いよいよ国内で、最大数十Mビット/秒のモバイルブロードバンドが本格的に動き出す。これに対し、先行してサービスを展開するUQコミュニケーションズはどう動くのか。端末や料金プランに関する考えを、2010年6月に就任した野坂社長に聞いた。
NTTドコモのLTE、イー・モバイルやソフトバンクモバイルのDC-HSDPAと、UQ WiMAXを含め、数十Mビット/秒級のモバイルブロードバンドがそろってきた。
後から振り返って今の時代を総括してみたときに、「2010年はモバイルブロードバンド元年だった」ということになると思っている。
動きはモバイルブロードバンドの通信サービスだけではない。5月のiPadしかり、Android搭載のスマートフォンやiPhone 4しかり。新型のiPod touchもそうだ。日本の市場が、ようやく携帯電話の時代を越え、スマートフォンなどを核とする新しいステージに入ったといえる。
4月には、「WiMAX Speed Wi-Fi」(モバイルルーター)を出した。こうしたデバイスがそろってきたことで、モバイルブロードバンドの速さや便利さを体感するユーザーが広がっている。YouTubeやFaceTime、ビデオチャットなどのアプリケーションでWiMAXを使うと速いという感覚をユーザーに伝えられるようになってきた。
おかげで、加入者は2010年10月末で37万3000件まで来た(注:2010年12月末時点では52万4000件)。年度末までにこれを80万件に持っていく。
モバイルルーターに関しては、先行したイー・モバイルも好調なようだ。
そう。イー・モバイルのPocket WiFiが認知されてきていることは、我々にとってよい影響があった。ある家電量販店に行ったら、店頭に「WiMAXのPocket WiFi」と書かれていた。ああいうものを持ち歩くと便利だと世の中に伝わり始めたところにWiMAX版を出したおかげで、当社のモバイルルーターがよく売れたという側面はある。
各社がモバイルブロードバンドのサービスを打ち出してきたことも同様で、競争は激しくなるだろうが、ある意味ではそれが追い風になる。
そんな中でUQ WiMAXが有利な点はどこか。
モバイルルーターのほかには、高速性、そしてWiMAX標準搭載パソコンだ。速度に関しては他社も最大37.5Mビット/秒だとか42Mビット/秒のサービスを打ち出してきている。厳密に言えば、当社の40Mビット/秒はイー・モバイルなどと同じ誤り訂正を考慮しないのなら48Mビット/秒ということになる。
ただ、これはユーザーの視点に立てば本質ではない。40Mビット/秒というのはシステム上の最高速度であって、実際には同時に複数のユーザーが使うのだから、そんなに速度は出ない。UQ WiMAXはチューンアップして速度を高めて、実測20Mビット/秒程度だ。
重要なのは使ってみてユーザーがどう感じるかだ。その意味では、他社がモバイルブロードバンドのサービスで発表した料金をみる限り、月額4480円で定額のUQ WiMAX(UQ Flat)は料金面でイケていると思っている。さらに料金面でのアピールを強めるために、11月中旬には年間契約にする代わりに月額料金が3880円になるUQ Flat年間パスポートを始めた。
そして、ユーザーにとって一番分かりやすい価値は、WiMAX搭載パソコンだと考えている。ノートパソコンを開いてボタンを押すだけで、すぐにつながるし、それを持って外にも行ける。この便利さはユーザーに訴求しやすい。
野坂 章雄(のざか あきお)氏
(聞き手は,河井 保博=日経コミュニケーション編集長,取材日:2010年11月2日)