DX時代に求められるITアーキテクチャーの構成は複雑なことが多く、必要な要素技術や設計・開発手法も多岐にわたる。その全体像を把握するのは困難に思えるが、以下のように7階層に分けて考えると理解しやすい。
●DXを支える7階層のITアーキテクチャー
- (1)チャネル層
- (2)UI/UX層
- (3)デジタルサービス層
- (4)サービス連携層
- (5)ビジネスサービス層
- (6)データサービス層
- (7)データプロバイダー層
今回はこの図を基に、7階層のそれぞれの特徴とDX移行時に押さえるべき要素技術や仕様、よくある課題について順番に見ていこう。
(1)チャネル層はユーザーとの最初の接点
ユーザーとサービスとの最初の接点となる部分の階層。パソコン、スマートフォン、タブレットなどの端末、そこからアクセスするアプリケーション(Webブラウザー、チャットボット、SMSなど)の他、コールセンターなどの顧客サービスもチャネル層に当たる。スマートウオッチやカーナビのようなデバイスや、アクセス用のネットワークも含まれる。
(2)UI/UX層で画面デザインを提供
ユーザーが利用するサービスのインターフェース部分の階層。アプリケーションの画面デザインやボタン、テキストなどのUIデザインや、一連のサービス利用体験そのもの(UX)を指す。使いやすく新しいユーザー体験を実現する機能が求められる。最近では文字や2Dグラフィックに加え、音声認識やAR(拡張現実)、VR(仮想現実)、3Dグラフィック、触覚の伝達などさまざまなインターフェースが登場しており、目的に合わせて適切なインターフェースの選択が可能となっている。
(3)デジタルサービス層で「ビジネスIT」を実現
ユーザー(一般消費者)が利用するサービスを提供する階層。本特集の前回記事で紹介した「ビジネスIT」、つまりSoE(Systems of Engagement)を実現する階層に当たる。
迅速なサービス提供やシステム変更の容易さ、柔軟性の高さが求められるため、API(Application Programming Interface)やマイクロサービスを採用した疎結合な構造を採るのが望ましい。もう少し具体的に説明すると、プロダクト指向の考えに基づいて以下の2種類のシステムを構築するとよい。この2種類を用意することで、システムがシンプルになる。
- サービスプロダクト:利用者の視点に立って構築する。機能プロダクト(後述)が提供するデータを利用して、ユーザービリティを優先しつつユーザーとの接点(チャネル)単位でアプリケーションを用意する
- 機能プロダクト:データを中心に設計・構築する。データの配置を一元化し、他のアプリケーションからのデータの参照・更新機能をAPIとして提供する
アプリケーションについては、コンテナ技術を利用することで柔軟性を高める。コンテナは、OS上のアプリケーションの動作環境を仮想的に複数に区切った単位のこと。各コンテナはOSや他のアプリケーションのプロセスから隔離された環境になるため、システム変更が容易で、再利用性も高くなる。