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「二次相続」で相続税が高くなる?!その理由や対策方法とは?

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「二次相続」で相続税が高くなる?!その理由や対策方法とは?

著者: 安島 秀樹 代表税理士

日本では、毎年110万件の相続が発生し、そのうち5%の人が相続税の納税対象者といわれています。そもそも「相続」自体、一生のうちに一度か二度あるかどうかですから、「相続税」について生前から意識している人の方が少ないでしょう。

しかし、なにも知識がないままだと、いざ「二次相続」が発生したときに必要以上に高い相続税を払うハメになるかもしれません。そこでこの記事ではなぜそのようなことが起こり得るのか、また、どのような対策をすべきかを解説します。

目次

二次相続とは?

仮定として父、母、子ども2人の家庭があるとします。

父が亡くなったとき、残された母と、子ども2人が父の財産を相続する、これが「一次相続」です。その後、母が亡くなったときに、その財産を子ども2人が相続する、これが「二次相続」です。

父だけが相当の財産を保有している場合もあるでしょうし、母は母で、別にある程度の財産を保有していることもあるでしょう。

ところが制度の使い方によっては、父母の財産が子ども2人に相続されるまでに、相続税の負担額に大きな違いが出ることもあり、特に、二次相続では相続税が高くなるといわれています。

そのため、相続税の総負担額を減らすためには、一次相続が発生した時点で二次相続にも配慮した長期的な相続税対策が必要になります。

二次相続の具体例

まずは簡単に相続税の計算について説明しましょう。国税庁のタックスアンサーに従うと、相続税計算の流れは下記のとおりになります。

  1. 相続人それぞれの課税価格(相続税評価額)を計算する
  2. 1を元に、相続税の総額を計算する
  3. 2の相続税額を、相続人それぞれに振り分ける
  4. 3で計算したそれぞれの相続税額に対応する控除を適用し、実際の納付税額を計算する

では、具体的な金額を当てはめて見ていきましょう。

先ほどの父、母、子ども2人の家庭で、たとえば父が1億円の現金を残して亡くなったとき、母にはほかに財産がなかったとします。

このとき、民法で定められた法定相続割合によって財産を分割すると、母が2分の1、子ども2人が4分の1ずつを相続にすることになります。

この金額を元に計算すると、3の「各人ごとの相続税額」は母が340万円、子どもが145万円ずつになります。

母には「配偶者の税額軽減」が適用され、1億6000万円まで相続税が控除されるため、納税額はゼロになります。つまり、実際の納税額は子ども1人145万円×2の290万円となるのです。

ここで、仮に「配偶者の税額軽減」の1億6000万円の枠をフルに活用するとしましょう。相続割合を、法定相続割合でなく、家族で話し合って、母が100%、子どもが遺産なしという遺産分割をすると、3の「各人ごとの相続税額」は母が860万円、子どもがゼロとなります。そうすると、母には「配偶者の税額軽減」が適用されるので、相続税の実際の納付額はゼロになります。

単純な「一次相続」における相続税軽減を考えるならこれでいいのですが、二次相続まで考えるとどうでしょう?

父に続いて、母が亡くなると二次相続が発生します。最初の例のとおり、法定相続割合に従って、母が父から相続した財産を子ども2人が半分ずつ受け取ると、納付税額は子ども1人40万円で2人合わせて80万円となります。

一方、配偶者の特例をフルに活用し、母が1億円を受け取った例においては、二次相続で子ども2人が半分ずつ受け取ると、納付税額は子ども1人あたり385万円となり、2人合わせると770万円となります。

このように、一次相続、二次相続とも法定相続の割合とおりに相続すると、納付額の総額は一時相続での290万円+二次相続での80万円=370万円です。

しかし、一次相続で配偶者の特例をフルに使うと、一次相続では相続税負担がゼロですが、二次相続では相続税負担が770万円ですので、負担がより重くなるのです。これが二次相続の「ワナ」というわけです。

二次相続で相続税が高くなる理由

このような「ワナ」が発生するには3つの理由があります。

相続人が減ることで基礎控除額が低くなる

相続税の計算において、だれでも使える「相続税の基礎控除」というものがあります。相続人それぞれの遺産を合わせた合計額から、3000万円+600万円×(法定相続人の数) で計算された金額を引くことができるのです。

相続人が母と子ども2人の場合、控除額は4800万円となり、父が亡くなったときの一次相続では、4800万円が差し引かれます。

これが二次相続になると、法定相続人は子ども2人だけになるので、控除額は4200万円に下がります。これが二次相続で相続税が高くなる理由のひとつです。

「配偶者の税額軽減」が使えない

先ほどの具体例でも触れた「配偶者の税額軽減」では、亡くなった被相続人の配偶者は、法定相続分(遺産の2分の1)または、1億6000万円のどちらか高いほうの金額まで、相続税がかかりません。

仮に父の財産が5億円の現金だったとすると、母がもらう法定相続分は2億5000万円となります。そこから計算すると、本来支払うべき相続税が6555万円となるところ、「配偶者の税額軽減」により相続税がゼロになるのです。

二次相続では、もちろん「配偶者」に当たる相続人がいないため、こうした優遇制度がなくなり、二次相続における相続税は一次相続に比べ高くなる傾向にあります。

「小規模宅地等の特例」が使えないことがある

ここまでの例では、相続する財産が現金のみの場合でしたが、相続する財産には、被相続人が保有していた自宅が含まれる場合もあるでしょう。

そういった不動産は評価額に応じて相続税が課されますが、被相続人の自宅の場合、330平方メートルまでの土地であれば相続税評価額が80%減額できる「小規模宅地等の特例 が適用されます。この特例は、相続人が配偶者である場合のほか、同居している子どもであっても適用することができます。

たとえば、父が亡くなって母が自宅を相続すると、この特例で大幅に相続税が安くなります。そして、その後母が亡くなって、子どもがその自宅を二次相続するときには、子どもが母と同居している場合にのみ、80%減額の特例が使えます。

しかし最近では、核家族化がどんどん進み、親子別居が当たり前になってきているので、特例が使えないことも多いでしょう。これも二次相続で相続税が高くなる理由のひとつとなっています。

二次相続に有効な4つの対策

二次相続での相続税負担が増えてしまうのは避けられないことではありません。一次相続が発生した時点で次のような対策をすれば、相続税を上手に節税することができるでしょう。

「配偶者の税額軽減」の使い方をシミュレーションする

一次相続で配偶者がどれくらい遺産を相続するかによって、二次相続での相続税負担額が大きく異なることはここまでで説明したとおりです。合わせて、母がもともと財産を保有していると、負担はもっと増えるという点も注意が必要です。

よって、一次相続のときから二次相続を見据えた相続割合のケースをいくつかシミュレーションをしてみて、最適な遺産分割の方法を探すとよいでしょう。ただし相続税には様々な計算方法や控除の仕組みなどがありますので、専門家に相談してみるのもひとつの方法です。

生前贈与を上手に活用する

生前贈与とは、被相続人の財産を生きているうちから「贈与」という形で相続させる方法です。

通常、この「贈与」にも贈与税という税金がかかりますが、年間110万円までの贈与であれば、贈与税は非課税となります。つまり、10年間に渡って毎年110万円ずつの贈与を続ければ、1100万円の財産を贈与税の負担なしに子どもに相続させることができるのです。

ところが、贈与金額と年数を最初から決めてしまうと「定期贈与」と認定され、その場合は贈与税がかかってしまいます。絶妙な違いになりますが、「今後1100万円を10年間に渡り贈与します」という方法ではなく、「今年は110万円を贈与します」というのを10年間続けていくという方法をとった方がよいでしょう。

配偶者が受け取る財産を工夫する

被相続人の遺産として、一次相続で配偶者が家賃収入を得られるアパートなどを受け取った場合、配偶者の生存中に財産が増え、二次相続の税金が高くなることが懸念されます。

このような増額する可能性がある資産は、一次相続の時点で配偶者ではなく、子どもが受け取る方がよいでしょう。また、配偶者が一次相続で得た財産を、生存中になるべく現金化しておくことで、二次相続が発生したときに必要な相続税の納付が楽になることも想定できます。

生命保険に加入しておく

生命保険金も相続財産として課税の対象となります。しかし生命保険には、相続人ひとり当たり500万円までの非課税枠があります。

一次相続で受けた現預金を元に配偶者が子どもを受取人にした生命保険に加入すれば、子ども2人の場合、相続税がかかるのは1000万円を超える金額に対してのみになり、その分、子どもの相続税が安くなります。

二次相続における控除の特例

一次相続が発生してから10年以内に二次相続が発生した場合、たとえば、父が亡くなってから母も続けて亡くなってしまった場合に起こる相続を「相次相続」といいます。

相次相続の発生条件は、二次相続の被相続人が一次相続の相続人であり、かつ一次相続の発生時に相続税が課されていること となっています。

この条件に当てはまる場合、「相次相続控除」という相続税が安くなる仕組みが適用され、その控除金額は一次相続から二次相続までの期間によって異なります。

つまり、二次相続の被相続人となる母が一次相続のときに相続税を払っていて、その後10年以内に二次相続が発生すれば、二次相続で子どもが支払う相続税を通常よりも抑えることができます。

これは立て続けに不幸が起きてしまったときに、相続税の負担が必要以上に重くならないよう作られた制度です。万が一の場合には、覚えておきましょう。

おわりに

ここまでくれば、みなさんも、二次相続まで考えた相続対策が必要な理由をご理解いただけたのではないでしょうか? しかし、相続というものには、想定外の事態が付きものです。できるだけ臨機応変に、専門家の知識も活用しながら賢く進めていきましょう。

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