内側の結露の水分がメッシュ上を流れることはあっても、本体メッシュを通過し侵入することはほとんど見られませんでした。
メッシュを使用している以上、本体内への浸水はゼロではありませんが、限りなく低いと考えております。
蒸し暑さと無縁の爽快シェルターをどう使うかはユーザー次第!
冬の寒い時期にメッシュシェルターを試したのは、実は今回が初めて。さぞ大変な寒さで辛い夜を過ごすことになるだろうと覚悟して臨んだところ、意外や意外、保温性の高いスリーピングバッグを使用すれば、冬でも冷気の侵入をそこまで気にせず眠ることができました(朝、外に出ると霜が降りていたので外気温は零度を下回っていたものと思われます)。
となると、気温が下がる夏の高山でも、装備さえしっかりしていればクロスオーバードーム KAYAは十分に使えそう。あくまで一般的なテントとは違うシェルターなので扱いには注意が必要ですが、備わる強度やプロテクション性能をしっかり理解した上で使用すれば、真夏の登山、沢登り、自転車やバイクで移動するソロキャンプなど、クロスオーバードーム KAYAが活躍するフィールドには限りがないようにも思われます。
自立式で設営しやすく、最軽量クラスの軽さを誇り、雨にも耐性があり、それでいて不快な蒸れを気にせず夜を過ごせるWウォールシェルター。これまでに夜の蒸し暑さで辛い思いをした経験があるなら、クロスオーバードーム KAYAがその悩みを解決する最適な選択肢になるかもしれません。
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